浮気相手に慰謝料を請求したのに、相手が「払わない」「払えない」「納得できない」と言ったり、内容証明や連絡を無視したりすると、次に何をすればよいか分からなくなりやすいです。感情的にはすぐに強く催促したくなる場面ですが、実際には、今ある証拠や書面、相手の反応、支払期限の有無によって取るべき対応は変わります。
浮気相手が慰謝料を払わないときは、まず「まだ合意前なのか」「示談書・合意書はあるのか」「公正証書や判決などがあるのか」を分けて考えることが重要です。通常の示談書があるだけでは直ちに差押えに進めない場合がある一方、強制執行認諾文言付きの公正証書や判決・和解調書がある場合には、強制執行を検討する段階に進むことがあります。
この記事では、浮気相手・不倫相手が慰謝料を払ってくれない場合に、請求する側が確認すべき段階、理由別の考え方、内容証明や連絡を無視された場合の対応を整理します。ご自身が慰謝料を請求された側で「払わないとどうなるか」を知りたい場合は、不倫慰謝料を払わないとどうなるかの解説を確認してください。
- まず、示談前・通常示談書後・公正証書後・判決後のどの段階かを確認する
- お金がない場合と、責任に納得していない場合は対応を分けて考える
- 内容証明を無視されても、それだけで請求を諦める必要はない
- 通常の示談書だけでは、直ちに差押えできない場合がある
- 公正証書や判決などがある場合は、強制執行の入口を確認する
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

Contents
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- 土日・夜間の法律相談も実施
- 全国どこでも対応いたします
浮気相手が慰謝料を払わないときは、まず段階を確認する
慰謝料を払わない相手への対応は、相手が何を言っているかだけでなく、あなたが今どの段階にいるかで変わります。まだ示談前であれば、証拠や請求内容を整理して交渉を進める段階です。通常の示談書を作成済みであれば、合意した金額を支払わせる方法を検討します。公正証書や判決・和解調書がある場合は、強制執行に進めるかどうかが問題になります。
まずは、手元にある書面を確認してください。請求書や内容証明だけなのか、通常の示談書・合意書があるのか、公正証書にしているのか、裁判所の判決・和解調書・調停調書があるのかで、次に取れる手段が大きく変わります。
| 今の段階 | よくある状況 | 主な対応 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 示談前・交渉中 | 請求書や内容証明を送ったが、相手が否認・無視・拒否している | 理由別に反論や再請求を整理し、交渉が進まなければ裁判を検討する | 請求条件や証拠の詳細は、請求条件の解説で確認する |
| 通常の示談書・合意書がある | 支払約束はしたが、期限を過ぎても払わない | 残額の請求、再催促、訴訟・支払督促などを検討する | 通常の示談書だけでは、直ちに差押えできない場合がある |
| 公正証書がある | 分割払いの途中で支払いが止まった | 強制執行認諾文言の有無を確認し、差押えの可否を検討する | 長期分割では公正証書化が有効な選択肢になりやすい |
| 判決・和解調書・調停調書がある | 裁判や調停で決まったのに払わない | 給与・預貯金などへの強制執行を検討する | 詳しい手続は慰謝料の強制執行・差押えの問題になる |
判決、和解調書、調停調書、強制執行認諾文言付き公正証書など、強制執行に使える文書をここでは債務名義と呼びます。通常の示談書や合意書は重要な証拠になりますが、それだけで直ちに差押えできるとは限りません。
まだ話し合い・示談前の場合
まだ合意が成立していない段階では、相手が払わない理由を確認しながら、請求を続けるか、条件を調整するか、裁判を検討するかを判断します。相手が不倫を否認しているのか、既婚者だと知らなかったと言っているのか、単に連絡を無視しているのかによって、必要な対応は異なります。
この段階で大切なのは、相手の反応に合わせて感情的な連絡を重ねることではなく、請求できる根拠、証拠、請求額、回答期限を整理することです。不倫相手に慰謝料請求できる条件や証拠の基本は、不倫・浮気相手への慰謝料請求のポイントで詳しく確認できます。
