不貞慰謝料の裁判で尋問期日が近づくと、「裁判官や相手方の弁護士から何を聞かれるのか」「うまく答えられなかったら不利になるのか」と不安になる方は少なくありません。特に、慰謝料を請求された不倫相手の立場では、不貞行為の有無、相手が既婚者だと知っていたか、LINEや調査報告書との矛盾、関係を解消したかなど、答え方によって裁判所の印象が変わり得る点が多くあります。
この記事では、不貞裁判の尋問で何を聞かれるのかを、慰謝料を請求された不倫相手、慰謝料を請求する側、不貞配偶者・証人になり得る人の立場別に整理します。前半では質問例を先に示し、その後に尋問になる場面や流れ、本人尋問と証人尋問の違いを解説します。
不倫慰謝料の裁判対応を扱ってきた弁護士の実務感覚では、裁判になった事件のすべてが尋問まで進むわけではありません。もっとも、尋問に進む事件では、陳述書、証拠、これまでの主張との整合性が厳しく確認されます。尋問は、暗記した答えを言う場ではなく、争点について一貫した説明ができるかを見られる場面です。
- 慰謝料を請求された不倫相手は、不貞の有無、既婚者認識、回数・期間、関係継続を聞かれやすい
- 慰謝料を請求する側は、発覚経緯、夫婦関係、精神的苦痛、請求額の根拠を聞かれやすい
- 不貞配偶者は、不倫相手との関係、既婚者であることを伝えたか、配偶者との夫婦関係を聞かれやすい
- 婚姻関係破綻は、不倫相手の認識だけでなく、夫婦関係が客観的に破綻していたかが重要になる
- 尋問で嘘や不自然な説明をすると、供述全体の信用性や和解判断で不利になるリスクがある
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

Contents
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不貞裁判の尋問では何を聞かれる?立場別の質問例
不貞裁判の尋問で聞かれる内容は、誰が尋問されるかによって変わります。慰謝料を請求された不倫相手、慰謝料を請求する側、不貞配偶者では、裁判所が確認したい事情が異なるためです。
もっとも、どの立場でも共通して重要なのは、質問に対してその場しのぎで答えるのではなく、陳述書、LINE、写真、調査報告書、録音、既払金の資料などと矛盾しないように説明することです。尋問は、単に事実を聞かれるだけでなく、「その人の説明を信用できるか」を見られる場面でもあります。
慰謝料を請求された不倫相手が聞かれやすい質問
慰謝料を請求された不倫相手は、裁判では被告として当事者本人尋問を受けることが多い立場です。特に、不貞行為があったか、相手が既婚者だと知っていたか、関係がどの程度続いたか、発覚後も関係を続けたかが聞かれやすくなります。
- 相手とは、いつ、どのような経緯で知り合いましたか。
- 相手が既婚者であることを、いつ、どのように知りましたか。
- 肉体関係を持った時期、場所、回数はどの程度ですか。
- ラブホテル、宿泊先、相手の自宅などに行った理由は何ですか。
- 肉体関係はなかったと主張する場合、ホテル滞在時間やLINEの内容をどのように説明しますか。
- 相手から、配偶者との夫婦関係についてどのように聞いていましたか。
- 不貞が発覚した後も、相手と連絡を取ったり会ったりしていましたか。
- 慰謝料、解決金、迷惑料などの名目で金銭を支払ったことはありますか。
- 陳述書に書いた内容と、今日の説明が違っている部分はありませんか。
これらの質問は、単に「不倫をしたかどうか」を確認するためだけのものではありません。裁判所は、不貞行為の有無、故意・過失、慰謝料額に影響する事情、反省の有無、供述の信用性を見ています。たとえば、「既婚者だと知らなかった」と主張する場合でも、指輪、家族の話、SNS、職場での噂、LINEのやり取りなどから既婚者だと分かる事情があれば、その点を具体的に聞かれることがあります。
また、不貞行為を否認している場合には、ラブホテルへの出入り、宿泊、自宅滞在、親密なLINE、写真などの客観証拠と説明が合っているかが重要になります。不倫相手本人が否認しても、不貞配偶者が肉体関係を認めている場合や、客観証拠と説明が合わない場合には、その供述だけで裁判所を納得させることは難しくなります。
慰謝料を請求する側が聞かれやすい質問
慰謝料を請求する側は、原告として本人尋問を受けることがあります。請求する側に対する尋問では、不貞を知った経緯、不貞発覚前の夫婦関係、不貞による精神的苦痛、請求額の根拠などが中心になります。
- 不貞が発覚する前の夫婦関係は、どのような状態でしたか。
- 同居、会話、家計、家事、子育てなど、夫婦としての生活実態はありましたか。
- 別居や離婚協議、離婚調停はありましたか。
- 不貞をどのように知りましたか。
- LINE、写真、調査報告書、自白など、どのような証拠で不貞を確認しましたか。
- 不貞発覚後、体調、精神面、仕事、家庭生活にどのような影響がありましたか。
- 婚姻関係を修復する意思はありましたか。
- 請求している慰謝料額の根拠は何ですか。
- 不貞配偶者から、すでに慰謝料や解決金の支払いを受けていますか。
請求する側の尋問で特に重要なのは、不貞発覚前の夫婦関係です。不貞慰謝料では、婚姻関係がすでに破綻していたかどうかが争われることがあります。この点は、不倫相手が「夫婦関係は破綻していると聞いていた」と言ったかどうかだけで決まるものではなく、実際に夫婦がどのような関係だったかが問題になります。
そのため、請求する側は、同居の有無、会話の状況、生活費の負担、家事や育児、別居の理由、離婚協議の有無、修復意思などを具体的に聞かれることがあります。単に「仲は悪くなかった」と述べるだけではなく、裁判所が当時の夫婦関係を具体的にイメージできるように説明する必要があります。
婚姻関係が破綻していたかどうかは、基本的には不倫をされた配偶者と不貞配偶者との客観的な夫婦関係の問題です。不倫相手が「破綻していると思っていた」と説明しても、それだけで当然に慰謝料責任を免れるわけではありません。
不貞配偶者・証人が聞かれやすい質問
不貞配偶者は、裁判の当事者になっている場合もあれば、当事者ではなく証人として尋問される場合もあります。不貞配偶者は、不倫相手との関係と配偶者との婚姻関係の両方を知っているため、尋問上は重要な人物になりやすいです。
- 不倫相手とは、いつ、どのように知り合いましたか。
- 肉体関係を持った時期、回数、期間、場所はどの程度ですか。
- 不倫相手に、自分が既婚者であることを伝えていましたか。
- 不倫相手に、配偶者との夫婦関係について何と説明していましたか。
- 不貞当時、配偶者と同居していましたか。
- 配偶者との間で、離婚協議や別居の話はありましたか。
- 配偶者は離婚を望んでいましたか。
- 不貞発覚後、不倫相手との関係を解消しましたか。
- 配偶者または不倫相手に、慰謝料や解決金を支払いましたか。
