不倫慰謝料を請求されたものの、収入や他の借金の状況から一括では支払えないことがあります。このような場合、「自己破産をすれば不倫慰謝料も払わなくてよくなるのか」と不安になる方は少なくありません。
結論からいうと、不倫慰謝料は自己破産で免責される可能性があります。ただし、すべての慰謝料が当然に免責されるわけではありません。破産法上の「非免責債権」に当たる場合や、破産手続での対応を誤った場合には、免責許可決定が出ても支払責任が残ることがあります。
「慰謝料 自己破産」と調べている方は、まず次の点を押さえてください。
- 自己破産で免責許可決定が確定すると、原則として破産債権について責任を免れます。
- ただし、非免責債権に当たる慰謝料は、自己破産後も支払責任が残ります。
- 不倫慰謝料では、破産法253条1項2号の「悪意で加えた不法行為」に当たるかが問題になりやすいです。
- 「既婚者だと知っていた」だけで、直ちに非免責債権になるとは限りません。
- 判決・和解・差押えの段階でも、免責の効果や債権者名簿の記載が問題になることがあります。
この記事では、不倫慰謝料が自己破産で免責される可能性、非免責債権になる場合、裁判例上の判断傾向、自己破産を考える前に確認すべきことを、請求された側の視点から整理します。
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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自己破産をすると慰謝料はどう扱われるのか
自己破産は、借金や支払義務を抱えた人が、裁判所の手続を通じて経済的な再スタートを図る制度です。破産手続開始決定を受けるだけで当然に支払義務がなくなるわけではなく、重要なのは、その後に免責許可決定を受け、これが確定するかどうかです。
免責許可決定が確定すると、破産者は、原則として破産債権について責任を免れます。破産債権とは、大まかにいえば、破産手続開始前の原因に基づいて発生した財産上の請求権です。不倫慰謝料も、不貞行為という破産前の原因に基づく損害賠償請求権であれば、破産債権として扱われることがあります。
もっとも、自己破産は「不倫慰謝料だけを選んで消す制度」ではありません。住宅ローン、カードローン、消費者金融、税金、養育費、損害賠償など、債務全体の中で手続が進みます。そのため、不倫慰謝料を支払えないという理由だけで自己破産を選ぶべきかは、他の借金の額、収入、財産、家族関係、今後の生活再建まで含めて検討する必要があります。
また、免責許可決定が出ても、法律上、免責の効果が及ばない債権があります。これが「非免責債権」です。破産法253条1項は、免責許可決定が確定しても責任を免れない債権を定めています。不倫慰謝料で問題になるのは、主に同項2号の「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」です。
破産法の条文を確認する場合は、破産法の253条を確認すると、非免責債権の種類を確認できます。ただし、条文を読んだだけでは、自分の不倫慰謝料が免責されるかどうかまでは判断できません。「不法行為だからすべて非免責」とも、「不倫慰謝料だからすべて免責」ともいえないためです。
したがって、不倫慰謝料と自己破産を考えるときは、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
- そもそも不倫慰謝料の支払義務があるか
- 請求額が相場や事案に照らして妥当か
- 慰謝料請求権が破産債権として扱われるか
- 非免責債権に当たる事情があるか
- 債権者名簿に適切に記載する必要があるか
このうち、自己破産で免責されるかどうかの中心は、非免責債権に当たるかという点です。
不倫慰謝料で問題になるのは「非免責債権」に当たるか
非免責債権とは、免責許可決定が確定しても、破産者が支払責任を免れない債権です。税金、養育費、婚姻費用、一定の損害賠償請求権などが典型例です。不倫慰謝料では、特に破産法253条1項2号と3号が問題になります。
破産法253条1項2号は、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」を非免責債権としています。不倫慰謝料は、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権として請求されるのが通常です。そのため、不倫慰謝料がこの2号に当たるかが争点になります。
一方、破産法253条1項3号は、「故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」を非免責債権としています。不倫により相手配偶者が大きな精神的苦痛を受けることはありますが、不貞行為に基づく慰謝料請求権が、当然に「人の生命又は身体を害する不法行為」と同じ扱いになるわけではありません。
