不倫相手と別れさせたい方へ|慰謝料請求・接触禁止・誓約書でできること

配偶者の不倫を知ったとき、「慰謝料を取りたい」という気持ち以上に、「とにかく不倫相手と別れてほしい」「もう会わないでほしい」という気持ちが強くなることがあります。夫婦関係を続けたい場合でも、離婚を考えている場合でも、不倫相手との関係が続いている限り、不安や怒りが消えないことは少なくありません。

もっとも、弁護士に依頼したからといって、裁判所や弁護士が不倫相手の意思に反して交際関係を直接終わらせるわけではありません。実務上の中心は、慰謝料請求、内容証明などの通知、示談交渉、接触禁止条項、誓約書を組み合わせ、不倫相手に関係を続けた場合の法的・経済的リスクを具体的に認識してもらい、任意の関係解消を目指すことです。

この記事では、不倫相手を別れさせる方法を探している方に向けて、弁護士ができること、裁判で直接「別れろ」と命じてもらえるのか、慰謝料請求や接触禁止の交渉をどのように進めるのかを整理します。

坂尾陽弁護士

感情的に連絡する前に、証拠と希望する解決内容を整理して、法的に安全な進め方を確認しましょう。
  • 裁判で不倫相手に「会うな」「同棲するな」と直接命じてもらうことは、一般にハードルが高いです。
  • 現実的には、慰謝料請求・通知書・示談交渉を通じて、任意の関係解消を目指します。
  • 接触禁止条項や誓約書は、不倫相手が合意して初めて実効的なルールになります。
  • 先に感情的な連絡をするより、証拠・相手情報・配偶者の態度を整理してから動くことが重要です。
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

不倫慰謝料に詳しい坂尾陽弁護士

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不倫相手と別れさせたいときに弁護士ができること

「不倫相手と別れさせたい」と相談される方の多くは、単にお金の問題だけを考えているわけではありません。慰謝料を請求したいという気持ちと同時に、二度と会わないでほしい、配偶者との連絡を断ってほしい、夫婦関係を立て直す前提を作りたいという希望を持っています。

弁護士が行うのは、別れさせ工作ではなく、不貞行為に基づく法的責任を前提に、慰謝料請求と再発防止の条件を交渉することです。たとえば、次のような対応が考えられます。

  • 慰謝料請求をする
    不倫相手に対し、不貞行為によって精神的苦痛を受けたことを理由に慰謝料を請求します。請求額や証拠の強さは、交渉全体の出発点になります。
  • 弁護士名義で通知書を送る
    口頭やLINEで感情的に伝えるのではなく、法的な請求として正式に申入れを行います。相手に事態の重大さを認識してもらう意味があります。
  • 示談交渉で接触禁止・連絡禁止を求める
    慰謝料の支払だけでなく、今後、配偶者に会わない、電話・LINE・SNSで連絡しないなどの条件を示談書に入れることを目指します。
  • 誓約書や違約金条項を設計する
    不倫相手が関係解消に応じる場合には、再接触時の違約金などを含めて、合意内容を文書化することがあります。
  • 交渉がまとまらない場合に訴訟を検討する
    相手が慰謝料請求や接触禁止に応じない場合には、慰謝料請求訴訟を検討することになります。

一方で、弁護士であっても、不倫相手の行動を物理的に止めたり、勤務先や家族への暴露を交渉材料にしたり、相手の意思に反して交際関係を強制的に断ち切ったりすることはできません。むしろ、そのような方法をとると、名誉毀損、プライバシー侵害、脅迫などの反撃を受けるおそれがあります。

そのため、この記事でいう「別れさせる」とは、強制や工作ではなく、慰謝料請求や示談交渉を通じて、不倫相手が任意に関係を解消し、今後の接触を控える合意を目指すことを意味します。

最初に決めるべきゴールは慰謝料・接触禁止・夫婦関係のどれか

不倫相手への対応を始める前に、まず整理すべきなのは「何を優先するか」です。慰謝料をできるだけ多く取りたいのか、不倫相手との接触を止めることを最優先にするのか、配偶者との夫婦関係を続けたいのかによって、請求額、通知文、交渉の順番、示談条件が変わります。

離婚しない場合は再発防止を重視する

離婚せずに夫婦関係を続けたい場合、不倫相手への慰謝料請求は、単に金銭を回収するためだけではありません。むしろ、今後の接触禁止、連絡禁止、口外禁止、違約金条項などを組み合わせ、夫婦関係を立て直すための環境を整えることが重要になります。

この場合、慰謝料額だけを前面に出しすぎると、不倫相手が強く反発し、交渉が長引くことがあります。反対に、早期解決を優先しすぎて接触禁止の条件を曖昧にすると、後から再接触が起きたときに対応しにくくなります。金額と再発防止条項のバランスを取ることが必要です。