不貞配偶者の説明は、慰謝料を請求された不倫相手の説明と食い違うことがあります。たとえば、不倫相手が「既婚者だとは知らなかった」と述べている一方で、不貞配偶者が「早い段階で既婚者だと伝えていた」と証言する場合、裁判所は両者の説明の自然さ、LINEなどの客観証拠、発言の一貫性を見ます。
また、不貞配偶者は、夫婦関係が破綻していたかどうかについても聞かれます。ただし、片方が離婚を望んでいた、夫婦仲が悪かった、けんかが多かったというだけで、直ちに婚姻関係が破綻していたと評価されるわけではありません。尋問では、別居の有無、離婚協議の具体性、修復可能性、配偶者の意思などが確認されます。
不貞裁判で尋問になる場面と尋問の流れ
不貞慰謝料の裁判では、訴状、答弁書、準備書面、証拠、陳述書などによって争点を整理していきます。その過程で和解が成立すれば、尋問まで進まずに裁判が終わることもあります。反対に、重要な事実について当事者の説明が食い違い、書面や証拠だけでは判断しにくい場合には、本人尋問や証人尋問が行われることがあります。
尋問は、裁判の最初から行われるものではありません。通常は、主張と証拠の整理が進み、何が争点なのかがある程度明確になった後に行われます。不倫裁判全体の流れを先に整理したい場合は、不倫裁判全体の流れも確認しておくと、尋問がどの段階で行われるのかを理解しやすくなります。
不貞裁判で尋問になる確率
不貞慰謝料の裁判になったからといって、必ず本人尋問や証人尋問が行われるわけではありません。当事務所の取扱い・実務感覚では、不貞慰謝料訴訟のうち尋問まで進む事案は多くなく、不貞裁判で尋問にまで進む確率は体感としては10%前後です。
多くの事件では、書面と証拠で争点が整理され、裁判官の和解勧告や当事者間の交渉によって解決します。特に、不貞行為の有無に大きな争いがない場合、既婚者認識を争っていない場合、金額や分割払いの条件だけが問題になっている場合には、尋問前に和解で終わることもあります。
一方で、次のような争点が残る場合には、尋問に進む可能性があります。
- 肉体関係があったかどうかを強く争っている
- 相手が既婚者であることを知っていたかが争点になっている
- 婚姻関係が不貞前にすでに破綻していたかが争点になっている
- 不貞の期間、回数、悪質性について説明が大きく食い違っている
- 発覚後も関係が続いていたか、反省しているかが問題になっている
- 既に支払われた金額や弁済の評価について争いがある
- 陳述書や証拠の信用性について確認が必要になっている
尋問に進むかどうかは、当事者が望むかどうかだけで決まるものではありません。裁判所が、書面と証拠だけでは判断しにくい争点について、本人や証人から直接話を聞く必要があると考えるかが重要です。
坂尾陽弁護士
本人尋問と証人尋問の違い
本人尋問とは、裁判の当事者本人に対する尋問です。不貞慰謝料の裁判では、慰謝料を請求する側と、慰謝料を請求された側が当事者本人として尋問されることがあります。たとえば、不倫相手だけを相手に慰謝料請求訴訟を起こしている場合には、請求する配偶者と請求された不倫相手が本人尋問の対象になりやすいです。
証人尋問とは、裁判の当事者ではない人に対する尋問です。不貞配偶者がその裁判の当事者になっていない場合、不貞配偶者が証人として呼ばれることがあります。また、事案によっては、不貞の発覚経緯や夫婦関係を知る第三者が証人になることもあります。
実際の位置づけは、誰を相手に訴えたか、誰が裁判の当事者になっているかによって変わります。不貞配偶者と不倫相手の両方を相手にしている場合、不貞配偶者も当事者本人として尋問されることがあります。反対に、不倫相手だけを相手にしている場合、不貞配偶者は証人として尋問されることがあります。
読者にとって重要なのは、名称そのものよりも、自分が「当事者本人として聞かれるのか」「証人として呼ばれるのか」によって、質問の目的や法的リスクが少し変わるという点です。特に、証人は宣誓したうえで証言するため、虚偽の証言には重いリスクがあります。この点は、尋問で嘘をつくリスクの中で改めて整理します。
主尋問・反対尋問・裁判官の補充尋問の流れ
尋問は、一般的に、主尋問、反対尋問、裁判官の補充尋問という流れで進みます。どの段階でも、陳述書、準備書面、証拠との整合性が確認されます。
- 主尋問:自分側の弁護士から、陳述書に沿って事実関係や説明したい事情を聞かれます。
- 反対尋問:相手方の弁護士から、矛盾点、不自然な点、証拠と合わない点を中心に質問されます。
- 裁判官の補充尋問:裁判官が、判断に必要だと考える点や、説明が足りない点を確認します。
主尋問は、事前に準備した陳述書に沿って進むことが多いため、比較的答えやすい場面です。ただし、原稿を読む場ではありません。自分の言葉で、日付、場所、経緯、気持ち、支払いの有無などを説明する必要があります。
反対尋問では、相手方がこちらの説明の弱い部分を確認します。不倫相手の立場であれば、LINEの文言、ホテル滞在時間、既婚者と知る機会、関係継続の有無などを突かれることがあります。請求する側であれば、不貞発覚前から夫婦関係が悪化していたのではないか、慰謝料額が高すぎるのではないか、不貞配偶者から既に支払いを受けているのではないか、といった点を聞かれることがあります。
裁判官の補充尋問は、裁判官が心証を固めるために行う確認です。弁護士同士の質問で十分に明らかにならなかった点や、判決・和解案を考えるうえで必要な点が聞かれます。補充尋問で聞かれたことは、裁判官が関心を持っている争点である可能性があるため、落ち着いて、分かることと分からないことを分けて答えることが大切です。
尋問は、うまく話すための場ではなく、これまでの主張や証拠と矛盾しない範囲で、裁判所に事実関係を理解してもらう場です。尋問前には、陳述書を丸暗記するのではなく、争点ごとに「何を認めるのか」「何を争うのか」「証拠とどのように整合するのか」を整理しておく必要があります。
慰謝料を請求された不倫相手が尋問で聞かれること
慰謝料を請求された不倫相手の尋問では、単に「不倫をしたかどうか」だけが聞かれるわけではありません。不貞行為の有無、相手が既婚者であることを知っていたか、交際の期間や回数、不貞発覚後の対応、弁済や謝罪、関係を解消したかなど、責任の有無と慰謝料額に関わる事情が確認されます。
特に注意が必要なのは、尋問での説明が、陳述書、LINE、写真、調査報告書、録音、相手配偶者の供述などと照らし合わせて見られることです。尋問は「その場でうまく話す場」ではなく、これまでの主張と証拠を前提に、争点について一貫した説明ができるかを確認される場面です。
ここでは、慰謝料を請求された不倫相手の立場で、争点ごとに聞かれやすい質問と注意点を整理します。
不貞行為の有無について聞かれること
不貞行為の有無を争っている場合、尋問で最も中心になりやすいのは、肉体関係の有無です。請求する側がラブホテルへの出入り、宿泊、自宅滞在、LINE、写真、調査報告書などを証拠として出している場合、その証拠を前提にして、具体的な行動内容を聞かれることがあります。