示談書・合意書を作成済みの場合
示談書や合意書を作成したのに相手が払わない場合は、まず支払期限、支払方法、分割払いの有無、期限の利益喪失条項、遅延損害金の定めを確認します。たとえば、分割払いで「1回でも遅れたら残額を一括で支払う」という条項があるかどうかで、次に請求する金額や文面が変わります。
もっとも、通常の示談書があるだけでは、相手の給与や預貯金をすぐに差し押さえられるとは限りません。支払いが止まった場合には、示談書を証拠として訴訟などを行い、強制執行に使える文書を取得する必要が出てくることがあります。示談書の条項そのものを確認したい場合は、不倫示談書・合意書のテンプレートも参考になります。
公正証書を作成済みの場合
公正証書を作成している場合は、まず「強制執行認諾文言」が入っているかを確認します。強制執行認諾文言とは、相手が支払いを怠ったときに強制執行を受けてもよいと認める趣旨の文言です。この文言がある公正証書であれば、裁判を改めて起こさなくても強制執行を検討できる場合があります。
実務上、公正証書は、特に長期の分割払いにする場合に重要です。一括払いであれば通常の示談書を作成して支払われるケースも多いですが、長期分割では途中で滞るリスクがあるため、公正証書化を検討する価値が高くなります。公正証書の作り方や条項の考え方は、不倫慰謝料の公正証書の作り方で確認できます。
判決・和解調書・調停調書がある場合
裁判や調停で慰謝料の支払いが決まっているのに相手が払わない場合は、交渉だけで解決しようとするより、強制執行に進めるかを確認する段階です。判決、裁判上の和解調書、調停調書などがあれば、相手の給与、預貯金、不動産などを対象に差押えを検討できる場合があります。
ただし、強制執行をするには、勤務先、金融機関、口座、財産の所在などの手がかりが重要になります。財産がまったく分からない場合には、財産開示や第三者からの情報取得といった別の手続が問題になることもあります。ここから先の詳しい手続は、慰謝料の強制執行・差押えで確認してください。
債務名義があるかどうかで手段が変わる
同じ「慰謝料を払わない」という状況でも、債務名義がない段階と、すでに債務名義がある段階では対応が異なります。債務名義がない場合は、相手に支払いを求める交渉、内容証明、訴訟などが中心です。債務名義がある場合は、支払うよう説得するだけでなく、強制執行によって回収できるかを検討する段階に入ります。
そのため、最初から「差押えできるか」だけを考えるのではなく、まずは自分の手元にある文書が何かを確認しましょう。通常の示談書で止まっているのか、公正証書なのか、判決・和解調書なのかを確認するだけで、次に相談すべき内容も整理しやすくなります。
浮気相手が慰謝料を払わない理由別の対処法
浮気相手が慰謝料を払わない理由は、大きく分けると、責任そのものを争っている場合、請求額や請求先に納得していない場合、支払うお金がない場合、単に無視している場合に整理できます。ここで請求条件や抗弁を深く掘り下げすぎると、請求条件そのものの問題になってしまうため、この記事では「次に何を確認し、どこへ進むか」に絞って整理します。
不倫を否認している場合
相手が「不倫していない」と否認している場合は、まず不貞行為を裏付ける証拠があるかを確認します。ホテルへの出入り、肉体関係をうかがわせるメッセージ、探偵調査報告書、相手や配偶者の認める発言など、裁判になった場合にも説明できる資料が重要になります。
証拠が弱いまま強く請求しても、相手が支払いに応じないだけでなく、交渉がこじれることがあります。証拠や請求条件の詳細は別の解説で確認し、この記事では、否認が続くなら任意交渉だけでなく裁判を見据える段階だと押さえておきましょう。
既婚者と知らなかったと言っている場合
浮気相手が「既婚者だと知らなかった」と主張する場合は、相手に故意又は過失があるかが問題になります。たとえば、結婚指輪、子どもの話、SNS上の表示、同居状況、交際中の会話などから、既婚者であることを知っていた、又は通常であれば気付けたといえるかを確認します。
この点は請求条件の中でも重要な争点です。相手の主張をそのまま受け入れて諦める必要はありませんが、単に「知っていたはず」と述べるだけでは足りないこともあります。交際経緯や相手の認識を示す資料を整理したうえで、必要に応じて弁護士に確認するのが安全です。