離婚も考える場合は慰謝料請求の位置づけが変わる

離婚も視野に入れている場合は、不倫相手だけでなく配偶者への請求、離婚条件、財産分与、親権、養育費なども同時に問題になります。不倫相手への請求を先に進めるのか、配偶者との離婚協議を先に進めるのかは、証拠の強さ、配偶者の態度、今後の生活設計によって変わります。

不倫相手への慰謝料請求の条件や相場、証拠の考え方については、不倫・浮気相手への慰謝料請求のポイントで詳しく解説しています。この記事では、慰謝料請求を「関係解消のための交渉」としてどう使うかを中心に説明します。

慰謝料よりも接触禁止を優先したい場合

読者の中には、「慰謝料は多少下がってもよいので、とにかく二度と会わないでほしい」と考えている方もいます。このような場合、慰謝料額だけでなく、接触禁止条項や違約金条項を含む示談条件を中心に交渉することが考えられます。

たとえば、相手が早期解決を希望している場合には、一定の条件で慰謝料額や支払方法を調整する代わりに、今後の連絡・面会・SNSでの接触を控えることを示談書に明記するという進め方があります。これにより、単なる口約束ではなく、再接触時のリスクを見える形にできます。

ただし、接触禁止条項は、相手方が合意して初めて成立します。判決で当然に付けてもらえるものではなく、交渉上の条件として相手に了承してもらう必要があります。

裁判で不倫相手に「別れろ」と命じてもらえるか

不倫相手と別れさせたい方がまず知っておくべきなのは、裁判で不倫相手に対し、配偶者と会うな、同棲するな、交際をやめろと直接命じてもらうことは簡単ではないという点です。

裁判では、不貞行為によって受けた精神的苦痛について、慰謝料などの損害賠償を求めることが中心になります。これに対し、将来の面会や同棲そのものを事前に禁止する差止めは、相手の行動を直接制限する強い効果を持つため、慎重に判断されます。

慰謝料請求は認められても、同棲や面会の差止めは別問題

大阪地裁平成11年3月31日判決では、不貞相手に対する慰謝料請求とあわせて、夫との同棲又は面会の差止めが求められました。この事案では、不貞関係が長期にわたることなどを踏まえ、慰謝料300万円の支払は認められましたが、同棲・面会等の差止めは認められませんでした。

裁判所は、会うこと自体が直ちに違法になるとはいえないこと、差止めは相手の行動を事前かつ直接に禁止する強い効果を持つこと、精神的な損害は原則として事後の金銭賠償で補うべきものと考えられることなどを理由に、差止請求を退けています。

この裁判例から分かるのは、裁判所が不倫相手に対して「今後一切会うな」と命令してくれることを当然の前提にするのは危険だということです。裁判で中心になるのは、あくまで慰謝料請求です。

示談や和解なら接触禁止を合意できる余地がある

もっとも、裁判で直接命令してもらうことが難しいからといって、接触禁止を定めることが常にできないわけではありません。不倫相手が任意に応じる場合には、示談書や裁判上の和解の中で、今後の接触禁止・連絡禁止を合意する余地があります。

ここが、裁判での差止めと示談交渉の大きな違いです。判決では一方的に命じてもらいにくい内容でも、相手が合意すれば、示談書の条件として定めることができます。

そのため、不倫相手との関係を終わらせたい場合には、いきなり「裁判で別れさせる」ことを目指すのではなく、慰謝料請求を入口にして、示談の中で接触禁止や違約金条項を交渉する流れが現実的です。

不倫相手との関係解消を目指す現実的な進め方

不倫相手に「別れてほしい」と伝えるだけでは、相手が応じないこともあります。感情的な連絡をしてしまうと、証拠を消されたり、配偶者と口裏合わせをされたり、逆にこちらの発言を問題視されたりすることもあります。

現実的には、次の順番で準備を進めることが多いです。

  • 不倫の証拠と相手情報を整理する
  • 離婚するか、夫婦関係を続けるかの方針を考える
  • 慰謝料請求額と接触禁止の条件を設計する
  • 弁護士名義の通知書や内容証明で正式に申入れをする
  • 示談書・誓約書で接触禁止や違約金条項を文書化する

証拠と相手情報を整理する

最初に行うべきことは、証拠と相手情報の整理です。ホテルへの出入り写真、宿泊の記録、LINEやSNSのやり取り、配偶者や不倫相手の自認、旅行・外泊の記録、決済履歴、位置情報など、事案によって使える資料は異なります。

