既婚者とのキスについて、「キス 不倫」と検索している方は、単に「気持ちとして許せるか」を知りたいだけではないはずです。キスだけで不貞行為になるのか、慰謝料請求が認められるのか、キス写真やLINEが肉体関係の証拠としてどこまで強いのかが気になっている方も多いでしょう。
結論からいうと、キスは日常感覚では不倫・浮気と受け止められやすい行為です。しかし、法律上の不貞行為は、原則として配偶者以外の人との性的関係を中心に判断されるため、キスだけで直ちに不貞行為と認められるとは限りません。もっとも、キスに加えて継続的な交際、抱擁、身体接触、ホテル、宿泊、親密なLINEなどがあると、慰謝料や証拠の評価は変わります。
この記事では、キスの問題を、客観的な事実として本当にキスだけなのか、それとも実際には肉体関係がある、又は疑われているが証拠としてはキスが中心なのかに分けて整理します。
- キスは日常感覚では不倫・浮気と見られやすい
- キスだけでは原則として法律上の不貞行為とは言いにくい
- キスだけでも、継続性や身体接触などで慰謝料問題になることがある
- キスの証拠は、ホテル・宿泊・LINEなどと合わせて肉体関係の推認材料になる
- 請求された側は、本当にキスだけか、実際には肉体関係があるかで対応を分ける
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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キスは不倫になる?まずは不倫・不貞行為・慰謝料を分けて考える
「キスは不倫になるか」という質問には、答えを一つに決めつけるよりも、言葉を分けて考える必要があります。夫婦関係や恋愛感情の問題としては、配偶者以外の人とキスをすれば、不倫や浮気と受け止められることが多いでしょう。配偶者が強い不信感を抱くのも自然です。
しかし、慰謝料請求や離婚の見通しを考えるときは、日常語としての不倫・浮気と、法律上の不貞行為を区別する必要があります。不貞行為は、典型的には配偶者以外の人と自由な意思で性的関係を持つことを意味します。そのため、キスだけでは、性交や性交類似行為と同じ程度の性的関係があったとは直ちに言いにくいのが基本です。
もっとも、「キスだけなら慰謝料は絶対に発生しない」と考えるのも危険です。慰謝料請求では、不貞行為そのものが認定されるかだけでなく、夫婦の婚姻共同生活の平穏を害する違法な行為といえるかも問題になることがあります。
したがって、キスの問題は、次の3段階で見ると整理しやすくなります。
- 不倫・浮気の問題
夫婦間、恋愛感情、道徳感情として許されるかという問題です。キスはこの意味では不倫・浮気と見られやすい行為です。 - 不貞行為の問題
法律上、性的関係があったといえるかという問題です。キスだけでは原則として不貞行為とは言いにくいものの、周辺事情から肉体関係が推認されることがあります。 - 慰謝料の問題
不貞行為が認定されるか、又は不貞行為までは認定されなくても夫婦関係の平穏を侵害したといえるかという問題です。
不倫・浮気がどこから問題になるかという日常語の線引きは、不倫・浮気はどこから?でも整理しています。本記事では、キスという個別行為に絞って、慰謝料請求でどのように評価されるかを見ていきます。
特に重要なのは、「客観的な事実としてキスだけのケース」と「本当は肉体関係がある、又は肉体関係が疑われているが、証拠としてはキスが中心のケース」を分けることです。この2つを混同すると、請求する側も請求された側も見通しを誤りやすくなります。
客観的な事実としてキスだけの場合|不貞行為・慰謝料・離婚はどう考えるか
まず、本当にキスだけで、性交、性交類似行為、ホテルでの宿泊、自宅での密会などがない場合を考えます。この場合、法律上の評価は「不貞行為か」と「慰謝料対象になるか」を分ける必要があります。
キスだけでは原則として不貞行為とは言いにくい
