不倫がばれてしまって、不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されたとき、不倫の事実を認めて謝罪するべきかご相談を受けることがあります。この記事では、不倫がばれたとき、すぐに謝罪するメリット・デメリットについて実務的な観点から解説します。
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
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1. 肉体関係がないのに謝罪は危険
不倫の事実を認めて謝罪するべきかのポイントは、まず肉体関係があったのかです。不倫と一口に言っても、頻繁に食事に行ったり、キスをしたりしただけの場合も少なくありません。しかし、不倫相手の配偶者は、当然あなたと不倫相手が肉体関係を持ったことを前提として慰謝料請求等の主張をしてきます。
もし、あなたが肉体関係を持っていないのに、不倫相手の配偶者による肉体関係があることを前提とした主張に対して謝罪をしてしまうのはリスクがあります。後々に、あなたが謝罪したことを肉体関係を認めた等として不利に扱われる可能性があります。
従って、肉体関係が本当にないような場合には、安易に謝罪をすることは避けた方が良いでしょう。
2. 本当に不貞行為(肉体関係)がある場合
2.-(1) 不倫をしたこと自体は素直に謝罪すべき
不貞行為(肉体関係)が事実の場合には、不倫をしたこと自体について真摯に反省しているのであれば謝罪をすることはやむを得ないと思います。とくに後で述べるように、真摯に反省しているか否かは慰謝料の増減事由となります。不倫関係の継続を希望し確信的に謝罪しないような場合はともかく、とくにこだわりがなければ素直に不倫をしたことに対して謝罪をした方が良いでしょう。
2.-(2) 嘘をつくことはできない
ご相談者の中には、不倫は事実だが証拠はないので不倫はなかったと嘘をつけないかとご相談される方もおられます。しかし、少なくとも私たちのスタンスとしては、不倫が事実であるのに嘘をつくのはできないと考えています。
なぜなら、慰謝料を請求する以上はそれなりに証拠があると考えられますし、決定的な証拠はないと思っていても、不倫の事実があれば数々の状況から不倫の事実が認定されるからです。また、証拠はないと仰るご相談者の方に対しては、そもそも不倫相手の供述・証言が有力な証拠になることをご説明しています。不倫相手の口止めに同意していても、慰謝料請求がもめるうちに不倫相手との仲が険悪になって、不倫相手が気を変えて不倫を認めることも少なくありません。
不倫が事実であるのに嘘をつくことには多大なリスクがあるため、私たちは不倫が事実である以上は嘘をつくことはできないと考えております。
2.-(3) 謝罪時の注意点
不倫をしたこと自体に謝罪をするとしても注意点があります。まず、不倫自体に謝罪をするとしても、不倫の責任である慰謝料の支払義務まで相手方の言う通りに認める必要はありません。謝罪をした流れで、慰謝料の支払いを約束したり、相手方の示談書にサインをしてしまう方もおられますが、不倫自体は謝罪しつつも慰謝料請求に対しては冷静な対応が必要です。
また、不倫自体は事実であっても、不倫の期間や回数については認識に相違があることも少なくありません。不倫の期間や回数は慰謝料の金額に大きく影響する事実です。相手方である不倫相手の配偶者は、正確な不倫の期間や回数を把握していないため、少し多めに見積もって不倫が悪質だと主張することがあります。相手方が主張する不倫の期間や回数を認めたと言われないように、謝罪をするときは注意が必要です。
3. 謝罪をしたことは慰謝料の金額に影響するか
裁判例・実務上は謝罪をしたことは慰謝料の減額事由となり、他方で、謝罪をしない又は不倫相手と別れないと開き直ることは慰謝料の増額事由となります。裁判所は、謝罪したことが慰謝料にどのような影響を与えると判断しているかを解説します。
3.-(1) 慰謝料の減額事由とした裁判例