実際に、東京地裁平成21年6月3日判決は、不貞行為に基づく損害賠償請求権について、破産法253条1項3号の「人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」と同視すべきものとまではいえないと判断し、破産した不倫相手について免責の効果を認めました。
非免責債権とは、免責許可決定が確定しても支払責任が残る債権です。不倫慰謝料は不法行為に基づく慰謝料ですが、それだけで当然に非免責債権になるわけではありません。
そのため、不倫慰謝料で中心になるのは、「悪意で加えた不法行為」に当たるかどうかです。ここでいう「悪意」は、日常用語の悪意とは少し違います。単に「悪いことをした」「既婚者だと知っていた」というだけで足りるのか、それともさらに強い害意が必要なのかが問題になります。
この点を誤解すると、結論を大きく間違えます。不倫をしたこと自体は慰謝料責任を発生させる重要な事情です。しかし、慰謝料責任があることと、自己破産をしても免責されないことは、別の問題として整理する必要があります。
「悪意」は既婚者だと知っていたという意味ではない
不倫慰謝料と自己破産で最も誤解されやすいのが、破産法253条1項2号の「悪意」です。一般的な感覚では、「既婚者だと知って不倫したのだから悪意がある」と考えがちです。しかし、裁判例では、この「悪意」を単なる故意ではなく、故意を超えた積極的な害意と解する傾向があります。
不倫慰謝料の場面でいう故意とは、たとえば、相手が既婚者であることを知りながら性的関係を持ち、相手配偶者の婚姻共同生活の平和を侵害することを認識していたということです。このような故意があれば、不法行為責任が認められる方向に働きます。
しかし、非免責債権になるためには、単なる不法行為の故意を超えて、相手配偶者を害する積極的な加害意思、つまり害意が必要とされることがあります。たとえば、相手配偶者を苦しめる目的で関係を続けた、家庭を壊すこと自体を狙って不当に干渉した、直接相手配偶者に向けた加害行為をしたといえるかが問題になります。
東京地裁平成28年3月11日判決は、破産法253条1項2号の「悪意」について、故意を超えた積極的な害意をいうと整理しました。そのうえで、不貞行為の違法性が低いとはいえない事情があっても、不倫相手が一方的に相手配偶者の家庭の平穏を侵害する意図まであったとは認定できないとして、不貞慰謝料請求権が非免責債権に当たらないと判断しています。
また、東京地裁令和3年12月2日判決も、既婚者と不貞行為に及んだ者が、相手配偶者の婚姻共同生活の平和を侵害するという認識を持っていたとしても、それだけでは故意が認められるにとどまると整理しています。そのうえで、病気、同棲、通知書への対応などの事情を検討しても、積極的な害意までは認められないとして、免責の効果を認めました。
「既婚者と知っていた=必ず非免責」ではありません。ただし、「既婚者と知っていたが免責される可能性がある=慰謝料を払わなくてよい」という意味でもありません。支払義務の有無と、自己破産後に免責されるかは分けて考える必要があります。
つまり、不倫慰謝料の自己破産では、次のように二段階で考える必要があります。
- 慰謝料責任の問題:不貞行為があり、相手配偶者の婚姻共同生活の平和を侵害したといえるか。
- 非免責債権の問題:慰謝料責任があるとしても、故意を超えた積極的な害意があったといえるか。
この区別が重要です。不倫慰謝料を請求された人にとっては、「自己破産で免責される可能性があるか」を考える前に、そもそも請求額が妥当か、減額できる事情がないか、分割払いで解決できないかも併せて確認する必要があります。
裁判例から見る|免責されるケースと注意すべきケース
不倫慰謝料が自己破産で免責されるかどうかは、事案ごとの個別判断です。もっとも、裁判例を比較すると、どのような点が判断の分かれ目になりやすいかが見えてきます。
ここでは、通常の不倫相手への慰謝料、長期不貞の事案、判決後に免責が問題になった事案、配偶者本人への慰謝料が問題になった事案を分けて整理します。
通常の不倫相手への慰謝料では、免責が認められる可能性がある
東京地裁平成28年3月11日判決は、不倫相手に対する慰謝料請求権が非免責債権に当たるかが問題になった代表的な裁判例です。この事案では、不貞行為があり、不貞関係が継続し、相手配偶者が妊娠していた時期も含まれていました。また、破産者は破産手続で慰謝料請求権を破産債権として挙げ、免責許可決定を受けていました。
裁判所は、不貞行為の違法性が低いとはいえないとしつつも、破産法253条1項2号の「悪意」は故意を超えた積極的な害意を意味するとしました。そして、不倫相手が一方的に相手配偶者の家庭の平穏を侵害する意図があったとまでは認定できないとして、非免責債権に当たらないと判断しました。
