不倫慰謝料の請求では、慰謝料そのものに加えて、探偵費用や調査費用が上乗せされることがあります。探偵に依頼した側からすれば「不倫があったから調査せざるを得なかった」と考えやすい一方、請求された側からすれば「本当にそこまで払う必要があるのか」「慰謝料とは別に何十万円、何百万円も負担しなければならないのか」と不安になりやすい項目です。
結論からいうと、探偵費用は請求できることもありますが、支出した金額が当然に全額認められるわけではありません。裁判例では、調査の必要性、調査内容・金額の相当性、不貞行為との相当因果関係がある範囲に限って認められ、そもそも0円と判断される例もあります。
- 探偵費用は、不倫があっただけで当然に全額請求できるものではありません。
- 必要性・相当性・相当因果関係がなければ、探偵費用は0円になることがあります。
- 認められる場合でも、近時裁判例では支出額の2〜3割程度に限られる例が複数あります。
- 当事務所では、裁判所は通常相当な探偵費用について100万円程度を一つの上限感として見ていると分析しています。
- 請求された側は、請求書の金額ではなく、調査前の証拠・調査内容・内訳・成果を確認することが重要です。
この記事では、不倫慰謝料の場面で探偵費用を請求できる条件、裁判例で認められる割合、請求された側が確認すべき反論ポイント、請求する側が準備すべき資料を整理します。
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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結論:探偵費用は請求できることもあるが、0円になることもある
不倫の探偵費用は、法律上は慰謝料とは別の損害として主張されることがあります。たとえば、不倫相手の氏名や住所が分からず、探偵調査によって初めて相手方を特定できた場合や、相手方が不貞行為を否認しており、調査報告書が不貞立証に重要な役割を果たした場合には、一定額が損害として認められることがあります。
しかし、探偵費用は、請求する側が自分の判断で選んだ証拠収集方法にかかる費用です。そのため、探偵に支払った金額をそのまま不倫相手や配偶者に転嫁できるわけではありません。裁判所は、「その調査をしなければ責任追及が難しかったのか」「調査の範囲や金額は過剰ではないか」「不貞行為と費用支出との結び付きがあるか」を具体的に見ます。
この点は、不倫で請求できる損害項目全体を考えると分かりやすいです。不倫慰謝料、弁護士費用、探偵費用は、いずれも「不法行為によって生じた損害」として主張されることがありますが、すべてが同じように認められるわけではありません。探偵費用は、特に必要性と金額の相当性が厳しく見られやすい項目です。
実際の裁判例を見ると、探偵費用の判断は大きく分かれます。東京高裁令和6年1月17日判決では、第一審で60万円が認められていた調査費用について、控訴審では相当因果関係が否定され、230万5918円の調査費用が0円と判断されました。また、東京地裁令和5年2月28日判決では、594万円という高額な調査費用について、独立した損害としては認められず、慰謝料額を考える際の一事情にとどまると判断されています。
一方で、探偵費用が一部認められた裁判例もあります。東京地裁令和3年9月17日判決では、105万6400円の調査費用のうち30万円が認められました。東京地裁令和6年2月7日判決では、110万円の調査費用のうち33万円が認められています。東京地裁令和6年1月29日判決では、79万2000円の探偵調査費用のうち20万円が認められました。これらは、いずれも全額ではなく、おおむね2〜3割程度に圧縮された例といえます。
当事務所では、近時の裁判例の傾向から、裁判所は、探偵費用を損害として認める場合でも、支出額全体ではなく、そのうち2〜3割程度を不貞行為と相当因果関係のある損害として評価する方向で考えているのではないかと分析しています。
もっとも、これは「2〜3割は必ず認められる」という意味ではありません。必要性・相当性・相当因果関係が認められなければ、探偵費用がまったく認められないこともあります。請求された側にとっては、ここが重要です。相手方が探偵費用の領収書を持っているとしても、それだけで全額を支払う義務があるわけではありません。
探偵費用の問題では、「いくら支払ったか」よりも、「その調査が本当に必要だったか」「その金額が相当だったか」「不貞行為の立証や相手方特定にどの程度役立ったか」が重要です。
また、100万円という金額も一つの目安になります。東京地裁令和5年9月11日判決では、客観的な支払帳票がある調査費用228万6500円のうち100万円が認められました。この事案では、不貞関係の継続や誓約書違反が問題になり、調査の必要性が比較的強い事情がありましたが、それでも認められた調査費用は100万円にとどまりました。
他方、東京地裁平成28年11月30日判決では、77万7600円の興信所費用全額が認められています。ただし、この事案では、夫が不貞を否定していたため調査が必要で、調査によって不貞相手を突き止めることができ、調査も2日間で、金額も不相当に高額とはいえないという事情がありました。
このように、100万円以内であれば必ず全額認められるわけではありませんが、100万円を超える探偵費用について、裁判所は全額を相手方に負担させることに慎重な傾向があります。当事務所としては、裁判所は、通常相当な探偵費用について、金額ベースでは100万円程度を一つの上限として見ているように考えています。
100万円は法律上の上限ではありません。また、100万円以内であれば必ず認められるという意味でもありません。調査の必要性・相当性・相当因果関係がなければ、100万円以内でも0円になることがあります。
したがって、探偵費用を請求された場合は、まず「慰謝料」と「探偵費用」を分けて考える必要があります。不貞行為があるとしても、探偵費用まで当然に全額負担しなければならないとは限りません。逆に、探偵費用を請求する側は、領収書を出すだけでは足りず、なぜその調査が必要だったのかを具体的に説明できるようにしておく必要があります。
探偵費用が損害として認められるための3要件
探偵費用が損害として認められるかどうかは、主に必要性・相当性・相当因果関係の3つから判断されます。3つは完全に別々のものではなく、重なり合って判断されますが、請求された側が反論する場合も、請求する側が準備する場合も、この3つに分けて整理すると分かりやすくなります。
- 必要性:探偵調査をしなければ、相手方特定や不貞立証が難しかったか。
- 相当性:調査期間・調査人数・調査範囲・金額が過剰ではないか。
- 相当因果関係:不貞行為によって通常必要となる費用といえるか。
この3要件を満たさない場合、探偵費用は0円と判断されることがあります。3要件の一部が認められる場合でも、全額ではなく、相当な範囲に限って認められることが多いです。
必要性:探偵調査をしなければ立証・特定が難しかったか
必要性とは、簡単にいうと「探偵に依頼しなければ、不倫相手の責任を追及することが難しかったか」という問題です。たとえば、不倫相手の氏名や住所が分からず、LINEの表示名やニックネームしか分からなかった場合、探偵調査によって相手方の氏名・住所を特定できたのであれば、必要性が認められやすくなります。
東京地裁令和3年9月17日判決では、夫は、LINEに表示された名称以外に相手方の氏名や住所を把握していませんでした。妻と相手方も不貞行為を否定していました。そのため、調査をしなければ相手方への責任追及は困難であり、調査費用は必要となった費用だと評価されました。ただし、全額ではなく、105万6400円のうち30万円に限って認められています。