不倫をしたことを慰謝料の減額事由としている裁判例は少なくありません。
例えば、東京地裁平成23年2月24日判決は、「不貞行為について自己の非を認め,一応…陳謝している」ことを指摘して、慰謝料として70万円を認定しています。
この事案では、慰謝料を請求されたのは男性であり、不倫相手の女性からは強姦をされた旨の陳述書が出されていた事案でした(裁判所は強姦の事実は認定できないと判断しています。)。不倫相手が女性の場合は無理矢理性行為を持たされたと主張され、事実関係の争いが生じる場合も少なくありません。このように事実経緯の一部に争いがある場合でも、一応の謝罪をすることは慰謝料の減額事由として考慮されます。
3.-(2) 謝罪をしないことを慰謝料の増額事由とした裁判例
謝罪をしていないことは慰謝料の増額事由として考慮されます。
東京地裁平成20年10月8日判決は、婚姻期間が8年に及ぶこと、不倫が原因で離婚に至ったことと並列して、「不貞行為について…謝罪をしていないことを考慮し」と指摘して、慰謝料230万円を認定しています。
この事案では、不倫相手が離婚時に慰謝料50万円を支払った事案であるため、裁判所としては総額280万円もの不倫慰謝料を相当と認めたと考えられます。婚姻期間の長短や、不倫の結果として離婚に至ったことと同様に、謝罪をしたか否かも裁判所は重視していると言えます。
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4. 謝罪を求められたときの対応
4.-(1) 謝罪のメリット・デメリット
以上の通り、肉体関係を持った事案については不貞行為自体に対しては素直に謝罪をした方が良いと言えます。素直に謝罪の意思を示すことは慰謝料の減額事由として考慮されます。
他方で、相手方が主張する不倫期間、慰謝料の金額又は不倫に至った経緯(とくに強姦等と主張された場合)に争いがあるときに、不用意に謝罪することで相手方の主張を認めたと判断されるリスクもあります。
不倫をしたこと自体に謝罪をしつつ、争いがある点については毅然と主張しなければならないことが、不倫がバレた場合の謝罪の難しさとなります。
3年以上前の不倫では慰謝料請求の時効を主張できるときがあります。この場合、時効が成立しそうなのに慰謝料の支払義務を認めると時効の主張ができなくなる場合があるのでご注意ください。
4.-(2) 端的に謝罪はしつつ、改めて慰謝料の減額交渉を
それでは、不倫がバレたため不倫相手の配偶者から謝罪を求められたときはどのような対応をすれば良いでしょうか?
上記謝罪のメリット・デメリットを踏まえれば、肉体関係を持ったことが事実である場合は不貞行為自体は端的に謝罪しつつ、「今後の責任等については弁護士と相談して誠実に対応する」旨を告げて余計な内容について不利な言質を取られないようにしましょう。
基本的には、不倫相手の配偶者(相手方)や相手方の弁護士は、自己に有利なように不倫期間を長めに解釈したり、高額な慰謝料が妥当だと主張されます。不倫自体は謝罪しつつも、相手方のペースに巻き込まれないように弁護士と相談して冷静に対応する必要があります。
5. まとめ
不倫がバレた場合、肉体関係があるのであれば不倫を否定したり、開き直るのは得策ではありません。不倫自体について素直に謝罪することは慰謝料の減額事由となります。
他方で、不倫に対する謝罪をする流れで相手方の主張する慰謝料額に合意したり、相手方が用意した示談書にサインすることは絶対に避けなければなりません。当初は不倫について謝罪の意思があることを伝えておけばよく、弁護士同士の交渉や裁判の場で正式に謝罪をすることは可能です。誠意を見せるために相手方に会わない等と思う必要はありません。
慰謝料を請求されたとき、不倫相手の配偶者(相手方)や相手方の弁護士と直接会うことの危険性については、>>『不倫慰謝料を請求された場合にしてはいけない4つのこと』の記事もご参考ください。
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