不倫慰謝料と結婚式費用・ご祝儀|新婚で請求されたときの考え方

新婚や結婚して間もない時期に不倫が発覚し、離婚協議になった場合、不倫慰謝料だけでなく、「結婚式費用も返してほしい」「ご祝儀も返してほしい」と請求されることがあります。

もっとも、結婚式費用やご祝儀は、不倫慰謝料そのものとは性質が違います。特に、結婚式費用やご祝儀の返還は、多くの場合、不倫相手に対する請求というより、不倫をされた配偶者と不倫をした配偶者との間で問題になりやすい費用です。

そのため、請求書に「慰謝料」「結婚式費用」「ご祝儀」「結婚祝い」などがまとめて書かれていても、すぐに全額を認める必要はありません。まずは、誰に対する請求なのか、どの費目の請求なのか、実際に誰が負担した費用なのかを分けて確認することが重要です。

  • 慰謝料本体と結婚式費用・ご祝儀は分けて考える
  • 新婚・短期婚では問題になりやすいが当然返還ではない
  • 不倫相手に結婚式費用まで請求されるのは例外的
  • 請求額は総額ではなく純負担額で確認する
  • 婚約中・結婚前からの不貞は例外として注意する

坂尾陽弁護士

請求書に結婚式費用やご祝儀が並んでいると、慰謝料と同じように全部払わなければならないと感じがちです。まずは、誰に対する、どの費目の請求なのかを分けて確認しましょう。
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

不倫慰謝料に詳しい坂尾陽弁護士

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この問題は不倫相手より不倫をした配偶者に請求されやすい

不倫慰謝料は、不倫をされた配偶者が、不倫をした配偶者や不倫相手に対して請求することがあります。そのため、不倫慰謝料の問題では、不倫相手が「慰謝料を請求された側」として想定されることも少なくありません。

しかし、結婚式費用やご祝儀は少し性質が異なります。結婚式の契約、披露宴の費用、ご祝儀の受領、親族からの援助、新生活準備の支出は、通常、夫婦や双方の親族の生活関係の中で発生します。そのため、結婚式費用やご祝儀の返還をめぐる請求は、まずは不倫をされた配偶者が、不倫をした配偶者に対して請求する問題として現れやすいといえます。

特に問題になりやすいのは、結婚から何十年も経ってからの離婚ではなく、結婚式後すぐ、結婚後1年程度、長くても結婚後2年程度の短期婚で、不倫を理由に離婚する場面です。「こんなに早く離婚するなら結婚式をしなかった」「ご祝儀をもらうような結婚ではなかった」として、感情的に大きな金額が請求されることがあります。

不倫慰謝料と結婚式費用・ご祝儀は性質が違う

不倫慰謝料は、不倫によって夫婦関係が侵害されたことによる精神的苦痛を金銭で評価するものです。これに対し、結婚式費用やご祝儀は、挙式や披露宴、新生活準備、親族からの贈与、夫婦間の清算といった財産的な問題です。

したがって、「不倫をしたから慰謝料を払う」という話と、「結婚式費用を返す」「ご祝儀を返す」という話は、同じ請求書に書かれていても、法律上は分けて検討する必要があります。不貞行為でどのような損害が問題になるかは、不貞行為で請求できる損害項目の整理とも関係します。

請求された側としては、相手が「不倫したのだから全部払うべき」と主張していても、慰謝料本体、結婚式費用、ご祝儀、結婚祝い、新生活費用などを一括りにせず、それぞれの根拠を確認することが大切です。

不倫相手に請求される場合はかなり例外的

不倫相手は、通常、結婚式場との契約者ではなく、ご祝儀を受け取った人でもありません。結婚式費用を誰が負担したか、親族からの援助があったか、ご祝儀がどのように使われたかといった事情も、多くは夫婦や親族の内部事情です。

そのため、不倫相手に対して、通常の不倫慰謝料とは別に結婚式費用やご祝儀まで請求することは、かなり例外的な場面と考えるべきです。不倫相手に請求が来ている場合は、慰謝料本体が高額になっているのか、それとも結婚式費用などの別費目が上乗せされているのかを分けて確認してください。慰謝料額そのものが高い場合は、不倫慰謝料の請求額が高すぎる場合の確認ポイントも参考になります。