- 肉体関係はありましたか。
- 相手と初めて肉体関係を持ったのは、いつ、どこですか。
- ラブホテルに入った理由は何ですか。
- 宿泊した理由や、自宅に長時間滞在した理由は何ですか。
- 調査報告書に記載された滞在時間や出入りの状況をどう説明しますか。
- 陳述書では性交渉はなかったと書いていますが、LINEの内容と矛盾しませんか。
- 不貞配偶者が肉体関係を認めている場合、その説明をどう考えますか。
ラブホテルに入った事実がある場合には、裁判所はその利用目的をかなり具体的に確認します。東京地裁平成30年1月23日判決では、成人の男女がラブホテルを利用したときは、特段の事情がない限り性交渉が行われたと推認されるとし、マラソン後の疲労回復やマッサージ目的で入ったという説明について、客観的裏付けを欠くとして採用しませんでした。
そのため、「休んでいただけ」「相談していただけ」「体調が悪かっただけ」と説明する場合には、その説明を支える客観的な事情があるかが問題になります。単に性交渉を否定するだけではなく、ホテルに入る前後の行動、滞在時間、支払方法、LINEの内容、相手方の説明との整合性まで確認されることがあります。
もっとも、男女が同じ場所にいたからといって、常に不貞行為が認定されるわけではありません。東京地裁平成28年1月29日判決では、男性が女性の居室に午後7時近くから午後11時30分近くまで滞在していたものの、宿泊せず帰宅したこと、両名が共著論文を執筆していたこと、いずれも精神科医として就労していたことなどから、仕事に関する雑談や家庭相談で滞在が長引いた可能性を否定できず、直ちに性的関係を推認することは困難とされました。
つまり、尋問では「ホテルだから必ず負ける」「自宅だから必ず大丈夫」という単純な見方ではなく、場所、時間、前後の行動、関係性、証拠の内容を踏まえて、説明の合理性が確認されます。不貞行為の認定に関する詳しい考え方は、不貞行為が裁判でどう判断されるかでも整理しています。
既婚者であることを知っていたかについて聞かれること
不倫相手側が「相手が既婚者だとは知らなかった」と主張している場合、尋問では、実際に知っていたかだけでなく、知ることができた事情があったかも確認されます。不倫慰謝料請求では、故意または過失が問題になるため、相手が既婚者であることを知らなかったとしても、通常の注意を払えば分かったのではないかという点が争われることがあります。
- 相手が既婚者であることをいつ知りましたか。
- 相手から家族や配偶者の話を聞いたことはありますか。
- 指輪、SNS、職場での会話、子どもの話などから既婚者だと分かる事情はありませんでしたか。
- 相手の自宅、勤務先、休日の予定について不自然に感じたことはありませんでしたか。
- 既婚者だと分かった後も、連絡や交際を続けましたか。
- 既婚者だと知らなかったと主張する根拠は何ですか。
たとえば、職場で相手の家族の話を聞いていた、SNSに配偶者や子どもの写真があった、休日や夜間の連絡方法が不自然だった、相手が結婚指輪をしていた、といった事情があると、「知らなかった」という説明の信用性が問題になります。
他方で、相手が独身だと明確に説明していた、交際アプリや紹介の場で独身として振る舞っていた、既婚者であることをうかがわせる事情がなかった、という場合には、その経緯を具体的に説明する必要があります。尋問では、「そう思っていた」だけでなく、なぜそう思ったのか、どのような確認をしたのかが聞かれます。
既婚者だと知っていたかは、不貞行為の有無とは別の争点です。肉体関係を認める場合でも、既婚者認識を争うことがありますし、逆に既婚者だと知っていたことを認めても、肉体関係の有無を争うこともあります。尋問前には、どの事実を認め、どの事実を争うのかを分けて整理しておくことが重要です。
交際期間・回数・関係継続について聞かれること
不貞行為があったこと自体に争いがない場合でも、交際期間、回数、頻度、不貞発覚後の関係継続は、慰謝料額に影響し得ます。そのため、慰謝料額だけが争点になっている事件でも、尋問で不貞関係の具体的な内容を聞かれることがあります。
- 交際はいつから始まり、いつ終わりましたか。
- 肉体関係の回数はどの程度ですか。
- 会っていた頻度はどの程度ですか。
- 不貞発覚後も連絡を取っていましたか。
- 関係を解消したのはいつですか。
- 現在も会っている、連絡を取っている、SNSでつながっている事実はありませんか。
- 接触しない約束をしたことはありますか。
交際期間が長い、回数が多い、不貞発覚後も関係を続けている、請求を受けた後も接触しているといった事情は、請求する側から見ると慰謝料増額を主張する材料になります。逆に、関係が短期間で終わっている、発覚後すぐに関係を解消している、連絡を取っていないことが客観的に説明できる場合には、その事情を整理しておく意味があります。
尋問では、曖昧な表現が不利に働くことがあります。「何回か会った」「しばらく続いた」という説明だけでは、裁判所が事案の重さを判断しにくいため、日付、期間、頻度、発覚後の対応をできる範囲で具体的に確認されます。
もっとも、記憶がない部分を無理に作って答える必要はありません。分からないことは分からないと答えたうえで、記憶している範囲、証拠から確認できる範囲、相手の説明と一致している範囲を分けて話すことが大切です。
婚姻関係について何と聞いていたかを聞かれること
不倫相手の尋問では、不貞配偶者から夫婦関係について何と聞いていたかも質問されることがあります。たとえば、「配偶者とは別居している」「離婚協議中である」「夫婦関係は終わっている」と聞いていたか、その説明を信じた理由は何か、といった点です。
- 相手から、配偶者との夫婦関係について何と聞いていましたか。
- 別居している、離婚協議中である、家庭内別居であるなどと聞いていましたか。
- その説明を裏付ける事情を確認しましたか。
- 相手の配偶者が離婚を望んでいると聞いていましたか。
- 実際の同居状況や家族生活について知っていたことはありますか。
ここで注意すべきなのは、婚姻関係破綻の問題を、不倫相手の主観だけで考えないことです。最高裁平成8年3月26日判決は、夫婦の婚姻関係が肉体関係の当時すでに破綻していた場合には、特段の事情のない限り、第三者は他方配偶者に対して不法行為責任を負わないとしています。しかし、尋問で中心になるのは、不倫相手が「破綻していると思っていたか」だけではなく、不倫をされた配偶者と不貞配偶者の婚姻関係が客観的に破綻していたかです。
不倫相手が「夫婦関係は終わっていると聞いていた」と説明しても、それだけで直ちに責任を免れるわけではありません。実際に同居していたか、離婚協議がどの程度進んでいたか、不倫をされた配偶者が離婚を望んでいたか、夫婦生活や家族生活の実態がどうだったかが問題になります。
