示談書や誓約書に「今後は二度と連絡しない」「会わない」といった 接触禁止条項 を入れるよう求められると、生活や仕事への影響が気になって不安になる方が多いと思います。
実は、接触禁止は「入れれば安心」「拒否すれば終わり」という単純な話ではなく、どこまで禁止するか/例外をどう設計するかで実効性もリスクも大きく変わります。また、相手に接触しない約束を入れて再発防止と安心を確保したい側にも、押さえるべき注意点があります。
この記事では、次の疑問に答えます。
- そもそも連絡禁止の約束は、法的にどんな意味がある?
- 連絡・面会の禁止は、どこまで決められる?
- 同じ職場など、避けられない接触があるときはどう書く?
- 禁止範囲や期間は、どう決めると揉めにくい?
- 合意書に入れる前に、最低限チェックすべき点は?
以下では、示談交渉の実務で問題になりやすいポイントを中心に、一般的な考え方を整理します(個別事情で結論が変わることがあります)。
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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接触禁止条項とは(まず結論と全体像)
接触禁止条項とは、当事者間の合意書(示談書・誓約書など)において、特定の相手に対して連絡や面会等をしないことを約束する条項です。
目的は主に、トラブルの再燃を防ぎ、相手方(とくに配偶者側など)の平穏を確保することにあります。
ポイントは、接触禁止条項が「法律で一律に決まる禁止」ではなく、当事者が合意した内容がルールになるという点です。
そのため、条項に書かれた範囲が広すぎたり、逆に曖昧すぎたりすると、次のような問題が起きがちです。
- 広すぎる:仕事や生活が成り立たず、現実に守れない(=違反が起きやすい)
- 曖昧すぎる:どこからが違反か分からず、解釈でもめる
- 例外がない:やむを得ない連絡まで「違反」扱いになりやすい
- 例外が広い:抜け道になり、結局安心につながらない
また、接触禁止条項は「入れれば必ず効く」ものでもありません。合意である以上、条項が不合理な場合は争いになり得ますし、違反したときにどうなるか(違約金・損害賠償など)も、条項設計と証拠の残り方によって現実の結果が変わります。
なお、接触禁止条項は、示談書や誓約書の一部として組み込まれることが多いです。
なお、不倫示談の進め方や書面全体の作り方や注意点(清算条項、支払条項、口外禁止、違約金など)までまとめて確認したい場合は、次の記事も参考になります。
接触禁止条項が使われる典型場面(示談・誓約の場面)
接触禁止条項が問題になりやすいのは、「関係を断つ」ことが再発防止として求められる場面です。典型は、次のような状況です。
- 交渉の中で「今後は関係を断つ」ことを条件に、合意をまとめたい
- 連絡が続くこと自体が精神的負担になるため、明確に線を引きたい
- 同じコミュニティ(職場・学校・取引先など)があり、ルールがないと不安
一方で、接触禁止条項は「相手の不安を減らす」ためのものですが、約束する側にとっては、生活上の制約にもなります。
そのため、実務では次のように整理して考えると判断しやすくなります。
- 目的:何を守るための禁止か(再発防止/安心の確保/トラブル回避 など)
- 手段:その目的に対して「この禁止範囲」が本当に必要か
- 運用:守れる設計か(守れないなら、違反リスクが高い)
接触禁止条項は、感情論で「強い文言にすれば安心」という方向に寄りやすいのですが、現実には 守れる設計=安心につながる設計 であることが多いです。
「接近禁止命令」など公的措置との違い(混同をほどく)
接触禁止条項は、あくまで **合意書に入れる約束(契約上の取り決め)**です。
これに対して、DVやストーカー等の文脈で語られる「接近禁止命令」や保護命令のようなものは、手続を踏んで発令される 公的な措置で、性質が異なります。
接触禁止条項は、当事者が署名した範囲で効く「契約」です。
一方で、裁判所などの命令は、手続・要件・効果が別物です。
合意条項としての接触禁止で大事なのは、「破ったらすぐ逮捕される」などの話ではなく、主に次のような形で問題になる点です。
