不倫慰謝料の請求書、メール、内容証明、弁護士からの通知が届くと、「すぐに返事をしなければならないのか」「謝った方がよいのか」「減額したいときはどのような文面にすればよいのか」と焦ってしまいがちです。
もっとも、慰謝料請求への回答書や返信文は、後から交渉・裁判で確認されることがあります。早く返すことだけを優先して、事実を広く認める表現、全額を支払う約束、相手本人に直接会う約束を書いてしまうと、あとで修正しにくくなることがあります。
この記事では、慰謝料請求への回答書・返信文の文例を、本人からの請求、メールでの請求、弁護士通知・内容証明に分けて整理します。テンプレートはそのまま使うための完成文ではなく、あなたの認否、請求額、証拠、回答期限に合わせて調整するための土台として読んでください。
- 最初の返信は「受領+検討中+回答期限」で足りることが多いです。
- 認める・支払う・会う約束は、内容を確認してから書くべきです。
- 本人請求と弁護士通知では、宛先・窓口・文体を分けます。
- メール請求でも、原文保存と記録に残る返信が重要です。
- 減額理由や示談条件は、回答書だけで確定させず別途整理します。
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

Contents
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慰謝料請求への回答書・返信文でまず押さえる結論
慰謝料請求への回答書は、相手を論破する文章ではありません。まずは、請求を受け取ったこと、内容を確認していること、いつまでに回答する予定かを記録に残し、交渉の土台を崩さないための文章です。
最初の返信は「受領+検討中+回答期限」で足りることが多い
請求書やメールを受け取った直後は、事実関係、請求額、証拠、相手の要求内容をすべて整理できていないことが通常です。その段階で無理に詳しい反論や謝罪を書くよりも、まずは次の3点を短く伝える方が安全です。
- 書面やメールを受け取ったこと
- 内容を確認・検討していること
- いつまでに回答する予定か
この3点を伝えておけば、完全に無視しているわけではないことを示せます。期限が近い場合でも、すぐに支払うかどうかを決めるのではなく、回答予定日や期限延長の希望を記録に残すことが大切です。
支払い期限・回答期限を過ぎた場合のリスクや連絡方法は、慰謝料請求の支払い期限・回答期限を過ぎた場合の対応で詳しく整理しています。
認否・支払約束・直接連絡を不用意に固定しない
慰謝料請求への返信では、丁寧に書くこと自体は重要です。ただし、丁寧さを意識するあまり、法的責任や請求額を確定させるような表現まで入れてしまうと、後の減額交渉や反論が難しくなることがあります。
特に、次のような文言は、事実関係や法的見通しを確認する前には避けた方が安全です。
- 全額を支払う約束:「言われたとおり全額支払います」「必ず支払います」など。
- 広すぎる謝罪:「すべて私が悪いです」「どのような条件でも受け入れます」など。
- 事実の断定:時期・回数・交際経緯を、曖昧な記憶のまま具体的に書くこと。
- 感情的な反論:「証拠はないはずです」「名誉毀損で訴えます」など、対立を強める表現。
- 本人への直接連絡の約束:相手が弁護士を立てているのに、本人へ直接謝罪・面会を申し出ること。
謝罪を入れる場合でも、「ご心痛をおかけしていることについて申し訳なく思っております」など、相手の心情への配慮にとどめ、支払義務や請求額をそのまま認める表現とは分けて考えます。
裁判所から届いた書類は別対応になる
この記事のテンプレートは、本人、相手方弁護士、内容証明、メールなど、交渉段階の慰謝料請求に対する回答書・返信文を想定しています。裁判所から訴状、期日呼出状、答弁書提出期限が記載された書類が届いている場合は、単なる返信文ではなく、裁判対応として期限管理をする必要があります。
裁判所からの書類を受け取った場合は、この記事のテンプレートだけで対応せず、答弁書提出期限や期日を確認してください。交渉上の回答期限と、裁判所が定めた期限は分けて考える必要があります。