本記事では、主に新婚・短期婚で不倫をした配偶者が、配偶者から結婚式費用やご祝儀まで請求された場面を中心に説明します。不倫相手に同じ費目が請求された場合の考え方は、後半で補足します。

結婚して長期間経っている場合は結婚式費用との関係が遠くなりやすい

結婚から長期間が経過している場合、結婚式費用はすでに過去の支出として完結しており、その後の不倫と結婚式費用とのつながりは遠くなりやすいといえます。たとえば、結婚から10年、20年が経過した後に不倫が発覚した場合、結婚式費用まで返すべきだという主張は、通常は因果関係や損害の範囲が強く争点になります。

一方で、結婚式から間もない時期に不倫が発覚し、すぐに離婚となった場合には、相手が「結婚前に知っていれば挙式しなかった」と主張しやすくなります。だからといって当然に返還義務が生じるわけではありませんが、短期婚では、時期、不倫の開始時期、結婚前から隠していた事情の有無が重要になります。


新婚・短期婚で結婚式費用を請求されたときの基本

新婚・短期婚で離婚する場合、結婚式費用やご祝儀の請求は、感情的な対立と結びつきやすい論点です。「結婚式をしたばかりなのに不倫された」「親族や友人を呼んだのにすぐ離婚になった」という不満から、慰謝料に加えて結婚式費用の半額や全額、ご祝儀の返還まで求められることがあります。

しかし、結婚式費用は、原則として、結婚式を実施するために支出された費用です。結婚式が実際に行われ、夫婦として生活を始めた後に不倫が問題になった場合、単に離婚したというだけで、過去の結婚式費用が当然に返還対象になるわけではありません。

請求された側としては、まず「不倫がいつ始まったのか」「結婚式費用がいつ支出されたのか」「相手が何を根拠に結婚式費用まで請求しているのか」を整理する必要があります。

通常の結婚後不貞では当然に返還義務があるわけではない

結婚後に不倫が始まった場合、結婚式費用は、不倫より前に支出された費用であることが多いはずです。この場合、結婚式費用は、不倫によって新たに発生した損害というより、結婚時点で夫婦や親族が選択して支出した費用と見る余地があります。

そのため、相手から「不倫したのだから結婚式費用も返して」と言われても、まずは、結婚式費用と不倫との間にどのような関係があるのかを確認します。特に、結婚式費用の総額をそのまま請求されている場合や、ご祝儀を差し引かずに請求されている場合には、金額の根拠を確認する必要があります。

ポイント

短期婚だからといって、結婚式費用を当然に返すという単純なルールがあるわけではありません。問題になるのは、不倫の開始時期、結婚式との関係、費用の負担者、相手の実際の損害、請求額の計算方法です。

結婚前・婚約中から不貞があった場合は別に考える

注意が必要なのは、結婚後に初めて不倫が始まった場合ではなく、婚約中や結婚前から不倫関係が続いていた場合です。相手がその事実を知っていれば、婚約を続けなかった、結婚式を挙げなかった、新生活準備をしなかったといえる場合には、結婚式費用や新生活費用が損害として問題になる余地があります。

実際に、佐賀地裁平成25年2月14日判決では、婚約中から婚姻成立後まで不貞関係が続いていた事案で、新婚生活のための費用や結婚式費用、慰謝料が損害として問題になりました。ただし、この事案は、不倫をされた元配偶者が、不倫をした元配偶者に請求した事案であり、不倫相手に結婚式費用の支払義務が当然に認められた事案ではありません。

このような例外論点を詳しく確認したい場合は、結婚前・婚約中の不貞で結婚式費用が問題になるケースも参考になります。本記事では、請求された側がまず確認すべき反論軸を中心に整理します。


請求額を分解する

結婚式費用やご祝儀まで請求されたときに、最初に行うべきことは、請求書の金額を分解することです。請求書には、慰謝料、結婚式費用、ご祝儀、結婚祝い、新生活費用、調査費用、弁護士費用などがまとめて記載されることがあります。