- 違反したとして 違約金や損害賠償の請求がされる
- 「約束を破った」という事情が、後の交渉や紛争で 不利な評価になり得る
- そもそも、違反かどうか(例外に当たるか)で 解釈争いになる
つまり、接触禁止条項は「作った瞬間に安心」ではなく、守れるルールを作って、守れる運用に落とすことが重要です。
接触禁止条項を入れたい側が押さえるポイント
相手に「接触しない約束」を入れてもらいたい側(配偶者側など)は、まず「強い文言で縛る」よりも、実際に守られて安心につながる設計を意識するのが大切です。条項が広すぎると、相手が署名を拒否したり、守れずにトラブルが再燃したりしやすくなります。
入れたい側が押さえるポイントは、次のとおりです。
- 目的をはっきりさせる:再発防止/平穏の確保/職場での距離の置き方など
- 禁止対象を分解する:連絡(SNS含む)と面会(同席含む)を分けて設計する
- 抜け道を作りすぎない:例外(正当な理由)を入れるなら、範囲を限定する
- 守れる条件にする:職場など不可避な接点があるなら「必要最小限」の条件を付ける
- 違反時の扱いを整える:違約金を置く場合は、対象行為と金額のバランスが重要
結果として、相手が「守れないから拒否する」となりにくく、守られる可能性が上がります。
具体的な禁止範囲(どこまで)や職場が絡む場合の設計は、次で詳しく説明します。
接触禁止条項で「どこまで」禁止できる?(禁止範囲の決め方)
接触禁止条項で「どこまで」禁止できるかは、最終的には 当事者の合意内容で決まります。
ただし、どんな内容でも無条件に安全というわけではなく、次の2点は押さえておく必要があります。
1つ目は、禁止範囲が広いほど、守れずにトラブル化しやすいこと。
2つ目は、条項の趣旨(安心確保・関係遮断など)に対して不釣り合いに過度だと、争いになり得ることです。
そのため、範囲を決めるときは、いきなり「一切」から入るのではなく、禁止対象を分解して設計するのが基本です。
「連絡」「会う」「偶然の遭遇」「第三者経由」「SNS上の行為」など、何をどこまで禁じたいのかは別問題です。
条項の中で混ぜるほど、後の解釈が難しくなります。
連絡手段の禁止(電話・メール・SNS・DM等)
連絡禁止でまず問題になるのが、「連絡」の範囲です。
実務上は「電話、メール、SNS、メッセージアプリ、手紙等、方法を問わず一切連絡しない」という形がよく見られます。
ただ、ここは 広く書けば良いとは限りません。理由は2つあります。
- 連絡手段は日々増え、文言が現実に追いつきにくい
- 「方法を問わず」と書くと、何が違反かが後から争点になりやすい
おすすめの設計は、次の方向です。
- 基本は「直接の連絡」を禁止する(電話・メール・SNSなど)
- 連絡手段の例示を置く(代表例を列挙し、同種の手段も含む趣旨にする)
- 必要があれば「例外」を別枠で設ける(例外の話題・手段・頻度を限定)
条項の目的が「関係を断つ」「安心を確保する」ことであれば、記録が残る手段に限定することは、むしろ紛争予防になります(後から「言った/言わない」になりにくいからです)。
面会・同席・待ち伏せ等の禁止(会うことの線引き)
次に重要なのが「会う」ことの禁止です。
面会禁止は、単に「会わない」と書くだけだと、次のような疑問が生まれます。
- たまたま同じ店にいたら違反か
- 仕事上の会議で同席したら違反か
- 複数人の飲み会や行事はどう扱うのか
このため、「面会禁止」を置くなら、少なくとも 意図的な接触(待ち合わせ・呼び出し等)の禁止を中心にし、避けられない同席が想定されるなら別途ルールを用意するのが現実的です。
たとえば、同席があり得る場合は次のような条件設計が考えられます。
- 二人きりで会うことは禁止(例外なし)
- 複数人の場での同席は、必要性がある場合に限って許容
- 私的な二次会・密室での同席は避ける(誤解と紛争の予防)
「会うな」と強く書くほど、守れなかった時に重大な違反扱いになりやすいので、現実に起こり得る場面を想定して線引きすることが重要です。
間接接触(第三者経由・SNS監視等)の扱い
接触禁止は「直接の連絡」だけでは終わらず、第三者を介した接触が問題になることがあります。
典型は、友人・同僚・家族などを通じて「伝言を頼む」「状況を探る」といった行為です。