この裁判例から分かるのは、必要性が認められても、必ず全額が認められるわけではないという点です。調査の途中で相手方の氏名・住所や不貞立証に必要な事情が判明した場合、それ以降の追加調査については「必須だったとはいえない」と評価されることがあります。
反対に、調査前から相手方が不貞を認めていた場合や、LINE、録音、写真、SNS、宿泊記録などで不貞行為を立証できる資料がすでにあった場合には、探偵調査の必要性は弱くなります。東京地裁令和6年1月29日判決では、夫が自宅に録音機器を設置し、妻と不貞相手が不貞関係にあることを把握して録音データを保存していた事情があり、探偵調査費用は79万2000円のうち20万円に限定されました。
請求された側は、相手方が探偵に依頼する前の段階で、どのような証拠を持っていたのかを確認することが大切です。既に不貞の自白、録音、写真、LINE、宿泊の記録などがあったのであれば、「探偵調査をしなければ立証できなかったわけではない」と反論できる可能性があります。既存証拠の種類や評価については、不倫の証拠として使える資料もあわせて確認すると整理しやすくなります。
- 必要性が認められやすい事情:不倫相手の氏名・住所が不明、相手方が否認、他の証拠だけでは不十分、調査で初めて宿泊・同棲・出入りの事実が判明した場合。
- 必要性が弱くなりやすい事情:既に不貞を認めている、録音・LINE・写真などの客観証拠がある、相手方の氏名・住所が分かっている、調査が単なる確認目的に近い場合。
必要性は、請求する側にとっても重要です。探偵費用を請求する場合は、「不安だったから依頼した」だけではなく、調査前に何が分かっておらず、調査によって何が分かったのかを説明できるようにしておく必要があります。
相当性:調査の期間・人数・範囲・金額が過剰でないか
相当性とは、探偵調査の内容や金額が、目的との関係で過剰ではないかという問題です。仮に調査の必要性があったとしても、調査期間が長すぎる、調査員数が多すぎる、空振り調査が多い、不倫と関係の薄い身辺調査まで含まれている、金額が不相当に高いといった事情があると、認められる金額は大きく削られます。
東京地裁令和5年2月28日判決では、594万円という高額な調査費用が問題になりました。裁判所は、調査費用は自らの判断で採用した証拠収集方法に係る費用にすぎず、そのまま不貞行為と相当因果関係のある損害とは認めにくいと判断しました。高額な探偵費用は、請求された側にとって強く争う余地がある項目です。
東京地裁令和5年2月22日判決の第一審では、230万5918円の調査費用のうち約60万円が認められましたが、調査は約7か月に及び、不貞関係が認められた期間は約2か月とされました。長期調査であっても、その全期間が不貞立証に必要だったとは限らず、必要な範囲だけが相当な損害と評価されます。なお、この事案は控訴審で調査費用が0円とされており、相当性や因果関係が強く争われることを示しています。
一方で、東京地裁平成28年11月30日判決では、77万7600円の興信所費用全額が認められました。この事案では、夫が不貞を否定していたため調査が必要で、調査によって相手方を突き止めることができ、調査も2日間で、費用が不相当に高額とはいえないと判断されています。全額認容例があるとしても、短期調査で、金額が100万円以内で、調査の成果が明確だったという限定的な事情がある点に注意が必要です。
探偵費用の相当性を判断するには、請求書の総額だけでなく、内訳を見る必要があります。調査日、調査時間、調査員数、車両費、機材費、報告書作成費、成功報酬、実費などがどのように計上されているかを確認します。依頼前の相場や見積もりの考え方は、探偵に依頼する前の費用相場・見積もりの見方で詳しく整理しています。
- 相当性を確認する資料:契約書、見積書、請求書、領収書、調査報告書、調査日ごとの稼働時間、調査員数、車両・機材・実費の内訳。
- 争点になりやすい費用:成果が出なかった日の調査費用、必要な情報が判明した後の追加調査費用、不貞と関係の薄い身辺調査費用、高額な成功報酬。
請求された側は、探偵費用の金額だけを見て「高い」「安い」と判断するのではなく、その金額が不貞立証や相手方特定のために必要な範囲だったのかを確認する必要があります。請求する側も、過剰な調査をそのまま相手方に負担させることは難しいため、必要な範囲を説明できる資料を準備しておくべきです。
相当因果関係:不貞行為と探偵費用が結び付いているか
相当因果関係とは、その探偵費用が、不貞行為によって通常生じる損害といえるかという問題です。不貞行為があったとしても、あらゆる調査費用が当然に不貞相手の負担になるわけではありません。
たとえば、夫婦関係の全体的な状況を調べるための調査、不貞とは関係の薄い身辺調査、既に不貞を認めた後の長期監視、慰謝料請求に必要な範囲を超えた調査などは、不貞行為との相当因果関係が争われやすくなります。相手方がそのような高額調査を予見できたのか、通常必要な損害といえるのかが問題になります。
東京高裁令和6年1月17日判決は、この点を考えるうえで重要です。同判決は、調査会社による調査は主として不貞行為に関する証拠収集を目的として行われるものであり、配偶者に不貞の疑いが生じた場合に直ちに調査会社を利用することが一般的であるとまではいえないとしました。そして、調査会社を利用しなければ不貞行為や相手方を知ることができなかったとまではいえないとして、230万5918円の調査費用を不法行為と相当因果関係のある損害とは認めませんでした。
この判断は、請求された側にとって重要です。相手方が探偵に依頼したとしても、その費用が不貞行為から通常生じる損害といえるかは別問題です。特に、調査前から不貞を疑う事情が明らかであった場合、相手方が別の方法で証拠収集できた場合、調査範囲が広すぎる場合には、相当因果関係を争う余地があります。
一方で、相当因果関係が認められやすいのは、探偵調査が不倫相手の特定や不貞立証に直接結び付いている場合です。たとえば、相手方の氏名・住所が不明で、調査によって初めて相手方を特定できた場合、相手方が否認していて、調査報告書によって宿泊や同棲などの重要事実が明らかになった場合には、一定額が損害として認められる可能性があります。
ただし、その場合でも、認められるのは「相当な範囲」に限られます。東京地裁令和5年11月22日判決では、調査報告書が訴訟上有用な証拠になっていると評価されながらも、67万1950円の探偵費用のうち認められたのは15万円でした。調査が役立ったとしても、費用全体が当然に相当因果関係のある損害になるわけではありません。
探偵費用を請求されたときは、「不倫があったか」だけでなく、「その調査費用まで不倫と結び付くのか」を分けて考える必要があります。慰謝料を支払う余地がある場合でも、探偵費用は別途争えることがあります。
ここまで整理した3要件は、実際の裁判例では一体として判断されます。必要性が強くても金額が過剰なら一部だけ認められ、金額が比較的低くても調査の必要性がなければ0円になることがあります。次の裁判例の整理を見ると、探偵費用が0円、一部認容、100万円程度、100万円以内の全額認容に分かれる理由がより具体的に分かります。
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裁判例でみる探偵費用の判断傾向