不貞行為は、典型的には性的関係をいうため、軽いキスや一度だけのキスは、通常、性交や性交類似行為そのものとは評価されにくいです。たとえば、挨拶のようなキス、酔った勢いで一度だけしてしまったキス、短時間の接触にとどまるキスであれば、それだけで「法律上の不貞行為が成立した」とまでいうのは難しいことが多いでしょう。
この点は、「配偶者にとって許しがたいか」と「慰謝料請求で不貞行為として認められるか」が別である、ということです。配偶者から見れば裏切りと感じる行為であっても、裁判上は、性行為又はこれに近い性的接触があったか、具体的な証拠からどこまで認定できるかが問題になります。
そのため、キスだけで慰謝料請求された側は、まず「キスをしたかどうか」だけでなく、次の事情を整理することが重要です。
- キスは一度だけか、複数回か
- 場所は人目のある場所か、密室か
- キス以外の身体接触があったか
- ホテル・宿泊・旅行・自宅滞在があったか
- 親密なLINEや写真がどの程度残っているか
この整理をしないまま「キスだけだから絶対に大丈夫」と考えると、周辺事情を後から指摘されて説明が苦しくなることがあります。
不貞行為ではなくても慰謝料対象になることがある
キスだけでは原則として不貞行為とはいえないとしても、それだけで慰謝料の可能性が完全に消えるわけではありません。問題になるのは、キスを含む一連の行動が、夫婦の婚姻共同生活の平穏を害するほどのものだったかです。
たとえば、次のような事情が重なると、単なる一度のキスとは評価が変わりやすくなります。
- 何度もキスをしている、又は継続的に会っている
- 抱き合う、服の上から身体に触れるなど、キス以外の身体接触がある
- 「好き」「会いたい」などの親密な連絡が継続している
- 配偶者に隠して交際を続けている
- 相手の家庭に介入するような発言や行動がある
東京地裁平成28年9月16日判決では、肉体関係があったとまでは認められなかったものの、交際が1年半近く続き、抱き合う、キスをする、服の上から身体を触るといった事情がありました。裁判所は、配偶者のある異性との交際として社会通念上許容される限度を逸脱しているとして、慰謝料50万円を認めています。
この裁判例から分かるのは、キス単体を不貞行為と同視するというより、キスを含む交際全体の態様が見られているという点です。本当に一度だけのキスなのか、継続的な親密交際の一場面としてのキスなのかで、慰謝料リスクは変わります。
キスだけで離婚できるかは、夫婦関係への影響も含めて判断される
離婚の場面でも、キスだけで民法上の不貞行為に当たると評価されるのは簡単ではありません。もっとも、キスをきっかけに夫婦関係が悪化し、その後の行動も含めて婚姻を継続し難い重大な事由があると主張されることはあります。
たとえば、単なるキスではなく、長期間の交際、頻繁な密会、配偶者への嘘、相手との将来を考える発言、別居や離婚を求める行動などが重なる場合、問題は「キスだけ」ではなく、夫婦関係を壊す一連の行為として評価されやすくなります。
東京地裁平成20年12月5日判決では、性的肉体的交渉自体は認められませんでしたが、交際に加えて、別居や離婚を求める行動などが問題とされ、慰謝料250万円が認められています。このような事案は、キスだけの事案ではありません。むしろ、キスの有無よりも、婚姻関係への介入の程度が大きかった例として理解するのが適切です。
したがって、キスだけのケースで離婚や高額な慰謝料を当然に認める方向に考えるのは危険です。一方で、キスを含む関係が継続し、夫婦関係に大きな影響を与えている場合は、「キスだけ」という説明では足りないことがあります。
「一度だけ」と「何度も」は評価が違う
キスの回数や継続性は、慰謝料リスクを考えるうえで重要です。一度だけのキスで、すぐに関係を断ち、LINEや宿泊などの周辺事情もない場合は、慰謝料請求としては弱い方向に働きやすいでしょう。