間接接触を禁止する趣旨は理解しやすい一方で、ここも広げすぎると曖昧になります。
- 「第三者を介して一切」だと、どこまでが対象か不明確になりやすい
- 共通の知人がいる場合、完全遮断は現実に難しいことがある
そこで、間接接触は次のように 目的に即して禁止対象を絞るのが基本です。
- 伝言の依頼、情報収集の依頼など「働きかけ」を明確に禁止する
- 共通の知人の場での偶然の会話まで、無理に違反化しない
- 禁止したいなら、具体的な行為類型(依頼・指示・要求)として書く
また、SNS上の行為(閲覧・「いいね」・フォロー等)をどこまで禁止するかは、事案によって考え方が分かれます。
「安心の確保」という目的との関係で、本当に必要な範囲に限定しないと、運用が破綻しやすい点に注意が必要です。
期間(いつまで縛るか/離婚後にどうなるか)
接触禁止条項は、期間の決め方でも揉めやすいです。
期間を決めずに「将来にわたり一切」とする形が一般的ですが、現実には次のような事情で問題が起きがちです。
- 数年後には環境が変わり、ルールが合わなくなる
- そもそも「守る必要性」が薄れたのに、条項だけが残る
- 離婚や別居など、前提が変わって争点が変わる
この「期間」や「事情変更」の話は、後の交渉(拒否・修正)とも密接に関係するので、条項全体を設計するときにセットで考えるのがおすすめです。
職場が同じ・避けられない接触がある場合の設計
接触禁止条項でもっとも現実的に困るのが、職場が同じ、あるいは取引先・現場などで接点が切れないケースです。
この場合、条項を強くしすぎると「守れない約束」になりやすく、結果として違反・紛争につながるリスクが高まります。
結論としては、職場での接点が避けられないなら、次の発想で設計するのが合理的です。
- 原則:私的な接触は全面禁止(連絡・面会・二人きりは避ける)
- 例外:業務上やむを得ない範囲だけ、必要最小限で許容する
- 条件:例外が抜け道にならないよう、手段・場面・記録を限定する
言い換えると、「例外を入れるか/入れないか」ではなく、例外をどう狭めるかが勝負です。
「業務連絡」は例外にできる?(必要最小限の考え方)
職場が同じ場合、業務連絡をゼロにするのは難しいことがあります。
このとき有効なのが、「職務上必要最小限」の例外を設けつつ、次のように条件を絞る設計です。
- 用件を限定:業務上の必要事項に限る(私的連絡は禁止)
- 手段を限定:会社メール・業務チャット等、記録が残る手段に限定
- 場面を限定:二人きりの打合せは避け、必要なら第三者同席
- 時間を限定:勤務時間内のみ、夜間・休日の連絡は禁止(等)
このように条件を具体化しておくと、後で「これは業務連絡か?私的連絡か?」という争いを減らせます。
逆に「業務上必要な場合を除く」とだけ書くと、例外の幅が広くなりすぎて、結局「抜け道だった」と評価されやすいので注意が必要です。
また、部署が同じ、上司部下関係、現場が同じなどで物理的接触が避けられない場合は、条項だけで解決しようとせず、社内調整(部署変更・担当替え等)と併せて運用設計を検討することも現実的です(条項は運用とセットです)。
懇親会・歓送迎会・会議など「同席」場面の決め方
職場関連で次に悩むのが、会議・研修・懇親会など、複数人の場での同席です。
ここは「同席=即違反」としてしまうと、会社生活そのものが難しくなる場合があります。
一方で、同席を広く許すと「結局会えてしまう」ので、次のような中間設計が実務的です。
- 多人数の公式行事は許容し得る(ただし私的接触は禁止)
- 二次会・移動中など「実質二人になる場面」は避ける
- 会話は業務上必要最小限にとどめ、私的なやり取りはしない
大切なのは、「会う/会わない」だけで判断せず、誤解されない・紛争にならない行動基準を作ることです。
職場は第三者の目がある一方、ちょっとした行動が「裏で続いている」と疑われやすい場所でもあるため、運用の現実を踏まえた線引きが必要になります。
“線引き”を条項に落とすときの書き方(具体化のコツ)
職場接点がある場合の条項設計は、文章のテクニックというより、具体化の粒度が重要です。
次の観点を、条項の中で言語化できると揉めにくくなります。
- 「何を禁止するか」:私的連絡/二人きりの面会/待ち合わせ など