慰謝料請求をするには、不貞行為の存在、不倫相手が既婚者であることを知っていた又は知り得たこと、婚姻関係がすでに破綻していなかったことなどが問題になります。証拠が強いほど、慰謝料請求や接触禁止の交渉を進めやすくなります。

一方で、肉体関係の証拠がはっきりしない場合でも、交渉の余地が全くないとは限りません。LINE、SNS、二人きりの外出、親密なメッセージなどを踏まえて、慰謝料の見通しと関係解消を目的にした交渉方針を分けて考える必要があります。証拠が弱い場合の進め方は、肉体関係なし・証拠なしでも不倫相手と別れさせたい場合の交渉で詳しく整理しています。

切り出すタイミング

不倫相手に「配偶者と別れてほしい」と切り出すタイミングは、証拠を整理し、相手を特定し、請求方針を固めた後が基本です。証拠が不十分な段階で先に連絡すると、証拠隠し、口裏合わせ、連絡遮断につながることがあります。先に感情をぶつけるのではなく、弁護士名義の通知や示談交渉の中で、慰謝料請求とあわせて接触禁止を求める形にする方が安全です。

配偶者への対応と不倫相手への請求の順番を考える

不倫相手への対応を急ぐ前に、配偶者との関係をどうするかも整理しておく必要があります。配偶者が不倫関係を認めているのか、すでに別れる意思を示しているのか、逆に不倫相手との関係を続けようとしているのかによって、交渉の進め方は変わります。

たとえば、配偶者が不倫関係を認め、夫婦関係を続けたいと考えている場合には、配偶者から不倫相手への連絡をやめさせること、不倫相手に対しても接触禁止を求めることを並行して検討します。配偶者が不倫相手との関係を続けようとしている場合には、配偶者への対応と不倫相手への慰謝料請求をどの順番で進めるかを慎重に考える必要があります。

また、不倫相手にだけ先に請求する場合でも、配偶者が不倫相手と連絡を取り続けていると、示談後の接触禁止が機能しにくくなります。不倫相手との示談と、配偶者側の誓約や夫婦間のルール作りは、別々の問題でありながら、実務上は密接に関係します。

正式な通知で慰謝料請求と接触禁止を申し入れる

証拠と方針を整理したら、不倫相手に対して慰謝料請求と接触禁止の申入れを行います。自分で電話やLINEをする方法もありますが、感情的なやり取りになりやすく、言い方によっては脅迫や名誉毀損などの問題を指摘されることがあります。

弁護士名義の通知書や内容証明を使うと、不倫相手に対し、単なる感情的な要求ではなく、法的請求として正式に申入れを行うことができます。通知書では、慰謝料請求の理由、請求額、回答期限、今後の接触禁止を求める趣旨などを整理して伝えることになります。

もっとも、通知書の文面が強すぎると、相手が反発したり、交渉が硬直したりすることがあります。逆に弱すぎると、相手に事態の重大さが伝わりません。不倫相手への警告や通知のリスクについては、浮気相手・不倫相手を警告したい場合のやり方とリスクも参考になります。

慰謝料請求と接触禁止の条件を同時に設計する

不倫相手との交渉では、慰謝料額だけを先に決めてしまうのではなく、接触禁止・連絡禁止・違約金・口外禁止・清算条項などを含めて、全体の解決条件を設計することが重要です。

たとえば、不倫相手が早期解決を希望している場合には、示談で早期・穏便に解決する代わりに、今後配偶者に連絡しないこと、会わないこと、SNSで接触しないこと、違反した場合の違約金を定めることを求めることが考えられます。

このように、慰謝料請求は金銭を回収するためだけでなく、不倫相手に関係継続の法的・経済的リスクを認識してもらい、接触禁止を含む示談交渉に入るための入口として機能することがあります。

以下では、慰謝料請求が関係解消につながることがある理由と、接触禁止条項・誓約書をどのように使うかを具体的に整理します。

慰謝料請求が関係解消につながることがある理由

不倫相手に「配偶者と別れてほしい」と伝えるだけでは、相手が無視したり、感情的に反発したりして、かえって関係が見えにくくなることがあります。そこで実務上は、単なるお願いではなく、慰謝料請求という法的請求を出発点にして、関係継続のリスクを具体的に認識してもらう方法が考えられます。

慰謝料請求は、金銭を回収するためだけの手段ではありません。不倫相手に対し、不貞行為によって法的責任が生じること、解決しなければ裁判に進む可能性があること、関係を続ければさらに責任が重くなり得ることを正式に伝える意味があります。これにより、不倫相手が「このまま続けると大きな不利益がある」と理解し、接触禁止を含む示談交渉に応じるきっかけになる場合があります。

