不倫示談書・合意書のテンプレート|例文・書き方と条項チェックを弁護士が解説

不倫慰謝料について相手と話し合いがまとまりそうなときでも、口頭で金額だけを決めて終わらせると、後から「支払うとは言っていない」「接触禁止までは合意していない」「これで全部解決したはずではない」と争いになることがあります。

不倫の示談書・合意書では、慰謝料や解決金の金額だけでなく、支払期限、清算条項、口外禁止、接触禁止、違約金、求償権放棄などを、事案に応じて整理する必要があります。特に、相手から示談書を提示された側は、金額だけを見てサインするのではなく、将来の行動制限や違反時の効果まで確認することが重要です。

この記事では、不倫示談書・合意書の基本テンプレートを示したうえで、接触禁止・違約金、求償権放棄、分割払い、手切れ金・清算金として支払う場合の追加条項を解説します。

  • 不倫示談書は、慰謝料の支払だけでなく、清算条項や口外禁止条項まで含めて作成します。
  • まずは二者間の基本テンプレートを確認し、必要に応じて追加条項を差し替えます。
  • 接触禁止・違約金・求償権放棄・分割払いは、必要性に応じて入れる条項です。
  • 手切れ金や清算金として支払う場合は、何の解決金なのかと再請求しない範囲を明確にします。
  • 提示された示談書にサインする前は、金額だけでなく、将来の制限や違反時の効果も確認しましょう。

坂尾陽弁護士

示談書は、テンプレートをそのまま写すよりも、「誰のどの請求を終わらせるか」を整えることが大切です。
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

不倫慰謝料に詳しい坂尾陽弁護士

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不倫示談書・合意書のテンプレート

ここでは、不倫慰謝料に関する示談書・合意書の基本型を紹介します。まず二者間の基本型を確認し、そのうえで、接触禁止・違約金、求償権放棄、分割払い、手切れ金・清算金として支払う場合の追加条項を見ていきましょう。

テンプレートでは、原則として、

  • 甲を「不倫された配偶者」
  • 乙を「不倫相手」
  • 丙を「不倫をした配偶者」

として記載します。ただし、誰を当事者にするかによって、支払義務、接触禁止義務、口外禁止義務、清算条項の効果が及ぶ範囲は変わります。実際に使うときは、氏名、住所、金額、期限、当事者の関係を事案に合わせて修正してください。

テンプレート利用上の注意

以下のテンプレートは、典型的な条項を整理するためのサンプルです。事実関係に争いがある場合、慰謝料額に争いがある場合、職場不倫やダブル不倫の場合、分割払いにする場合などは、条項の追加・削除・修正が必要になります。

二者間の基本型|全文テンプレート

二者間の基本型は、不倫された配偶者と不倫相手との間で、不倫慰謝料の支払と清算を合意するテンプレートです。不倫をした配偶者は事実関係の説明には登場しますが、署名当事者にはしない形です。

この型では、署名するのは甲(不倫された配偶者)と乙(不倫相手)です。そのため、原則として、丙(不倫をした配偶者)に直接義務を負わせたり、丙との間の請求関係まで当然に清算したりすることはできません。

基本テンプレート:不倫慰謝料に関する示談書

甲(不倫された配偶者)と乙(不倫相手)は、乙と甲の配偶者である丙(不倫をした配偶者)との不貞行為に関し、以下のとおり合意する。

第1条(不貞行為の確認)

乙は、丙に配偶者がいることを知りながら、令和○年○月頃から令和○年○月頃までの間、丙と不貞関係にあったことを認める。

乙は、前項の不貞関係により、甲に精神的苦痛を与えたことを認める。

第2条(慰謝料の支払)

乙は、甲に対し、前条の不貞関係に関する慰謝料として、金○万円の支払義務があることを認める。

第3条(支払方法)

乙は、甲に対し、前条の金員を、令和○年○月○日限り、甲が指定する次の口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。