- 「何を例外にするか」:業務上必要な連絡のうち、具体的にどの範囲か
- 「例外の条件」:手段・時間・同席・記録など、抜け道を塞ぐ条件
- 「困ったときのルール」:相手から連絡が来た場合の対応(記録・連絡経路)
ここまで具体化すると、「職場で完全遮断は無理」という現実と、「安心を確保したい」という目的の両立がしやすくなります。
次では、こうした現実を前提に、拒否・修正の交渉ポイントへ進みます。
接触禁止条項は拒否できる?(拒否・修正の基本戦略)
接触禁止条項は、あくまで「当事者同士の合意」で成立するものです。したがって、署名・押印する前であれば、接触禁止条項を拒否すること自体は可能です。
ただし、拒否すればそれで終わり…というより、現実には次のような「交渉全体のバランス」の問題になります。
- 接触禁止を入れる代わりに、慰謝料額や支払条件で譲歩する(または譲歩を求められる)
- 接触禁止が入らないなら、相手が合意に応じず、紛争が長引く可能性がある
- 接触禁止の代替として、より厳しい条件(高額な違約金など)を提示されることがある
このため、実務的には「完全拒否」よりも、守れる形に修正(条件付きで合意)するほうが、トラブルを抑えやすいケースが多いです。
特に「職場が同じ」「共通の知人・コミュニティがある」など、完全な接触ゼロが現実に難しい場合は、無理に強い条項を受けるほど、後で違反リスクが上がってしまいます。
拒否が通りやすいケース/通りにくいケース(判断の軸)
接触禁止条項の拒否・修正が通るかどうかは、法律の条文で一律に決まるというより、当事者の利害と、条項の目的(再発防止・安心確保など)に対する必要性で左右されやすいのが実情です。
拒否(または緩い修正)が比較的通りやすいのは、たとえば次のような事情がある場合です。
- そもそも接点がほぼなく、客観的にも再接触の可能性が低い(遠方・連絡先も消去済み等)
- 条項案が過度に広く、生活や業務に明らかに支障が出る(守れない設計になっている)
- 「どこまで」が曖昧で、違反認定の線引きが不明確(解釈で揉める危険が高い)
- 接触禁止ではなく、別の手当てで目的を達成できる(第三者経由・弁護士経由など)
一方、拒否が通りにくく、相手が強くこだわりやすいのは次のような場合です。
- 連絡が継続していた、再発が疑われている等で、相手の不安が強い
- 職場・近隣など接点が近く、放置すると再接触のリスクが高いと見られやすい
- 「接触が続くこと自体」が精神的苦痛だと相手が強く訴えている
ここで大事なのは、「拒否できるか」だけで考えないことです。
拒否が難しそうな場面でも、**修正の余地(どこまで禁止するか、例外をどう置くか)**は残ります。次のように、代替案をセットで出すことがポイントです。
拒否するなら代替案を出す(“条件付き合意”の型)
交渉で揉めやすいのは、「接触禁止条項は無理です(以上)」のように、拒否だけを置いてしまうケースです。
相手は「安心を確保したい」ので、拒否だけだと不安が解消されず、合意が遠のきます。
そこで現実的なのが、次のような**条件付き合意(修正案)**です。
- 禁止範囲を分解する:連絡禁止/面会禁止/第三者経由の禁止を整理し、必要な部分だけ残す
- 例外を具体化する:職場・業務など不可避な接点は「職務上必要最小限」に限定して許容する
- 手段を限定する:記録が残る手段のみ(会社メール、業務チャット等)に限定する
- 場面を限定する:二人きり禁止、必要なら第三者同席、会議など公式の場のみ許容する
- 期間を設ける:無期限ではなく、一定期間+事情変更時の再協議とする
例えば、職場が同じで完全遮断が無理な場合は、次のように提案の“芯”を作ると交渉が進みやすくなります。
「私的な接触は全面禁止に同意する。ただし業務上やむを得ない接触は、手段・用件・時間帯を限定したうえで必要最小限のみ許容してほしい」
という形で、目的(安心)を壊さずに運用可能性(守れる)を確保します。
また、違約金の設定がセットで提示されることも多いですが、ここも「高すぎる」「自分がコントロールできない違反認定になっている」と感じるなら、条項の修正と合わせて調整を検討するのが安全です。
違約金条項の一般論(有効性・高すぎる場合の考え方など)は、次の記事で詳しく解説しています。