探偵費用が慰謝料請求で問題になるとき、もっとも重要なのは「探偵に支払った金額」そのものではありません。裁判所は、調査費用の領収書があるかだけでなく、その調査が本当に必要だったのか、調査内容や金額が過剰ではなかったのか、その調査費用を不貞相手に負担させるだけの相当因果関係があるのかを見ています。
そのため、同じように不貞行為が認められる事案でも、探偵費用については、0円と判断されるもの、2〜3割程度だけ認められるもの、100万円程度まで認められるもの、100万円以内で全額認められるものに分かれます。ここでは、探偵費用の請求を受けた側・請求する側の双方が判断しやすいように、裁判例を金額と認容割合で整理します。
まず、主要な裁判例を一覧で見ると、次のようになります。
| 分類 | 裁判例 | 請求・支出額 | 認められた額 | 読み取りポイント |
|---|---|---|---|---|
| 0円否定例 | 東京高裁令和6年1月17日判決 | 230万5918円 | 0円 | 第一審で60万円が認められたものの、控訴審では調査費用の相当因果関係が否定された。 |
| 一部認容・原審 | 東京地裁令和5年2月22日判決 | 230万5918円 | 約60万円 | 調査の必要性を認めつつ、長期調査・高額調査の全額までは認めなかった。 |
| 高額否定例 | 東京地裁令和5年2月28日判決 | 594万円 | 0円 | 調査費用は独立損害ではなく、慰謝料算定事情として考慮されるにとどまった。 |
| 約3割認容 | 東京地裁令和3年9月17日判決 | 105万6400円 | 30万円 | 相手方の氏名・住所特定の必要性があっても、全額ではなく約3分の1に限定された。 |
| 約2割認容 | 東京地裁立川支部令和5年10月5日判決 | 80万7004円 | 15万円 | 調査で同棲を知った経過は考慮されたが、認容額は一部にとどまった。 |
| 約2割認容 | 東京地裁令和5年11月22日判決 | 67万1950円 | 15万円 | 調査報告書が有用な証拠になっても、費用全額は認められなかった。 |
| 約25%認容 | 東京地裁令和6年1月29日判決 | 79万2000円 | 20万円 | 録音等の既存証拠がある中で、探偵費用は20万円の限度で認められた。 |
| 3割認容 | 東京地裁令和6年2月7日判決 | 110万円 | 33万円 | 不貞を認める方向の事情がありつつ、継続確認の必要性も踏まえて3割に限定された。 |
| 100万円認容 | 東京地裁令和5年9月11日判決 | 228万6500円 | 100万円 | 悪質性・否認・関係継続の立証必要性がある事案でも、認められたのは100万円にとどまった。 |
| 全額認容 | 東京地裁平成28年11月30日判決 | 77万7600円 | 77万7600円 | 短期調査で相手方特定に直結し、金額も不相当に高額でないとして全額が認められた。 |
| 低額認容例 | 東京地裁平成25年5月30日判決 | 約207万円 | 10万円 | 高額な探偵費用が大きく圧縮された例。 |
| 低額認容例 | 東京地裁平成29年4月27日判決 | 約304万円 | 20万円 | 200万円〜300万円台の調査費用が、そのまま損害として認められなかった例。 |
この表から分かるとおり、探偵費用は「払った金額がそのまま損害になる」という扱いではありません。請求額が100万円未満でも一部にとどまることがありますし、200万円、300万円、500万円を超えるような高額な探偵費用は、0円又は数十万円程度に大きく圧縮されることがあります。
探偵費用が認められなかった裁判例
探偵費用を請求された側にとって、まず押さえておきたいのは、探偵費用が0円と判断される裁判例があることです。不貞行為が認められる場合でも、探偵費用という財産的損害が別に認められるとは限りません。
近時の重要な裁判例として、東京高裁令和6年1月17日判決があります。この事案では、夫が妻と不貞相手との関係を理由に、不貞相手へ慰謝料、弁護士費用、調査費用230万5918円を請求しました。第一審である東京地裁令和5年2月22日判決は、調査費用のうち約60万円を認めましたが、控訴審はこれを取り消し、調査費用を0円と判断しました。
控訴審は、調査会社による調査は主に不貞行為の証拠収集を目的として行われるものであり、配偶者に不貞の疑いが生じた場合に直ちに調査会社を利用することが一般的とまではいえないとしました。また、調査会社にどの範囲で調査を命じるかも一義的に明らかではないため、その費用を不貞行為から通常生ずべき損害と見ることはできないと判断しました。
この事案では、妻と不貞相手が人目のある場所で親密な行動を取っていたこと、夫も妻の行動変化から不貞を疑っていたことなどがありました。そのため、調査会社を利用しなければ不貞行為や相手方を知ることができなかったとまでは認められず、230万5918円の調査費用は相当因果関係のある損害とは認められませんでした。
この裁判例からは、探偵費用の請求では、単に「不貞があった」「調査をした」「費用を払った」というだけでは足りないことが分かります。請求された側としては、相手方が調査前からどのような事情を把握していたのか、調査会社を使わなければ本当に相手方や不貞行為を把握できなかったのかを確認することが重要です。
東京地裁令和5年2月28日判決も、高額な調査費用が否定された裁判例です。この事案では、夫が妻と不貞相手との不貞行為を理由に損害賠償を請求し、調査会社に支払った594万円の調査費用も損害だと主張しました。裁判所は不貞行為を認め、慰謝料200万円と弁護士費用20万円を認めましたが、594万円の調査費用は独立した損害として認めませんでした。
裁判所は、調査費用について、原告が自らの判断で採用した証拠収集方法に係る費用にすぎず、そのまま不貞行為と相当因果関係のある損害とは認めにくいとしました。また、証拠収集に高度な専門的知見を要する類型の訴訟であれば別論となり得るものの、この事案では調査会社の利用が不可欠だったとはいえないと判断しました。
もっとも、この裁判例は、調査費用をまったく考慮しなかったわけではありません。夫が多額の調査費用を支出してまで訴訟を提起するに至ったことは、慰謝料額を増額させる方向の事情としては考慮され得るとしています。つまり、調査費用が独立した損害として0円であっても、慰謝料の判断事情として間接的に評価される余地はあります。
過去の裁判例でも、探偵費用が否定された例があります。東京地裁平成22年2月23日判決では、不貞を認めているなどの事情から調査の訴訟上の寄与が低いと見られ、100万円の調査費用が認められませんでした。また、東京地裁平成22年12月21日判決でも、調査の必要性・相当性を認めることができないとして、調査費用の請求が否定されています。
- 不貞行為が認められても、探偵費用は別問題です。慰謝料が認められる事案でも、調査費用は0円とされることがあります。
- 既存証拠がある場合は、必要性が弱くなります。LINE、録音、写真、自白、目撃情報などがある場合、探偵調査が不可欠だったとはいえないと反論しやすくなります。
- 高額な探偵費用は、独立損害として否定されることがあります。特に、数百万円単位の調査費用は、本人が選んだ証拠収集方法にすぎないと評価されるリスクがあります。
探偵費用が2〜3割程度に限って認められた裁判例
探偵費用がまったく認められないわけではありません。相手方が否認していた、相手方の氏名・住所が分からなかった、調査によってホテル滞在や同棲などの重要事実が判明したといった事情がある場合には、一定額が損害として認められることがあります。