文面を書く前の確認ポイント
テンプレートに名前や日付を入れる前に、最低限の確認をしておく必要があります。ここが曖昧なまま返信すると、あとで「認めた」「支払う意思がある」と受け取られたり、反対に「まったく話し合う意思がない」と受け取られたりすることがあります。
相手が本人か弁護士かで宛先を変える
まず確認するのは、請求している相手です。不倫された配偶者本人からのメールや手紙であれば、本人宛ての返信になります。一方で、弁護士名義の受任通知、請求書、内容証明が届いている場合は、原則として弁護士宛ての回答書として作成します。
相手が弁護士を立てているのに、本人へ直接電話をしたり、直接謝罪に行く約束をしたりすると、やり取りが複雑化しやすくなります。弁護士から通知が届いている場合は、回答書の中でも「今後の連絡は貴職との間でお願いします」と窓口を明確にするのが基本です。
内容証明が届いた直後の初動、受け取り後に確認すること、無視した場合のリスクは、不倫慰謝料の内容証明が届いた直後の対応で詳しく解説しています。
請求額・期限・根拠資料を確認する
次に、請求額、支払い期限、回答期限、請求の根拠を確認します。請求額が高いと感じる場合でも、いきなり「高すぎます」とだけ返すのではなく、どの事実を前提に、どのような内訳で請求されているのかを確認する必要があります。
返信前に、少なくとも次の点を整理してください。
- 請求額はいくらか
- 支払い期限・回答期限はいつか
- 不貞行為とされる時期・回数は書かれているか
- 証拠や資料の提示があるか
- 振込先、示談書、接触禁止など金額以外の要求があるか
請求額が高いかどうか、減額理由をどの順番で出すべきかは、回答書の文面だけで決める問題ではありません。減額交渉そのものの進め方は、後ほど触れるように、別途整理してから出す方が安全です。
認める・争う・確認中のどれかを決める
返信文の方向性は、大きく分けると「一定程度認める」「争う」「確認中として留保する」の3つです。どれを選ぶかによって、書くべき文面は変わります。
- 一定程度認める場合:相手の心情への配慮を示しつつ、請求額や支払条件は別途協議する形にします。
- 争う場合:感情的に全面否認するのではなく、どの事実や金額に確認が必要なのかを絞って書きます。
- 確認中の場合:現時点で認否を確定できないこと、資料や事実関係を確認してから回答することを明示します。
迷う場合は、いきなり認める・争うと書き切るよりも、「現時点では確認を要するため、認否を含めて確定的な回答は差し控えます」として、検討時間を確保する方が無難です。
回答書・返信文の基本テンプレ
本人請求でも弁護士通知でも、回答書・返信文の基本構成は大きく変わりません。大切なのは、相手の請求に反応していることを示しつつ、まだ確認できていない認否・金額・条件を不用意に固定しないことです。
回答書に入れる6つの要素
回答書や返信文には、次の6つを順番に入れると整理しやすくなります。
- 受領:請求書、メール、内容証明、受任通知を受け取ったこと。
- 認否:認める、争う、現時点では確認中という立場。
- 配慮:必要に応じて、相手の心情に配慮する一言。
- 金額:請求額を検討中、協議希望、過大と考えるなどの姿勢。
- 期限:いつまでに回答するか、又は期限延長を希望すること。
- 連絡方法:メール、書面、弁護士宛てなど、今後の窓口。
この型に沿って書けば、短い文章でも、受領、検討状況、今後の連絡方法が伝わります。逆に、事実関係や相場を整理しないまま長文で反論すると、かえって争点が増えたり、感情的なやり取りになったりすることがあります。
返信文面で避けたいNG表現
回答書では、「何を書くか」と同じくらい「何を書かないか」が重要です。特に、次のような表現は、文面だけを見ると強い意味に読まれやすいため注意してください。
- 責任を広く認める表現:「すべて私の責任です」「どのような請求にも応じます」など。