不倫関係を続けたい場合の注意(リスクの見える化)
もし心の中で「関係を続けたい」「連絡は取りたい」と思っている場合、接触禁止条項とあなたの行動が根本的に矛盾しやすくなります。
この状態で「とりあえず署名」してしまうと、あとで次のようなリスクが一気に高まります。
- ちょっとした連絡でも「違反」と評価され、紛争が再燃する
- 違約金条項があると、金銭負担が膨らむきっかけになる
- “約束を破った”という事情が、交渉全体で不利に働きやすい
この場合は、無理に署名して将来の爆発を抱えるよりも、合意できる条件に落としてから署名するほうが、結果的にダメージを抑えられることがあります。
実際の進め方(示談書・誓約書の全体像)を含めて整理したい場合は、以下も参考になります。
坂尾陽弁護士
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「正当な理由」の考え方(例外条項の作り方)
接触禁止条項の修正で頻出するのが、「正当な理由がある場合を除く」といった例外の置き方です。
ただ、この“正当な理由”は便利な反面、曖昧に書くほど後で揉めやすい言葉でもあります。
なぜなら、トラブルになったときに争点になるのは、結局のところ、
- その接触は本当に必要だったのか
- 目的(安心確保・関係遮断など)に照らして合理的だったのか
- 必要最小限だったのか(代替手段はなかったのか)
といった「具体事情」だからです。
つまり、正当な理由は“魔法の免罪符”ではなく、例外の幅をどう設計するかが重要になります。
このセクションでは、「緊急時」ではなく、実務上想定しやすい 子ども・業務・法的手続を中心に整理します。
正当な理由の例(子ども・業務・法的手続)
正当な理由として考えられるケースは、次の3つです。
ただし、どれも“書き方”が曖昧だと抜け道にもなり得るため、例外を入れるなら次で解説する限定までセットで考えるのが安全です。
- 子ども:当事者間に未成年の子がいる等で、養育・面会交流・費用精算など、子の利益のために最低限の連絡が必要な場合(主に離婚・別居の合意書などで問題になりやすい)
- 業務:同じ職場・取引先対応・引継ぎ等で、職務上どうしても連絡や同席が避けられない場合(「職務上必要最小限」に限定する設計が中心)
- 法的手続:通知・請求・裁判手続など、権利行使や手続進行のために連絡が必要になる場合(直接連絡ではなく弁護士経由に寄せると揉めにくい)
「子ども」について補足すると、一般に“不倫の示談”で想定される接触禁止(不倫相手との接触禁止)では、子どもが例外になる場面は多くありません。
一方で、接触禁止条項自体は、離婚・別居・親権や面会交流の調整など、別の合意書でも出てきます。その場合は、子どもに関する連絡を完全に断つと、子の不利益につながることがあります。そこで「子に関する事項に限る」など、用件限定の例外が問題になりやすい、という位置づけです。
「正当な理由」を広げすぎない書き方(限定・記録・手段)
正当な理由(例外)を入れるなら、最初から「後で争われる」前提で、例外の範囲を狭めておくのが安全です。
例外を狭める方法は、大きく分けると次の4つです。
- 用件を限定する:何のための連絡か(業務/子/手続)を明確にし、それ以外は不可にする
- 手段を限定する:記録が残る手段(会社メール、業務チャット、弁護士経由など)に限定する
- 場面・頻度を限定する:勤務時間内のみ、二人きり禁止、必要最小限の回数のみ等で縛る
- 記録・証跡を残す:後で「正当な理由だった」を説明できる形にしておく
例えば「業務」を例外に入れる場合でも、単に「業務上必要な場合」と書くより、次のように“狭く”設計したほうが揉めにくくなります。
「職務上必要最小限の連絡に限る」だけでなく、
「会社メール(または業務チャット)に限る」「用件は業務連絡に限る」「勤務時間内に限る」
のように、具体条件を積み上げて例外を狭めます。
また、「法的手続」を理由にする場合は、相手から見ると「結局、連絡はできるのでは?」という不安になりやすいので、できる限り 弁護士を介した連絡に寄せるのが無難です。
たとえば「当事者間の直接連絡は禁止。ただし法的手続に必要な通知等は代理人弁護士を通じて行う」といった整理にすると、目的(安心)との整合が取りやすくなります。