この裁判例から分かるのは、不倫慰謝料の責任が重いと感じられる事情があっても、それだけで当然に非免責債権になるわけではないという点です。裁判所は、不貞行為の違法性と、破産法上の「悪意」を分けて検討しています。
長期不貞や結婚式の事情があっても、直ちに非免責とは限らない
東京地裁平成15年7月31日判決は、旧破産法の事案ですが、「悪意」とは積極的な害意をいうとして、不貞行為を理由とする損害賠償請求権が非免責債権に当たらないと判断しました。
この事案では、不貞関係が少なくとも約5年に及び、夫の離婚を確認しないまま結婚式を挙げたという事情もありました。被害配偶者から見ると、非常に悪質に感じられる事情です。
それでも裁判所は、原告に直接向けられた加害行為はなく、被告に原告に対する積極的な害意があったとは認められないとして、非免責債権該当性を否定しました。つまり、長期不貞や結婚式のような事情があっても、常に非免責になるわけではありません。
精神的苦痛が大きくても、生命・身体侵害と同じ扱いになるとは限らない
不倫による精神的苦痛は深刻です。相手配偶者が体調を崩したり、婚姻関係が悪化したり、離婚に至ったりすることもあります。そのため、「精神的苦痛が大きいなら、生命や身体を害する不法行為と同じように免責されないのではないか」と考える方もいます。
しかし、東京地裁平成21年6月3日判決は、破産者のした不貞行為に基づく損害賠償請求権について、破産法253条1項3号の「人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」と同視すべきものとまではいえないと判断しています。
もちろん、暴力、脅迫、ストーカー行為、身体への直接の侵害など、不貞行為以外の加害行為が加わる場合は別の検討が必要です。しかし、通常の不貞行為に基づく慰謝料については、精神的苦痛があることだけで直ちに3号の非免責債権になるとは考えにくいといえます。
判決後や強制執行段階でも、免責の効果が問題になることがある
東京地裁令和3年12月2日判決では、不貞行為に基づく損害賠償請求について、すでに330万円の支払を命じる判決が存在していました。その後、破産者が免責許可決定を受けたため、判決に基づく強制執行を許すかどうかが問題になりました。
裁判所は、破産法253条1項2号の「悪意」は故意を超えた積極的な加害意思、すなわち害意を意味するとしたうえで、既婚者の配偶者の利益を侵害する認識だけでは故意にとどまると整理しました。そして、具体的事情を検討しても害意までは認められないとして、強制執行を許さない判断をしています。
この裁判例は、「判決があるから自己破産しても意味がない」と単純にはいえないことを示しています。ただし、判決や和解調書、公正証書がある場合は、債権者名簿への記載、強制執行の進行、非免責債権の主張など、別の注意点が増えます。
配偶者本人への慰謝料では、異なる判断がされることもある
ここまで見た裁判例は、主に「不倫相手が、相手配偶者から慰謝料請求を受ける」典型的な場面です。一方で、配偶者本人への慰謝料では、異なる判断がされることがあります。
東京地裁令和5年6月22日判決は、元妻である被告に対して、婚姻中の不貞行為に基づく損害賠償が請求された事案です。被告は破産手続で免責許可決定を受けていましたが、裁判所は、原告の貞操権を侵害することを知りながらあえて不貞行為に及んだとして、破産法253条1項2号の「悪意で加えた不法行為」に当たると判断しました。
この裁判例は、「不倫慰謝料は常に免責される」と断定できないことを示します。ただし、主読者である不倫相手が相手配偶者から請求される典型事案とは、当事者関係が異なります。不倫相手への請求か、配偶者本人への請求かによって、判断の枠組みや重視される事情が変わり得ます。
以上を踏まえると、不倫慰謝料の自己破産では、次のような比較が重要です。
- 通常の不倫相手への慰謝料:違法性があっても、積極的な害意まで認められず、免責される可能性があります。
- 長期不貞や結婚式などの事情:悪質に見える事情があっても、それだけで直ちに非免責とは限りません。
- 判決後・強制執行段階:債務名義があっても免責の効果が問題になることがありますが、手続上の注意点が増えます。
- 配偶者本人への慰謝料:不倫相手への慰謝料とは異なり、非免責と判断される裁判例もあります。
したがって、不倫慰謝料が自己破産で免責されるかは、「不倫をしたかどうか」だけでは決まりません。誰に対する請求なのか、どのような加害行為があったのか、相手配偶者に向けた積極的な害意があったといえるのか、判決や和解の有無、破産手続での記載状況などを総合して判断する必要があります。