  • 不倫の責任を具体化できる
    不倫相手に対し、単なる感情的な抗議ではなく、不法行為に基づく慰謝料請求として問題を整理できます。
  • 裁判になるリスクを伝えられる
    示談に応じなければ、訴訟で請求される可能性があることを前提に、早期解決の動機を作れます。
  • 接触禁止を交渉条件にできる
    慰謝料額、支払時期、謝罪、接触禁止、違約金などをまとめて交渉し、関係解消に向けた合意を目指せます。
  • 再発時の不利益を明確にできる
    再度の接触や不貞があった場合に、追加請求や違約金が問題になることを示談書で明確にできます。

もちろん、慰謝料請求をしたからといって、必ず不倫相手が配偶者と別れるとは限りません。また、証拠が弱いのに過大な請求をすれば、相手が争う姿勢を強めることもあります。大切なのは、請求額の大きさだけで押すのではなく、証拠、婚姻関係の状況、不倫相手の対応、配偶者の態度を踏まえて、関係解消という目的に合う交渉条件を設計することです。

慰謝料額だけでなく、訴訟になるリスクも判断材料になる

不倫相手から見ると、示談に応じない場合には、慰謝料請求訴訟を起こされる可能性があります。訴訟になれば、答弁書や準備書面の作成、期日対応、証拠提出、弁護士費用、長期化の負担などが問題になります。金額だけでなく、時間的・心理的な負担も大きくなります。

そのため、弁護士から正式に慰謝料請求を受けた不倫相手は、「裁判で争うよりも、示談で早めに終わらせたい」と考えることがあります。その場面で、単に慰謝料を支払って終わりにするのではなく、今後の接触禁止・連絡禁止・違約金条項まで合意しておくことが、関係解消と再発防止のために重要です。

浮気相手・不倫相手への慰謝料請求の条件や相場については、浮気相手・不倫相手への慰謝料請求の条件・相場・証拠で詳しく整理しています。

「早期解決」と引き換えに接触禁止を求める考え方

示談交渉では、慰謝料額だけを単独で決めるのではなく、「早期・穏便に解決する代わりに、今後は配偶者に接触しない」という条件を組み合わせることができます。たとえば、不倫相手が一括で支払える金額に限界がある場合でも、分割払い、支払期限、謝罪文、接触禁止、口外禁止、違反時の違約金を含めて、全体として解決条件を作ることがあります。

このような交渉は、相手を威圧して無理に署名させるものではありません。あくまで、慰謝料請求を受けた不倫相手が、裁判を避けて早期に解決するために、任意で接触禁止を含む示談に応じるかどうかを判断するものです。だからこそ、通知書の内容、請求額、回答期限、示談書の条項を、法的に無理のない範囲で整える必要があります。

示談書で接触禁止・連絡禁止を合意する

不倫相手と別れさせたい場合に最も重要になりやすいのが、示談書の中に接触禁止条項や連絡禁止条項を入れることです。口頭で「もう会いません」と言わせるだけでは、後から約束の内容や範囲が争われやすくなります。示談書にしておけば、どのような接触を禁止するのか、例外を認めるのか、違反時にどうするのかを明確にできます。

ただし、接触禁止条項は、不倫相手の了承なく一方的に押し付けられるものではありません。裁判で慰謝料請求が認められたとしても、判決で当然に「今後一切会ってはいけない」という条項が付くわけではありません。接触禁止を実現する中心は、示談交渉や裁判上の和解で、不倫相手が任意に合意する場面です。

接触禁止条項で決める主な内容

接触禁止条項を作るときは、「会わない」「連絡しない」という抽象的な表現だけでは足りないことがあります。実際には、LINE、電話、SNS、メール、職場での会話、第三者を通じた連絡など、どこまでを禁止するかを整理する必要があります。

  • 禁止する行為
    面会、電話、LINE、メール、SNS、手紙、第三者を通じた連絡などをどこまで含めるかを決めます。
  • 業務上の例外
    同じ職場や取引先の場合には、業務上必要な連絡だけを例外にするか、連絡手段や範囲を限定します。
  • 違反時の対応
    再接触や再不貞があった場合に、違約金、追加慰謝料、証拠提出などをどう扱うかを整理します。
  • 証拠化の方法
    違反があった場合に備え、LINE、通話履歴、写真、領収書、位置情報などを残せる形にしておきます。

接触禁止条項の例文や、相手が拒否した場合の修正方法、同じ職場で業務上の接触が避けられない場合の設計については、接触禁止条項の例文・拒否・修正のポイントで詳しく解説しています。