  • 金融機関名:○○銀行
  • 支店名:○○支店
  • 預金種別:普通預金
  • 口座番号:○○○○○○○
  • 口座名義:○○○○

第4条(口外禁止)

甲及び乙は、正当な理由なく、本件不貞関係、本示談書の内容及び本示談書を作成した事実を第三者に口外しない。

前項にかかわらず、弁護士、税理士その他の専門家への相談、裁判所その他の公的機関への手続、法令上必要な対応、家族への必要最小限の説明その他正当な理由がある場合は、この限りでない。

第5条(清算条項)

甲及び乙は、本件不貞関係に関し、本示談書に定めるもののほか、甲乙間に何らの債権債務がないことを相互に確認する。

第6条(協議)

本示談書に定めのない事項又は本示談書の解釈について疑義が生じた場合、甲及び乙は、誠実に協議して解決する。

第7条(作成部数)

本示談書は2通作成し、甲乙各自が署名押印のうえ、各1通を保管する。

令和○年○月○日

甲 住所 ○○○○

甲 氏名 ○○○○ 印

乙 住所 ○○○○

乙 氏名 ○○○○ 印

この基本型では、慰謝料の支払と甲乙間の清算を中心にしています。接触禁止、違約金、求償権放棄、分割払いなどを入れる場合は、次の追加条項を事案に応じて差し替えます。

接触禁止・違約金を入れる場合の追加条項

不倫関係の再発防止や婚姻関係の修復を重視する場合は、接触禁止条項を入れることがあります。もっとも、職場不倫のように業務上の連絡が完全には避けられないケースでは、接触を全面的に禁止すると、どこまでが違反なのかが曖昧になりやすくなります。

そのため、接触禁止条項では、禁止する連絡手段、禁止する接触の範囲、業務上必要な連絡の例外、違反した場合の効果を具体的に書くことが重要です。職場不倫での接触禁止条項の考え方は、接触禁止条項の拒否・修正ポイントでも詳しく解説しています。

接触禁止条項の例文

第○条(接触禁止)

乙は、正当な理由なく、丙に対し、面会、電話、メール、SNS、メッセージアプリ、手紙その他方法を問わず、私的な連絡又は接触をしない。

前項にかかわらず、乙と丙が同一の勤務先に所属する場合において、業務上必要最小限の連絡を、業務目的の範囲内で、勤務先が通常使用する連絡手段により行うことは、前項の違反に当たらない。

違約金条項の例文

第○条(違約金)

乙が前条に違反した場合、乙は、甲に対し、違約金として1回の違反につき金○万円を支払う。

違約金条項は、接触禁止や口外禁止など、違反があったときの損害額を証明しにくい条項の実効性を高めるために使われます。ただし、違約金が高すぎると、後日、全部又は一部が無効と判断されるリスクがあります。金額は、禁止したい行為の内容、違反時に想定される損害、支払う側の負担を踏まえて設定する必要があります。

求償権放棄を入れる場合の追加条項

不倫慰謝料は、不倫相手だけでなく、不倫をした配偶者にも責任が問題になることがあります。そのため、不倫相手が慰謝料を支払った後、不倫をした配偶者に対して「自分が支払った分を負担してほしい」と求償することがあります。

請求する側から見ると、求償によって夫婦間や関係者間の紛争が蒸し返されることを避けるため、求償権放棄条項を入れたい場合があります。他方で、支払う側から見ると、求償権放棄は負担を大きくする条項です。求償権放棄を入れるかどうかは、慰謝料額や示談全体の条件と合わせて検討しましょう。詳しくは、求償権放棄条項の例とリスクを参照してください。

求償権放棄条項の例文

第○条(求償権の放棄)

乙は、甲に対して本示談書に基づく金員を支払ったことに関し、丙に対し、求償、負担分の請求、立替金請求その他名目を問わず、何らの金銭請求をしない。

求償権放棄条項を入れる場合は、単に「求償権を放棄する」と書くだけではなく、誰に対するどの請求をしないのかを明確にすることが大切です。二者間の示談書では、署名していない丙に直接義務を負わせることはできないため、乙が丙に請求しないという形で定めるのが基本です。