これに対し、何度もキスをしている、二人きりで会う関係が続いている、抱擁や身体接触がある、親密なメッセージが継続している場合は、たとえ肉体関係までは証明されなくても、夫婦関係の平穏を害する行為として評価される可能性が高まります。
請求された側にとっても、請求する側にとっても、重要なのは「キスをしたかどうか」だけではありません。キスの回数、場所、前後の行動、連絡内容、交際の継続性をまとめて見ることが必要です。
キスの証拠しかない場合|肉体関係を推認できるか
次に、実際には肉体関係がある、又は肉体関係が疑われているものの、手元にある証拠がキス写真、キス動画、キスを示すLINEなどに限られている場合を考えます。この場合の問題は、客観的な事実としてキスだけなのかではなく、キスの証拠から肉体関係まで推認できるかです。
キスの証拠は、肉体関係そのものの直接証拠ではありません。キス写真があるからといって、直ちに性交や性交類似行為があったと認定されるわけではありません。しかし、キスの証拠は、二人の親密性を示す材料にはなります。そこに他の事情が重なると、肉体関係があったと推認される方向に働くことがあります。
キスの証拠が直接示すのは「親密性」まで
キス写真やキス動画が示す直接の事実は、あくまで「キスをした」という点です。性的関係そのものを示しているわけではありません。したがって、請求する側がキスの証拠だけをもって「当然に肉体関係があった」と主張しても、証拠としては足りないと判断される可能性があります。
東京地裁平成24年11月28日判決では、腕を組む、路上でキスをする、額にキスをする、メールで「チュ」「ギュウ」などの表現を用いるといった事情が問題になりました。しかし、裁判所は、それらの事情から性交渉の存在まで認めることは困難であり、不貞関係を明確に認定することはできないと判断しています。
もっとも、同判決は、メール送付行為などが婚姻生活の平穏を害する違法な行為に当たるとして、慰謝料30万円を認めています。ここでも、キスや親密メールが「性行為の直接証拠」になるかと、「夫婦関係の平穏侵害として慰謝料対象になるか」は別の問題として整理されています。
キスにホテル・宿泊・密室滞在が重なると推認が強くなる
キスの証拠だけでは弱いとしても、次のような事情が重なると、肉体関係の推認は強くなります。
- キス写真に加えて、ラブホテルの出入りがある
- 同じ部屋に宿泊している
- 旅行先で同室に泊まっている
- 配偶者が不在の自宅で長時間二人きりで過ごしている
- 深夜帯の滞在や、シャワー・着替えなど生活感のある行動がある
このような事情がある場合、キスは単独の証拠ではなく、親密な関係や性的関係の可能性を補強する材料として使われます。請求する側は、「キスをしたから肉体関係があった」と短絡的に主張するのではなく、キス、宿泊、ホテル、LINE、説明の変遷などを組み合わせて、全体として性行為があったと見るのが自然だと組み立てることになります。
東京地裁令和5年9月28日判決では、性行為までは認められませんでしたが、数か月以上にわたり月1回以上の頻度で配偶者不在の自宅で二人きりで過ごし、シャワーを浴びたり、マンションのゲストルームに複数回宿泊したりしていた事情から、婚姻共同生活の平和を侵害する行為として慰謝料80万円が認められています。
この裁判例はキスそのものの事案ではありませんが、キスの証拠を評価するうえでも参考になります。つまり、裁判所は一つの写真や一つのメッセージだけでなく、二人がどのような場所で、どれくらいの頻度で、どのような態様で会っていたかを総合して見ます。
LINEやメッセージは文脈で評価される
キスに関するLINEやメッセージも、証拠としての意味は文脈によって変わります。単に「チュ」「好き」「会いたい」といった言葉があるだけでは、性的関係まで直ちに推認できないことがあります。一方で、ホテルや宿泊の日時と一致するメッセージ、性的な内容を具体的に示すやり取り、会った後の感想、口裏合わせをうかがわせる連絡などがあると、証拠としての重みは増します。