そのため、不倫相手の立場では、「自分が何と聞いていたか」と「実際に夫婦関係がどうだったか」を分けて準備する必要があります。前者は既婚者認識や過失の有無に関係し得ますが、後者は本来、不倫をされた配偶者と不貞配偶者の夫婦関係そのものに関する問題です。
東京地裁平成30年1月23日判決でも、不貞配偶者が離婚を望み、離婚に向けて行動していた事情があった一方で、不倫をされた配偶者が離婚を望んでいなかったことなどから、性交渉時点で婚姻関係が破綻していたとは認められませんでした。このように、「一方が離婚したいと思っていた」というだけでは足りず、夫婦双方の関係、別居の有無、離婚協議の実態などが見られます。
尋問でこの点を聞かれたときは、「相手からそう聞いていた」と「自分で確認した事実」を混同しないことが重要です。実際には確認していないのに、確認したかのように話すと、他の供述の信用性にも影響します。
慰謝料額・弁済・謝罪・反省について聞かれること
不貞行為の有無や既婚者認識に大きな争いがない場合、尋問の中心が慰謝料額に移ることがあります。この場合、請求額が相当か、減額事情があるか、既に支払われた金銭があるか、関係を解消したかなどが聞かれます。
- 既に慰謝料や解決金を支払いましたか。
- 不貞配偶者が慰謝料を支払ったことを知っていますか。
- 謝罪をしたことはありますか。
- 不貞発覚後、関係を解消するために何をしましたか。
- 今後接触しない約束をする意思はありますか。
不倫慰謝料では、不貞配偶者と不倫相手が共同不法行為者として扱われる場面があります。そのため、不貞配偶者が既に一定額を支払っている場合、その支払いが損害の填補としてどのように考慮されるかが問題になることがあります。
また、謝罪や反省、関係解消の有無は、慰謝料額だけでなく和解条件にも関係します。たとえば、金額だけでなく、接触禁止、口外禁止、分割払い、期限の利益喪失などの条項をどうするかにも影響します。尋問で不誠実な態度と受け取られると、金額交渉や和解の雰囲気にも悪影響が出る可能性があります。
他方で、謝罪したから必ず減額される、反省を述べれば必ず有利になる、というものでもありません。裁判所は、謝罪の有無だけでなく、不貞関係の内容、発覚後の対応、支払い状況、証拠との整合性を総合的に見ます。
証拠が弱い場合でも、尋問での説明方針を整理しておく
請求する側の証拠が弱い場合でも、尋問での答え方を軽く考えるべきではありません。証拠が弱いからといって、すべてを曖昧に否定すればよいわけではなく、認める事実、争う事実、記憶がない事実を分ける必要があります。
たとえば、「会ったことはあるが肉体関係はない」「ホテルには入ったが性交渉はない」「既婚者だと知らなかった」「既婚者だと知った後は関係を解消した」など、反論の内容によって尋問で聞かれることは変わります。自分の反論がどの争点に関わるのかを理解しないまま答えると、重要な点で説明が揺れやすくなります。
証拠が弱い場合の反論は、単なる否認ではなく、相手の証拠の信用性、証拠から推認できる範囲、代替的な説明の合理性を整理する必要があります。証拠への反論の考え方は、不倫慰謝料の証拠が弱い場合の反論で詳しく整理しています。
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不倫相手が尋問で嘘をつくとどうなるか
慰謝料を請求された不倫相手の立場では、「本当のことを話すと不利になるのではないか」「少しごまかせば何とかなるのではないか」と考えてしまうことがあるかもしれません。しかし、尋問で嘘をつくことは、基本的にリスクしかありません。
尋問では、相手方の弁護士や裁判官が、証拠、陳述書、準備書面、不貞配偶者の供述と照らしながら質問します。一つの質問だけを乗り切ればよいわけではなく、時系列、場所、連絡内容、支払い、関係継続の有無などを複数の角度から確認されます。
裁判官の前で嘘をつくことは現実的に難しい
法廷での尋問は、日常会話とはまったく違います。宣誓をしたうえで、裁判官の前で、相手方の弁護士から具体的な質問を受けます。緊張した状況の中で、証拠と矛盾しないように作り話を続けることは非常に難しいものです。
裁判官は、日常的に当事者や証人の供述を聞き、証拠との整合性や説明の自然さを判断しています。話し方の上手さだけで判断するわけではありませんが、重要な部分で説明が変わる、不自然な回避が続く、証拠と合わない説明をする、といった場合には、供述の信用性が下がる可能性があります。
特に不貞裁判では、LINE、写真、調査報告書、ホテルの利用状況、支払い履歴、不貞配偶者の供述など、供述と照合される材料が多くなりがちです。嘘をつくと、その嘘を維持するために別の嘘が必要になり、結果として説明全体が崩れることがあります。
不貞配偶者の供述や客観証拠と矛盾するリスク
不倫相手が不貞行為を否認しても、不貞配偶者が肉体関係を認めている場合があります。また、不貞配偶者が訴訟の当事者ではなく証人として出てくる場合でも、その証言が裁判所の判断に影響することがあります。
- 不倫相手は否認しているが、不貞配偶者が肉体関係を認めている。
- 「ホテルでは休んでいただけ」と説明しているが、LINEでは性的関係を前提にしたやり取りがある。
- 「既婚者だと知らなかった」と説明しているが、家族や子どもの話をしているメッセージがある。
- 「関係は終わった」と説明しているが、不貞発覚後も連絡や面会が続いている。
- 陳述書では覚えていないと書いたのに、尋問では詳細に説明している。
このような矛盾が出ると、争っている一点だけでなく、他の供述全体にも疑いが向けられます。裁判所は、ある重要部分について虚偽や不自然な説明があると、その人の説明をどこまで信用できるかを慎重に見ることになります。
不貞の有無を争う場合には、不倫相手の説明だけでなく、不貞配偶者が何を話すかも重要です。不倫相手が否認していても、不貞配偶者が自白し、客観証拠とも整合する場合には、不倫相手の否認だけで不貞認定を避けることは難しくなります。
尋問で嘘をつくと、慰謝料額や和解交渉にも影響することがある
尋問で嘘をついたと見られた場合のリスクは、不貞行為の有無の判断だけではありません。反省していない、不誠実である、関係を軽く見ていると受け取られると、慰謝料額や和解交渉で不利に働く可能性があります。
もちろん、尋問で説明が不十分だったからといって、直ちに慰謝料が増額されると単純に考えるべきではありません。慰謝料額は、婚姻期間、不貞期間、回数、離婚の有無、未成熟子の有無、既払金、当事者の対応などを総合して判断されます。
しかし、重要な争点で虚偽の説明をしたと見られると、供述全体の信用性が下がり、減額主張が通りにくくなることがあります。また、相手方が和解に応じにくくなったり、裁判官からの和解案が厳しくなったりする可能性もあります。