ただし、近時の裁判例を見ると、認められる場合でも支出額の2〜3割程度に限られる例が複数あります。これは、裁判所が「調査の必要性はある程度あるが、全額を不貞相手に負担させるのは相当ではない」と判断しているためです。
東京地裁令和3年9月17日判決では、夫が探偵会社に105万6400円を支払った事案で、30万円が認められました。夫は、妻と相手方とのLINEのやり取りを把握していたものの、相手方の氏名・住所が分からず、妻と相手方も不貞行為を否定していました。裁判所は、調査をしなければ相手方に対する責任追及は困難であり、調査費用は不貞行為により必要となった費用だと認めました。
もっとも、調査の途中で、妻と相手方が車両に同乗して行動していた事実、車両ナンバー、相手方の氏名・住所、夜間に相手方宅で過ごした事実が判明していました。裁判所は、それ以降の調査が必須だったとはいえないことや、それ以前の調査費用も高額であることを踏まえ、105万6400円の全額ではなく約3分の1に当たる30万円に限定しました。
この裁判例は、請求する側にとっては、相手方特定や不貞立証のための調査費用が一部認められ得ることを示します。他方で、請求された側にとっては、相手方特定の必要性があっても全額ではなく、調査で必要な情報が判明した後の追加調査分は争えることを示しています。
東京地裁令和6年2月7日判決では、夫が調査会社に合計110万円を支払った事案で、33万円が認められました。この事案では、不貞相手が既に不貞関係を認めていたことや、夫と不貞相手の父との面談でも不貞が認められていたこと、謝罪内容を含む誓約書の作成準備が進んでいたことがありました。裁判所は、調査会社に依頼する必要があったのか疑問があるとしました。
一方で、調査依頼時点では誓約書が完成しておらず、不貞を否定できないほどの証拠があったわけではありませんでした。また、不貞相手は誓約書作成後にも妻と会っており、隠れて会っていた可能性を確認する必要も否定し難いとされました。その結果、110万円のうち33万円、つまり3割が相当因果関係のある損害として認められました。
この裁判例からは、既に不貞を認めていた場合でも、関係継続の確認や証拠保全の必要性があれば、探偵費用が一部認められる可能性があることが分かります。ただし、認められたのは3割であり、「確認のための調査」や「念のための調査」が全額損害になるわけではありません。
東京地裁令和6年1月29日判決では、探偵調査費用79万2000円のうち20万円が認められました。調査の結果、妻と不貞相手がホテルの客室に長時間滞在した事実が判明しましたが、夫は既に自宅に録音機器を設置し、妻と不貞相手が不貞関係にあることを把握し、録音データを保存していました。裁判所は、配偶者に不貞の疑いが生じた場合でも、直ちに探偵会社を利用することが一般的とまではいえないとし、20万円の限度で認めるのが相当としました。
東京地裁令和5年11月22日判決では、複数の探偵事務所に合計67万1950円を支払い、妻と不貞相手の宿泊現場を突き止める調査結果を得た事案で、15万円が認められました。調査報告書が訴訟上有用な証拠になっていると評価されても、全額ではなく約22%にとどまった点が重要です。
東京地裁立川支部令和5年10月5日判決では、離婚調停の申立てを受けて夫の不貞を疑った妻が、具体的な証拠や情報を持っていなかったため探偵事務所に調査を依頼し、夫と不貞相手の同棲を知った事案で、80万7004円のうち15万円が認められました。調査で重要な事実が分かった場合でも、認められるのは約2割にとどまることがあります。
これらの裁判例を横断すると、探偵費用が認められやすい事情があっても、裁判所は全額を当然に損害とするのではなく、必要な範囲に限定して金額を絞り込んでいることが分かります。
- 相手方の氏名・住所特定の必要性がある場合でも、調査で必要情報が判明した後の追加調査分は争われやすくなります。
- 調査報告書が有用な証拠になった場合でも、複数業者への依頼や長期調査の全額が相当とは限りません。
- 既に録音・LINE・自白などがある場合には、探偵調査の必要性が限定的に評価され、認容額も小さくなりやすいです。
100万円又は100万円以内で全額認められた裁判例
一方で、探偵費用が比較的高額に認められた裁判例もあります。ただし、ここで注意すべきなのは、裁判所が「支出額全部」を当然に認めたわけではないことです。むしろ、100万円程度又は100万円以内という範囲で、必要性・相当性がある部分を限定的に認めたと見るのが適切です。
東京地裁令和5年9月11日判決では、妻が夫の不貞相手に対し、不貞行為及び誓約書違反を理由に違約金と損害賠償を請求しました。不貞相手は、接触禁止条項を含む誓約書を作成した後も、夫と接触し、不貞関係を継続したと判断されています。裁判所は、違約金については500万円の条項のうち150万円を超える部分を公序良俗違反として無効とし、150万円を認めました。不貞行為に関する損害としては、慰謝料250万円、調査費用100万円、弁護士費用25万円を認めています。
調査費用について、裁判所は、客観的な支払帳票があるものだけでも、原告が被告と夫の行動調査として合計228万6500円を負担していたと認定しました。しかし、原告が自らの判断で多額の調査費用を支出した場合、そのすべてが直ちに被告の不法行為に起因する損害になるというのは不合理であり、通常必要とされる調査費用の限度で相当因果関係のある損害と認めるのが相当だとしました。
この事案では、妻は不貞相手の存在や夫とのLINEのやり取りを把握していたものの、それだけでは決定的証拠として不十分であり、夫が不貞相手宅に滞在した際の状況や、誓約書作成後の関係継続を立証する必要がありました。このような事情から、調査費用のうち100万円が認められました。
この裁判例は、100万円認容例として重要です。ただし、支出額は228万6500円であり、認められたのはその一部です。しかも、誓約書作成後も関係が続いたと判断された悪質性、相手方の態度、関係継続の立証必要性がある事案でした。したがって、「100万円までは当然に認められる」という裁判例ではなく、「比較的強い必要性がある事案でも、認められた調査費用は100万円にとどまった」と読むべきです。
東京地裁平成28年11月30日判決では、77万7600円の興信所費用が全額認められました。妻が夫の行動から不貞を疑ったものの、夫が不貞を否定したため、事実や相手方を確認するために興信所へ調査を依頼した事案です。調査の結果、不貞相手を突き止めることができ、調査は2日間にわたって行われ、77万7600円という費用も不相当に高額であるとまではいえないと判断されました。
この全額認容例には、いくつかの重要な限定事情があります。夫が否認していたこと、調査によって相手方を突き止めることができたこと、調査期間が2日間と比較的短かったこと、費用が100万円以内であったこと、不相当に高額とまではいえなかったことです。これらの事情がない場合にまで、探偵費用全額が認められるとはいえません。
つまり、100万円又は100万円以内での全額認容例は、請求する側にとっては参考になりますが、請求された側から見ると、反論の余地も多い領域です。調査が短期であったか、相手方特定に直結したか、相手が否認していたか、費用が不相当に高額でないかという事情を丁寧に確認する必要があります。
裁判例から見える当事務所の分析
裁判例を横断して見ると、探偵費用の判断には大きく3つの傾向があります。
- 第一に、探偵費用は0円と判断されることがある。
- 第二に、認められる場合でも2〜3割程度に圧縮される例が複数ある。
- 第三に、比較的強い必要性がある事案でも100万円程度が一つの上限感になっている。