- 金額を確定させる表現:「請求額全額を支払います」「指定口座に必ず振り込みます」など。
- 相手を刺激する表現:「証拠を出せるものなら出してください」「あなたにも問題があります」など。
- 直接接触を前提にする表現:「直接会って話しましょう」「職場や自宅に伺います」など。
- 条件を先取りする表現:「接触禁止、口外禁止、求償権放棄も全部受け入れます」など。
回答書は、相手との交渉を始めるための入口です。示談条件や清算条項、接触禁止、口外禁止、求償権の扱いまで含めた最終合意は、示談書を作る段階で別に整理します。
認否を留保する場合の安全な言い換え
事実関係に争いがある、記憶が曖昧、相手の主張が抽象的、証拠を確認していないという場合は、無理に認める・否認するのではなく、認否を留保する表現を使います。
「認否を留保する」とは、逃げることではありません。事実関係や資料を確認する前に結論を書かず、後から正確に回答するための実務的な表現です。
たとえば、「現時点では、書面記載の事実関係について確認が必要な点があるため、認否を含め直ちに結論を申し上げることができません」と書けば、全面否認とも全面自白とも読まれにくくなります。
内容証明に対する回答書の要否、反論の型、送付方法まで詳しく確認したい場合は、内容証明の回答書の書き方・反論の型も参考にしてください。
本人からの請求・メールへの返信例文テンプレ
ここでは、相手本人から請求書、メール、LINE、手紙などで慰謝料請求を受けた場合の返信例を整理します。実際には、相手が誰か、弁護士が入っているか、請求内容をどこまで認めるかによって調整が必要です。
以下の「〖 〗」部分は、あなたの事情に合わせて置き換えてください。書面で送る場合も、メールで送る場合も、本文の基本は同じです。
本人請求とメール請求で共通する注意点
本人からの請求は、弁護士通知よりも感情的な文面になっていることがあります。だからといって、こちらも感情的に返す必要はありません。メールで請求された場合でも、まずは本文、送信日時、資料、相手のメールアドレスを保存したうえで、短く記録に残る返信をします。
- 電話だけで回答しない
- 相手のメール本文・資料を保存する
- 認めるか争うか迷う場合は認否留保にする
- 支払額や分割条件をその場で約束しない
- 面会や直接謝罪を急いで約束しない
本人同士のやり取りでは、相手の怒りや不安に引きずられて、必要以上に謝罪や約束を書いてしまうことがあります。返信は、丁寧でよい一方、短く、事務的に、記録に残る形にすることを意識してください。
テンプレA:まずは受領+検討中で返す場合
請求内容をまだ確認できていない場合や、弁護士相談・資料確認の時間を確保したい場合は、最初の返信として次のような文面が考えられます。
――――――――――
件名:ご請求書(ご連絡)受領の件/回答について
〖相手の氏名〗様
このたびいただいた書面(メール)を拝受いたしました。内容を確認のうえ、事実関係も含めて整理しております。
現時点では検討に時間を要するため、〖◯月◯日〗までに改めて回答いたします。可能であれば、回答期限を〖◯月◯日〗まで延長いただけますと幸いです。
なお、以後のご連絡は行き違い防止のため、〖メール/書面〗にてお願いいたします。
取り急ぎ、受領のご連絡まで申し上げます。
〖あなたの氏名〗
――――――――――
テンプレAを使うときの注意点
- 使える場面:請求内容を確認中で、認否や金額をまだ決められない初回返信に向いています。
- 使わない場面:すでに弁護士が相手方代理人として入っている場合は、本人宛てではなく弁護士宛ての回答書に切り替えます。
- 言い換え注意:「支払います」「認めます」は入れず、受領、検討中、回答予定日に絞るのが安全です。
テンプレB:認める前提で減額交渉の入口を作る場合
不貞関係自体を大きく争わないものの、請求額が高い、支払能力に限界がある、示談条件を協議したいという場合は、次のように「協議したい」という入口を作ります。
――――――――――
件名:ご請求の件(回答)
〖相手の氏名〗様