しかし、費目ごとに、請求できる根拠、必要な証拠、反論の方向性は異なります。総額だけを見て「高すぎる」「払えない」と返答するより、どの費目にいくらが載っているのかを整理した方が、交渉でも反論しやすくなります。

請求されやすい費目 確認すべきポイント 反論の方向性
不倫慰謝料 不倫の内容、婚姻期間、離婚の有無、証拠、相手方の精神的苦痛 慰謝料相場、増減要素、証拠の強さを確認する
結婚式・披露宴費用 契約者、支払者、実際の自己負担額、ご祝儀や親族援助の有無 総額ではなく純負担額を確認し、因果関係を争う
ご祝儀・結婚祝い 誰に贈られたものか、口座に残っているか、式費用や生活費に使われたか 返還義務ではなく、残存財産や清算の問題として整理する
親族からの援助 誰への贈与か、返還約束があったか、使途指定があったか 相手本人の損害といえるか、親族が請求できるのかを確認する
ブライダルローン・残債 名義人、借入目的、返済状況、夫婦間の負担合意 名義や合意を確認し、当然に半額負担とはいえない点を整理する

総額ではなく純負担額を見る

結婚式費用の請求では、式場に支払った総額だけが記載されることがあります。しかし、結婚式では、ご祝儀、親族からの援助、相手方自身の負担、すでに清算済みの金額などが存在することが少なくありません。

たとえば、結婚式費用の総額が300万円であっても、ご祝儀が200万円あり、親族からの援助や相手方の負担分がある場合、相手が実際に負担した損害は総額とは異なります。請求された側としては、「式費用総額」ではなく「相手の実際の純負担額」を確認する必要があります。

  • ご祝儀:結婚式費用に充てられたのか、口座に残っているのかを確認します。
  • 親族援助:誰への贈与か、返還約束があったかを確認します。
  • 相手方の負担分:相手が実際にいくら支払ったかを領収書や送金履歴で確認します。
  • 既払金・清算済み金額:すでに支払った金額や、離婚協議で清算済みの金額を差し引きます。

ご祝儀返還と結婚式費用請求の二重取りに注意

結婚式費用の請求で特に注意すべきなのは、結婚式費用とご祝儀が二重に請求されているケースです。

たとえば、相手が「結婚式費用の半額を払ってほしい」と請求しながら、同時に「ご祝儀も返してほしい」と請求している場合、結婚式費用の自己負担額をどのように計算しているのかを確認する必要があります。ご祝儀が結婚式費用に充てられているなら、その分を差し引かずに結婚式費用を請求することは、実質的に過大な請求になり得ます。

注意

「結婚式費用の半額」と「ご祝儀の返還」を同時に請求されている場合は、請求額の計算が二重取りになっていないかを必ず確認してください。感情的に一部を認める前に、明細、領収書、ご祝儀の使途、夫婦間の清算状況を整理することが重要です。

夫婦間の清算と不倫慰謝料を混ぜない

結婚式費用やご祝儀は、離婚条件、財産分与、夫婦間の費用負担、親族からの援助の扱いと重なります。そのため、不倫慰謝料の話し合いの中で、離婚条件全体の清算が混ざってしまうことがあります。

請求された側としては、慰謝料の話と、夫婦間の財産的な清算の話を分けることが重要です。結婚式費用やご祝儀全体の扱いを中立的に確認したい場合は、不倫で離婚した場合の結婚式費用・ご祝儀の扱いも参考になります。


不倫をした配偶者が結婚式費用を請求されたときの反論軸

不倫をした配偶者が、配偶者から結婚式費用やご祝儀まで請求された場合、単に「払う」「払わない」と答えるのではなく、反論軸ごとに整理することが大切です。

特に、新婚・短期婚では、相手の怒りが強く、請求書の金額も大きくなりやすい傾向があります。もっとも、請求が感情的に理解できることと、法律上その金額をそのまま支払う義務があることは別です。