接触禁止条項は関係継続の金銭的リスクを明確にする

接触禁止条項に違約金を組み合わせると、不倫相手にとって、関係を続けることの金銭的リスクが具体化します。単に「もう会わないでください」と求めるだけではなく、「合意後に連絡や接触をすれば、一定の金銭請求が問題になる」と明確にすることで、関係継続を思いとどまる実務上の重みが生じます。

裁判例のポイント

東京地裁令和4年9月22日判決では、不倫相手が「今後交際をやめ、正当な権利行使や業務上必要な場合を除き連絡・接触しない」と約束し、違反した場合には1回30万円の違約金を支払うという合意が問題になりました。裁判所は、LINEメッセージの送信について「1回」を1日単位で捉え、請求対象とされた78回分、合計2340万円の支払請求を認めています。

この裁判例は、接触禁止条項や違約金条項が、単なる形式的な約束にとどまらないことを示しています。不倫相手にとって、示談後も連絡を続けることが大きな金銭的リスクになり得ると分かれば、関係解消に向けた強い判断材料になります。

もっとも、どのような条項でも必ず同じような請求が認められるわけではありません。婚姻関係の状態、合意書の文言、違反行為の内容、証拠の残り方、請求対象期間などによって結論は変わります。だからこそ、接触禁止条項は、勢いで作るのではなく、後から証明できる形で具体的に設計することが大切です。

同じ職場・取引先の場合は例外を狭く決める

不倫相手が配偶者と同じ職場にいる場合や、取引先関係にある場合には、「一切連絡禁止」とだけ定めると、業務に支障が出たり、相手から現実的でないと反論されたりすることがあります。その場合には、業務上必要な連絡だけを例外とし、私的なLINEや二人きりの面会は避けるなど、例外を狭く決める必要があります。

たとえば、業務連絡は会社のメール又は社内チャットに限定する、勤務時間外の連絡を禁止する、二人きりでの食事や移動を禁止する、業務上必要な場合でも内容を記録に残す、といった形が考えられます。例外が広すぎると、接触禁止条項が形だけになってしまうため、実際の職場環境を踏まえて調整します。

一度解決しても不倫が続いた場合は再度請求できることがある

不倫相手に慰謝料請求をして示談や和解が成立しても、その後に同じ不倫相手との関係が続いてしまうことがあります。この場合、「一度解決したから、もう何もできない」と考える必要はありません。示談書や和解で清算されたのは、その時点までの不貞や紛争であり、その後の新たな不貞行為や接触禁止違反は、別途問題になることがあります。

この点は、不倫相手と別れさせたい読者にとって重要です。最初の慰謝料請求で相手が別れなかった場合でも、その後の関係継続に対して、再度の慰謝料請求や違約金請求を検討できる可能性があるためです。関係を続ければ追加の請求を受ける可能性があることは、不倫相手にとって大きな判断材料になります。

和解後も不貞関係が続いた裁判例

東京地裁平成22年12月22日判決では、不倫相手が、以前の裁判上の和解で、慰謝料の支払義務を認めるとともに、原告やその家族に一切接触しないことを約束していました。それにもかかわらず、和解後も原告の夫との不貞行為を継続したとして、あらためて慰謝料請求がされました。

裁判所は、不倫相手が前回和解で接触しないことを約束していたにもかかわらず、不貞行為を継続したことについて、違法性の程度が大きいと評価し、慰謝料250万円を認めています。これは、一度の和解や慰謝料請求で終わった後でも、その後に不貞関係が続けば、新たな責任追及が問題になり得ることを示す裁判例です。

実務上も、最初の示談書に接触禁止条項や違約金条項を入れておくと、再度接触した場合の対応がしやすくなります。条項がない場合でも、その後の新たな不貞行為について慰謝料請求を検討できることがありますが、条項がある方が「何を約束していたのか」「何に違反したのか」を説明しやすくなります。

再度請求を見据えて残しておきたい資料

再発時に請求できるかどうかは、示談書や和解条項の文言だけでなく、再接触・再不貞を示す証拠があるかにも左右されます。相手が約束を破ったと疑われる場合でも、感情的に問い詰めるだけでは、後から証明しにくくなることがあります。

  • 示談書・和解調書・誓約書の写し
  • 慰謝料や違約金の支払記録
  • LINE・メール・SNSのやり取り
  • 通話履歴・写真・宿泊や旅行の資料
  • 配偶者や不倫相手が認めた内容の記録

再度の不倫が疑われる場合には、まず資料を保全し、前回の示談書や和解内容と照らし合わせる必要があります。接触禁止条項違反や再不貞の詳しい判断は、接触禁止条項と違約金の設計とも関係します。