判決・和解調書・公正証書がある場合でも自己破産できるのか
不倫慰謝料について、すでに判決が出ている場合、裁判上の和解が成立している場合、公正証書を作成している場合でも、自己破産の申立て自体が当然にできなくなるわけではありません。
ただし、判決や和解調書、公正証書がある段階では、単に「これから請求されるかもしれない」という段階よりも、相手が強制執行に進みやすい状況になっています。そのため、自己破産で免責されるかだけでなく、給与や預貯金の差押えをどう止めるか、債権者名簿に誰を記載すべきか、非免責債権だと主張された場合にどう対応するかを同時に確認する必要があります。
判決があるだけで免責されないわけではない
判決で不倫慰謝料の支払を命じられていると、「もう裁判所が支払えと判断したのだから、自己破産をしても意味がない」と考えてしまう方がいます。しかし、判決で支払義務が認められたことと、その請求権が破産手続で免責されるかどうかは、別の問題です。
東京地裁令和3年12月2日判決では、不貞行為に基づく損害賠償請求について、すでに330万円の支払を命じる判決が存在していました。その後、破産者が免責許可決定を受けたため、判決に基づく強制執行を許すかどうかが問題になりました。
裁判所は、破産法253条1項2号の「悪意」は故意を超えた積極的な加害意思、すなわち害意を意味するとしたうえで、具体的事情から害意までは認められないとして、判決に基づく強制執行を許さない判断をしました。
このように、判決がある場合でも、慰謝料請求権が非免責債権に当たらないと判断されれば、免責の効果が及ぶことがあります。もっとも、相手が非免責債権だと争ってくる可能性もあるため、判決後の対応は自己判断で進めるべきではありません。裁判で負けた後の差押えや対応の全体像は、不倫慰謝料裁判で負けた場合のリスクと対応でも整理しています。
和解調書や公正証書がある場合は強制執行との関係を確認する
裁判上の和解調書がある場合や、強制執行認諾文言付き公正証書を作成している場合、支払が滞ると、相手が給与や預貯金の差押えに進む可能性があります。通常の示談書よりも、強制執行へ進むまでの手続が早くなることがあります。
もっとも、和解調書や公正証書があるからといって、常に自己破産後も支払責任が残るわけではありません。重要なのは、その慰謝料請求権が破産債権として扱われるか、非免責債権に当たる事情があるか、破産手続で適切に債権者として記載されているかです。
示談書や和解条項の内容によっては、期限の利益喪失、遅延損害金、分割払いの不履行、清算条項なども問題になります。示談・和解の内容を確認したい場合は、不倫慰謝料の示談書・合意書の注意点も参考になります。
債権者名簿に慰謝料請求者を記載しないのは危険
自己破産では、債権者を一覧化して裁判所へ提出します。不倫慰謝料を請求されていることを知っているにもかかわらず、相手を債権者名簿に記載しないことは危険です。
破産法253条1項6号は、破産者が知っていながら債権者名簿に記載しなかった請求権について、一定の場合に免責の効果が及ばないと定めています。例外はありますが、「相手に知られたくない」「慰謝料だけは隠したい」という理由で記載しないと、後から免責されないと主張されるリスクがあります。
慰謝料請求者を債権者名簿に記載しないことは、免責との関係で重大なリスクになります。相手に知られたくない事情があっても、自己判断で外すのではなく、破産手続を依頼する弁護士に必ず事情を伝えてください。
訴状が届いている段階では、答弁書の提出期限や裁判期日も同時に問題になります。自己破産を検討している場合でも、訴訟を放置してよいわけではありません。訴状が届いた直後の対応は、不倫慰謝料の訴状が届いた直後にやるべきことで詳しく解説しています。
自己破産を考える前に、減額・分割で解決できないか確認する
不倫慰謝料を一括で支払えない場合でも、すぐに自己破産しか選択肢がないとは限りません。自己破産は、慰謝料だけでなく、他の借金、財産、職業、家族、今後の生活に広く影響する手続です。
特に、慰謝料以外の借金が少ない場合や、請求額が相場より高い場合、支払義務や金額に争いがある場合には、先に減額交渉や分割払いの提案を検討すべきことがあります。
不倫慰謝料の支払困難では、次の順番で整理すると、自己破産が本当に必要かを判断しやすくなります。
- 支払義務の確認:肉体関係、既婚者認識、婚姻関係の破綻、時効などに争いがないかを確認します。
- 請求額の確認:相場や裁判例に照らして、請求額が高すぎないかを確認します。
- 支払可能額の整理:収入、生活費、他の借金、毎月支払える上限を整理します。
- 減額・分割の提案:一括払いではなく、現実的に守れる条件で解決できないか交渉します。
- 債務整理の検討:他の借金も含めて返済が困難な場合に、任意整理、個人再生、自己破産などを検討します。