以下の観点を順に確認すると、どこを争うべきか、どこを交渉材料にすべきかが見えやすくなります。

不倫の開始時期を確認する

最初に確認すべきなのは、不倫がいつ始まったのかです。結婚式後に不倫が始まったのか、結婚前から関係があったのか、婚約中から継続していたのかによって、結婚式費用との関係は大きく変わります。

結婚後しばらくしてから不倫が始まった場合、結婚式費用は不倫前に支出された費用です。そのため、結婚式費用が不倫によって発生した損害といえるのかが争点になります。

これに対し、婚約中や結婚前から不倫関係があり、その事実を隠したまま結婚式を行った場合には、相手から「知っていれば結婚式をしなかった」と主張されやすくなります。この場合でも当然に全額負担とは限りませんが、通常の結婚後不貞より慎重な検討が必要です。

誰が支払った費用かを確認する

結婚式費用を請求された場合、誰が式場と契約したのか、誰の口座から支払ったのか、親族が援助したのか、夫婦間で折半の合意があったのかを確認します。

相手が「自分が支払った」と主張していても、実際には夫婦の共有口座から支払っていたり、ご祝儀で相当部分をまかなっていたり、親族からの援助で支払っていたりすることがあります。請求額に対しては、領収書、見積書、振込履歴、クレジットカード明細、ご祝儀一覧、親族援助の記録などを確認する必要があります。

負担者が明確でない場合や、夫婦間で明確な折半合意がなかった場合には、「相手が請求している金額を当然に支払う」という結論にはなりません。

慰謝料との重複を確認する

不倫慰謝料は、不倫によって受けた精神的苦痛を金銭で評価するものです。結婚式費用やご祝儀を上乗せして請求される場合には、慰謝料本体の中で考慮される事情と、別費目として請求されている金額が重なっていないかを確認します。

たとえば、相手が「結婚してすぐに不倫されたこと」を理由に高額な慰謝料を請求し、さらに同じ事情を理由に結婚式費用の全額を請求している場合、同じ不満や損害を複数の費目で重ねて請求していないかが問題になります。

慰謝料の減額交渉全体については、不倫慰謝料を減額するための交渉手順も参考になります。結婚式費用やご祝儀の請求がある場合も、慰謝料本体と別費目を分けて交渉することが重要です。

返答前に認める範囲を決めつけない

請求書や通知書を受け取った直後は、相手への申し訳なさや早く終わらせたい気持ちから、「結婚式費用の一部なら払う」「ご祝儀は返す」などと返答してしまうことがあります。

しかし、一度支払義務を認めるような返答をすると、その後の交渉で撤回しにくくなることがあります。特に、示談書案に結婚式費用やご祝儀の返還条項が入っている場合は、署名する前に、費目、金額、根拠、清算済みかどうかを確認してください。

  • 不倫の開始時期:結婚後か、結婚前・婚約中からかを整理します。
  • 費用の支払者:契約者、支払口座、親族援助、夫婦間の合意を確認します。
  • 純負担額:ご祝儀、援助、既払金、相手方負担分を差し引きます。
  • 慰謝料との重複:同じ事情が慰謝料と別費目で二重に評価されていないかを確認します。
  • 示談書の文言:結婚式費用・ご祝儀を支払う条項が入っていないかを確認します。

このように、結婚式費用やご祝儀の請求は、慰謝料本体とは別に、費目ごとの根拠と金額を確認していく必要があります。次に、ご祝儀や結婚祝いそのものを返すよう求められた場合の考え方を整理します。


ご祝儀・結婚祝いを返すよう請求された場合

不倫を理由に新婚・短期婚で離婚する場合、結婚式費用とあわせて「ご祝儀を返してほしい」「結婚祝いを返してほしい」と請求されることがあります。

しかし、ご祝儀や結婚祝いは、相手方があなたに貸したお金ではありません。多くの場合、親族や友人が結婚を祝う趣旨で夫婦に渡したものであり、離婚したから当然に全額を返すという単純な話にはなりません。