ご連絡(書面)を拝受しました。ご心痛をおかけしていることについて、申し訳なく思っております。
ただ、ご請求額については、〖私の支払能力/本件の事情〗も踏まえる必要があり、直ちにご希望どおりの金額での合意は難しい状況です。
今後の解決に向けて、事実関係の整理のうえ、合理的な範囲で協議したく存じます。
差し支えなければ、請求の根拠として想定されている〖期間/出来事/内訳〗について、分かる範囲でご提示いただけますでしょうか。
〖◯月◯日〗までに、私から具体的な提案又は回答を差し上げます。
以後のご連絡は〖メール/書面〗にてお願いいたします。
〖あなたの氏名〗
――――――――――
テンプレBを使うときの注意点
- 使える場面:不貞関係自体を大きく争わないが、金額や支払条件を協議したい場合に向いています。
- 使わない場面:既婚者と知らなかった、肉体関係を争う、婚姻関係が破綻していた可能性がある場合は、安易にこのテンプレを使わない方が安全です。
- 言い換え注意:謝罪は相手の心情への配慮にとどめ、「法的責任を認めます」「請求額を支払います」といった文言は入れないようにします。
減額理由を文面に長く書き込むより、まずは協議の入口を作り、資料や事実関係を確認してから具体的に提案する方が安全です。減額理由・相場・交渉手順は、不倫慰謝料の減額理由・交渉手順で詳しく解説しています。
テンプレC:争いがある・記憶が曖昧な場合
請求内容に争いがある場合や、相手の主張する時期・回数・経緯が曖昧な場合は、全面否認のように強く書くよりも、確認が必要な点を整理して回答します。
――――――――――
件名:ご請求の件(回答)
〖相手の氏名〗様
ご連絡(書面)を拝受しました。
もっとも、現時点では、書面記載の事実関係について確認が必要な点があるため、認否を含め直ちに結論を申し上げることができません。
請求内容を正確に検討するため、差し支えない範囲で、不貞行為とされる〖時期/回数〗、請求額の〖内訳/算定の根拠〗、根拠資料の有無について、具体的にご教示ください。
〖◯月◯日〗までに、確認のうえ回答いたします。
以後のご連絡は〖メール/書面〗にてお願いいたします。
〖あなたの氏名〗
――――――――――
テンプレCを使うときの注意点
- 使える場面:事実関係、期間、回数、既婚認識、請求額の内訳が不明な場合に向いています。
- 使わない場面:根拠なく全面否認したいだけの場合や、相手を挑発する目的で資料提示を求める場合には向きません。
- 言い換え注意:「証拠はないはずです」ではなく、「資料があればご提示ください」と書く方が、交渉上も安全です。
テンプレ(メール用):メールで慰謝料請求された場合の初回返信
メールで慰謝料請求を受けた場合は、件名、本文、資料、送信日時を保存したうえで返信します。短いメール返信でも、認否や支払約束を急がない点は同じです。
――――――――――
件名:ご請求メール受領の件/回答について
〖相手の氏名〗様
本日、慰謝料請求に関するメールを受領いたしました。
内容を確認し、事実関係及び請求額について検討しております。現時点では認否及び金額について確定的な回答は差し控え、〖◯月◯日〗までに改めて回答いたします。
今後の行き違いを避けるため、本件に関するご連絡は、電話ではなく本メール又は書面にてお願いいたします。
取り急ぎ、受領のご連絡まで申し上げます。
〖あなたの氏名〗
――――――――――
メール返信を使うときの注意点
- 使える場面:本人からメールで慰謝料請求を受け、まず受領と回答予定日だけを伝えたい場合に向いています。
- 使わない場面:相手方弁護士からメールが来ている場合は、弁護士宛ての回答書として文体と宛先を整えます。
- 言い換え注意:メール上で金額交渉を完結させず、資料や請求内容を保存してから、次の回答を検討します。
本人からのメール請求は、返信しやすい反面、やり取りが細かく続きやすいです。電話や即時返信で対応し続けるのではなく、必要に応じて回答期限を区切り、記録に残る形で整理していきましょう。