尋問で大切なのは、自分に有利なことだけを強調することではありません。不利な事実がある場合でも、それをどう位置づけ、どの範囲で争い、どの範囲で認めるのかを整理することです。無理に全部を否定するより、争点を絞った方が、結果として現実的な解決につながることがあります。
裁判所の尋問手続で嘘をついた場合は罰則がある
尋問で嘘をつくリスクには、供述信用性や和解への影響だけでなく、法的なリスクもあります。慰謝料を請求された不倫相手が訴訟の当事者として尋問される場合と、不貞配偶者などが証人として尋問される場合では、問題になる制度が異なります。
民事訴訟法209条は、宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所が10万円以下の過料に処することができると定めています。また、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をした場合には、刑法169条の偽証の問題が生じ得ます。
もっとも、記憶違い、言い間違い、曖昧な記憶が直ちに虚偽陳述になるわけではありません。重要なのは、分からないことを無理に断定しないこと、記憶と推測を分けて話すこと、証拠で確認できる事実と自分の記憶を混同しないことです。
尋問で「覚えていない」と答えること自体が悪いわけではありません。ただし、本当は覚えている重要事実を隠すために「覚えていない」と繰り返すと、証拠や他の供述との関係で不自然さが目立つことがあります。
嘘をつかないために、事前に説明方針を整理する
尋問で嘘をつかないためには、事前に説明方針を整理しておくことが重要です。ここでいう説明方針とは、作り話を準備することではなく、証拠と主張を踏まえて、どの事実を認め、どの事実を争い、どの事実は記憶がないと説明するのかを明確にすることです。
- 認める事実と争う事実を分ける
- 日付・場所・回数を時系列で確認する
- 陳述書と尋問で説明が変わらないようにする
- LINEや調査報告書と矛盾する点を確認する
- 不貞配偶者の供述と食い違う可能性を確認する
尋問で不利な印象を与えた場合、判決や和解に影響することがあります。裁判で不利になった場合のリスクや、負けた後の支払い・強制執行などについては、不倫慰謝料裁判で負けた場合のリスクも参考になります。
尋問は、相手を言い負かす場ではありません。裁判所に対して、証拠と矛盾しない範囲で、事実関係を誠実に説明する場です。とくに慰謝料を請求された不倫相手の立場では、嘘で争点を広げるよりも、争うべき点と認めるべき点を整理し、現実的な解決につながる説明を準備することが重要です。
慰謝料を請求する側が尋問で聞かれること
慰謝料を請求する側の尋問では、「不倫をされた側だから、つらかったことを話せば足りる」というわけではありません。不貞が発覚した経緯、夫婦関係の状態、証拠の取得経緯、精神的苦痛、請求額の根拠、既に受け取った金銭の有無などを、相手方から具体的に確認されることがあります。
特に、相手方が「もともと夫婦関係は破綻していた」「証拠だけでは不貞行為が認定できない」「慰謝料額が高すぎる」「不貞配偶者から既に支払いを受けている」と反論している場合、請求する側の尋問は重要になります。裁判所は、請求する側の供述が、証拠や不貞配偶者の説明と整合しているかを見ています。
ここでは、慰謝料を請求する側が尋問で聞かれやすい内容を、争点ごとに整理します。
不貞発覚前の夫婦関係について聞かれること
慰謝料を請求する側に対して最も重要な質問の一つが、不貞発覚前の夫婦関係です。相手方が婚姻関係の破綻を主張している場合、裁判所は、不倫相手がどう思っていたかだけでなく、夫婦が実際にどのような関係だったのかを確認します。
- 不貞が発覚する前、配偶者と同居していましたか。
- 夫婦間で会話、食事、家事、生活費の分担はありましたか。
- 夫婦関係を修復する意思はありましたか。
- 別居していた場合、その時期と理由は何ですか。
- 離婚協議、離婚調停、親族間の話合いはありましたか。
- 不貞発覚前から婚姻関係が破綻していたと言われた場合、どの事情から反論しますか。
婚姻関係が破綻していたかどうかは、慰謝料を請求された不倫相手の主観だけで決まるものではありません。中心になるのは、慰謝料を請求する側と不貞配偶者との客観的な夫婦関係です。同居していたか、別居の有無と理由、離婚協議の具体性、夫婦双方の離婚意思、家計や家事の実態、子どもとの生活、家族行事、修復に向けた行動などが見られます。
たとえば、不貞配偶者が一方的に離婚を望んでいたとしても、請求する側が離婚を望んでおらず、同居や日常生活が一定程度続いていたのであれば、直ちに婚姻関係が破綻していたとはいえません。東京地裁平成30年1月23日判決でも、不貞配偶者が離婚に向けて行動していた事情があった一方で、不倫をされた配偶者が離婚を望んでいなかったこと、同居中の生活実態があったことなどが重視され、性交渉時点で婚姻関係が破綻していたとは認められませんでした。
そのため、請求する側は、「つらかった」という気持ちだけでなく、不貞発覚前に夫婦関係がどのように続いていたのかを具体的に説明できるようにしておく必要があります。別居していた場合でも、別居の原因が不貞配偶者の不倫や一方的な退去にあったのか、夫婦が離婚を前提に生活を分けていたのかでは、尋問で確認される内容が変わります。
不貞を知った経緯と証拠について聞かれること
請求する側は、不貞をどのように知ったのかも尋問で聞かれます。発覚経緯は、不貞行為の有無、証拠の信用性、自白や謝罪書面の作成経緯と関係するためです。
- 不貞を最初に知ったのはいつですか。
- どのようなきっかけで不倫相手の存在を知りましたか。
- LINE、写真、調査報告書、録音、自白書など、どの証拠で確認しましたか。
- 不貞配偶者や不倫相手に確認したとき、何を認めましたか。
- 自白書や謝罪文がある場合、誰が、いつ、どのような状況で作成しましたか。
- 証拠を取得した経緯に問題があると言われた場合、どのように説明しますか。
証拠がある場合でも、尋問では「その証拠が何を意味するのか」が確認されます。たとえば、LINEに親密な表現がある場合、そのやり取りの前後関係、保存方法、相手に確認した内容を聞かれることがあります。調査報告書がある場合には、ホテルや自宅への出入り、滞在時間、発覚後の確認内容などを聞かれることがあります。
また、自白書や謝罪文がある場合でも、相手方から「強く責められて書いた」「内容を確認せず署名した」「事実と違う内容を書かされた」と反論されることがあります。そのため、請求する側には、自白や謝罪がどのような状況で行われたのか、相手がどの事実を認めたのかを説明する準備が必要です。
不貞行為そのものの認定や、ラブホテル、LINE、調査報告書、自白などの証拠評価は、不貞行為が裁判でどう判断されるかでも詳しく整理しています。この記事では、その証拠が尋問でどのように確認されるかに絞って説明しています。
精神的苦痛や生活への影響について聞かれること