請求された側としては、まず、ご祝儀や結婚祝いが誰に贈られたものか、現在も残っているのか、結婚式費用や新生活費に使われたのかを確認します。返還義務の問題なのか、離婚時の清算や財産分与の問題なのかを分けることが重要です。

請求内容 確認すべきこと 考え方
ご祝儀の返還 ご祝儀が残っているか、式費用や生活費に使われたか 当然返還ではなく、残存財産や清算の問題として検討する
結婚祝いの返還 誰への贈与か、使途指定があったか、現物が残っているか 贈与の趣旨や残存性を確認する
親族からの援助 夫婦への援助か、片方の親から子への贈与か、返還約束があるか 相手本人の損害といえるかを確認する
ご祝儀を差し引かない結婚式費用請求 式費用にご祝儀が充てられているか 二重取りや過大請求になっていないかを確認する

ご祝儀が残っている場合

ご祝儀が夫婦の口座や現金として残っている場合は、離婚時の財産分与や夫婦間の清算の中で問題になることがあります。この場合でも、「ご祝儀をもらったから必ず相手に全額返す」というより、誰が管理している財産なのか、夫婦共有の財産といえるのか、既に別の費用に充てられていないかを確認します。

たとえば、結婚式後にご祝儀を夫婦共有口座に入れ、そのまま残っている場合には、離婚条件の話し合いの中で清算対象になる余地があります。一方で、相手が「ご祝儀は自分の親族からのものだから全部返してほしい」と主張する場合には、そのご祝儀が夫婦への祝意として渡されたのか、特定の親族から片方だけに贈られたものなのかを確認する必要があります。

離婚条件全体との関係が強い場合は、慰謝料だけでなく、財産分与、離婚条件、清算条項をあわせて検討する必要があります。離婚と慰謝料請求の全体像は、慰謝料請求と離婚の進め方も参考になります。

ご祝儀が使われている場合

ご祝儀がすでに結婚式費用、新婚生活費、家具家電、生活費などに使われている場合、あとから当然に「ご祝儀を返せ」といえるわけではありません。

特に、結婚式費用の支払いにご祝儀を充てていた場合には、ご祝儀はすでに結婚式費用の自己負担を減らすために使われています。その状態で、相手が結婚式費用の総額や半額を請求し、さらにご祝儀の返還まで求めているなら、請求額の計算方法を慎重に確認する必要があります。

ご祝儀の確認ポイント

ご祝儀については、「誰からいくら受け取ったか」だけでなく、「どの口座に入れたか」「何に使ったか」「残っているか」「結婚式費用の請求額から差し引かれているか」を確認しましょう。

結婚祝い・親の援助を請求された場合

結婚祝い、親からの援助、新生活準備のための贈与も、請求書にまとめて書かれることがあります。しかし、これらも一律に返還義務があるわけではありません。

親からの援助は、夫婦への援助なのか、親から自分の子への贈与なのか、返還を前提にした立替なのかによって扱いが変わります。また、相手本人ではなく相手の親が負担した費用について、相手本人が当然に自分の損害として請求できるかも別途検討が必要です。

  • 贈与の相手:夫婦への贈与か、片方への贈与かを確認します。
  • 返還約束:返す約束があった援助なのか、祝い金なのかを確認します。
  • 残存性:現金や物が残っているのか、すでに使われたのかを確認します。
  • 請求者:配偶者本人の請求なのか、親族の請求なのかを確認します。

結婚祝い・親の援助は、感情的には「返してほしい」となりやすい費目です。しかし、支払う義務を認める前に、贈与の趣旨、使途、残っている財産、返還約束の有無を分けて確認してください。


不倫相手にまで結婚式費用・ご祝儀を請求された場合

本記事では主に、不倫をした配偶者が、不倫をされた配偶者から結婚式費用やご祝儀まで請求された場合を中心に説明しています。

もっとも、不倫相手に対しても、不倫慰謝料だけでなく、結婚式費用やご祝儀まで請求されることがあります。この場合は、通常の慰謝料請求と同じように考えるのではなく、かなり例外的な上乗せ請求として、根拠を慎重に確認する必要があります。

