不倫慰謝料の減額交渉をしたのに、相手から「減額には応じない」「これ以上は下げない」と言われると、頭が真っ白になりがちです。
しかし、ここで重要なのは “拒否=即終了”と決めつけないこと。交渉の場面では、拒否の言葉が「最終結論」ではなく、主導権を取るための定型句として出てくることもあります。
とはいえ、放置や感情的な反応をすると、相手が「話し合う余地なし」と判断して、手続(訴訟等)に進むリスクが上がります。
この記事では、拒否された後の打開策として、次の一手を“順番”で整理します。
- 再提示の順番(何を固めてから、どう出すか)
- 金額以外の条件交渉(分割・条項・再発防止)
- 弁護士に切り替える分岐点
- 調停・訴訟へ進むサイン(分岐点)と放置リスク
- やってはいけないNG対応
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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「減額に応じない」は終わりではない|まず確認する3つ(期限・相手・現在地)
拒否された直後に、まず確認してほしいのは次の3つです。
1)期限:いつまでに何を求められているか
請求書・内容証明・弁護士通知には、回答期限や支払期限が書かれていることがあります。
ここを落とすと、相手が「交渉より手続へ」と判断しやすくなります。
2)相手:拒否したのは“本人”か“弁護士”か
- 本人の拒否:感情が前面で「話したくない」「下げる気はない」になりやすい
- 弁護士の拒否:交渉カードとして「当方はこの条件で固い」という意思表示になりやすい
- 宛先・言い方(窓口一本化)も変わるので、相手の立場は重要です。
3)現在地:交渉段階か、手続段階(訴訟等)に入っているか
ここでいう“手続段階”の典型は、裁判所から訴状が届いたケースです。
訴状が来ているなら、交渉テクニック以前に「期限対応」が最優先になります(詳しい手続は後述で誘導します)。
また、返信の文面そのもの(受領連絡・検討中・期限の置き方)に迷うなら、まずはテンプレを確認しておくと事故が減ります。
不倫慰謝料の減額交渉|回答書・返信文の例文テンプレ(弁護士通知/本人請求別)
次の一手① 再提示の前にやること(争点整理・上限額・返答方針)
相手に再提示する前に、あなた側で先に固めるべきものがあります。これがないと、再提示してもすぐ詰みます。
(A)あなたの“上限額(これ以上は無理)”を決める
ここは気持ちではなく、現実ベースで決めます。
一括が難しいなら「分割ならいける上限」もセットで決めておくと、条件交渉に移りやすいです。
(B)争点を1つだけ決める(全部戦わない)
拒否された後の交渉は、論点を増やすほど泥沼化しがちです。
例:
- 金額が高すぎる(ただし理由の出し方が大事)
- 前提事実にズレがある(期間・回数・既婚認識など)
- 支払方法(分割・期限)が現実的でない
- など、「今回の再提示で何を動かしたいか」を1つに絞るのが安全です。
(C)返答方針を決める:認める/争う/確認してから(留保)
拒否された後に焦って “断定” を増やすと、後で修正しにくくなります。
とくに、こちらが不利な事実を不用意に自白する形は避けたいところです。
減額理由の棚卸し・交渉の全体設計は、ここでまとめています。
不倫慰謝料 減額の完全マニュアル|相場・10の理由・交渉手順・失敗例・裁判の見通し
次の一手② 再提示のやり方(順番・言い方・“材料”の出し方)
相手に「応じない」と言われた後の再提示は、**“押し返す”のではなく、“条件を組み直す”**発想がうまくいきやすいです。順番はこうです。
ステップ1:拒否理由を“言語化”して確認する(短く)
長文で反論する前に、まずは相手の拒否理由を確認して、土俵を整えます。
例(言い回しの方向性):
- 「ご提示額で固い、という理解でよろしいでしょうか」
- 「差し支えなければ、金額の算定根拠(内訳)をご教示ください」
- 「支払方法(期日・分割)についても協議の余地はありますか」
※ここで“相手の証拠を詰める”口調にしないのがコツです(対立が固定しやすい)。
ステップ2:再提示は“金額+期限+連絡方法”の3点セットにする
再提示で迷走しやすいのが、「金額だけ投げる」ことです。
交渉が難航しているほど、次の3点をセットにした方が、相手が動きやすくなります。
- 再提示額(または支払条件)
- 回答期限(いつまでに返答が欲しいか)
- 連絡方法(書面/メール、窓口一本化)
ステップ3:理由は“全部出さない”——出すなら「1つ」だけ
拒否された後に、減額理由を網羅して長文で出すのは、かえって不利になりやすいです。
理由の出し方に迷う場合は、先に「減額理由の設計(どれを出すか・出さないか)」を整理してから再提示するのが安全です(上の総合記事へ)。
ステップ4:自分での再提示が危ないときは、文面だけでも弁護士に切り替える