LINE・DMの証拠は、スクリーンショットの保存方法、日時、相手の特定、前後の文脈が重要です。キスや親密なメッセージを証拠として使う場合は、LINE・DMは不倫の証拠になる?スクショの保存方法と注意点も確認しておくとよいでしょう。
請求された側も、「キスのLINEだけだから弱い」と決めつけるのは避けるべきです。LINEの文脈、会った日時、ホテルや宿泊の有無、相手や配偶者の説明との整合性まで見られるため、証拠全体の中でキスがどう位置づけられるかを確認する必要があります。
請求する側は「キスだけで勝つ」より周辺証拠を重ねる
慰謝料を請求する側から見ると、キスの証拠は重要な入口になります。ただし、キスの証拠だけで肉体関係を認定してもらうのは簡単ではありません。請求する側は、キス写真やLINEを出すだけではなく、次のような事実を合わせて整理することが重要です。
- 二人が会った日時・場所
- ホテル・宿泊・旅行・自宅滞在の有無
- LINEやメールの前後関係
- 配偶者や相手方の説明の変化
- 交際期間と会う頻度
キスの証拠は、「二人は親密だった」という出発点としては有用です。しかし、最終的に不貞行為や慰謝料を認めてもらうには、キス以外の事情と結びつけて、婚姻共同生活への影響や肉体関係の推認を組み立てる必要があります。
請求された側は「キスの証拠しかない」の意味を見極める
請求された側は、自分自身では、客観的な事実としてキスだけだったのか、実際には肉体関係もあったのかを知っているはずです。そのため、対応方針は事実関係によって変わります。
本当にキスだけであれば、キスの回数、場所、経緯、前後の行動、宿泊やホテルがないこと、肉体関係を示すLINEがないことなどを整理し、不貞行為ではないことや、仮に慰謝料が問題になるとしても請求額が過大であることを検討します。
一方で、実際には肉体関係がある場合に、「相手が今出している証拠はキスだけだから大丈夫」と考えるのは危険です。後からホテルの利用履歴、LINE、写真、位置情報、相手や配偶者の説明などが出てくることもあります。説明が変わったり、相手の説明と食い違ったりすると、かえって信用性を損なう可能性があります。
キスの証拠しか示されていないときこそ、事実を過小評価せず、証拠が何を示しているのか、何を示していないのかを分けて検討することが大切です。
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キスだけで慰謝料請求された側の対応|肉体関係の有無で方針を分ける
キスだけで慰謝料請求を受けた場合、最初に整理すべきなのは、相手の主張の強さではなく、自分が把握している事実関係です。請求された側は、客観的な事実として本当にキスだけだったのか、それとも実際には肉体関係があるのかを知っているはずです。
この部分をあいまいにしたまま対応すると、最初の説明、交渉での回答、訴訟になった場合の供述が食い違いやすくなります。キスの証拠が出ているときほど、事実を過小評価せず、どこまで認め、どこから争うのかを分けて考える必要があります。
本当にキスだけなら、不貞行為の否認と請求額の過大性を分けて考える
実際に肉体関係がなく、性交類似行為や宿泊もない場合は、まず「キスをしたこと」と「法律上の不貞行為があったこと」を分けます。キスの事実を認めるとしても、それだけで性交や性交類似行為があったことまで認める必要はありません。
この場合は、次のような事実を整理しておくことが重要です。
- キスは一度だけか、複数回か
- キスをした場所は公共の場所か、密室か
- キス以外の身体接触があったか
- ホテル・宿泊・旅行・自宅で二人きりの滞在があったか
- 肉体関係を示すLINE・写真・目撃情報があるか
本当にキスだけであれば、不貞行為そのものは認められにくい方向で主張できます。また、仮に慰謝料が問題になるとしても、一度だけ、短時間、継続性がない、夫婦関係への影響が限定的であるといった事情は、請求額が高すぎるという反論につながります。