夫婦関係は破綻していたと言っている場合
相手が「夫婦関係はすでに破綻していた」と主張する場合もあります。不倫慰謝料では、不貞行為の時点で婚姻関係がすでに破綻していたかどうかが問題になることがあります。ただし、夫婦げんかをしていた、離婚の話が出ていた、夫婦仲が悪かったというだけで、直ちに破綻していたといえるわけではありません。
別居の有無、別居期間、離婚協議や調停の時期、同居中の生活状況などを整理し、相手の主張が本当に成り立つのかを確認します。この論点も請求条件に関わるため、この記事では深掘りしすぎず、争いが続く場合は証拠を整理して裁判も視野に入れる場面と考えます。
自分だけ請求されるのは納得できないと言っている場合
浮気相手が「配偶者にも責任があるのに、自分だけ請求されるのは納得できない」と言うことがあります。しかし、不貞行為は配偶者と不倫相手の共同不法行為として問題になるため、請求する側が不倫相手に対して慰謝料を求めること自体が、当然に不当になるわけではありません。
もっとも、すでに配偶者から支払いを受けている場合や、離婚・別居の有無、婚姻関係への影響などによって、最終的に認められる金額は変わります。相手が「納得できない」と言っているだけなのか、法的な反論をしているのかを分け、必要に応じて請求額や証拠を見直しましょう。
お金がないので払えないと言っている場合
「払えない」と言われた場合でも、責任を争っているのか、お金がなくて払えないのかを分ける必要があります。責任を争っているのであれば、証拠や法的主張の問題です。一方で、不倫の責任自体は認めているが、資力がなく一括払いが難しいという場合は、分割払い、減額、支払期限、公正証書化を検討する場面になります。
特に長期の分割払いにする場合は、支払日、遅れた場合の扱い、残額を一括請求できる条件を明確にする必要があります。公正証書化できるかどうかも含め、現実的に回収できる条件を設計することが重要です。
内容証明や連絡を無視している場合
内容証明やLINE、電話、メールを無視されている場合は、相手が責任を争っているのか、支払う意思がないのか、対応を先延ばしにしているだけなのか分かりにくいことがあります。無視されたからといって請求が消えるわけではありませんが、同じ連絡を繰り返すだけでは進展しないことも多いです。
この場合は、回答期限を区切って再度連絡し、それでも反応がなければ裁判や弁護士依頼を検討する方向になります。次に、内容証明や連絡を無視された場合の対応をもう少し具体的に整理します。
内容証明や連絡を無視された場合の対応
内容証明を送ったのに相手が返事をしない、電話やメッセージに応じないというケースは珍しくありません。内容証明を無視された場合でも、それだけで慰謝料請求を諦める必要はありません。もっとも、すでに請求書や内容証明を送っているのであれば、この段階で改めて内容証明の書き方を細かく検討するより、次に進むための判断を整理することが大切です。
無視されたからといって請求を諦める必要はない
相手が無視している場合でも、慰謝料請求権が当然になくなるわけではありません。むしろ、相手が話し合いに応じないのであれば、任意交渉で解決できる見込みが低いと判断し、裁判などの次の手段を検討するきっかけになります。
ただし、無視されているからといって、短期間に何度も連絡したり、感情的な文面を送ったりすることは避けた方がよいです。連絡を重ねるよりも、請求内容に不足や矛盾がないかを再点検し、次にどの手段を取るかを整理しましょう。
催促するなら回答期限と次の手段を明確にする
追加で催促する場合は、「いつまでに」「何について回答してほしいのか」「回答がない場合にどのような手段を検討するのか」を明確にします。単に「早く払ってください」と繰り返すよりも、期限と次の手段を示した方が、相手に対応を促しやすくなります。
- 回答期限を区切る:数日から2週間程度など、状況に応じて期限を設定します。
- 請求内容を簡潔に再確認する:請求額、支払期限、振込先、回答方法を分かりやすく示します。
- 次の手段を予告する:回答がない場合は、弁護士への依頼や裁判を検討する旨を冷静に伝えます。
弁護士を通さずに請求している場合でも、無視が続くときは対応を切り替えるタイミングです。自力請求の流れや限界は、弁護士を通さず慰謝料請求できるかの解説も参考になります。