慰謝料は精神的苦痛に対する賠償であるため、請求する側には、不貞発覚後にどのような影響があったのかも聞かれます。ただし、尋問では感情的な訴えだけでなく、生活や夫婦関係にどのような変化が生じたのかを具体的に説明することが求められます。
- 不貞発覚後、体調や精神面にどのような変化がありましたか。
- 通院、服薬、仕事への影響はありましたか。
- 夫婦関係や家庭生活にどのような影響がありましたか。
- 別居、離婚、離婚協議に至った経緯は何ですか。
- 未成年の子どもや家族生活への影響はありましたか。
- 不貞配偶者や不倫相手の対応で、精神的苦痛が大きくなった事情はありますか。
精神的苦痛については、過度に大げさに話すよりも、実際に起きた変化を具体的に説明することが大切です。眠れなくなった、食事が取れなくなった、仕事に支障が出た、通院した、別居に至った、家庭内での会話がなくなったなど、事実として説明できる事情を整理します。
一方で、不貞と関係のない夫婦間の問題や、以前から存在していた家庭内の不和まで、すべて不貞の影響として説明すると、相手方から反対尋問で突かれやすくなります。裁判所は、不貞行為と精神的苦痛、別居・離婚との関係を見ます。つらさを否定する必要はありませんが、事実関係と感情を分けて説明することが重要です。
請求額と既払金について聞かれること
慰謝料額が争点になっている場合、請求する側には、なぜその金額を請求しているのか、既に受け取った金銭があるのかも聞かれます。請求額は、単に希望額を述べればよいものではなく、不貞の期間、回数、夫婦関係への影響、離婚の有無、未成年の子どもの有無、発覚後の対応などと結び付けて説明する必要があります。
- なぜその金額の慰謝料を請求しているのですか。
- 不貞配偶者から慰謝料、解決金、生活費名目の支払いを受けましたか。
- 不倫相手から既に一部支払いを受けましたか。
- 不貞配偶者と不倫相手のどちらに、どの範囲で請求していますか。
- 既払金がある場合、それを請求額にどのように反映していますか。
- 分割払い、謝罪、接触禁止など、金額以外に求めている条件はありますか。
不倫慰謝料では、不貞配偶者と不倫相手が共同して損害を与えたと評価されることがあります。そのため、不倫相手に請求している裁判であっても、不貞配偶者から既に支払いを受けているか、同じ損害について二重に回収しようとしていないかが確認されることがあります。
請求する側にとっては、請求額の根拠を整理することも重要です。離婚に至ったのか、婚姻を継続しているのか、不貞の期間や回数、関係継続の有無、発覚後の謝罪や対応、既払金の有無によって、尋問で聞かれる内容は変わります。訴状、証拠、請求額の組み立てなど、訴える側の準備全体については、不倫慰謝料で訴える方法も参考になります。
不貞配偶者・証人が尋問で聞かれること
不貞配偶者は、不倫慰謝料裁判の当事者でない場合でも、証人として尋問されることがあります。不貞配偶者は、不倫相手との関係と、配偶者との婚姻関係の両方を知っているため、尋問での供述が争点に大きく影響することがあります。
たとえば、不倫相手が不貞行為を否認していても、不貞配偶者が肉体関係を認めれば、不倫相手の否認は弱くなります。反対に、不貞配偶者も否認している場合でも、LINE、写真、ホテル滞在、調査報告書などと供述が矛盾すれば、供述全体の信用性が問題になります。
ここでは、不貞配偶者や証人になり得る人が聞かれやすい内容を整理します。
不倫相手との関係の実態について聞かれること
不貞配偶者に対しては、まず不倫相手との関係の実態が聞かれます。不貞行為の有無、関係が始まった時期、肉体関係の回数、場所、発覚後の関係継続などが中心です。
- 不倫相手とは、いつ、どのように知り合いましたか。
- いつから親密な関係になりましたか。
- 肉体関係を持った時期、回数、場所はどの程度ですか。
- ラブホテル、自宅、宿泊先を利用した理由は何ですか。
- 不貞が発覚した後も連絡を取っていましたか。
- 現在、不倫相手との関係は解消されていますか。
不貞配偶者の供述は、不倫相手の供述と照らし合わせて見られます。たとえば、不倫相手が「肉体関係はなかった」と説明しているのに、不貞配偶者が肉体関係を認めると、不倫相手の説明は大きく崩れます。逆に、双方が否認していても、ホテル利用や宿泊、親密なLINEなどの客観証拠と矛盾すれば、どちらの供述も信用されにくくなります。
証人尋問では、当事者本人の主張を助けるために話しているのか、実際の記憶に基づいて話しているのかも見られます。特に、不貞配偶者が請求する側との関係を悪く言い過ぎたり、不倫相手をかばうような不自然な説明をしたりすると、反対尋問で詳しく確認されることがあります。
不倫相手に既婚者であることや夫婦関係をどう説明したか
不倫相手が「既婚者だとは知らなかった」「夫婦関係は破綻していると聞いていた」と主張している場合、不貞配偶者が不倫相手に何を説明していたかは重要です。尋問では、既婚者であることを伝えた時期や方法、夫婦関係についてどのように話していたかが確認されます。
- 不倫相手に、自分が既婚者であることを伝えましたか。
- いつ、どのような場面で伝えましたか。
- 指輪、家族の話、SNS、職場の情報など、既婚者だと分かる事情はありましたか。
- 配偶者との関係について、不倫相手に何と説明しましたか。
- 「離婚する」「別居している」「夫婦関係は終わっている」などと話しましたか。
- その説明は、実際の夫婦関係と一致していましたか。
ここでのポイントは、不倫相手に説明した内容と、実際の夫婦関係を分けることです。不貞配偶者が不倫相手に「夫婦関係は終わっている」と話していたとしても、それだけで婚姻関係の破綻が認められるわけではありません。実際に同居していたのか、離婚協議がどの程度進んでいたのか、配偶者が離婚を望んでいたのかなど、客観的な事情が問題になります。
一方で、不貞配偶者が不倫相手に既婚者であることを伝えていたかどうかは、不倫相手の故意・過失の判断に関係します。不倫相手が「知らなかった」と主張している場合、不貞配偶者の供述がその主張を左右することがあります。
配偶者との婚姻関係について聞かれること
不貞配偶者には、不倫相手との関係だけでなく、配偶者との婚姻関係も聞かれます。これは、婚姻関係が破綻していたかどうかが、配偶者同士の実際の関係に関する問題だからです。
- 不貞当時、配偶者と同居していましたか。
- 夫婦間の会話、家事、生活費、子どもの養育はどのような状況でしたか。
- 離婚を望んでいたのは、あなた、配偶者、または双方のどちらでしたか。
- 離婚協議や親族間の話合いは、どの程度具体的に進んでいましたか。
- 別居していた場合、その理由は不貞関係と関係がありますか。
- 配偶者は婚姻関係の継続や修復を望んでいましたか。
不貞配偶者が「婚姻関係は破綻していた」と述べても、裁判所は、その説明だけで判断するわけではありません。配偶者が離婚を望んでいなかった、同居や家族生活が続いていた、別居の理由が不貞関係にあった、離婚協議が具体化していなかったといった事情があれば、破綻の主張は慎重に見られます。