当事務所では、近時の裁判例を踏まえると、裁判所は、探偵費用を当然に全額損害と見るのではなく、必要性・相当性がある場合に限り、支出額の2〜3割程度を相手方に負担させるのが相当だと考えているのではないか、と分析しています。
もちろん、これは「2〜3割は必ず認められる」という意味ではありません。必要性・相当性・相当因果関係がなければ、東京高裁令和6年1月17日判決や東京地裁令和5年2月28日判決のように、探偵費用が0円と判断されることがあります。請求された側としては、まず0円を主張できる事情がないかを検討することが重要です。
他方で、調査が必要だった事情がある場合には、完全に0円とするのではなく、相当な範囲で一部を認める裁判例もあります。特に、相手方の氏名・住所が分からなかった、相手方が否認していた、調査でホテル滞在や同棲などの重要事実が判明した場合には、一定額が認められる余地があります。ただし、その場合でも、裁判所は調査全体のうち本当に必要だった部分だけを切り出して評価する傾向があります。
また、当事務所としては、裁判所は、通常相当な探偵費用について、金額ベースでは100万円程度を一つの上限として見ているように考えています。東京地裁令和5年9月11日判決では、悪質性や関係継続の立証必要性がある事案で、支出額228万6500円のうち100万円が認められました。これは、100万円を超える費用全額を相手方に負担させることには慎重であることを示す材料になります。
ただし、100万円は法律上の上限ではありません。また、100万円以内であれば必ず認められるという意味でもありません。77万7600円全額が認められた東京地裁平成28年11月30日判決も、短期調査、否認、相手方特定、金額の相当性といった事情がそろっていたからこそ、全額が認められたと見るべきです。
請求された側の実務対応としては、請求書に「探偵費用」と書かれているからといって、そのまま全額を支払う必要があると考えるべきではありません。調査前に相手方が何を知っていたのか、調査で何が判明したのか、調査が長すぎないか、金額が過大でないか、既存証拠がなかったのかを確認し、0円又は大幅減額を主張できるかを検討します。
請求する側の実務対応としては、領収書や調査報告書を提出するだけでは足りません。なぜその調査が必要だったのか、調査前にどの証拠が不足していたのか、調査でどの重要事実が判明したのか、調査費用が過剰でない理由を説明できるようにしておく必要があります。全額を当然に請求するよりも、裁判例上相当といえる範囲を意識して主張を組み立てる方が、交渉でも訴訟でも現実的です。
以上を踏まえると、探偵費用を請求されたときに見るべきポイントは、裁判例の金額だけではありません。調査の必要性、相当性、相当因果関係のどこを争えるかを、具体的な資料から確認することが大切です。次は、請求された側が実際にどのような資料を見て、どのような反論を組み立てるべきかを整理します。
探偵費用を請求された側の反論チェックリスト
探偵費用を請求されたときは、慰謝料の金額と一体で見てしまいがちです。しかし、不貞行為があったか、慰謝料としていくらが相当か、探偵費用まで負担する必要があるかは、別々に検討すべき争点です。不倫の事実を争わない場合でも、探偵費用については0円又は大幅減額を主張できることがあります。
特に、示談書案や通知書の中に「慰謝料〇〇万円、探偵費用〇〇万円」と記載されている場合は、探偵費用の根拠資料と内訳を確認しないまま合意しないことが重要です。裁判例でも、調査費用が0円とされた例や、認められても2〜3割程度に限られた例が複数あります。
- 不貞行為の有無と、探偵費用を負担するかは別の問題です。
- 調査前から相手が持っていた証拠を確認します。
- 調査で初めて何が分かったのかを確認します。
- 調査期間・回数・人数・金額が過剰でないかを確認します。
- 請求書・契約書・領収書・調査報告書の提示を求めます。
以下では、探偵費用を請求された側が、実際にどの資料を見て、どのような反論を組み立てるべきかを整理します。
まず確認するべき資料
最初に確認したいのは、探偵費用の「総額」ではなく、総額を支える資料です。請求する側が「探偵費用を支払った」と主張していても、契約内容、調査日、調査時間、調査員数、成果が出た日、空振り調査の日などが分からなければ、その金額が相当か判断できません。
- 契約書・見積書:どのような調査を、何日間、何名体制で依頼したのかを確認します。成功報酬や延長料金の有無も重要です。
- 請求書・領収書:実際に支払われた金額、支払日、内訳、追加費用の有無を確認します。単に「調査費用一式」とだけ記載されている場合は、詳細を確認する余地があります。
- 調査報告書:調査によって何が判明したのか、不貞行為や相手方特定にどの程度役立ったのかを確認します。
- 調査日ごとの明細:成果が出た日と、成果が出なかった日を分けて確認します。必要な情報が判明した後の追加調査分は争点になりやすいです。
- 調査前の既存証拠:LINE、写真、録音、自白、SNS、目撃情報など、探偵に依頼する前から相手方が持っていた証拠を確認します。
これらの資料が提示されていない場合、請求された側としては、探偵費用の必要性や相当性を判断できません。示談交渉では、まず「探偵費用の内訳と調査報告書を確認したい」と伝え、慰謝料本体とは分けて検討する姿勢を取るのが基本です。
既に不貞を認めていたか
請求された側が、探偵調査より前に不貞行為を認めていた場合、又は認める方向で話し合いが進んでいた場合には、探偵費用の必要性を争いやすくなります。相手方がすでに不貞の事実を把握しており、責任追及の対象も分かっていたのであれば、高額な調査を追加で行う必要があったのかが問題になります。
もっとも、不貞を認めていたからといって、探偵費用が必ず0円になるわけではありません。たとえば、不貞発覚後も関係が続いていた可能性があり、その継続を確認する必要があった場合には、一部の調査費用が認められる余地があります。東京地裁令和6年2月7日判決でも、不貞関係を一定程度認めていた事情がありながら、誓約後にも会っていた可能性を確認する必要が否定し難いとして、110万円のうち33万円が認められました。
したがって、反論としては、「不貞を認めていたから全部0円」と単純に主張するのではなく、どの時点で何を認めたのか、その時点で相手方はどの証拠を持っていたのか、追加調査の目的が何だったのかを時系列で整理することが重要です。
相手方が調査前から他の証拠を持っていなかったか
探偵費用の必要性を争ううえで、調査前の既存証拠は非常に重要です。相手方が、LINE、メール、SNS、写真、録音、通話履歴、ホテル利用の記録、本人の自白などを既に持っていた場合、探偵調査がなければ立証できなかったとはいえない可能性があります。
東京地裁令和6年1月29日判決では、探偵調査によってホテル客室への長時間滞在が判明したものの、原告はそれ以前に録音データなどから不貞関係を把握していました。そのため、79万2000円の調査費用のうち、相当因果関係のある損害として認められたのは20万円にとどまりました。
相手方が示している証拠自体が弱い場合には、探偵費用だけでなく、不貞立証全体の見通しも検討する必要があります。証拠の見方や反論の方向性については、相手の証拠が弱いときの反論も参考になります。
「探偵が証拠を取ったか」だけでなく、「探偵に依頼する前から、どの程度の証拠があったか」を確認します。既存証拠で相当程度立証できた場合、探偵費用の必要性は弱くなります。
調査で初めて何が分かったのか