交渉が進まなければ裁判を検討する
回答期限を過ぎても相手が反応しない場合や、話し合いが進まない場合は、裁判を検討します。裁判では、不貞行為の有無、相手の故意・過失、婚姻関係への影響、慰謝料額などを証拠に基づいて判断してもらうことになります。
裁判というと大げさに感じるかもしれませんが、任意交渉に応じない相手から回収するには、判決や和解調書など、強制執行に使える文書を取得することが現実的な選択肢になることがあります。特に、相手が無視を続けている場合や、支払う意思が見えない場合は、早めに弁護士へ相談して、証拠と請求額を確認しておくとよいでしょう。
住所や送付先が分からない場合は別の問題として整理する
内容証明を無視されたのではなく、そもそも相手の住所や送付先が分からない場合は、未払い対応とは別に、相手を特定して請求できる状態にする必要があります。住所や氏名が不明なままでは、内容証明の送付や裁判手続が進めにくくなるためです。
相手の住所が分からない場合の調査や請求先の整理は、浮気相手・不倫相手の住所がわからない場合で確認できます。この記事では、相手を特定できており、請求したのに払わない・無視する場面を中心に進めます。
相手が無視をやめて連絡してきた場合、よく出てくるのが「お金がないので払えない」という返答です。この場合は、責任を争っているのか、資力不足で支払方法を調整する場面なのかを分けて考える必要があります。
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示談前に「お金がないので払えない」と言われた場合
浮気相手から「慰謝料を払えない」と言われた場合でも、その意味によって対応は変わります。責任そのものに納得していない、不倫の事実を争っている、金額が高すぎると考えているという意味であれば、証拠や請求条件を整理して交渉・裁判を検討する場面です。
これに対し、相手が不貞行為や支払義務を一定程度認めているものの、手元資金がなく一括では払えないというケースでは、現実に回収できる方法を検討することが重要になります。無理に一括払いだけを求め続けるよりも、分割払いにしたうえで、支払が止まったときの備えを作る方が、実際の回収につながることがあります。
「納得できない」と「お金がない」は分けて考える
まず、相手の言う「払えない」が、責任を争う意味なのか、資力不足の意味なのかを確認します。相手が「不倫していない」「既婚者と知らなかった」「夫婦関係は破綻していた」などと主張している場合は、単なる支払方法の問題ではありません。慰謝料請求が認められる条件や証拠を確認し、交渉で解決できない場合は裁判を視野に入れます。
一方で、相手が「責任は分かるが、今すぐ一括では払えない」と言っている場合は、支払方法の調整が中心になります。もっとも、相手の言い分をそのまま受け入れる必要はありません。いつまでに、いくらなら支払えるのか、収入や勤務状況に変化があるのか、まとまった支払ができる時期があるのかを確認し、支払条件を書面で明確にする必要があります。
分割払いは現実的な回収方法になり得る
相手に資力が乏しい場合、一括払いに固執すると、交渉が止まったまま時間だけが過ぎることがあります。請求する側としては納得しにくい面もありますが、相手に一定の収入があるなら、分割払いによって少しずつ回収する方が現実的な場合があります。
ただし、分割払いにする場合は、単に「毎月払う」という約束だけでは不十分です。支払日、毎月の金額、振込先、支払が遅れた場合の扱い、残額を一括で請求できる条件を具体的に決めておく必要があります。
- 支払総額:慰謝料として最終的にいくら支払うのかを明確にします。
- 分割回数と支払日:毎月何日までに、いくら支払うのかを具体的に定めます。
- 期限の利益喪失:一定回数の遅れがあった場合、残額を一括で請求できる条項を検討します。
- 遅延損害金:支払が遅れた場合の遅延損害金を定めるかを検討します。
- 連絡先・勤務先等の手がかり:将来の回収に必要となる情報を、無理のない範囲で確認します。
分割払いは、相手に猶予を与える代わりに、支払条件を明確にして回収可能性を高めるためのものです。安易に長期分割を認めるのではなく、滞納した場合の対応まで含めて合意することが大切です。