分割払いにする場合の追加条項

慰謝料や解決金を一括で支払えない場合は、分割払いにすることがあります。分割払いでは、総額だけでなく、各回の支払額、支払日、振込先、支払遅れがあった場合の扱いを明確にしなければなりません。

請求する側は、不払いになった場合に備えて期限の利益喪失条項や公正証書化を検討します。支払う側は、1回の遅れで直ちに残額一括請求になる内容が現実的か、遅延損害金が過大でないかを確認する必要があります。公正証書化の詳しい流れは、不倫慰謝料の公正証書の作り方で解説しています。

分割払い条項の例文

第○条(分割払い)

乙は、甲に対し、第○条の金員○万円を、次のとおり分割して支払う。

  • 初回支払額:金○万円
  • 初回支払期限:令和○年○月○日
  • 第2回以降の支払額:毎月金○万円
  • 第2回以降の支払期限:令和○年○月から令和○年○月まで、毎月末日限り
  • 支払方法:甲が指定する口座への振込送金

期限の利益喪失条項の例文

第○条(期限の利益の喪失)

乙が前条の分割金の支払を怠り、甲から書面又は電磁的方法により催告を受けたにもかかわらず、催告到達後○日以内に未払額を支払わないときは、乙は当然に期限の利益を失い、甲に対し、残額を直ちに一括して支払う。

公正証書化条項の例文

第○条(公正証書の作成)

甲及び乙は、甲が希望する場合、本示談書に基づく乙の金銭支払義務について、強制執行認諾文言付公正証書を作成することに協力する。

公正証書の作成費用は、甲乙協議のうえ定める。ただし、別段の合意がない限り、乙の金銭支払義務の履行確保のために必要な費用として、乙の負担とする。

分割払いは、請求する側にとっては未払いリスクが残り、支払う側にとっては長期間の支払義務が続きます。支払条件を曖昧にすると、1回ごとの遅れが大きな紛争になりやすいため、支払日、猶予期間、残額一括請求の条件を具体的にしておきましょう。

手切れ金・清算金として支払う場合の合意書条項

不倫関係や交際関係の終了に伴い、いわゆる手切れ金、解決金、清算金として金銭を支払うケースがあります。この場合、合意書では「手切れ金」という俗称をそのまま使うよりも、「本件解決金」「本件清算金」など、何を解決するための金銭なのかが分かる表現にする方が整理しやすくなります。

もっとも、手切れ金を支払う法的義務があるか、相場がいくらか、要求された直後にどう対応すべきかは、示談書の書き方とは別の問題です。手切れ金そのものの意味や支払義務については、手切れ金の意味・相場・支払義務を確認してください。

ここでは、支払うことを前提に、後から追加請求されないようにするための条項例を示します。以下では、分かりやすさのため、「支払者」と「受領者」という表現を使います。

解決金・清算金条項の例文

第○条(本件解決金)

支払者は、受領者に対し、令和○年○月頃から令和○年○月頃までの交際関係及びその終了に関する一切の紛争を解決するため、本件解決金として金○万円を支払う。

支払者は、前項の金員を、令和○年○月○日限り、受領者が指定する口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は支払者の負担とする。

追加請求禁止条項の例文

第○条(追加請求の禁止)

受領者は、支払者に対し、本件交際関係、本件交際関係の終了及び本件解決金に関し、慰謝料、解決金、清算金、手切れ金、迷惑料その他名目を問わず、追加の金銭請求をしない。

清算条項の例文

第○条(清算)

支払者及び受領者は、本件交際関係、本件交際関係の終了及び本件解決金に関し、本合意書に定めるもののほか、相互に何らの債権債務がないことを確認する。

秘密保持条項の例文

第○条(秘密保持)

支払者及び受領者は、正当な理由なく、本件交際関係、本合意書の内容、本合意書を作成した事実その他本件に関する情報を第三者に開示又は漏えいしない。

前項にかかわらず、弁護士その他の専門家への相談、裁判所その他の公的機関への手続、法令上必要な対応、権利の行使又は防御のために必要な範囲で開示する場合は、この限りでない。