誓約書・違約金条項を使うときの考え方

不倫相手との関係解消を目指す場合、示談書とは別に、又は示談書の中で、誓約書・念書・違約金条項を使うことがあります。名称よりも重要なのは、何を約束したのか、誰が誰に対して義務を負うのか、違反した場合にどうなるのかが明確になっていることです。

誓約書は、不倫の事実、謝罪、今後の接触禁止、慰謝料の支払、違約金、口外禁止などを文書化するものです。口頭の約束よりも証拠として残りやすく、不倫相手にも「この約束を破れば追加の責任が問題になる」と認識してもらいやすくなります。

誓約書に入れる主な内容

誓約書を作る場合には、感情的な文言を並べるのではなく、後から見ても内容が分かるように整理します。典型的には、次のような項目を検討します。

  • 不倫の事実と謝罪
    いつ頃からどのような関係があったのか、相手が認める範囲を明確にします。
  • 慰謝料や解決金の支払
    金額、支払期限、分割払いの可否、遅れた場合の扱いを定めます。
  • 接触禁止・連絡禁止
    面会、電話、LINE、SNS、第三者を通じた連絡などの禁止範囲を整理します。
  • 違約金条項
    再接触や再不貞があった場合に、どのような金銭請求を予定するのかを定めます。
  • 口外禁止・清算条項
    不倫の事実や示談内容をみだりに第三者へ伝えないこと、示談後の債権債務を整理することを定めます。

不倫の誓約書や念書の書き方、示談書との違い、入れるべき条項については、不倫の誓約書・念書の書き方と注意点で詳しく解説しています。

違約金は「高ければよい」ではなく、守らせるために設計する

違約金条項は、不倫相手に約束を守ってもらうための重要な条項です。ただし、単に極端に高い金額を書けばよいわけではありません。何をしたら違反になるのか、1回とは何を意味するのか、業務上の例外を認めるのか、証拠をどう残すのかが曖昧だと、後から争いになりやすくなります。

たとえば、「連絡したら1回いくら」と定める場合でも、LINEのメッセージ1通ごとなのか、1日のやり取りを1回と見るのか、通話とメッセージを分けるのかなどが問題になります。東京地裁令和4年9月22日判決でも、LINEメッセージの「1回」をどのように捉えるかが争われ、裁判所は1日単位で考えるのが明確かつ合理的で相当であると判断しました。

違約金条項は、相手を困らせるための罰ではなく、関係を続けない約束を守らせるための仕組みです。金額だけでなく、禁止範囲、例外、証拠化、婚姻関係の状況まで見据えて設計することが、結果的に関係解消に近づく交渉になります。

示談後に関係を続けた場合の対応まで考えておく

不倫相手と示談書を作る目的は、文書を作って終わりにすることではありません。示談後に本当に接触が止まるか、配偶者側でも連絡を断てるか、再発した場合に何を証拠として残せるかまで考える必要があります。

そのため、示談書や誓約書を作る段階で、配偶者との間でも連絡手段を整理し、スマートフォンやSNSの扱い、職場での接触、出張・飲み会・二人きりの面会などのリスクを確認しておくことが大切です。不倫相手だけに約束させても、配偶者が連絡を取り続ければ、接触禁止が実効性を持ちにくくなるためです。

慰謝料請求、接触禁止条項、誓約書、違約金条項は、それぞれ別々の道具ではありますが、関係解消という目的から見ると一体で考えるべきです。次に、証拠が弱い場合や、相手への対応で避けるべき行動、弁護士に依頼するメリットを整理します。

証拠が弱い場合・肉体関係がはっきりしない場合

不倫相手と別れさせたいと考えていても、肉体関係の証拠が十分にそろっていないことがあります。ホテルの出入り写真、宿泊の証拠、肉体関係をうかがわせるメッセージなどが弱い場合、裁判で高額な慰謝料を認めてもらうことは慎重に考える必要があります。

もっとも、証拠が弱いからといって、常に何もできないわけではありません。LINE、SNS、二人きりの外出、親密な写真、宿泊をうかがわせる事情、配偶者の説明の変遷などを整理することで、任意交渉の材料になる場合があります。裁判で勝てるかどうかと、示談交渉で不倫相手が接触禁止や連絡禁止に応じるかどうかは、同じ問題ではありません。

  • 高額慰謝料にこだわりすぎない
    証拠が弱い場合には、最初から高額請求だけを前面に出すと、相手が全面的に争う可能性があります。
  • 関係解消を目的に据える
    金額だけでなく、今後の連絡禁止、面会禁止、SNSでの接触禁止などを交渉条件にすることが考えられます。
  • 通知文を慎重に設計する
    断定しすぎる表現や過大な請求は、相手の反発や反論を招きやすいため、証拠の強さに合わせた書き方が必要です。
  • 相手が否認した場合の次の手を考える
    追加証拠の収集、配偶者への確認、請求額の調整、示談条件の再設計などを準備しておくことが大切です。