長期分割なら公正証書化を検討する
数回程度の短期分割であれば通常の示談書で進めることもありますが、長期の分割払いにする場合は、公正証書化を検討する価値が高くなります。特に、強制執行認諾文言付きの公正証書にしておけば、支払が滞ったときに、改めて裁判をしなくても強制執行を検討できる場合があります。
公正証書にするには相手の協力が必要であり、作成の手間や費用もかかります。それでも、長期分割では途中で支払いが止まるリスクがあるため、将来の滞納に備えるという意味で、公正証書化は実務上有力な選択肢です。詳しい作成方法や条項の考え方は、不倫慰謝料の公正証書の作り方で確認できます。
減額に応じるかは回収可能性も踏まえて判断する
相手が本当に支払えない場合、請求額を維持して裁判に進むか、一定の減額をして早期回収を優先するかを判断する場面があります。請求額に十分な根拠があり、相手に収入や財産があるなら、安易に減額する必要はありません。
一方で、相手に資力が乏しく、裁判で判決を得ても回収に時間や費用がかかる見込みが高い場合は、一定の減額と引き換えに、確実な支払条件を作る方がよいこともあります。減額に応じるかどうかは、証拠の強さ、請求額の相場感、相手の支払能力、解決までにかかる時間を合わせて検討します。
分割条件は書面で明確にする
分割払いの合意は、後で「そんな金額とは思っていなかった」「総額が分からなかった」「支払うつもりはなかった」と争われることがあります。そのため、支払総額、毎回の支払額、支払期間、支払方法をできるだけ具体的に残しておくことが重要です。
東京地裁令和2年6月16日判決では、不貞相手が慰謝料として毎月39万円を13回、合計507万円支払う旨の合意が認められました。この事案では、支払期間、回数、1回あたりの金額を認識していたことなどが重視されています。分割払いの合意では、後から争いになっても内容を説明できるよう、条件を具体的に書面化しておくことが大切です。
示談書・合意書を作成したのに払わない場合
示談書や合意書を作成したのに浮気相手が慰謝料を払わない場合は、まずその書面で何が決まっているかを確認します。支払総額、支払期限、分割条件、期限の利益喪失、遅延損害金、清算条項などが明確であれば、残額請求や法的手段を検討しやすくなります。
ただし、通常の示談書や合意書があるだけで、直ちに給与や預貯金を差し押さえられるとは限りません。差押えをするには、判決、和解調書、調停調書、強制執行認諾文言付き公正証書など、強制執行に使える文書が必要になるのが基本です。
口約束だけの場合
慰謝料を支払う約束を口頭でしただけの場合でも、LINE、メール、録音、振込履歴などから合意内容を立証できることがあります。もっとも、金額や期限が曖昧だと、後で争いになりやすくなります。
まだ相手が話し合いに応じる余地があるなら、支払総額や支払期限を明確にした示談書・合意書を作成することを検討します。示談書の基本的な作り方や条項は、不倫示談書・合意書のテンプレートで確認できます。
通常の示談書・合意書がある場合
通常の示談書がある場合は、まず支払期限を過ぎているか、分割払いの何回分が滞納しているか、期限の利益喪失条項があるかを確認します。期限の利益喪失条項があれば、一定の条件を満たしたときに、未払い残額を一括で請求できることがあります。
もっとも、通常の示談書は、合意内容を証明する重要な書面ではありますが、それだけで強制執行できるとは限りません。相手が任意に支払わない場合は、改めて催告したうえで、訴訟や支払督促などにより債務名義を取得することを検討します。
一括払いの約束で払わない場合
慰謝料を一括払いにする場合、通常は示談書を作成し、期限までに支払ってもらう形が多いです。一括払いでは、長期分割に比べると支払管理の問題は少ない一方、期限を過ぎても支払われなければ、残額全体をどう回収するかが問題になります。
相手が一括払いを約束したのに支払わない場合は、まず期限を明確にして催告し、それでも支払わないときは、訴訟などで債務名義を取得することを検討します。相手に支払能力があるのに払わないのか、本当に資力がないのかによって、交渉継続か法的手段かの判断も変わります。
長期分割を通常の示談書だけで作った場合
長期分割の示談を通常の示談書だけで作成している場合、途中で支払いが止まると、改めて回収手段を検討しなければなりません。相手が協力するなら、公正証書を作り直す、又は支払条件を再確認する合意書を作成することも考えられます。