ただし、キスをした事実が明らかなのに、証拠を見ずに全面否認すると、後から写真やLINEを示されたときに説明の信用性を落とすことがあります。争うべきなのは、キスの有無そのものなのか、キスの意味づけなのか、慰謝料額なのかを分けることです。
実際には肉体関係がある場合は、キスの証拠しか出ていないと過信しない
実際には肉体関係がある場合、相手が最初に示している証拠がキス写真やキスに関するLINEだけだったとしても、「これだけなら大丈夫」と考えるのは危険です。交渉や裁判の途中で、ホテルの利用、宿泊、旅行、位置情報、別のLINE、配偶者や相手方の説明などが追加されることがあります。
この場合の対応方針は、単純な全面否認だけではありません。相手の証拠がどこまであるのか、こちらが否認した場合にどの証拠で反論される可能性があるのか、早期に解決した方がよいのか、減額交渉に切り替えるべきかを検討する必要があります。
特に、キスの証拠に加えてホテルや宿泊の証拠が出てくる可能性がある場合は、肉体関係の有無そのものを争うのか、慰謝料額、期間、回数、婚姻関係への影響を争うのかを慎重に整理するべきです。
嘘を重ねると、尋問や供述の整合性で不利になることがある
キスの証拠しか示されていない場合でも、事実と違う説明を重ねるのは危険です。裁判になると、キスの回数、場所、会うようになった経緯、前後のLINE、ホテルや宿泊の有無、配偶者との関係について確認されることがあります。
裁判では、本人の説明だけでなく、写真、LINE、ホテルの記録、相手方や配偶者の供述との整合性が見られます。一方だけが否認していても、もう一方が認める、説明の時期や内容が食い違う、客観証拠と合わないという状況になると、かえって信用性を損なう可能性があります。
尋問で何を聞かれるか、供述の準備で何に注意すべきかは、不貞裁判の尋問では何を聞かれる?で詳しく整理しています。キスの証拠だけに見える場合でも、説明の整合性を軽く見ないことが大切です。
証拠が弱いときは、何を示していて、何を示していないかを確認する
請求された側にとって重要なのは、「相手に証拠があるかないか」だけではありません。その証拠が、キスまでを示すものなのか、肉体関係まで推認させるものなのかを分けることです。
たとえば、キス写真は親密性を示す証拠にはなりますが、それだけで性交を直接示すものではありません。親密なLINEも、文脈によっては好意や交際感情を示すにとどまることがあります。一方で、同じ証拠でも、宿泊・ホテル・深夜滞在・性的なやり取りと結びつくと、評価が変わります。
証拠が弱い場合の反論では、証拠の有無を一括りにせず、証拠が示す範囲、示していない範囲、別の説明が可能な事情を整理します。相手の証拠への具体的な反論は、相手の証拠が弱いときの反論でも解説しています。
状況別早見表|一度だけのキス・複数回・ハグ・LINE・ホテルで何が変わるか
キスが不倫・不貞行為・慰謝料との関係でどう評価されるかは、キスだけを切り取って決めるのではなく、周辺事情との組み合わせで見ます。次の表は、よく問題になる状況ごとの目安です。
| 状況 | 不貞行為の認定 | 慰謝料リスク | 肉体関係の推認 | 請求された側の確認点 |
|---|---|---|---|---|
| 一度だけのキス | 原則として不貞行為とは言いにくい | 低め | 弱い | 回数、場所、経緯、継続性がないことを整理する |
| 複数回のキス | キスだけならなお不貞行為とは別問題 | 一度だけより上がる | 親密性の証拠になる | 会う頻度、LINE、身体接触の有無を確認する |
| キス+ハグ・抱擁 | 性交そのものではないが親密行為として問題になる | 中程度 | 態様によって補助事情になる | 抱擁の態様、継続性、密室性を確認する |
| キス+親密LINE | LINEだけで不貞行為とは限らない | 文脈次第 | ホテル・宿泊と結びつくと強まる | 日時、前後の会話、冗談か具体的予定かを確認する |