肉体関係の証拠がない場合や、LINE・SNSなどの証拠しかない場合の交渉方針については、肉体関係なし・証拠なしでも不倫相手と別れさせたい場合の交渉で詳しく整理しています。

証拠が弱い場面ほど、「裁判で必ず勝つ」ことだけを基準にするのではなく、相手が任意にどこまで合意する可能性があるか、どの条件なら早期解決につながるかを見極める必要があります。

不倫相手への対応で避けるべき行動

不倫相手と別れさせたい気持ちが強いほど、すぐに連絡したい、相手の勤務先や家族に知らせたい、強い言葉で責めたいと感じることがあります。しかし、対応を誤ると、慰謝料請求や接触禁止の交渉が難しくなるだけでなく、逆に不倫相手から問題点を指摘されるおそれもあります。

注意

勤務先や家族への暴露、SNSへの投稿、待ち伏せ、威圧的な連絡、相手を帰さない交渉などは避けるべきです。慰謝料請求や接触禁止の交渉は、相手方の人格や生活を不当に侵害しない方法で進める必要があります。

勤務先や家族への暴露を交渉材料にしない

不倫相手が会社関係者である場合や、ダブル不倫の場合には、勤務先や家族に知らせれば相手が関係をやめるのではないかと考えることがあります。しかし、暴露をちらつかせて合意を迫ると、名誉毀損、プライバシー侵害、脅迫、業務妨害などを主張されるおそれがあります。

交渉で重要なのは、不倫相手に社会的な不利益を与えることではなく、慰謝料請求や接触禁止条項という法的な枠組みの中で、今後の関係を断つ合意を目指すことです。勤務先が関係するケースでも、まずは業務上必要な連絡と私的な連絡を分け、必要最小限の接触だけを認める設計が現実的です。

感情的な電話やLINEで先に責めない

不倫相手に直接電話やLINEをして、「別れてください」「もう会わないでください」と伝えること自体が、常に違法になるわけではありません。しかし、怒りに任せて強い言葉を使うと、相手がスクリーンショットや録音を保存し、後の交渉で「脅された」「過大な要求をされた」と主張することがあります。

また、証拠が十分にそろう前に不倫相手へ連絡すると、メッセージの削除、口裏合わせ、配偶者との連絡手段の変更が起きることもあります。まずは証拠と相手情報を整理し、どのタイミングで、どの文面で、何を求めるのかを決めてから動くことが重要です。

配偶者側の連絡手段も整理する

不倫相手だけに接触禁止を約束させても、配偶者が不倫相手に連絡を取り続ければ、関係解消は難しくなります。実務上は、不倫相手との示談だけでなく、配偶者との間でもスマートフォン、SNS、職場での接触、飲み会、出張、二人きりの面会などをどう管理するかを確認する必要があります。

不倫相手への警告や通知で避けるべき表現、内容証明を送る前の注意点については、浮気相手・不倫相手を警告したい場合のやり方とリスクも参考になります。

弁護士に依頼するメリット

不倫相手と別れさせたい場合に弁護士へ依頼する意味は、相手を威圧することではありません。証拠の強さ、請求額、通知文、示談条件、接触禁止条項、違約金条項を整理し、法的に安全な形で関係解消に向けた交渉を進めることにあります。

  • 証拠を評価できる
    裁判で使える証拠か、任意交渉の材料として使える証拠かを分けて検討できます。
  • 請求額と交渉条件を設計できる
    慰謝料額だけでなく、謝罪、接触禁止、違約金、口外禁止、清算条項を含めて全体の解決条件を組み立てられます。
  • 通知書の表現を調整できる
    相手に事態の重大さを伝えつつ、過度に威圧的な表現や不必要な暴露を避けた文面にできます。
  • 交渉窓口を一本化できる
    直接のやり取りを避けることで、感情的な衝突や不用意な発言のリスクを下げられます。
  • 示談書を実効的に作成できる
    接触禁止の範囲、業務上の例外、違約金の発生条件、証拠の残し方まで見据えた条項を検討できます。

弁護士に依頼したからといって、相手の意思に反して交際関係を物理的に断ち切れるわけではありません。しかし、慰謝料請求や接触禁止条項を含む示談交渉を通じて、不倫相手に関係継続の法的・経済的リスクを具体的に認識してもらい、任意の関係解消を目指すことはできます。

よくある質問

弁護士に依頼すれば必ず不倫相手と別れさせられますか?

