不倫の調査で探偵に依頼すると、まとまった費用がかかります。そこで多くの方が気になるのが、「この探偵費用、相手に請求できる?」「逆に、探偵費用まで請求されたら払う必要がある?」という点です。
結論からいうと、
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なぜなら、探偵費用は常に不倫の損害として生じる項目ではないからです。他方で、状況と資料の揃え方次第では、必要性・相当性に照らして、交渉や裁判で一部(または相当額)が認められることもあります。
この記事では、次の疑問に答えます。
- 探偵費用は、どんな条件なら相手に請求できる?
- 「必要性・相当性・相当因果関係」って具体的に何を見る?
- 交渉・裁判で認められやすい主張立てと資料は?
- 探偵費用を請求された側は、どこを反論すればいい?
- 全額請求できる?誰に請求する?よくある疑問は?
民法709条(不法行為)などの損害賠償の考え方を前提に、実務で揉めやすいポイントを整理します(具体的な見通しは事情で変わるため、重要局面では弁護士へ相談してください)。
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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結論:探偵費用は請求できることもあるが「無条件」ではない
探偵費用(調査費用)は、慰謝料とは別に、**財産的損害(積極損害)**として損害賠償の対象になり得ます。イメージとしては「不倫の事実を確認・立証するために、やむを得ず支出した費用」です。
ただし、裁判所が損害として認めるかどうかは、一般に次のような観点で判断されます。
- その支出が不倫(不法行為)と相当因果関係のある損害といえるか
- 支出に必要性があったか(他の方法で足りたのでは?)
- 金額や内容が**相当(妥当)**か(高すぎないか、過剰調査ではないか)
つまり、探偵費用は「領収書があるから当然OK」ではなく、支出の理由と金額の妥当性がセットで問われやすい項目です。
なお、不倫で請求できる損害の全体像(慰謝料以外に何が問題になるか)を先に整理したい場合は、総論ページもあわせて確認すると理解が早いです。
不倫の損害賠償項目(慰謝料・弁護士費用・調査費用など)の整理
認められやすい条件:必要性・相当性・相当因果関係を具体化する
ここが本題です。「必要性・相当性・相当因果関係」は抽象的に見えますが、実務では“説明の仕方”で差が出ます。
1)必要性:なぜ探偵が必要だったのか
必要性が認められやすいのは、たとえば次のような場面です。
- 不倫の相手が誰か分からず、特定しないと請求できない(または難しい)
- 口頭での自白がなく、証拠が乏しい(否認される可能性が高い)
- 相手が警戒していて、当事者の自力では安全・適法に証拠化できない
- 調停・裁判まで視野にあり、客観的資料(報告書等)が必要だった
ポイントは、「疑いを確かめたいから」だけだと弱くなりやすいことです。法的手続(交渉・裁判)で必要な証拠を得るためだったと説明できるほど、必要性が通りやすくなります。
2)相当性:金額・調査内容が“やりすぎ”ではないか
相当性は、ざっくり言うと「その状況で、その金額は高すぎない?」という視点です。ここで突かれやすいのは、
- 調査日数が多すぎる(空振り含めて長期化)
- 調査員の人数・車両などが過剰
- 目的(立証)に対して、調査範囲が広すぎる
- 同じ証拠を取るのに、もっと安い方法があったのでは?