探偵調査が必要だったといえるかは、調査によって初めて何が判明したのかによって変わります。不倫相手の氏名・住所が分からず、調査によって初めて責任追及の相手を特定できた場合は、調査の必要性が認められやすくなります。反対に、相手方の氏名・住所、勤務先、不貞の相手、交際状況などが既に分かっていた場合には、調査の必要性は弱くなります。
東京地裁令和3年9月17日判決では、原告はLINEに表示された名称以外に相手方の氏名や住所を把握しておらず、探偵調査によって相手方の氏名・住所や相手方宅で過ごした状況が判明しました。そのため、調査の必要性自体は認められましたが、それでも105万6400円全額ではなく、30万円に限って認められています。
このように、調査で相手方を特定できた場合でも、全額が認められるとは限りません。請求された側としては、調査で必要な情報が判明した時点を確認し、その後に続けられた調査が本当に必要だったのかを検討します。必要な情報が判明した後の追加調査は、減額対象になりやすい部分です。
調査期間・回数・人数・範囲が過剰ではないか
探偵費用が高額になる典型的な理由は、調査期間が長いこと、調査回数が多いこと、調査員数が多いこと、車両や機材などの実費が積み上がっていることです。裁判例では、調査の必要性が一部認められる場合でも、長期調査や高額調査については、必要な範囲だけが切り出される傾向があります。
たとえば、東京地裁令和5年2月22日判決では、約7か月にわたる調査のうち、不貞関係が認められた期間は約2か月であることなどを踏まえ、230万5918円の調査費用のうち約60万円だけが認められました。もっとも、この判断は控訴審で変更され、東京高裁令和6年1月17日判決では調査費用が0円とされています。同じ事案でも、調査費用の評価は大きく分かれ得るという点が重要です。
請求された側は、調査日ごとの成果を確認し、空振り調査、必要な情報が判明した後の追加調査、長期間の監視、調査対象が広すぎる部分が含まれていないかを見ます。特に、数百万円単位の探偵費用が請求されている場合は、「相手方が選んだ証拠収集方法にすぎない」「通常必要な調査を超えている」と反論できる余地があります。
- 調査期間:何日間、何週間、何か月にわたる調査だったのかを確認します。長期調査ほど、必要な範囲を超えていないかが問題になります。
- 調査回数:成果があった回と、成果がなかった回を分けます。すべての調査日が損害として認められるとは限りません。
- 調査員数:複数名体制が必要だった理由を確認します。対象者の行動範囲や調査難易度と釣り合っているかが問題になります。
- 調査対象:不貞相手の特定や不貞立証と関係の薄い身辺調査、生活状況調査、夫婦関係調査が混ざっていないかを確認します。
不貞と関係の薄い調査が含まれていないか
探偵費用の中には、不貞行為の立証とは直接関係の薄い調査が含まれることがあります。たとえば、配偶者の生活状況全般を把握するための調査、夫婦関係の悪化原因を探る調査、不貞相手以外の人物との交友関係を広く調べる調査などです。
東京地裁令和5年2月28日判決では、594万円という高額な調査費用について、原告が自らの判断で採用した証拠収集方法に係る費用にすぎず、そのまま不貞行為と相当因果関係のある損害とは認めにくいとされました。同判決は、調査会社の利用が不可欠だったとは必ずしもいえないとも述べ、調査費用を独立の損害としては認めていません。
このような裁判例を踏まえると、請求された側は、探偵費用の名目が「不倫調査」であっても、その中身が本当に不貞行為の立証に必要なものだったのかを確認する必要があります。不貞と関係の薄い調査が含まれている場合、その部分は少なくとも減額対象として主張しやすくなります。
調査報告書がどの程度役立ったか
調査報告書が存在するからといって、その費用全額が当然に認められるわけではありません。裁判所は、調査報告書が不貞行為の立証や相手方特定にどの程度役立ったかを見ます。単に外出状況や接触状況を記録しているだけで、肉体関係の推認に弱い内容であれば、費用の必要性・相当性は争われやすくなります。
東京地裁令和5年11月22日判決では、調査報告書が宿泊現場を突き止める内容であり、訴訟上有用な証拠になったと評価されました。それでも、67万1950円の探偵費用のうち認められたのは15万円でした。調査報告書が役立った場合でも、費用全体が相当因果関係のある損害になるわけではないことが分かります。
そのため、請求された側は、調査報告書の内容を確認し、「どの日の、どの記録が、不貞行為の立証に役立ったのか」を具体的に見る必要があります。報告書全体が分厚くても、実際に重要なのは数ページだけということもあります。
100万円を大きく超える請求では特段の事情を確認する
探偵費用が100万円を大きく超える場合には、特に慎重に確認すべきです。100万円を超える探偵費用が法律上認められないわけではありませんが、裁判例を見ると、100万円を超える金額がそのまま相手方負担とされる例は多くありません。
東京地裁令和5年9月11日判決では、客観的な支払帳票ベースで228万6500円の調査費用がありましたが、認められたのは100万円でした。この事案では、誓約書作成後の関係継続、相手方の否認、交際継続の立証必要性など、比較的強い事情がありました。それでも、裁判所は全額ではなく100万円に限定しています。
したがって、100万円を超える探偵費用を請求された場合は、単に「相手が支払ったから」という説明では足りません。なぜその金額まで必要だったのか、通常必要な範囲を超えていないのか、100万円を超える部分を相手方に負担させるだけの特段の事情があるのかを確認します。
反論は段階的に組み立てる
探偵費用への反論は、「一切払わない」とだけ主張するよりも、段階的に組み立てる方が実務上は整理しやすくなります。まず、必要性・相当性・相当因果関係がないとして0円を主張できるかを検討します。次に、0円が難しい場合でも、認められる範囲を一部に限定すべき事情を整理します。
- 第一段階:0円を主張する:既存証拠が十分だった、相手方特定が済んでいた、調査会社の利用が不可欠ではなかった、調査内容が不貞立証と結び付かない、という事情を整理します。
- 第二段階:一部に限定する:調査で必要な情報が判明した日まで、実際に成果が出た調査日だけ、相手方特定や不貞立証に直接役立った部分だけに限定すべきと主張します。
- 第三段階:2〜3割程度を目安に減額する:近時裁判例では、認められる場合でも2〜3割程度に圧縮される例が複数あるため、交渉上の目安として使います。
- 第四段階:100万円超の部分を争う:100万円を大きく超える請求では、通常相当な探偵費用を超える部分を相手方に転嫁できないと主張します。
探偵費用を含む請求を受けた場合の交渉例を確認したい場合は、探偵費用を請求された解決事例も参考になります。ただし、実際の落とし所は、不貞行為の証拠、慰謝料本体の見通し、探偵費用の資料、相手方の請求姿勢によって変わります。
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探偵費用を請求する側が主張・準備すべきこと
探偵費用を相手に請求したい側は、領収書や調査報告書を出すだけでは足りません。請求された側からは、「本当に必要だったのか」「高すぎないか」「既に証拠を持っていたのではないか」「関係のない調査まで含まれていないか」といった反論が出る可能性があります。
そのため、請求する側は、探偵費用を慰謝料に上乗せする前に、調査前の状況、調査の成果、費用の内訳、金額の相当性を説明できるように準備しておく必要があります。
調査前に不足していた証拠を整理する