「正当な理由」「業務上必要」「子どものため」など、便利な言葉ほど解釈が割れます。
例外は“入れるかどうか”ではなく、“どれだけ限定できているか”が大切です。
接触禁止条項の例文(コピペではなく要素で組み立てる)
「接触禁止条項の例文が欲しい」というニーズは多いのですが、例文をそのままコピペすると、あなたの事情(職場・生活・連絡手段・期間)に合わず、かえってトラブルの火種になることがあります。
そこでここでは、例文そのものより先に、**条項を組み立てる“要素”**を整理します。そのうえで、短い例文を3パターンだけ示します。
例文に入れるべき必須要素(禁止/例外/期間/違反時)
接触禁止条項は、最低限次の要素が入っていないと、後で「どこまで」「何が違反か」で揉めやすくなります。
- 禁止する行為:連絡(電話・メール・SNS等)/面会/待ち伏せ/第三者経由の伝言など
- 例外(正当な理由)の有無と範囲:業務上必要最小限、子に関する事項、法的手続は弁護士経由等
- 期間:いつからいつまでか(無期限にするのか、一定期間にするのか)
- 違反時の効果:違約金を定めるか、損害賠償の扱いをどうするか
加えて、条項を「守れるルール」にするには、次の“補助要素”も有効です。
- 連絡手段の限定:記録が残る手段のみ
- 二人きり回避:必要な同席がある場合の条件(第三者同席など)
- 相手から連絡が来たときの対応:返信の可否、記録、代理人対応など
違約金を入れる場合は、金額だけでなく「どの違反に適用されるか」「1回ごとか、一定期間でまとめるか」でも揉め方が変わります。違約金の設計は別論点として、次の記事で整理しています。
例文(3パターン)
以下はあくまで「条項の形」を掴むための短い例です。実際には、あなたの事情(職場の有無、業務連絡の必要性、期間、違約金の要否)に合わせて調整してください。
例文は“そのまま使う”より、あなたの事情に合わせて
「禁止の範囲」「例外の限定」「期間」「違反時」
を埋め直すための材料として使うのが安全です。
(例文A:基本形(全面禁止型))
「当事者は、今後、方法のいかんを問わず、互いに直接又は間接に連絡し、又は面会しない。第三者を介して伝言し、又は連絡を試みる行為も行わない。」
(例文B:職場例外型(業務上必要最小限のみ))
「当事者は、今後、互いに私的な目的で連絡し、又は面会しない。
ただし、同一職場における職務上やむを得ない連絡については、勤務時間内に、業務上必要最小限の用件に限り、会社メール(または業務チャット)を用いて行うものとし、二人きりでの面会や私的な連絡は行わない。」
(例文C:子ども・法的手続例外型(用件と経路を限定))
「当事者は、今後、互いに連絡し、又は面会しない。
ただし、当事者間に子がいる場合の子に関する必要最小限の連絡、及び法的手続に必要な通知等は、用件を当該事項に限り、記録が残る方法又は代理人弁護士を通じて行う。」
なお、接触禁止条項は、示談書・誓約書など書面全体の中で整合が取れていることが重要です。条項単体だけでなく、書面全体の作り方も含めて確認したい場合は、次の記事も参考になります。
違反したらどうなる?(違約金・蒸し返し・追加請求リスク)
接触禁止条項は「守る」と決めた以上、違反があれば何らかの形で紛争になり得ます。
ただし、違反したときの結末は、①違約金条項があるか、②禁止範囲・例外がどれだけ具体的か、③証拠がどう残るかで大きく変わります。
ここでは、読者が一番不安に思いやすい「連絡したらどうなるのか」「少しの連絡でもアウトなのか」を、できるだけ現実的に整理します。
違約金条項がある場合/ない場合
接触禁止条項に違反した場合の典型的な請求は、次の2パターンです。
- 違約金条項がある:条項で定めた金額(または算定方法)に基づき、違約金を請求される
- 違約金条項がない:債務不履行や不法行為として、損害賠償(慰謝料等)を請求される
それぞれ、実務上のポイントは次のとおりです。
- 違約金条項がある場合
一般に、違反が認定されると「定めた金額が発生する」という形になりやすく、請求側(接触禁止を入れたい側)にとっては安心材料になります。