ただし、すでに支払いが滞っている相手が、公正証書作成に協力するとは限りません。その場合は、通常示談書を証拠として、残額請求の裁判や支払督促を検討することになります。長期分割にする段階で公正証書化を検討しておくことが望ましいのは、このような滞納リスクがあるためです。
東京地裁平成28年1月29日判決では、300万円の和解契約後に150万円のみ支払われ、残額150万円の支払が認められました。他方で、和解金を支払わないことなどは債務不履行にすぎず、それ自体が新たな不法行為に当たるとは考えにくいとも判断されています。不払いに強い不満がある場合でも、まずは合意した金額の残額を回収する方法を検討することが中心になります。
公正証書・判決・和解調書があるのに払わない場合
公正証書、判決、和解調書、調停調書があるのに慰謝料を払わない場合は、任意交渉の段階から、強制執行を検討する段階に移ります。もっとも、ここで重要なのは「公正証書があるか」「裁判をしたか」という言葉だけではなく、その文書が強制執行に使える内容になっているかです。
公正証書は強制執行認諾文言の有無を確認する
公正証書がある場合でも、すべての公正証書で直ちに差押えができるわけではありません。慰謝料の支払義務に加えて、支払いを怠ったときは強制執行を受けてもよいという趣旨の強制執行認諾文言があるかを確認します。
強制執行認諾文言付きの公正証書がある場合は、相手が支払わないときに、給与や預貯金などへの強制執行を検討できることがあります。公正証書の確認ポイントは、不倫慰謝料の公正証書の作り方でも詳しく解説しています。
判決・和解調書・調停調書がある場合
裁判で判決が出ている場合や、裁判上の和解調書・調停調書で慰謝料の支払が決まっている場合は、その内容に基づいて強制執行を検討します。相手が「払いたくない」と言っているだけでは、決まった支払義務が当然になくなるわけではありません。
ただし、実際に差押えをするには、相手の勤務先、預貯金口座、不動産など、対象となる財産の手がかりが必要になります。債務名義があっても、相手に財産がない、又は財産の所在が分からない場合は、回収が難しくなることがあります。
強制執行の詳細は専用記事で確認する
強制執行では、給与、預貯金、不動産などが差押えの対象になり得ます。どの財産を対象にするかは、相手の勤務先や口座情報、不動産の有無、回収見込みによって変わります。
ここから先は、債務名義を使ってどのように回収するかという問題です。給与差押え、預貯金差押え、財産が分からない場合の対応は、裁判で決まった慰謝料を払わない相手への強制執行・差押えで確認してください。
弁護士に相談すべきタイミングと請求時の注意点
浮気相手が慰謝料を払わない場合でも、すべてのケースで直ちに裁判が必要になるわけではありません。ただ、相手が否認している、無視している、払えないと言っている、示談後に支払いが止まったという場合は、対応を誤ると解決までの時間が長くなりやすいです。
早めに相談した方がよいケース
次のような場合は、早めに弁護士へ相談することを検討してください。
- 相手が不倫の事実や既婚者であることの認識を否認している
- 内容証明や連絡を無視されている
- お金がないと言われ、分割払いにするか迷っている
- 長期分割にするため公正証書化を検討している
- 示談書を作成したのに支払いが止まった
- 判決・和解調書・公正証書があるのに払われない
弁護士に相談すると、証拠の見通し、請求額の妥当性、交渉を続けるべきか、裁判や強制執行に進むべきかを整理しやすくなります。自分で請求している場合でも、途中から弁護士に依頼することは可能です。
請求方法が強くなりすぎないようにする
慰謝料を払ってもらえないと、強い言葉で催促したくなることがあります。ただ、勤務先や親族へ不必要に連絡したり、SNSで事実を公表したり、感情的な文面を繰り返し送ったりすると、交渉がこじれる原因になります。
大切なのは、相手に圧力をかけることではなく、証拠、請求額、支払期限、次に取る法的手段を整理することです。請求方法に迷う場合は、文面や連絡方法を含めて弁護士に確認してから進めると安心です。
よくある質問
浮気相手が慰謝料を払わないときは何から始めるべきですか?