まず整理すべきなのは、探偵に依頼する前の時点で、何が分かっていて、何が分かっていなかったのかです。不倫相手の氏名・住所が分からなかったのか、不貞行為の客観的証拠が不足していたのか、相手方が否認していたのかを具体的に説明できるようにします。
たとえば、LINEのやり取りだけでは肉体関係を直接示しにくい、相手方の氏名や住所が分からず請求先を特定できない、配偶者が不貞行為を否認している、ホテルや相手方宅への出入りを客観的に記録する必要がある、という事情があれば、調査の必要性を説明しやすくなります。
他方で、調査前から相手方の氏名・住所や不貞の証拠が十分にそろっていた場合には、探偵費用は争われやすくなります。探偵に依頼する前に、他の証拠で立証できないかを検討することも重要です。証拠がない場合の考え方は、証拠がない場合の立証方法でも整理しています。
調査によって得られた成果を具体的に示す
次に、調査によって何が判明したのかを具体的に示します。単に「探偵に依頼した」「報告書がある」と説明するだけでは、費用の必要性や相当因果関係を十分に説明できません。
- 相手方特定:氏名、住所、勤務先、車両情報など、請求相手を特定する情報が調査で初めて分かったか。
- 不貞立証:ホテルへの出入り、相手方宅での宿泊、同棲、長時間滞在など、肉体関係を推認させる重要事実が記録されたか。
- 否認への対応:配偶者や不貞相手が否認していたため、客観的な報告書が必要だったか。
- 関係継続の確認:誓約や話合いの後も接触が続いていたかを確認する必要があったか。
調査報告書のうち、どの調査日、どの写真、どの記録が慰謝料請求に役立ったのかを説明できると、必要性を主張しやすくなります。逆に、成果が出ていない調査日や、慰謝料請求と関係の薄い調査までまとめて請求すると、過剰な請求と見られやすくなります。
費用の内訳と必要な範囲を示す
探偵費用を請求する側は、費用の内訳をできるだけ明確にしておくべきです。請求書や領収書に総額だけが記載されている場合、請求された側から「どの部分が必要だったのか分からない」と反論されやすくなります。
- 調査日ごとの費用:いつ、何時間、何名で調査したのかを整理します。
- 成果が出た調査日:相手方特定や不貞立証につながった日を明確にします。
- 追加調査の理由:必要な情報が判明した後も調査を続けた場合、その理由を説明します。
- 実費の内訳:車両費、交通費、宿泊費、機材費、報告書作成費などを分けて確認します。
- 金額の相当性:見積書や契約書をもとに、費用が過大ではなかったことを説明します。
依頼前の見積もりや探偵事務所の選び方は、後から探偵費用を請求できるかにも影響します。費用相場や見積もりの確認ポイントは、探偵に依頼する前のチェックリストで整理しています。
全額請求に固執しすぎない
探偵費用を請求する側としては、実際に支払った金額を全額回収したいと考えるのが自然です。しかし、裁判例では、全額認容は例外的です。必要性が認められても2〜3割程度に圧縮される例が複数あり、強い必要性がある事案でも100万円程度に限定されることがあります。
そのため、交渉では、最初から「全額を当然に支払うべき」とだけ主張すると、請求された側の反発が強くなりやすいです。調査費用の中でも、相手方特定や不貞立証に直接役立った部分、調査前の証拠では足りなかった部分、金額として相当な部分に絞って説明する方が、合意に向けた説得力を持ちやすくなります。
特に、探偵費用が100万円を超える場合は、全額回収を前提にしすぎない方が現実的です。裁判になった場合には、0円になるリスクも、一部に限定されるリスクもあります。慰謝料本体と探偵費用を分けて、どの範囲なら裁判例上も説明しやすいかを検討することが大切です。
請求する側が準備しておきたい資料セット
探偵費用を請求する側が準備しておくとよい資料は、次のとおりです。請求された側の反論に備えるためにも、単に金額を示すだけではなく、調査の必要性と成果を説明できる資料をそろえることが重要です。
- 調査前の証拠一覧:依頼前に持っていたLINE、写真、録音、SNS、目撃情報などを整理し、何が不足していたかを示します。
- 依頼理由のメモ:相手方の氏名・住所が不明だった、否認されていた、客観的証拠が不足していたなど、依頼が必要だった事情を残します。
- 契約書・見積書・請求書・領収書:調査内容、費用、支払実績、追加料金の有無を示します。
- 調査報告書:不貞立証や相手方特定に役立った箇所を整理しておきます。
- 調査日ごとの成果整理:どの日に何が分かったのか、どの調査が請求に必要だったのかを一覧化します。
請求する側にとっても、探偵費用は「支払ったから当然に請求できる費用」ではありません。請求された側が争うことを前提に、調査が必要だった理由、費用が過剰でない理由、調査結果が慰謝料請求に役立った理由を、資料に基づいて説明できるようにしておくことが重要です。
交渉での落とし所:慰謝料と探偵費用を分けて整理する
探偵費用を含む不倫慰謝料の交渉では、最初に「慰謝料」と「探偵費用」を分けて整理することが重要です。請求書や通知書では、慰謝料に探偵費用が上乗せされ、総額として提示されることがあります。しかし、慰謝料本体がいくら相当かという問題と、探偵費用まで相手に負担させられるかという問題は、判断要素が異なります。
慰謝料は、不貞行為によって受けた精神的苦痛を金銭で評価するものです。これに対し、探偵費用は、証拠収集や相手方特定のために支出した費用を、別途損害として相手に負担させるものです。そのため、不貞行為自体を争わない場合でも、探偵費用については、必要性、相当性、相当因果関係を理由に減額又は否定を主張できることがあります。
裁判例の整理から見ると、交渉上の出発点は、「探偵費用は請求額どおりに当然支払うものではない」という点です。0円とされた裁判例もあり、認められる場合でも2〜3割程度に圧縮された例が複数あります。他方で、調査が相手方特定や不貞立証に直結し、金額も相当な場合には、一定額が認められる余地があります。したがって、交渉では、全額かゼロかという二択ではなく、どの範囲なら裁判例上も説明できるかを検討することになります。
請求された側は「全額を払うか」ではなく「どこまで争えるか」を確認する
探偵費用を請求された側は、通知書に記載された金額をそのまま受け入れる前に、まず費目を分けて確認します。慰謝料本体について一定の支払を検討する場合でも、探偵費用については別途、0円又は大幅減額を主張できることがあります。
- 0円を主張しやすい場合:相手方が調査前から不貞を疑う十分な事情を把握していた、LINE・録音・写真・自白などの既存証拠があった、調査会社の利用が不可欠とはいえない、調査範囲が不貞と関係ない部分まで広がっている場合です。
- 2〜3割程度への減額を主張しやすい場合:調査自体に一定の意味はあったものの、調査日数・調査員数・調査費用が過大である、必要な事実が判明した後も追加調査が続いている、調査報告書の有用性が限定的である場合です。
- 100万円を超える請求で特に確認すべき場合:高額な探偵費用については、通常必要な調査費用の範囲を超えていないかを慎重に見ます。100万円を超える部分を相手に負担させるだけの特段の事情があるかを確認します。
- 慰謝料本体との関係を調整すべき場合:探偵費用が独立損害として認められないとしても、慰謝料算定の事情として考慮されることがあります。そのため、総額としてどこまで受け入れるかを整理することも大切です。
請求された側にとって重要なのは、「不倫があったから探偵費用も当然に払う」という発想を避けることです。調査費用の契約書、請求書、領収書、調査報告書、調査日数、調査員数、成果が出た日、空振り日を確認し、必要な部分と過剰な部分を分けて考えます。