相手方弁護士から通知書や内容証明が届いている場合は、本人請求への返信とは別に、弁護士宛ての回答書として宛先、日付、件名、連絡窓口を整える必要があります。
弁護士通知・内容証明への回答書テンプレート
相手方弁護士から通知書や内容証明が届いている場合は、本人請求への返信よりも、宛先、件名、日付、回答期限、連絡窓口を明確にしておく必要があります。弁護士からの通知だからといって、必ず長い反論書を作らなければならないわけではありませんが、少なくとも「受領したこと」「検討中であること」「いつまでに回答するか」は、記録に残る形で返しておく方が安全です。
内容証明に対する回答書の要否、反論の型、送付方法を詳しく確認したい場合は、内容証明の回答書の書き方・反論の型も参考にしてください。この記事では、具体的な回答書テンプレートとして使いやすい文例を整理します。
弁護士からの通知は弁護士宛てに回答する
弁護士が相手方の代理人として通知してきた場合は、原則として、その弁護士宛てに回答します。相手本人に直接メールや電話をすると、連絡方法をめぐって余計なトラブルになったり、交渉窓口が乱れたりすることがあります。
弁護士宛ての回答書では、次のような点を意識してください。
- 宛先は相手方弁護士名又は法律事務所名にする
- 件名は通知書や内容証明の件だと分かるようにする
- 受領日、検討中であること、回答予定日を明記する
- 認否や金額を急いで確定させない
- 今後の連絡方法をメール又は書面に整理する
相手方弁護士に返す文章は、感情を伝える手紙ではなく、交渉のための記録です。丁寧な表現は必要ですが、謝罪、支払意思、示談条件を一度に書き込みすぎないようにします。
テンプレD:弁護士通知への回答(受領+検討中)
まずは通知を受け取ったことを伝え、回答期限を確保したい場合は、次のような文面が考えられます。通知書の内容をまだ十分に確認できていない段階では、認否や支払額を確定させない形にします。
――――――――――
件名:貴職通知書に対する回答について
〖法律事務所名〗
弁護士 〖弁護士名〗 先生
前略
貴職作成の〖令和◯年◯月◯日付〗通知書を受領いたしました。
現在、通知書記載の事実関係、請求内容及び関係資料を確認しております。現時点では、認否及び請求額について確定的な回答を差し控えます。
検討のうえ、〖令和◯年◯月◯日〗までに改めて回答いたします。恐れ入りますが、それまで回答期限を猶予いただけますようお願いいたします。
なお、本件に関する今後のご連絡は、行き違い防止のため、〖メール/書面〗にてお願いいたします。
草々
〖あなたの氏名〗
――――――――――
テンプレDを使うときの注意点
- 使える場面:弁護士通知や内容証明を受け取り、まず回答期限を確保したい場合に向いています。
- 使わない場面:裁判所から訴状、調停申立書、期日呼出状などが届いている場合は、このテンプレだけで対応しないでください。
- 言い換え注意:「請求を認めます」「支払います」とは書かず、受領、検討中、回答予定日を中心にします。
テンプレE:減額協議の入口を作る回答書
不貞関係自体を大きく争わないものの、請求額が高い、支払方法を調整したい、示談条件を協議したいという場合は、弁護士宛てに協議希望を伝えます。減額理由を一度に長く書くより、まずは請求額や算定根拠を確認し、協議の入口を作る方が安全です。
――――――――――
件名:貴職通知書に対する回答について
〖法律事務所名〗
弁護士 〖弁護士名〗 先生
前略
貴職作成の〖令和◯年◯月◯日付〗通知書を受領いたしました。
通知書記載の内容については、現在、事実関係及び請求額の根拠を確認しております。
ご請求額については、本件の事情、私の支払能力その他の事情を踏まえ、直ちにご請求どおりの金額で合意することは難しいと考えております。
もっとも、早期解決に向けて、合理的な金額及び支払条件について協議する意向はあります。つきましては、請求額の算定根拠、不貞行為とされる期間・回数、その他ご請求の前提となる事情について、可能な範囲でご教示ください。
資料等を確認のうえ、〖令和◯年◯月◯日〗までに具体的な回答又は提案を差し上げます。