他方で、違約金が高額すぎたり、違反の定義が曖昧だったりすると、争いの火種にもなります。特に「何が違反か」が曖昧だと、些細な連絡でも“違反だ”と主張されやすいので、禁止範囲と例外の線引きが重要です。 - 違約金条項がない場合
「違反した=すぐに定額が発生」という形にはなりにくい一方、損害(精神的苦痛の程度など)や因果関係の立証が争点になりやすく、紛争が長期化することがあります。
つまり、違約金がないから安心とも言い切れず、揉め方が変わるだけ、と考えるのが現実的です。
また、注意したいのは「示談で清算したはずなのに、追加で請求されるのか」という点です。
一般論として、示談で清算できるのは“過去の出来事”が中心で、示談後に新たな接触やトラブルが起きれば、**別の問題(新しい紛争)**として扱われる余地があります。結局は合意書全体の条項(清算の範囲など)にも関わるため、不安がある場合は早めに確認しておくと安全です。
違約金が高すぎる・不安があるときの考え方(概要)
違約金について不安がある場合、基本方針はシンプルです。
サインした後ではなく、サインする前に「違反の定義」と「例外の条件」を具体化することが最重要です。
特に次のタイプの文言は、後で揉めやすい傾向があります。
- 「一切の接触」を広く取りすぎていて、避けられない接触まで違反になり得る
- 「正当な理由」「業務上必要」など、例外が抽象的で解釈が割れやすい
- 違約金の対象行為が広すぎて、軽い連絡でも高額になる設計になっている
この場合は、違約金の金額だけを下げる交渉よりも、先に次を整える方が“効く”ことが多いです。
- 禁止範囲を分解(連絡/面会/第三者経由など)して、線引きを明確にする
- 例外(業務・子ども・法的手続など)を置くなら、用件・手段・時間帯・記録で絞る
- 何をしたら違反かを明確にして、“うっかり違反”の余地を減らす
違約金条項の有効性や、高すぎる場合の一般的な考え方は、次の記事で整理しています(ここでは概要にとどめます)。
接触禁止条項は、違反した瞬間に一気に不利になりやすいテーマです。
不安があるなら、署名前に「守れる設計」に直すことが最優先です。
坂尾陽弁護士
裁判例にみる「接触禁止」と「正当な理由」の考え方
接触禁止に違反した場合、必ずしも「条項がそのまま通る」とは限りません。実際の裁判例では、接触禁止違反による高額な請求は公序良俗違反により全部または一部が無効になる判断が見られます。
たとえば、東京地裁平成25年12月4日判決では、同一会社勤務の当事者間で、面会・連絡等を禁止しつつ「職務上でも必要最小限以外のコンタクトは禁止」という文言を含む誓約が問題になりました。違反時の違約金は1000万円と定められていましたが、裁判所は金額が過大として、150万円を超える部分は公序良俗違反で無効と判断しています。
この例は、接触禁止の目的自体(関係遮断・平穏の確保など)は正当でも、違約金の金額や構造が不釣り合いだと調整され得ることを示唆します。
また、東京地裁平成21年1月28日判決では、接触禁止(直接連絡禁止)を合意しつつ、「連絡ができなくなったという最後の連絡」は除く、という例外が付いた事案が問題になりました。、裁判所は事案の性質に照らして不当・不合理として、接触禁止条項違反による請求はできないと判断しています。さらに、和解後のメール連絡は認めつつも、それが原因で婚姻関係が破綻したといえる証拠が足りないとして、追加の請求を認めていません。実質的に接触禁止違反に正当な理由があったことを認めた裁判例と考えることもできそうです。
これらを踏まえると、条項を作るときは次の点が重要です。
- 接触禁止条項違反に基づく請求には、金額だけでなく「違反の定義」を具体化する
- 例外(最後の連絡、職務上必要最小限など)を入れるなら、範囲を限定して揉めにくくする
- 高額な違約金で“縛る”より、守れる設計にして実効性を上げる
接触禁止条項は、違反した瞬間に一気に不利になりやすいテーマです。
不安があるなら、署名前に「守れる設計」に直すことが最優先です。
坂尾陽弁護士
よくある質問(相手から連絡・離婚後の効力・修正や解除など)
最後に、接触禁止条項で特によくある質問をまとめます。状況によって最適解が変わるため、「判断の軸」を中心に整理します。
接触禁止条項があるのに相手から連絡が来たら?