必ず別れさせられるとはいえません。弁護士ができるのは、不倫相手に対して慰謝料請求や接触禁止の申入れを行い、示談書や誓約書によって今後の連絡・接触を控える合意を目指すことです。

ただし、不倫相手にとっては、慰謝料請求、裁判の可能性、再度請求、違約金条項などが具体的なリスクになります。そのため、事案によっては、法的請求をきっかけに関係解消へ進むことがあります。

裁判で不倫相手に接触禁止を命じてもらえますか?

慰謝料請求訴訟で判決が出る場合、裁判所が当然に「配偶者と会ってはならない」と命じてくれるわけではありません。大阪地裁平成11年3月31日判決でも、不倫相手に対する慰謝料300万円は認められましたが、夫との同棲・面会等の差止請求は棄却されています。

そのため、実務上は、裁判で直接命令してもらうよりも、示談交渉や裁判上の和解の中で、不倫相手が任意に接触禁止・連絡禁止を受け入れるかが重要になります。

接触禁止条項に違反したら本当にお金を請求できますか?

条項の内容、違反の証拠、婚姻関係の状況、金額の相当性などによって結論は変わります。ただ、東京地裁令和4年9月22日判決では、不倫相手が合意書作成後もLINEメッセージを送信し続けた事案で、接触禁止条項違反に基づき2340万円の支払請求が認められています。

このような裁判例は、接触禁止条項や違約金条項が単なる形式ではなく、関係を続けた場合の金銭的リスクを具体化する役割を持ち得ることを示しています。もっとも、どのような条項でも必ず有効になるわけではないため、条項の作り方は慎重に検討する必要があります。接触禁止条項の詳しい設計は、接触禁止条項の例文・拒否・修正のポイントで解説しています。

一度慰謝料請求をしても、不倫が続いたらどうなりますか?

一度、慰謝料請求や和解で解決したとしても、その後に同じ不倫相手との関係が続けば、再度の慰謝料請求や違約金請求が問題になることがあります。東京地裁平成22年12月22日判決では、裁判上の和解で原告や家族に一切接触しないことなどを約束したにもかかわらず、原告の夫と不貞行為を継続した事案で、慰謝料250万円が認められています。

示談や和解は、過去の不倫を清算するだけでなく、今後の再接触や再不貞を防ぐために作るものです。その後も関係が続いた場合に備え、違反時の証拠の残し方や再請求の方針まで考えておくことが大切です。

婚約中でも、相手と別れさせたい場合に慰謝料請求や違約金条項は使えますか?

婚約関係でも、婚約者と第三者との関係が問題になり、合意書や違約金条項が争われることがあります。東京地裁令和3年10月28日判決では、婚約者と不貞行為をした場合に1回100万円を支払うという合意について、6回分、合計600万円の支払が認められています。

ただし、婚姻関係と婚約関係では、保護される利益や立証すべき事情が異なります。婚約中のケースでは、婚約の成立、相手が婚約を知っていたか、合意書の作成経緯、違反行為の内容などを個別に検討する必要があります。

まとめ

  • 弁護士が不倫相手を強制的に別れさせることはできませんが、慰謝料請求や示談交渉で関係解消を目指すことはできます。
  • 裁判で直接「会うな」と命じてもらうことは難しいため、示談書や和解で接触禁止を合意できるかが重要です。
  • 接触禁止条項や違約金条項は、不倫相手に関係継続の法的・経済的リスクを認識してもらうための重要な手段になります。
  • 証拠が弱い場合は、高額慰謝料だけにこだわらず、関係解消・再発防止を目的に交渉方針を設計する必要があります。
  • 勤務先や家族への暴露、感情的な連絡、威圧的な交渉は避け、法的に安全な方法で進めることが大切です。

不倫相手と別れさせたいと考えるときは、まず証拠、相手情報、配偶者の態度、希望する解決内容を整理することが出発点です。そのうえで、慰謝料請求を重視するのか、接触禁止を重視するのか、早期解決を優先するのかを決めると、通知書や示談書の内容も具体化しやすくなります。

特に、接触禁止条項や違約金条項は、作り方を誤ると後から争いになりやすい部分です。金額の大きさだけでなく、禁止する行為、例外、証拠の残し方、再発時の対応まで見据えて、無理のない交渉方針を検討しましょう。

坂尾陽弁護士

不倫相手との関係解消を目指す場合は、証拠と希望条件を整理し、慰謝料請求と接触禁止を一体で検討しましょう。

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不倫相手との関係解消を目指す場合には、証拠の強さ、慰謝料請求、警告、誓約書、接触禁止条項を分けて確認すると、交渉方針を整理しやすくなります。

参考リンク

別れさせ屋そのものの違法性や、別れさせ工作契約に関する裁判例を知りたい場合は、事務所サイトの記事で別途解説しています。

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