まず、今の段階を確認します。まだ示談前なのか、通常の示談書があるのか、公正証書や判決・和解調書があるのかで、取れる手段が変わります。そのうえで、相手が払わない理由を確認し、再催促、分割交渉、裁判、強制執行のどれを検討すべきか整理します。
慰謝料を払えないと言われたら分割にすべきですか?
相手がお金がないという意味で払えないと言っており、一定の支払意思や収入がある場合は、分割払いが現実的な回収方法になることがあります。ただし、長期分割にするなら、支払日、金額、遅れた場合の扱いを明確にし、公正証書化も検討した方がよいです。
示談書があるのに払わない場合は差押えできますか?
通常の示談書や合意書だけでは、直ちに差押えできない場合があります。相手が任意に支払わない場合は、示談書を証拠として、訴訟や支払督促などで債務名義を取得することを検討します。
公正証書があればすぐ差押えできますか?
公正証書があるだけでなく、強制執行認諾文言があるかを確認する必要があります。強制執行認諾文言付きの公正証書であれば、支払が滞ったときに強制執行を検討できる場合があります。
内容証明を無視されたらすぐ裁判に進むべきですか?
必ずすぐ裁判というわけではありません。まずは回答期限を区切って再催促し、請求内容に不足や矛盾がないかを確認します。それでも反応がない場合や、時効・証拠保全の問題がある場合は、早めに弁護士へ相談し、裁判を検討します。
相手の財産が分からない場合はどうすればよいですか?
勤務先、預貯金口座、不動産などの手がかりがないと、強制執行をしても回収が難しくなることがあります。判決や和解調書などの債務名義がある場合は、財産開示や第三者からの情報取得などを検討することがあります。詳しくは強制執行・差押えの記事で確認してください。
不払いを理由に追加で慰謝料請求できますか?
不払いに強い不満を感じるのは自然ですが、支払わないこと自体が当然に新たな慰謝料請求の理由になるとは限りません。通常は、合意した慰謝料の残額をどのように回収するかを中心に考えます。
相手が破産したら慰謝料は回収できませんか?
相手が破産・免責を受けた場合、慰謝料請求権をどこまで回収できるかは個別判断になります。不貞慰謝料について、東京地裁平成28年3月11日判決では、破産法上の非免責債権に当たらないとされた事例があります。破産が関係する場合は、回収可能性や今後の手続について早めに弁護士へ相談してください。
まとめ
浮気相手が慰謝料を払わない場合は、感情的に催促を続けるよりも、今の段階と相手の理由を分けて対応することが重要です。
- まず、示談前・通常示談書後・公正証書後・判決後のどの段階かを確認する
- 責任に納得していない場合と、お金がない場合では対応が異なる
- お金がない場合は、分割払いと公正証書化を検討する
- 通常の示談書だけでは、直ちに差押えできない場合がある
- 公正証書・判決・和解調書がある場合は、強制執行を検討する段階になる
弁護士に相談する際は、請求書や内容証明、示談書・合意書、公正証書、相手とのやり取り、支払履歴、相手の勤務先や口座などの手がかりを整理しておくと、次に取るべき手段を判断しやすくなります。
坂尾陽弁護士
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