まず大前提として、相手から一方的に連絡が来た場合でも、あなたが返信すると「接触した」と評価されるリスクがあります。
そのため、基本は次の順で対応すると安全です。
- 返信はせず、まず記録する(スクリーンショット、通話履歴、日時のメモ)
- 条項に例外(業務・子ども等)があるなら、その範囲に当たるか冷静に確認する
- 例外に当たらないなら、直接のやり取りを続けない(悪化しやすい)
- 必要なら、代理人(弁護士)経由で整理する
もし条項上、業務連絡などの例外が置かれている場合でも、例外は「用件限定・手段限定」になっていることが多いです。
例外を使うときほど、必要最小限の内容にとどめ、記録が残る手段で対応することが大切です(後で“例外の範囲内だった”と説明しやすくなります)。
離婚後も接触禁止条項は効く?
接触禁止条項は合意(契約)なので、形式的には離婚後も条項が残ること自体はあり得ます。
ただし、実務では「条項の目的」と「状況の変化」が問題になります。
- もともと婚姻関係の保護・平穏確保が目的だったのに、離婚で前提が変わった
- 子どもがいる場合は、完全遮断が現実に不可能になっている
- そもそも期間や解除条件をどう定めているか
このため、「離婚したら必ず無効」「離婚しても必ず有効」と単純化はできません。一般論としては、離婚後に接触禁止条項違反があったとしても違約金や損害賠償が認められる可能性は高くないと言えます。
もっとも、離婚後も条項が残っている場合は、文言(期間・例外・目的)を踏まえて、必要なら再協議(合意の変更)を検討することも考えられます。
合意後に修正・解除したい(運用変更)は可能?
合意書に署名した後に内容を変えるには、原則として 相手方との再合意が必要です。
一方的に「もう守れないから解除」とするのは難しく、勝手に運用を変えると違反扱いになるリスクがあります。
ただ、職場の異動・転職、子どもの事情などで現実が変わることはあります。その場合は、
- 事情が変わったことを具体的に説明する
- 例外を広げるのではなく、用件・手段・時間帯を限定して調整案を出す
- 合意内容は書面で残す(口頭合意は後で揉めやすい)
といった形で、紛争になりにくい再設計を目指すのが無難です。
「少し連絡しただけ」でバレる?違反になる?
「バレるかどうか」だけで考えるのは危険です。
接触は、LINE等の履歴、通話履歴、SNSの動き、職場や第三者の目撃など、後から客観的に説明できる形で残りやすいことが少なくありません。
また、違反かどうかは「本人の気持ち」ではなく、条項の文言と証拠で判断されやすいです。
たとえば「業務連絡は例外」としていても、用件が私的だったり、深夜に連絡していたりすると、例外に当たらないと争われる可能性があります。
結局、トラブルを避ける一番の方法は、守れる条項に直してから署名し、署名後は運用をブレさせないことです。
まとめ
接触禁止条項は、強い文言にするほど安心になるとは限りません。大切なのは、あなたの生活・仕事の現実に合わせて「守れるルール」に落とし込むことです。
- 接触禁止条項は合意で決まるため、範囲と例外の設計が重要
- 「どこまで禁止するか」を分解し、曖昧さを減らすほど揉めにくい
- 職場が同じなら「職務上必要最小限」など条件付きの例外設計が有効
- 違反時は違約金の有無で揉め方が変わるため、署名前の調整が最重要
- 署名後の修正は原則再合意が必要。運用変更は書面で残す
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