また、不貞配偶者の供述が、慰謝料を請求する側の供述と食い違うこともあります。たとえば、不貞配偶者は「家庭内別居だった」と説明し、請求する側は「夫婦関係を修復しようとしていた」と説明する場合です。このようなとき、裁判所は、メール、生活状況、家計、家族行事、別居時期、離婚協議の記録などを踏まえて、どちらの説明が自然かを見ます。
そのため、不貞配偶者・証人として尋問を受ける場合も、自分に都合のよい評価だけを述べるのではなく、具体的な事実を時系列で説明する準備が必要です。「夫婦関係は悪かった」といった抽象的な言い方だけでは、裁判所が判断しにくく、反対尋問で細かく確認される可能性があります。
支払い・弁済・和解について聞かれること
不貞配偶者には、慰謝料や解決金を支払ったか、和解したか、不倫相手との間で負担割合や求償について話し合ったかも聞かれることがあります。これは、慰謝料額や既払金の控除、和解条件に関係するためです。
- 配偶者に慰謝料や解決金を支払いましたか。
- 支払った金額、時期、名目は何ですか。
- 不倫相手が支払った金銭について知っていますか。
- 不倫相手に対して、求償や負担割合について話しましたか。
- 接触禁止、口外禁止、清算条項などについて合意しましたか。
- 不倫相手との関係を解消するために、どのような対応をしましたか。
慰謝料請求では、不貞配偶者が既に支払った金銭がある場合、その支払いが同じ損害に対するものかどうかが問題になります。請求する側から見ると、既払金をどのように考慮するかが問われます。不倫相手から見ると、不貞配偶者の支払いが減額事情として主張できるか、不倫相手自身がどの範囲で支払うべきかが問題になります。
また、和解条項に接触禁止、口外禁止、清算条項、求償権に関する定めがある場合、その内容を正確に理解しているかも重要です。和解条項や求償権、清算条項の注意点は、裁判上の和解条項で失敗しないためのポイントで詳しく整理しています。
不貞配偶者・証人の尋問は、不倫相手と請求する側のどちらか一方にだけ影響するものではありません。不貞の有無、既婚者認識、婚姻関係破綻、慰謝料額、弁済の有無という複数の争点にまたがるため、供述の一貫性と証拠との整合性が特に重要になります。
尋問前に準備すべきこと
不貞裁判の尋問では、当日にうまく話そうとするよりも、事前に争点と証拠を整理しておくことが重要です。尋問は、記憶していることを話す場であると同時に、陳述書、準備書面、LINE、写真、調査報告書、録音、支払記録などとの整合性を確認される場でもあります。
準備の目的は、都合のよい答えを作ることではありません。認めるべき事実、争うべき事実、記憶が曖昧な事実、証拠で裏付けられる事実を分け、尋問で聞かれても混乱しないようにしておくことです。
陳述書・準備書面・証拠を読み直す
尋問前には、まず自分が提出した陳述書と、これまでの準備書面を読み直します。陳述書は尋問の土台になることが多く、主尋問では陳述書の内容を確認する質問がされ、反対尋問では陳述書の記載と証拠・相手方主張とのズレを聞かれることがあります。
特に、次の点は事前に確認しておく必要があります。
- 不貞関係が始まった時期
- 肉体関係の有無・回数・場所
- 既婚者であることを知った時期
- 夫婦関係について聞いていた内容
- 不貞発覚後の連絡・面会・関係解消の有無
- 慰謝料・解決金・弁済の有無
日付や回数を完全に覚えていない場合に、無理に断定する必要はありません。ただし、曖昧なまま放置すると、尋問で急に聞かれたときに不自然な説明になりやすくなります。分かる範囲、分からない範囲、証拠から確認できる範囲を分けておくことが大切です。
時系列を整理して、矛盾が出やすい部分を確認する
不貞慰謝料の尋問では、時系列の矛盾が問題になりやすいです。たとえば、不倫相手の立場では、「既婚者だと知る前の関係だった」と説明していても、LINEや写真から既婚者だと知っていた時期が早いのではないかと聞かれることがあります。
慰謝料を請求する側では、不貞発覚前から別居や離婚協議があったのではないか、夫婦関係が悪化していたのではないかを聞かれることがあります。不貞配偶者・証人の立場では、不倫相手に何を説明していたか、配偶者との夫婦関係が実際にどうだったかを、双方の主張と照らして確認されます。
時系列を整理するときは、次のように「事件の流れ」と「証拠」を結び付けて確認すると実務上有効です。
- 出会いから関係開始まで:知り合った時期、交際に至った経緯、既婚者だと知った時期を整理します。
- 不貞関係の期間:ホテル、宿泊、自宅滞在、旅行、LINE、写真などの証拠と説明が合っているかを確認します。
- 発覚後の対応:謝罪、関係解消、接触継続、弁済、和解交渉などを時系列で整理します。
- 裁判での主張との整合性:陳述書や準備書面の説明と、尋問で話す予定の内容が大きく変わっていないかを確認します。
証拠の評価や反論の組み立ては、尋問の場で初めて考えるものではありません。相手の証拠が弱い場合の反論や、証拠の信用性の見方については、不倫慰謝料請求で相手の証拠が弱いときの反論方法も参考になります。
想定質問を立場別・争点別に整理する
尋問前の準備では、「何を聞かれそうか」を漠然と考えるのではなく、自分の立場と争点に分けて整理します。不倫相手、慰謝料を請求する側、不貞配偶者・証人では、聞かれる質問の重点が異なるからです。
たとえば、慰謝料を請求された不倫相手であれば、不貞行為の有無、既婚者認識、回数・期間、関係継続、弁済、謝罪・反省が中心になります。慰謝料を請求する側であれば、不貞発覚前の夫婦関係、発覚経緯、精神的苦痛、請求額の根拠が中心になります。不貞配偶者・証人であれば、不倫相手との関係、既婚者であることを伝えたか、配偶者との婚姻関係、支払い・和解の経緯が中心になります。
想定質問を作るときは、単に質問を並べるだけでは不十分です。質問ごとに、次の点を確認しておくと、尋問で答えがぶれにくくなります。
- その質問で裁判所が確認したい争点は何か
- 自分の陳述書ではどのように説明しているか
- 証拠から確認できる事実は何か
- 相手方が突いてきそうな矛盾点はどこか
- 分からないことを分からないと言える範囲はどこか
尋問は、暗記した答えを読み上げる場ではありません。裁判所から見て重要なのは、事実関係について、証拠と矛盾しない範囲で自然に説明できるかです。
不利な事実を隠すより、説明方針を整理する
尋問前の準備で特に避けるべきなのは、不利な事実をなかったことにする方向で準備してしまうことです。不貞関係の一部、既婚者だと知った時期、発覚後の連絡、謝罪や弁済の経緯などは、LINEや振込記録、相手方の供述から明らかになることがあります。