草々
〖あなたの氏名〗
――――――――――
テンプレEを使うときの注意点
- 使える場面:請求額が高い、分割払いを検討したい、示談協議に進めたい場合に向いています。
- 使わない場面:不貞行為の有無、既婚者と知っていたか、婚姻関係の破綻など、支払義務自体を争う余地が強い場合は、減額前提の文面にしない方が安全です。
- 言い換え注意:「◯万円なら支払えます」と早く書きすぎると、その金額を前提に交渉が進むことがあります。まずは根拠確認と協議希望にとどめます。
減額理由、相場、交渉手順を具体的に整理したい場合は、不倫慰謝料の減額理由・交渉手順で確認してください。
テンプレF:争いがある場合の認否留保
相手方弁護士の通知書に、事実関係、時期、回数、既婚者と知っていたか、婚姻関係の状態、請求額の内訳などについて確認が必要な点がある場合は、争点を整理しながら認否を留保します。感情的な全面否認ではなく、どこに確認が必要なのかを示すことが大切です。
――――――――――
件名:貴職通知書に対する回答について
〖法律事務所名〗
弁護士 〖弁護士名〗 先生
前略
貴職作成の〖令和◯年◯月◯日付〗通知書を受領いたしました。
もっとも、通知書記載の事実関係については、現時点で確認が必要な点があります。そのため、認否及び請求額については、現時点で確定的な回答を差し控えます。
特に、〖不貞行為とされる時期・回数/既婚者であることの認識/婚姻関係の状態/請求額の算定根拠〗について、通知書の記載だけでは確認できない点があります。
つきましては、上記各点について、貴職らが前提としている具体的事情及び資料の有無をご教示ください。
確認のうえ、〖令和◯年◯月◯日〗までに改めて回答いたします。
草々
〖あなたの氏名〗
――――――――――
テンプレFを使うときの注意点
- 使える場面:相手の事実主張や金額に争いがあり、資料確認が必要な場合に向いています。
- 使わない場面:事実を確認せず、とにかく強い否認文を送りたいという場面には向きません。
- 言い換え注意:否認対象を広げすぎず、「どの点に確認が必要なのか」を限定して書く方が、後の交渉で整理しやすくなります。
テンプレ(回答期限の延長のみ):回答期限の延長を依頼する短文
通知書に短い回答期限が書かれている場合や、弁護士相談・資料確認が間に合わない場合は、まず期限延長だけを短く依頼することもあります。期限が近いからといって、認否や支払額を急いで書く必要はありません。
――――――――――
件名:回答期限猶予のお願い
〖法律事務所名〗
弁護士 〖弁護士名〗 先生
貴職作成の〖令和◯年◯月◯日付〗通知書を受領しております。
現在、事実関係及び関係資料を確認しており、指定期限までに確定的な回答を行うことが難しい状況です。
つきましては、回答期限を〖令和◯年◯月◯日〗まで猶予いただけますようお願いいたします。
本連絡は、通知書記載の請求を認める趣旨ではなく、内容確認のための時間をお願いするものです。確認のうえ、上記期限までに改めて回答いたします。
〖あなたの氏名〗
――――――――――
テンプレ(回答期限の延長のみ)を使うときの注意点
- 使える場面:回答期限が近く、まず検討時間を確保したい場合に向いています。
- 使わない場面:裁判所の提出期限が迫っている場合は、単なる期限延長メールでは足りないことがあります。
- 言い換え注意:延長依頼は認めたという意味ではないことを明記し、回答予定日を曖昧にしないようにします。
支払い期限や回答期限を過ぎた場合の考え方は、慰謝料請求の支払い期限・回答期限を過ぎた場合の対応で詳しく解説しています。
ケース別に使える差し替え文
ここまでのテンプレートは、本人請求・メール・弁護士通知に共通して使いやすい基本形です。もっとも、実際の慰謝料請求では、「高すぎる」「一括で払えない」「事実関係に争いがある」など、個別事情に応じて一部の文面を差し替える必要があります。
以下の文例は、それぞれのテンプレートの一部に差し込むための短い文です。全文を機械的にコピペするのではなく、事実関係や証拠を確認したうえで、必要な一文だけを使うようにしてください。