| キス+ホテル・宿泊 | 不貞行為の推認が強まりやすい | 高め | 強い方向に働く | 滞在目的、時間、同室性、宿泊の実態を確認する |
| キス+継続交際・身体接触 | 肉体関係がなくても違法評価される余地がある | 中〜高 | 証拠全体で判断される | 交際期間、身体接触の程度、夫婦関係への影響を確認する |
| キス+離婚・別居を求める発言 | キス単体ではなく婚姻への介入として問題になる | 高くなり得る | 性行為推認とは別に不法行為性が問題になる | 発言者、時期、夫婦関係への影響を確認する |
この表はあくまで目安です。実際の慰謝料請求では、キスの回数だけでなく、交際期間、会う場所、LINEの内容、ホテルや宿泊の有無、夫婦関係への影響が総合的に見られます。
そのため、請求する側は、キスの証拠を単独で出すだけではなく、周辺事情と結びつけて主張を組み立てる必要があります。請求された側は、相手の主張が「キスだけの慰謝料」なのか、「キスを入口に肉体関係を推認する主張」なのかを見極める必要があります。
キス・ハグ・フェラ・肉体関係なし・LINEだけの違い
キスの問題は、フェラ・口淫、肉体関係なしの交際、LINEだけの関係と混同されやすいです。しかし、それぞれ主戦場が違います。ここを混ぜると、慰謝料請求の見通しも、反論の方向性も分かりにくくなります。
キス・ハグ・抱擁は、軽い身体接触として本記事で判断する
キス、ハグ、抱擁、手をつなぐといった行為は、日常感覚では不倫・浮気と受け止められやすいものです。ただし、法律上は、性交や性交類似行為そのものとは区別して考えます。
もっとも、軽い身体接触であっても、継続的な交際や親密なLINE、ホテル・宿泊などと結びつくと、慰謝料や証拠の問題として無視できなくなります。本記事では、このようなキス・ハグ・抱擁を中心に扱っています。
フェラ・口淫・手淫は、キスより性的関係に近い問題として扱う
フェラ、口淫、手淫などは、キスやハグよりも性的関係に近い行為です。そのため、キスだけの問題とは別に、性交類似行為として不貞行為や慰謝料請求の対象になるかが問題になります。
フェラ・口淫・性交類似行為の判断は、フェラは不倫・不貞行為になる?で詳しく解説しています。キスだけの事案と同じ感覚で処理しないように注意が必要です。
肉体関係なし・プラトニック不倫は、裁判例を含めて別に整理する
肉体関係がない交際全般、いわゆるプラトニック不倫の問題は、キスよりも広いテーマです。好意のあるメッセージ、頻繁な連絡、デート、夫婦関係への介入など、キス以外の事情が中心になることもあります。
肉体関係なしの交際で慰謝料が認められるか、裁判例ではどのように判断されているかは、プラトニックな不倫で請求された慰謝料の支払義務はあるか?で詳しく整理しています。本記事では、キスとの関係で必要な範囲だけを扱います。
LINEだけ・会っていない関係は、キスの証拠とは別の問題になる
LINEだけで会っていない、DMだけで親密なやり取りをしているという場合は、そもそもキスという身体接触もありません。この場合は、LINEの内容が夫婦関係の平穏を害するほどのものか、現実の肉体関係や密会を推認させるものかが問題になります。
LINEだけ・会っていない不倫については、LINEだけ・会ってない不倫は不貞行為?で整理しています。キス写真がある場合と、LINEしかない場合では、証拠の出発点が違います。
行為別に、不貞行為がどこから問題になるかを俯瞰したい場合は、不貞行為はどこから?も確認しておくと、キス以外の行為との位置づけが分かりやすくなります。
裁判例で見るキス・親密行為の評価
キスがある事案でも、裁判所は「キスをしたから当然に不貞行為」と判断しているわけではありません。キスが何を示す証拠なのか、肉体関係まで認定できるのか、肉体関係がなくても婚姻共同生活の平穏を害したといえるのかを分けて見ています。
キスや親密メールがあっても、性交渉までは認められなかった例