不利な事実がある場合でも、それだけで必ず最悪の結論になるわけではありません。たとえば、不貞行為自体は認めるものの回数や期間を争う、既婚者であることを知った時期を争う、既に支払われた金銭を慰謝料額の判断で考慮すべきと主張するなど、争点を絞った説明が必要になることがあります。
反対に、客観証拠と明らかに矛盾する説明をすると、供述全体の信用性を失うおそれがあります。認めるべき点を認めたうえで、なぜ慰謝料額が過大なのか、なぜ請求が認められるべきでないのか、どの範囲で責任を負うべきなのかを整理する方が、現実的な解決につながりやすくなります。
欠席・無断欠席は避ける
尋問期日に正当な理由なく欠席すると、自分の説明を裁判所に直接聞いてもらう機会を失います。相手方の供述や提出証拠だけを前提に判断が進む可能性があり、審理の進行や裁判所の心証にも悪影響が出ることがあります。
病気、事故、仕事上のやむを得ない事情などで出頭が難しい場合は、直前に一人で判断せず、できるだけ早く弁護士に連絡し、裁判所への連絡や期日変更の可否を確認する必要があります。無断欠席は避けるべきです。
また、尋問期日は心理的な負担が大きいため、「行きたくない」「相手と会いたくない」という気持ちが出ることもあります。しかし、尋問に出るかどうかは感情だけで決めるべきではありません。欠席した場合のリスク、出頭した場合に説明できる内容、和解で終わらせる余地を含めて、事前に方針を確認しておきましょう。
尋問前後の和解判断
不貞慰謝料裁判では、尋問まで進むかどうか、尋問前に和解するか、尋問後に裁判官の心証を踏まえて和解するかが重要な判断になります。尋問は事実関係を明らかにする手続ですが、同時に、和解の見通しを左右する大きな節目でもあります。
和解するか判決まで進むかは、単に「勝てそうか」「負けそうか」だけで決めるものではありません。尋問の負担、証拠の強さ、供述の一貫性、請求額、支払可能性、今後の接触禁止や口外禁止の必要性などを総合して判断します。
尋問前に和解するか、尋問まで進むか
尋問前和解のメリットは、尋問の精神的負担や、不利な供述が出るリスクを避けられることです。特に、不貞行為の有無や既婚者認識について争いがあるものの、証拠関係から見通しが厳しい場合、尋問でさらに不利な心証を形成される前に和解を検討することがあります。
一方で、請求額が大きく、相手方の証拠が弱い場合や、婚姻関係破綻・既払金・不貞の回数などについて裁判所に直接説明する必要がある場合には、尋問まで進む意味があることもあります。和解を急ぐべきか、尋問で争点を明らかにするべきかは、事案ごとの証拠と見通しによって変わります。
尋問前の和解では、金額だけでなく、分割払い、支払期限、接触禁止、口外禁止、求償権、清算条項なども含めて調整できます。不倫慰謝料裁判で和解するかどうかの判断基準は、不貞裁判で和解するメリット・デメリットと判断基準で詳しく整理しています。
尋問後の心証を踏まえて和解する場合
尋問後に、裁判官から和解案や見通しが示唆されることがあります。尋問で不貞の有無、既婚者認識、婚姻関係破綻、慰謝料額、既払金などについて一定の心証が形成されると、判決まで進むよりも、その心証を踏まえて和解した方が現実的な場合があります。
尋問後の和解では、尋問前よりも争点が絞られているため、金額や条件の調整がしやすくなることがあります。たとえば、不貞行為自体は認定される見込みが高いが、請求額ほど高額にはならないと見込まれる場合、一定額で早期に終わらせる判断があり得ます。反対に、請求する側から見ると、相手の供述が不自然で、裁判所の心証が有利に傾いたと感じる場合でも、回収可能性や控訴リスクを踏まえて和解を選ぶことがあります。
尋問後の和解は、感情的に判断しやすい場面です。尋問で相手の説明に納得できなかったとしても、判決まで進んだ場合の金額、期間、費用、回収可能性を冷静に比較する必要があります。
和解条項は金額以外も確認する
不貞裁判の和解では、金額だけでなく条項の内容が重要です。特に、支払方法や不払い時の扱い、今後の接触禁止、口外禁止、清算条項、求償権の扱いを曖昧にすると、和解後に再びトラブルになることがあります。
和解条項で確認すべき典型例は、次のとおりです。
- 支払方法:一括払いか分割払いか、支払期限、振込先、手数料負担を確認します。
- 期限の利益喪失:分割払いが滞った場合に、残額を一括請求できる条件を確認します。
- 接触禁止:今後、不貞配偶者や不倫相手と連絡・面会をしない範囲を確認します。
- 口外禁止:誰に、どの範囲で話してはいけないのかを確認します。
- 清算条項:和解後に追加請求できる余地が残るのか、完全に清算されるのかを確認します。
- 求償権:不貞配偶者と不倫相手の間で負担割合をどう扱うかを確認します。
和解条項は、後から「そのつもりではなかった」と言っても修正が難しいことがあります。条項の読み方や、清算条項・求償権・接触禁止などの注意点は、不貞裁判の和解条項で確認すべきポイントで詳しく解説しています。
判決まで進む場合のリスク
和解せず判決まで進む場合、裁判所が証拠と尋問結果を踏まえて結論を出します。慰謝料を請求された側にとっては、支払義務が認められ、慰謝料、遅延損害金、弁護士費用相当額の一部などの支払いを命じられる可能性があります。判決後に支払わない場合、強制執行のリスクも生じます。
慰謝料を請求する側にとっても、判決まで進めば必ず希望額が認められるわけではありません。不貞行為の立証が足りない場合は請求が認められないことがありますし、不貞は認められても、請求額より低い金額にとどまることがあります。既払金や婚姻関係の状況によって、慰謝料額が調整されることもあります。
判決まで進むかどうかは、尋問の出来だけで決まるものではありません。証拠、法的争点、相手方の資力、和解条件、時間的負担を含めて判断する必要があります。敗訴した場合の支払い、強制執行、控訴などのリスクは、不倫慰謝料裁判で負けたらどうなるかで詳しく整理しています。
まとめ
不貞裁判の尋問で聞かれる内容は、立場と争点によって変わります。もっとも、どの立場でも共通するのは、陳述書、証拠、これまでの主張との整合性を見られるという点です。
- 不倫相手は、不貞の有無、既婚者認識、関係継続、弁済、証拠との矛盾を聞かれやすい
- 慰謝料を請求する側は、夫婦関係、発覚経緯、精神的苦痛、請求額の根拠を聞かれやすい
- 不貞配偶者・証人は、不倫関係の実態、夫婦関係、不倫相手への説明を聞かれやすい
- 婚姻関係破綻は、不倫相手の認識だけでなく、夫婦関係が客観的に破綻していたかが重要になる
- 尋問前には、嘘の答えを作るのではなく、争点・証拠・時系列を整理することが大切である
尋問は、相手を言い負かすための場ではなく、裁判所に事実関係を理解してもらうための場です。尋問期日が近い場合は、自分の立場で何を聞かれやすいかを確認し、陳述書、証拠、相手方主張を照らし合わせながら、説明方針を整理しておきましょう。
坂尾陽弁護士
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