不倫相手は結婚式やご祝儀の当事者ではないのが通常

不倫相手は、通常、結婚式場との契約者ではありません。式場に費用を支払った人でもなく、ご祝儀を受け取った人でもありません。結婚式費用やご祝儀は、夫婦や婚約者、双方の親族の生活関係の中で発生する費用です。

そのため、不倫相手に対して結婚式費用やご祝儀まで請求する場合には、不倫とその費用との間にどのような関係があるのか、不倫相手にその費用まで負担させるだけの根拠があるのかが問題になります。

不倫相手として請求を受けた場合は、まず、慰謝料本体の請求なのか、結婚式費用などの別費目が上乗せされているのかを分けてください。不倫相手間でのお金やプレゼントの返還問題は、不倫相手間のお金・プレゼントの返還問題とは別に整理する必要があります。

不倫相手が確認すべき反論軸

不倫相手に結婚式費用やご祝儀まで請求された場合は、次の観点を確認します。

  • 当事者性:結婚式契約やご祝儀の受領に関与していないことを確認します。
  • 因果関係:その費用が不倫によって新たに発生した損害といえるのかを確認します。
  • 予見可能性:不倫相手が結婚式費用やご祝儀の損害まで予測できた事情があるかを確認します。
  • 請求額の計算:総額請求、ご祝儀控除なし、親族援助込みになっていないかを確認します。
  • 慰謝料との重複:同じ事情が慰謝料と別費目で重複していないかを確認します。
注意

不倫相手として請求を受けた場合も、相手への謝罪や解決を急ぐ気持ちだけで、結婚式費用やご祝儀の支払義務まで認める返答は避けましょう。慰謝料本体と別費目を分けて確認することが重要です。


例外的に結婚式費用が損害になる可能性があるケース

通常の結婚後不貞では、結婚式費用やご祝儀を当然に返還する義務があるとはいえません。もっとも、例外的に、結婚式費用や新生活費用が損害として問題になりやすい場面があります。

典型的には、婚約中や結婚前から不倫関係があり、その事実を隠したまま婚約、結婚式、新生活準備が進んだ場合です。相手がその事実を知っていれば、婚約を続けなかった、結婚式を挙げなかった、新生活準備をしなかったといえる場合には、結婚式費用や新生活費用が問題になる余地があります。

佐賀地裁平成25年2月14日判決の位置づけ

佐賀地裁平成25年2月14日判決は、この例外を考えるうえで参考になる裁判例です。この事案では、婚約中から婚姻成立後まで不貞関係が継続し、婚姻後まもなく離婚に至ったことから、新婚生活のための費用、結婚式費用、慰謝料などが損害として問題になりました。

ここで重要なのは、この裁判例が、不倫相手に対して結婚式費用の支払いを当然に認めた事案ではないという点です。請求関係としては、不倫をされた元配偶者が、不倫をした元配偶者に対して請求した事案として理解する必要があります。

したがって、この裁判例があるからといって、「不倫をしたら常に結婚式費用も返す」「不倫相手にも結婚式費用を請求できる」と一般化することはできません。むしろ、通常の結婚後不貞とは異なり、婚約中・結婚前からの不貞隠しがあるかどうかを確認するための例外事例として位置づけるべきです。

婚約中や結婚前からの不貞と結婚式費用の関係を詳しく確認したい場合は、結婚前・婚約中の不貞で結婚式費用が問題になるケースも参考になります。

例外に当たるかを確認するポイント

相手から「結婚前から不倫していたのだから結婚式費用も返して」と請求された場合でも、すぐに全額を認める必要はありません。次の事情を確認し、通常の結婚後不貞なのか、例外的に結婚式費用まで問題になり得るケースなのかを見極めます。

確認項目 見るべき事情 反論・交渉での意味
婚約成立時期 いつ婚約したか、結婚式準備がいつ始まったか 支出と不倫の時期を比較する
不倫の開始時期 婚約前、婚約中、結婚後のどの時点か 結婚式費用との関係の近さを判断する
発覚時期 相手がいつ知ったか、知っていれば挙式しなかったといえるか 因果関係を確認する
費用の内容 式費用、新生活費、家具家電、キャンセル料など 必要性や転用可能性を確認する
控除すべき金額 ご祝儀、結納金、親族援助、既払金 純負担額を算定する