相手が弁護士を立てている/拒否が強い/期限が迫っている場合、あなたが直接書いた一文が“争点”になり得ます。
この局面では、再提示の文面を弁護士に作ってもらうだけでも、交渉の事故が減ります。
次の一手③ 条件交渉に切り替える(分割・接触禁止・清算条項など)
「金額は下げない」と拒否されたときでも、“条件”なら動くことがあります。
相手の目的が「反省の担保」「再発防止」「確実な支払い」なら、金額以外に落としどころが作れるからです。
交渉の材料になりやすい条件例
- 分割払い(回数・毎月の金額・支払日)
- 支払猶予(初回支払日を遅らせる)
- 接触禁止・SNSブロック等の再発防止(※必要性と実現可能性の整理)
- 口外禁止(職場・家族への拡散を防ぐ趣旨)
- 清算条項(これで終わり/追加請求しない)
- 求償権に関する条項(入れる/入れないの判断が重要)
交渉が決裂しそうなときほど、相手から示談書案が出て「とにかくサインして」と迫られることがあります。
しかし、条項の入れ方次第で、後から別トラブル(追加請求、求償、口外リスク等)に発展することがあります。
金額だけでなく、条項をセットでチェックするのが安全です。
示談書の作り方・記載事項・条項の注意点は、こちらで整理されています(本記事では深掘りしません)。
不倫示談書のテンプレート、作り方・記載事項・無効リスク・公正証書化まで
また、示談書で揉めやすい条項の一例(求償権放棄)については、次の記事が参考になります。
求償権の放棄は示談書で有効?条項例と「求償しない」の落とし穴
次の一手④ 弁護士介入の分岐点(相手弁護士・高額・訴訟予告)
「応じない」と言われた後は、本人同士で粘るほど状況が悪化するケースもあります。次のいずれかに当てはまるなら、弁護士介入を検討する分岐点です。
弁護士に切り替えた方がいいサイン
- 相手が弁護士を立てている(代理人から通知が来た)
- 拒否が強く、こちらの提案を一切受け付けない
- 請求額が高額/期限が短い/「提訴する」と予告されている
- 支払条件(分割・猶予)を組まないと現実的に払えない
- 事実関係(期間・回数など)にズレがあり、争点整理が必要
- 家族バレ・職場バレなど、二次被害(露見リスク)を避けたい
「弁護士に依頼したら、すぐ裁判になるのでは?」という不安はよくあります。考え方は次の記事で整理されています。
また、弁護士相談に行くなら、相談前の準備(持ち物・質問)を固めておくとスムーズです。
慰謝料減額の弁護士相談前チェック5つ|初回相談で失敗しない準備・質問・持ち物
交渉決裂→調停・訴訟へ|分岐点と放置リスク(やることだけ先に)
拒否が続くと、「どこから裁判になるの?」が気になりますよね。
分岐点(サイン)は、ざっくり次のとおりです。
交渉→手続へ進みやすいサイン
- 弁護士から「期限までに支払わなければ提訴する」等の予告がある
- 期限が切られているのに、何も返さない/返しても進展がない
- 金額だけでなく、前提事実の争いが大きい(平行線)
- 相手が「交渉では無理」と判断している(拒否が固定化)
そして、ここで一番危ないのが 放置 です。
通知書・内容証明・訴状を無視するとどうなるかは、次の記事で整理されています。
不倫慰謝料の通知書や裁判を無視するとどうなる? リスクと対処
裁判・調停など手続の詳細は、こちらで全体像を確認できます。
やってはいけない対応(逆ギレ・無視・即サイン・証拠処分)
拒否された後ほど、次のような対応をすると状況が一気に悪化しやすいです。
- 「もう払わない」「勝手にしろ」など感情的に突き放す(提訴に寄る)
- 通知を無視して期限を落とす(“話し合い拒否”と受け取られやすい)
- 相手本人に長文LINE/電話で詰める(言質・録音・炎上のリスク)
- 相手の示談書案に焦ってサインする(条項事故が起きやすい)
- やり取りや証拠を削除・改ざんする(後で説明不能になりやすい)
もし今のあなたが「返事の書き方が分からない」「再提示の文章が怖い」という段階なら、まずは文面の型を確認し、最低限の受領連絡+期限対応で時間を確保するのが安全です。
不倫慰謝料の減額交渉|回答書・返信文の例文テンプレ(弁護士通知/本人請求別)
まとめ
「減額に応じない」と拒否された後は、**提案の“中身”より“順番”**が重要です。最後に要点を整理します。
- まずは「期限/相手(本人or弁護士)/現在地(訴状の有無)」を確認
- 再提示の前に、上限額・争点・認否(留保含む)を固める
- 再提示は「金額(または条件)+期限+連絡方法」をセットで出す
- 金額が動かないなら、分割・接触禁止・清算条項など条件交渉に切り替える
- 相手弁護士・高額・訴訟予告・期限逼迫は、弁護士介入の分岐点
- 放置は危険。手続へ進むサインが出たら、期限対応を最優先にする
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