交渉での減額事例を確認したい場合は、探偵費用を請求された解決事例も参考になります。裁判例上の考え方を交渉でどのように使うかを確認すると、単に「高いから払えない」と伝えるよりも、理由のある反論を組み立てやすくなります。
請求する側は「全額請求」よりも「相当額の説明」を意識する
探偵費用を請求する側は、実際に支払った金額をそのまま相手に請求したくなるかもしれません。しかし、交渉をまとめるうえでは、全額を当然に請求するよりも、裁判例上相当と説明できる範囲を明確にする方が現実的です。
特に、調査費用が高額な場合には、「なぜその金額になったのか」「どの調査で重要な証拠が得られたのか」「調査前にはどの証拠が不足していたのか」を説明できなければ、請求された側から強い反論を受けやすくなります。相手方が既に不貞を認めていた場合、相手方の氏名・住所が分かっていた場合、他の証拠で不貞立証が可能だった場合には、探偵費用全額の回収は難しくなります。
請求する側としては、慰謝料本体、探偵費用、弁護士費用相当額を分けて整理し、それぞれについて裁判例上の説明ができるようにしておくことが大切です。探偵費用については、調査報告書の中でも不貞立証や相手方特定に直結した部分を示し、必要な調査だったことを具体的に説明します。
示談書では探偵費用の扱いを明確にする
交渉がまとまる場合には、示談書の中で探偵費用の扱いを明確にしておく必要があります。総額に探偵費用を含めるのか、慰謝料とは別に探偵費用として一定額を支払うのか、今後追加請求をしないのかを曖昧にしたまま合意すると、後日トラブルになることがあります。
請求された側は、示談書案に「探偵費用」「調査費用」「実費」「損害金」などの名目が含まれている場合、その金額が何を指すのかを確認します。総額合意で解決する場合は、その総額に慰謝料、探偵費用、弁護士費用相当額その他の損害が含まれることを明確にしておくと、後から別名目で請求されるリスクを減らせます。
請求する側も、相手に一定額を支払わせるのであれば、その金額がどの費目に充当されるのかを整理しておくことが重要です。とくに、分割払い、接触禁止条項、違約金条項などを併せて定める場合には、探偵費用の精算と将来の義務を混同しないようにします。
探偵費用の請求に関するよくある質問
探偵費用は全額請求できますか?
全額請求すること自体は可能ですが、裁判で全額が認められるとは限りません。探偵費用が損害として認められるには、調査の必要性、金額・調査範囲の相当性、不貞行為との相当因果関係が必要です。
裁判例には、77万7600円の興信所費用全額が認められた例もあります。しかし、その事案では、配偶者が不貞を否定しており、調査によって不貞相手を突き止めることができ、調査も2日間で、費用が不相当に高額とはいえないという事情がありました。全額認容は、こうした事情がそろった場合の例外的な判断と見るべきです。
探偵費用を請求されたら払う必要がありますか?
請求された段階で、ただちに全額を支払う義務が確定するわけではありません。まず、慰謝料本体と探偵費用を分けて、探偵費用について必要性・相当性・相当因果関係があるかを確認します。
不倫の事実を争わない場合でも、探偵費用まで全額負担する必要があるとは限りません。既存証拠があった場合、既に不貞を認めていた場合、調査が過剰な場合、高額な空振り調査が含まれている場合には、0円又は大幅減額を主張できる可能性があります。
裁判では探偵費用は何割くらい認められますか?
一律の割合はありません。裁判例では、0円とされたものもあれば、2〜3割程度に限って認められたもの、100万円程度まで認められたもの、100万円以内で全額認められたものもあります。
もっとも、当事務所では、近時の裁判例を踏まえると、裁判所は、探偵費用を認める場合でも、支出額全体ではなく、必要性・相当性がある範囲に限って2〜3割程度を相手方に負担させる方向で考えているのではないかと分析しています。ただし、これは「2〜3割は必ず認められる」という意味ではありません。必要性等がなければ0円になることもあります。
探偵費用の上限は100万円ですか?
法律上、探偵費用の上限が100万円と決まっているわけではありません。100万円という金額は、裁判例を横断して見たときに、当事務所が一つの上限感として分析している目安です。
裁判例には、228万6500円の調査費用のうち100万円が認められた例があります。このような例から見ると、裁判所は、特段の事情がある場合でも、100万円を超える探偵費用をそのまま相手方に負担させることには慎重な傾向があるように思われます。ただし、100万円以内であれば必ず認められるという意味でもありません。
領収書や契約書がない探偵費用も請求されますか?
請求する側が探偵費用を損害として主張するには、実際に支出したこと、金額、調査内容、調査期間、調査結果を説明する必要があります。領収書、契約書、請求書、調査報告書がない場合、支出額や調査内容の立証が難しくなります。
請求された側は、探偵費用の内訳が示されていない場合、根拠資料の提示を求めることができます。資料が出てこない場合や、金額と調査内容の対応関係が分からない場合には、その費用を相手に負担させるだけの根拠がないと反論しやすくなります。
不倫を認めていた場合でも探偵費用を払う必要がありますか?
不倫を認めていた場合には、探偵調査の必要性が弱くなるため、探偵費用を否定又は減額できる可能性があります。特に、調査依頼時点で不貞を認めていた、謝罪書や誓約書の作成に向けた話が進んでいた、相手方が既に重要な証拠を持っていたという事情は、請求された側の反論材料になります。
ただし、不貞を認めた後も関係が続いている疑いがあり、継続確認のために一定の調査が必要だったと評価されることもあります。その場合でも、調査費用全額ではなく、確認に必要な範囲に限って認められるかが問題になります。
まとめ:探偵費用は請求額どおりではなく、必要性・相当性から整理する
不倫の探偵費用は、請求する側にとっては「不倫がなければ支出しなかった費用」に見えます。しかし、裁判では、支出したことだけで当然に相手方へ転嫁できるわけではありません。調査が本当に必要だったのか、調査内容や金額が過剰ではないか、不貞行為との相当因果関係があるかが個別に判断されます。
- 探偵費用は請求できることもあるが、当然に全額認められるものではありません。
- 必要性・相当性・相当因果関係がなければ、探偵費用は0円と判断されることがあります。
- 認められる場合でも、裁判例では2〜3割程度に圧縮される例が複数あります。
- 当事務所では、通常相当な探偵費用について100万円程度が一つの上限感になると分析しています。
- 請求された側も請求する側も、慰謝料本体と探偵費用を分けて資料を整理することが重要です。
探偵費用を請求された場合は、請求書の金額だけで判断せず、契約書、領収書、調査報告書、調査日数、調査員数、調査で判明した事実、調査前の既存証拠を確認します。そのうえで、0円を主張するのか、一部だけ認めるのか、慰謝料本体との総額調整をするのかを検討します。
探偵費用を請求する側は、領収書を出すだけではなく、なぜ調査が必要だったのか、調査で何が判明したのか、調査費用が過剰ではない理由を説明できるようにしておくことが大切です。全額回収を前提にしすぎず、裁判例上相当といえる範囲を意識して交渉する方が、現実的な解決につながりやすくなります。
坂尾陽弁護士
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