特に、結婚式費用や新生活費用が問題になる場合でも、請求できるとしても総額そのままではなく、実際の負担額や控除すべき金額を考慮する必要があります。請求書に総額だけが書かれている場合は、明細と根拠資料を確認しましょう。

婚約破棄・結納金・婚約指輪の問題とは分ける

結婚式費用やご祝儀の問題は、婚約破棄、結納金、婚約指輪、結婚式キャンセル料の問題と重なることがあります。もっとも、これらは、婚姻前に破談になった場合の費用負担や金品返還の問題であり、新婚・短期婚で不倫を理由に離婚した場合の慰謝料請求とは、主たる場面が異なります。

請求書に結納金や婚約指輪まで含まれている場合は、結婚式費用やご祝儀と同じ感覚でまとめて処理せず、費目ごとに根拠を確認してください。本記事では、あくまで不倫慰謝料と結婚式費用・ご祝儀が同時に請求された場面を中心に整理しています。


請求書・通知書が届いたときの初動

結婚式費用やご祝儀まで含まれた請求書が届いた場合、最初にすべきことは、感情的に反論することでも、すぐに支払うことでもありません。まず、請求の内訳と証拠を整理し、どの費目を争うのか、どの費目を交渉対象にするのかを分けることです。

特に、新婚・短期婚では、相手の怒りが強く、請求額も大きくなりやすい一方で、実際にはご祝儀や親族援助を差し引いていなかったり、慰謝料と別費目が重複していたりすることがあります。

返答前に整理する資料

資料 確認する内容 目的
請求書・通知書 慰謝料、結婚式費用、ご祝儀などの内訳 請求費目を分解する
式場の見積書・請求書・領収書 総額、支払者、支払日、キャンセル料の有無 実際の費用を確認する
ご祝儀一覧・結婚祝いの記録 金額、贈与者、管理口座、使途 控除や残存性を確認する
預貯金通帳・送金履歴 誰の口座から支払ったか、清算済みか 負担者を確認する
親族援助の記録 誰への援助か、返還約束があったか 相手本人の損害かを確認する
LINE・メール・時系列 婚約、結婚式、不倫開始、発覚、離婚協議の時期 因果関係と例外該当性を確認する
示談書案 結婚式費用・ご祝儀の支払条項、清算条項 将来の追加請求や支払義務を確認する

弁護士に相談する場合も、これらの資料があると、慰謝料本体と結婚式費用・ご祝儀を分けて検討しやすくなります。相談前に整理しておくべき事項は、慰謝料減額を弁護士に相談する前の準備も参考になります。

示談書に結婚式費用やご祝儀が入っていないか確認する

話し合いが進むと、慰謝料の示談書に、結婚式費用やご祝儀の支払いが含まれることがあります。たとえば、「解決金」「慰謝料その他一切の金銭」「結婚式費用相当額を含む」などの文言が入っていると、後からその趣旨を争いにくくなることがあります。

示談書に署名する前には、支払う金額が慰謝料なのか、結婚式費用なのか、ご祝儀の清算なのかを確認してください。また、支払後に追加請求されないよう、清算条項の範囲も確認する必要があります。

署名前の注意

「早く終わらせたい」という気持ちだけで、結婚式費用やご祝儀の返還条項を入れた示談書に署名しないようにしましょう。費目、金額、支払期限、清算範囲を確認してから判断することが大切です。

支払うとしても費目と金額を明確にする

交渉の結果、一定額を支払って解決すること自体はあり得ます。ただし、その場合でも、何の費目として支払うのかを曖昧にしないことが重要です。

たとえば、慰謝料として支払うのか、結婚式費用の一部として支払うのか、離婚条件全体の解決金として支払うのかによって、後から追加請求を受けたときの対応が変わることがあります。金額だけでなく、支払名目と清算範囲を確認しましょう。


よくある質問

新婚で不倫したら結婚式費用を必ず返さなければなりませんか?