という点です。相当性を意識するなら、最初から「必要な証拠だけを取りに行く」設計が重要です。
3)相当因果関係:不倫がなければ支出しなかったといえるか
探偵費用は、感情的には「不倫が原因で出費した」と言いたくなりますが、裁判ではもう一段踏み込んで、
- 不倫の立証・相手特定に必要な支出だった
- その支出は社会通念上、損害として相手に負担させるのが相当
と説明できるかが問われがちです。
「必要性・相当性」を固めるコツは、調査前に“目的(欲しい証拠)”を明確化しておくことです。
探偵に依頼する前の判断(依頼タイミング、見積もりの見方)も、結果的に“相当性”の根拠になります。
探偵に依頼する前に読む:費用相場・見積もりの見方・依頼すべきケース
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請求する側:交渉・裁判での主張立てと資料の揃え方
探偵費用を請求する側は、「支出の正当性」をこちらから組み立てる必要があります。実務で効きやすいのは、次の4点を“つなげて”示すことです。
(1)調査の目的(何を証明したかったか)
例:不倫相手の特定/接触の継続性/宿泊やホテル出入りの裏付け 等。
(2)調査を選んだ理由(なぜ必要だったか)
例:否認される可能性が高い/当事者の自力では危険・限界がある/裁判も見据えた 等。
(3)調査の結果(何が得られたか)
報告書の中身が重要です。日時・場所・行動の流れ・同一性が分かる形で整理されているほど、主張が通りやすくなります。
(4)費用の妥当性(高すぎないか)
ここは「総額」だけでなく、内訳が説明できると強いです。相見積もりまで必須とは限りませんが、少なくとも「過剰ではない」理由付けは準備したいところです。
実際の交渉では、最初から全額を強く主張するよりも、相当性の高い範囲(例:決定的な日の調査分、相手特定に直接つながった分)に絞って請求する方がまとまりやすいこともあります。
探偵費用まで争点になった事例のイメージを掴みたい場合は、具体例も参考になります。
不倫の探偵費用は払う必要がある?認められる条件・裁判例と減額のポイント【解決事例】
請求された側:払う必要はある?反論・減額のポイント
探偵費用を請求されたからといって、当然に支払義務が確定するわけではありません。争点は結局、必要性・相当性・因果関係です。
反論の方向性として典型なのは、次のパターンです。
- そもそも調査が必要だったのか(自白や他証拠で足りた/立証目的ではなかった)
- 調査範囲・日数・人数が過剰で相当性がない(高すぎる、やりすぎ)
- 不倫と無関係な調査が混ざっている(夫婦関係調査、身辺調査など)
- 調査結果が“立証に資する内容”になっていない(日時不明、同一性不明等)
- 調査方法に問題がある(違法性・プライバシー侵害が疑われる)
特に多いのは、「調査が長期化して総額が膨らんだ」「空振り分まで全部請求された」というケースです。この場合は、調査の“成果につながった部分”とそうでない部分を分けて、相当性を争う(減額を求める)発想が現実的です。
探偵費用を請求された場面での対応(否認・一部認める・条件交渉)は、その後の慰謝料額や示談条件にも影響します。感情的に即答せず、資料を確認してから整理しましょう。
よくあるQ&A(簡易)
Q1:探偵費用は全額請求できますか?
全額が通るとは限らず、一部しか認められないことも珍しくありません。必要性・相当性が高い範囲(目的に直結した調査)に絞ると、通りやすくなる傾向があります。
Q2:誰に請求するのですか(不倫相手/配偶者)?
不倫の損害賠償はケースにより請求相手や構成が変わります。一般論としては、不法行為責任(共同不法行為など)との関係で整理しますが、実務では「誰に、何を、どの順番で」請求するかで回収可能性が変わることがあります。
Q3:領収書や契約書、報告書がないとダメ?
交渉でも裁判でも、支出を裏付ける資料(契約書・領収書・見積書・報告書など)がある方が圧倒的に有利です。少なくとも、支払額・支払先・調査内容が分かる状態にしておきましょう。
まとめ
探偵費用は、相手に請求できる場合がありますが、ポイントは「必要性」「相当性」「相当因果関係」を説明できるかどうかです。請求する側も、請求された側も、争点はだいたい同じなので、早めに整理すると交渉が進めやすくなります。
- 探偵費用は無条件ではなく、必要性・相当性・因果関係がカギ
- 請求する側は「目的→必要性→結果→内訳」をつなげて主張する
- 全額ではなく“一部相当額”が落とし所になることもある
- 請求された側は過剰調査・範囲逸脱・成果不足などで減額を狙う
- 依頼前の設計(見積・目的設定)が、後の相当性の根拠になる
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