請求額が高すぎる場合
請求額が高いと感じる場合でも、「相場より高すぎます」とだけ書くと、根拠のない反発に見えることがあります。金額の妥当性を争うときは、請求額の算定根拠と具体的事情を確認する形にします。
差し替え文例:ご請求額については、本件の具体的事情、婚姻関係への影響、当事者間の経緯、私の支払能力等を踏まえると、直ちにご請求どおりの金額で合意することは困難です。請求額の算定根拠及び前提事情について、可能な範囲でご教示ください。
金額を争う場合は、いきなりこちらの希望額を出すより、相手の根拠を確認してから提案額を検討する方が安全です。
一括で払えない場合
支払義務や金額を認める前に、「払えません」とだけ返すと、誠実に協議する意思がないように受け取られることがあります。一括払いが難しい場合は、支払能力や分割協議の余地を、認否と切り分けて書きます。
差し替え文例:仮に一定の解決金をお支払いする方向で協議する場合でも、私の現在の収入・生活状況から、短期間での一括払いは困難です。金額の妥当性を確認したうえで、支払時期や分割方法を含めて協議させていただきたいと考えております。
この文面は、支払義務や請求額を確定的に認めるものではありません。支払条件を相談したい場合でも、金額の妥当性と支払方法は分けて整理しましょう。
不貞行為・期間・回数を争う場合
相手の主張する不貞行為の有無、期間、回数、場所などに争いがある場合は、全面否認と資料提示依頼を混同しないことが大切です。確認が必要な範囲を限定して、相手に前提事実を明らかにしてもらう形にします。
差し替え文例:通知書記載の事実関係については、私の認識と異なる点があります。特に、不貞行為とされる時期、回数及び具体的な経緯について、通知書の記載だけでは確認できないため、貴職らが前提としている具体的事情及び資料の有無をご教示ください。
「そのような事実は一切ありません」と書くべきかどうかは、証拠関係によって変わります。曖昧な記憶だけで強い否認をすると、後から説明が難しくなることがあります。
既婚者と知らなかった場合
相手が既婚者であることを知らなかった、又は独身だと説明されていたという事情がある場合は、支払義務の有無にも関係し得ます。ただし、単に「知りませんでした」と書くだけでは足りず、どのような経緯で知らなかったのかを確認する必要があります。
差し替え文例:通知書では、私が既婚者であることを認識していたことを前提としているようですが、その点については私の認識と異なります。交際開始時及び交際中に私がどのような説明を受けていたか、既婚者であることを認識し得る事情があったかについて、確認が必要です。
この主張を入れる場合は、交際開始時のやり取り、SNS、メッセージ、相手の説明内容など、認識に関する資料を確認してからにしてください。
婚姻関係が破綻していた可能性がある場合
不貞行為とされる時点で夫婦関係がすでに破綻していた可能性がある場合も、慰謝料請求への反論材料になり得ます。ただし、夫婦関係の内情は外部から分かりにくく、「破綻していた」と断定してよいかは慎重に判断する必要があります。
差し替え文例:通知書記載の請求は、当時の婚姻関係が円満であったことを前提としているように見受けられます。しかし、私が把握している限り、当時の夫婦関係や別居の有無等について確認を要する事情があります。請求の前提となる婚姻関係の状況について、貴職らの認識を可能な範囲でご教示ください。
婚姻関係の破綻は、別居時期、夫婦間の連絡状況、離婚協議の有無などで判断が分かれます。相手方配偶者の言い分だけでなく、客観的な事情を確認することが重要です。
時効の可能性がある場合
かなり前の不倫について慰謝料請求を受けた場合は、時効が問題になることがあります。時効は、いつから期間を数えるか、請求の内容が何か、途中で時効完成が妨げられる事情があったかによって判断が変わります。
