不倫の違約金条項とは、示談書等において「不倫相手と接触をしない」旨の接触禁止条項に違反した場合に、「1回当たり100万円」を支払う等と定められる条項です。正確には接触禁止義務違反の違約金条項です。
不倫がバレたときに不倫の違約金条項にサインするよう求められることがあります。また、既に不倫の慰謝料を請求されたときに示談書で違約金条項に応じてしまったかもしれません。
高額な違約金条項に応じたものの、万が一違反した場合はどうなるだろうと不安に思われるかもしれません。この記事では不倫の違約金条項について解説します。
この記事は
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
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1. 違約金条項の有効性
そもそも不倫の違約金条項は有効なのでしょうか。
違約金条項は損害賠償額の予定(民法420条)として、原則として有効であると考えられています。
例えば、東京地裁平成25年12月4日判決は、「今後,…会うことはもちろん,一切の電話・メール・手紙・面会等で連絡をとることはしない。職務上においても必要最小限以外のコンタクトをとらないことを約束する」旨の接触禁止条項と違反した場合の違約金条項が定められていた事案でした。
この違約金条項の有効性について、裁判所は「違約金条項は,面会・連絡等禁止条項の違反について,違約金を課すものであると認められるところ,違約金は損害賠償額の予定と推定されるから(民法420条3項),その額については,面会・連絡等禁止条項が保護する原告の利益の損害賠償の性格を有する限りで合理性を有し,著しく合理性を欠く部分は公序良俗に反する」と指摘して原則として有効であるとしています。
2. 高額な違約金条項の一部無効
しかし、違約金条項において定められた違約金が高額すぎる場合には一部無効となります。
例えば、前述の東京地裁平成25年12月4日判決は違約金1000万円の定めは著しく過大であり、150万円を超える部分は「著しく合理性を欠き、公序良俗に反し無効である。」としています。
裁判所としては、接触禁止条項に違反して、再度不倫をした場合の慰謝料額は200万円程度、接触禁止条項に違反した場合の面会・電話・メール等で連絡を取った場合の慰謝料額はせいぜい50万円から100万円程度であると考えているようです。
従って、これを大幅に上回る違約金の定めは無効となります。
なお、裁判所は、違約金条項を定めた経緯について、慰謝料の2~3倍を違約金として定めるのが良いとインターネットで調べた点について、法的根拠はなく違約金の設定方法に合理性がないと厳しく指摘しています。
3. 無理矢理に違約金条項にサインさせられた場合の効力
また、違約金条項を含む合意書が無理矢理に作成されたものであれば、合意書・違約金条項を取り消すことができる可能性があります。
例えば、東京地裁平成29年3月15日判決は、不倫を理由に慰謝料600万円を支払う合意書を締結した事案です。
しかし、本件では不倫の現場に男性数名で深夜に乗り込み、勤務先に知らせて解雇させることもできると告げた上で合意書を締結した事情がありました。
裁判所は、恐怖感を感じさせて無理矢理に合意書を作成させたことは、「正当な権利行使として相当性を欠くものと言わざるを得ない」と指摘して、合意書を取り消すことができると判断しています。
4. まとめ:必ずしも違約金条項は有効ではない
以上の通り、違約金条項は有効とされているものの、あまりに高額過ぎるような場合は適正金額を超えた部分は一部無効とされたり又は無理矢理に合意書を締結した場合には取り消せるとされています。
もし不倫で示談交渉で違約金を応じてしまった場合でも、現実に高額な違約金を請求された場合は減額又は回避できる可能性があります。
具体的にどの程度の金額が妥当かは、違約金条項の金額、接触禁止条項違反の悪質性、違約金に応じた経緯等によります。
もし高額な違約金を請求されて納得がいかない場合は不倫慰謝料の減額に強い弁護士に相談することをご検討ください。
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