不倫慰謝料が払えない場合の減額・分割払いの具体的な進め方は、不倫慰謝料が払えないときの対処法で詳しく解説しています。また、請求額が高すぎると感じる場合は、不倫慰謝料を減額できる主な理由を確認すると、交渉の余地を整理しやすくなります。
一方で、「どうせ払えないから放置する」「自己破産すれば消えるはずだから連絡しない」という対応は避けるべきです。放置すると、訴訟、判決、差押えへ進むリスクが高まります。支払拒否や放置のリスクは、不倫慰謝料を払わない場合のリスクと法的な考え方も参考になります。
自己破産手続そのものは、不倫慰謝料だけで完結する問題ではありません。借金全体、免責不許可事由、財産、職業制限、同時廃止か管財事件かなど、破産手続固有の検討が必要です。自己破産の手続全般については、自己破産の無料相談サイト byアイシア法律事務所も参考にしてください。
よくある質問
不倫慰謝料は自己破産で必ず免責されますか。
必ず免責されるとはいえません。不倫慰謝料は自己破産で免責される可能性がありますが、非免責債権に当たる事情がある場合や、債権者名簿への記載を誤った場合には、免責許可決定後も支払責任が残ることがあります。
不倫慰謝料は非免責債権に当たりますか。
不倫慰謝料は不法行為に基づく損害賠償請求権ですが、それだけで当然に非免責債権になるわけではありません。特に問題になるのは、破産法253条1項2号の「悪意で加えた不法行為」に当たるかです。裁判例では、この「悪意」を単なる故意ではなく、故意を超えた積極的な害意と整理するものがあります。
判決後でも自己破産で支払わなくてよくなることはありますか。
あります。判決があることと、破産手続で免責されるかどうかは別問題です。もっとも、判決後は強制執行や請求異議、債権者名簿への記載など、手続上の問題が増えます。相手が非免責債権だと主張してくることもあるため、早めに専門家へ相談する必要性が高い場面です。
債権者名簿に相手を書かなかった場合はどうなりますか。
慰謝料請求者を知っているのに債権者名簿に記載しなかった場合、免責の効果が及ばないと主張されるリスクがあります。「相手に知られたくない」という理由で記載しない対応は危険です。破産手続を進める場合は、不倫慰謝料を請求されている事実や、すでに判決・和解・示談があるかを弁護士に正確に伝えてください。
自己破産したことは慰謝料請求者に知られますか。
慰謝料請求者を債権者として記載すれば、破産手続に関する通知が届くことがあります。また、破産手続は官報にも掲載されます。自己破産は、特定の債権者だけに知られないようにして進める制度ではありません。知られたくない事情がある場合でも、手続上必要な記載を省くことは避けるべきです。
慰謝料以外の借金が少なくても自己破産すべきですか。
慰謝料以外の借金が少ない場合、自己破産が最善とは限りません。請求額が高すぎる場合には減額交渉の余地がありますし、一括払いが難しいだけであれば分割払いで解決できることもあります。自己破産は生活全体に影響する手続なので、慰謝料だけを見て判断しないことが大切です。
請求された直後なら、自己破産より減額・分割を先に考えるべきですか。
多くの場合、まずは支払義務と請求額の妥当性を確認し、減額・分割払いで解決できないかを検討するのが現実的です。ただし、他の借金も多く、生活再建が難しい場合には、自己破産を含む債務整理を早めに検討した方がよいこともあります。重要なのは、請求を放置せず、選択肢を分けて整理することです。
まとめ|不倫慰謝料と自己破産は個別判断で整理する
不倫慰謝料を支払えないとき、自己破産で免責されるかどうかは重要な問題です。ただし、結論は「必ず消える」「必ず残る」のどちらかに単純化できません。
この記事の要点を整理すると、次のとおりです。
- 不倫慰謝料は自己破産で免責される可能性があります。
- ただし、非免責債権に当たる場合は支払責任が残ります。
- 「悪意」は、既婚者だと知っていたことだけを意味するものではありません。
- 判決・和解調書・公正証書がある場合でも、免責の効果が問題になることがあります。
- 自己破産の前に、減額・分割払いで解決できないかも確認すべきです。
不倫慰謝料と自己破産では、慰謝料の発生原因、請求者との関係、裁判例上の「悪意」の考え方、債権者名簿への記載、判決や強制執行の有無など、複数の要素を確認する必要があります。
支払えないからといって放置すると、訴訟や差押えに進むおそれがあります。一方で、自己破産を急ぐ前に、慰謝料の減額や分割払いで解決できる可能性もあります。請求額、証拠、支払可能額、他の借金の状況を整理し、どの選択肢が現実的かを早めに確認しましょう。
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