差し替え文例:本件請求については、通知書記載の時期や経緯を前提としても、時効の成否を含めて確認を要するものと考えております。現時点では、請求を認める趣旨の回答は差し控え、事実関係及び法的な整理を行ったうえで改めて回答いたします。
時効を主張するかどうかは、単なる文面の問題ではありません。時効援用は法的な効果を伴うため、使う前に時期、相手が知った時点、過去のやり取り、支払や謝罪の有無などを確認してください。
テンプレを送る前の最終チェック
回答書や返信文は、一度送ると相手方の手元に証拠として残ります。短い文面であっても、送信前に、宛先、認否、金額、期限、連絡窓口を確認しておくことが重要です。
本文を送る前に確認する5項目
送信前には、少なくとも次の5点を確認してください。
- 宛先:相手本人宛てか、相手方弁護士宛てかを間違えていないか。
- 認否:認める、争う、確認中のいずれかが不用意に混ざっていないか。
- 金額:支払額、分割額、支払期限を確定させる文言を書きすぎていないか。
- 期限:回答予定日や延長希望日が具体的に書かれているか。
- 連絡方法:電話、メール、書面、弁護士宛てなど、今後の窓口が整理されているか。
特に、本人からの請求では、相手の感情に配慮しようとして長文の謝罪を書きたくなることがあります。しかし、最初の返信は、受領と検討状況を伝えるためのものです。示談条件や法的責任まで一気に確定させる必要はありません。
示談条件まで進む場合に確認すること
回答書を送った後、相手が金額や支払条件の協議に応じると、示談交渉に進むことがあります。示談では、金額だけでなく、支払期限、分割払い、清算条項、接触禁止、口外禁止、違約金、求償権の扱いなども問題になります。
たとえば、「慰謝料を支払います」とだけ合意してしまうと、後から接触禁止や口外禁止、追加請求の有無をめぐって争いになることがあります。回答書の段階では入口を作り、最終合意は示談書で整理するという順番を意識してください。
回答後に示談交渉へ進む場合の条件整理は、不倫の示談交渉で決める条件で詳しく解説しています。
弁護士に切り替えた方がよい場面
テンプレートで初回返信をすること自体は可能ですが、次のような場合は、自分だけで文面を調整するより、早めに弁護士へ相談した方が安全です。
- 相手方弁護士から内容証明や通知書が届いている
- 回答期限がかなり短い
- 請求額が高額で、支払条件も厳しい
- 不貞行為の有無、既婚者と知っていたか、婚姻関係の破綻などを争いたい
- 職場、家族、配偶者への連絡を示唆されている
- 相手から訴訟や刑事告訴のような強い表現を使われている
弁護士に依頼する場合は、相手方との連絡窓口を弁護士に一本化できます。すでに自分で返信している場合でも、これ以上のやり取りで条件を固定してしまう前に、請求書、メール、内容証明、やり取りの履歴をまとめて相談してください。
弁護士へ相談する前に整理しておきたい資料や質問は、慰謝料減額を弁護士に相談する前の確認ポイントでも解説しています。
まとめ
慰謝料請求への回答書・返信文は、相手を説得するための長文ではなく、受領、検討状況、認否、期限、連絡窓口を安全に残すための文章です。本人からの請求、メール、弁護士通知、内容証明のどれであっても、最初から謝罪、支払約束、示談条件をすべて書き切る必要はありません。
この記事の要点を整理すると、次のとおりです。
- 最初の返信は、受領+検討中+回答期限を中心にする
- 認める・争う・確認中のどれかを決めてからテンプレを選ぶ
- 弁護士通知は、相手本人ではなく弁護士宛てに回答する
- 高すぎる、払えない、既婚者と知らなかった等は短い差し替え文で整理する
- 示談条件や減額交渉は、回答書だけで確定させず別途検討する
テンプレートは、あくまで安全に初回対応をするための土台です。あなたの事情に合わない文面をそのまま送ると、不利な認め方になったり、相手との交渉がこじれたりすることがあります。迷う場合は、返信前に、請求内容、証拠、期限、支払条件を整理してから対応しましょう。
坂尾陽弁護士
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