東京地裁平成24年11月28日判決では、腕を組んで歩く、路上でキスをする、額にキスをする、メールで「チュ」「ギュウ」といった表現を用いるなどの事情が問題になりました。
裁判所は、これらの事情から不適切な交際を疑うのは無理からぬ面があるとしつつも、性交渉の存在まで認めることは困難であり、不貞関係の存在は認められないと判断しました。一方で、親密なメールの送付行為は婚姻生活の平穏を害する違法な行為に当たるとして、慰謝料30万円を認めています。
この例は、キスや親密メールがあっても、直ちに不貞行為そのものが認定されるとは限らないことを示しています。同時に、不貞行為が否定されても、慰謝料が全く問題にならないとは限らないことも示しています。
キス・抱擁・身体接触と継続交際で慰謝料が認められた例
東京地裁平成28年9月16日判決では、肉体関係があったとまでは認められませんでした。しかし、交際が1年半近く続き、抱き合う、キスをする、服の上から身体を触るといった事情がありました。
裁判所は、その交際態様が、配偶者のある異性との交際として社会通念上許容される限度を逸脱しているとして、不法行為を認め、慰謝料50万円を認めました。
この例で重要なのは、キス一つだけが問題にされたのではなく、継続交際、抱擁、身体接触、既婚者との関係全体が評価された点です。キスだけの事案と、キスを含む親密交際の事案は分けて考える必要があります。
キスやハグの話があっても、証拠が曖昧なら否定される例
東京地裁平成28年9月13日判決では、夫が「ハグをした」「キスしてきて、その後付き合い始めた」と話したことや、好意をうかがわせるメールなどが問題になりました。
しかし、裁判所は、会話やメールの内容から直ちに性行為があったとは推認できないと判断しました。さらに、キスや抱きしめる行為があったとしても、具体的な態様が判然とせず、あいさつ程度の可能性も否定できないとして、不貞行為の推認を否定しました。
この例は、キスやハグという言葉が出てくるだけでは足りず、具体的な態様、前後の行動、直接証拠、証拠全体の文脈が重要であることを示しています。
肉体関係がなくても、婚姻への介入が強ければ慰謝料が高くなることがある
東京地裁平成20年12月5日判決では、性的肉体的交渉自体は認められませんでしたが、交際に加えて、別居や離婚を求める行動などが問題になり、慰謝料250万円が認められています。
これはキスだけの裁判例ではありません。むしろ、キスや軽い身体接触の有無だけでなく、相手方の婚姻関係にどの程度介入したかが重視される場合があることを示す例です。
裁判例を読むときは、金額だけを見て「キスでも高額になる」と単純化しないことが大切です。肉体関係の有無、交際期間、身体接触の程度、夫婦関係への影響、離婚や別居への関与などを分けて見る必要があります。
まとめ|キスは不倫感情と法律上の責任を分けて判断する
キスは、夫婦間の感情としては不倫・浮気と受け止められやすい行為です。しかし、慰謝料請求では、キスをしたかどうかだけで結論を出すのではなく、不貞行為、婚姻共同生活の平穏侵害、肉体関係を推認する証拠という3つの視点から判断する必要があります。
- キスだけでは、原則として法律上の不貞行為とは言いにくい
- キスだけでも、継続交際や身体接触があると慰謝料問題になることがある
- キス写真やLINEは、肉体関係の直接証拠ではなく親密性を示す証拠である
- ホテル・宿泊・性的LINEなどが重なると、肉体関係の推認が強まりやすい
- 請求された側は、本当にキスだけか、実際には肉体関係があるかで方針を分ける
キスだけで慰謝料請求された場合は、感情的に反論するよりも、証拠が何を示しているのか、キス以外の事情があるのか、請求額が妥当なのかを整理することが重要です。請求する側も、キスの証拠だけで結論を急がず、周辺事情と合わせて主張を組み立てる必要があります。
坂尾陽弁護士
キスの不倫・慰謝料に関する関連記事
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