必ず返さなければならないわけではありません。新婚・短期婚では結婚式費用が問題になりやすいですが、通常の結婚後不貞では、結婚式費用が当然に返還対象になるとは限りません。不倫の開始時期、結婚式との関係、費用の負担者、純負担額を確認する必要があります。

ご祝儀は離婚時に全額返す必要がありますか?

ご祝儀も、離婚したから当然に全額返すものではありません。ご祝儀が残っている場合は離婚時の財産分与や清算の問題になり得ますが、すでに式費用や生活費に使われている場合には、あとから当然に返還するという整理にはなりにくいです。

結婚式費用からご祝儀を差し引くことはできますか?

請求額を検討する際には、ご祝儀が結婚式費用に充てられていないかを確認する必要があります。式費用総額だけを見て判断するのではなく、ご祝儀、親族援助、既払金、相手方負担分を差し引いた純負担額を確認しましょう。

親が出した結婚式費用も請求されますか?

親が出した費用については、誰への贈与だったのか、返還約束があったのか、相手本人の損害といえるのかを確認する必要があります。相手の親が負担したというだけで、配偶者本人が当然に全額を請求できるとは限りません。

ブライダルローンの残債を半分負担する必要はありますか?

ローン名義、借入目的、夫婦間の負担合意、実際の使途によって変わります。相手名義のローンだから当然に半額負担しない、又は結婚式に使ったから当然に半額負担する、という単純な判断はできません。契約名義と負担合意を確認してください。

結婚前から不倫していた場合は結婚式費用も払う必要がありますか?

結婚前や婚約中から不倫関係があり、その事実を隠したまま結婚式や新生活準備が進んだ場合には、結婚式費用や新生活費用が損害として問題になる余地があります。ただし、この場合でも、すぐに全額を認めるのではなく、費用の内容、控除すべき金額、相手の実際の損害を確認する必要があります。

不倫相手にも結婚式費用やご祝儀が請求されますか?

不倫相手に結婚式費用やご祝儀まで請求される場面は、かなり例外的です。不倫相手は通常、結婚式契約やご祝儀受領の当事者ではないため、慰謝料本体と別費目を分け、因果関係や当事者性を確認する必要があります。

結婚式費用を一部支払えば慰謝料は減りますか?

一部支払いが交渉材料になることはありますが、必ず慰謝料が減るとは限りません。むしろ、支払名目を曖昧にすると、慰謝料とは別に結婚式費用も認めたと扱われるおそれがあります。支払う場合は、慰謝料、解決金、結婚式費用の一部など、名目と清算範囲を明確にしましょう。


まとめ

新婚・結婚後まもない時期に不倫を理由として離婚する場合、不倫慰謝料だけでなく、結婚式費用、ご祝儀、結婚祝い、親族援助などまで請求されることがあります。

しかし、これらは慰謝料本体とは性質が異なります。特に結婚式費用やご祝儀は、多くの場合、不倫相手への請求というより、不倫をされた配偶者と不倫をした配偶者との間で問題になりやすい費用です。不倫相手にまで請求される場合は、かなり例外的な上乗せ請求として慎重に確認する必要があります。

  • 結婚式費用・ご祝儀は慰謝料本体と分けて考える
  • 新婚・短期婚でも当然に全額返還ではない
  • 婚約中・結婚前からの不貞隠しは例外として注意する
  • ご祝儀や親族援助を差し引いた純負担額を確認する
  • 示談書に署名する前に費目と清算範囲を確認する

請求書に大きな金額が書かれていると、相手への申し訳なさから、すぐに一部を認めたくなることがあります。しかし、結婚式費用やご祝儀の請求は、費目ごとの根拠、証拠、支払者、使途、控除額を確認しないと、過大請求や二重取りに気づきにくいことがあります。

坂尾陽弁護士

結婚式費用やご祝儀まで請求された場合は、慰謝料とは別に、費目ごとの根拠を確認することが出発点です。返答や示談書への署名前に、請求額の内訳と証拠を整理しておきましょう。

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