手切れ金・清算金型で特に注意すべきなのは、清算される範囲です。不倫をした配偶者と不倫相手(愛人)だけで合意しても、合意書に署名していない配偶者の慰謝料請求まで当然に消えるわけではありません。不倫された配偶者の慰謝料請求まで含めて解決したい場合は、その人を当事者に入れる必要があるかを検討する必要があります。

また、秘密保持が重要な条件になる場合は、口外禁止に違反したときの違約金、残金支払停止、和解解除、既払金の返還などを定めることも検討対象になります。ただし、違反があれば当然に全額返還できるわけではありません。対象となる違反行為、重大性、返還範囲、例外開示を明確にしておくことが重要です。

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不倫示談書・合意書とは

不倫示談書・合意書とは、不倫慰謝料やこれに関連する解決金について、当事者が合意した内容を書面に残すものです。金額だけでなく、支払期限、支払方法、清算条項、口外禁止、接触禁止、違約金、求償権放棄などを定めることで、後日の「言った・言わない」を防ぐ役割があります。

名称は「示談書」「合意書」「和解書」などと呼ばれますが、重要なのはタイトルではなく中身です。双方が署名押印し、慰謝料や解決金の支払義務、禁止事項、清算の範囲などが定められていれば、実質的には当事者間の契約書として扱われます。

不倫示談の流れ全体を知りたい場合は、先に不倫示談の全体像を確認しておくと、示談書でどこまで決めるべきかを整理しやすくなります。本記事では、その中でも「合意内容をどう書面化するか」に絞って解説します。

示談書・合意書・和解書は名称より条項の中身が重要

不倫慰謝料の話し合いでは、同じような書面でも、示談書、合意書、和解書、誓約書、念書など、さまざまな名称が使われます。もっとも、書面の効力は、表題だけで決まるわけではありません。

たとえば、表題が「合意書」でも、慰謝料の金額、支払期限、清算条項、口外禁止条項、接触禁止条項が具体的に書かれていれば、不倫慰謝料の示談書として機能します。反対に、表題が「示談書」でも、誰が誰にいくら支払うのか、どの請求を清算するのかが曖昧であれば、後から争いが残りやすくなります。

そのため、不倫示談書を作成するときは、書面名をどうするかよりも、誰と誰の間で、どの事実について、どの金銭を支払い、どこまで請求を終わらせるのかを明確にすることが大切です。

誓約書・念書との違い

誓約書や念書は、将来の行動を一方が約束する書面として使われることが多いです。たとえば、不倫相手が「今後連絡しない」「二度と会わない」「違反した場合は違約金を支払う」と約束する書面は、誓約書や念書と呼ばれることがあります。

これに対し、示談書・合意書は、慰謝料や解決金の支払、清算条項、口外禁止、接触禁止などを、双方の合意として整理する書面です。金銭支払と清算まで含めて紛争を終わらせるなら、示談書・合意書の形で作る方が整理しやすいでしょう。

もっとも、誓約書という名称でも、内容によっては示談書に近い効力を持つことがあります。不倫誓約書のテンプレートや、サインを求められた場合の注意点は、不倫誓約書のテンプレートと有効性で詳しく解説しています。

二者間合意と三者間合意では効力が及ぶ範囲が変わる

不倫示談書では、誰を当事者として署名押印させるかが重要です。二者間合意であれば、基本的には署名押印した二者の間で効力が生じます。たとえば、不倫された配偶者と不倫相手だけが署名した示談書では、不倫をした配偶者本人に直接義務を負わせることはできません。

一方で、不倫をした配偶者も当事者に入れる三者間合意にすれば、不倫をした配偶者との間の清算や、今後の接触・連絡に関する義務まで整理しやすくなります。ただし、三者間合意にすると、夫婦間の問題や離婚条件まで混ざりやすいため、どこまでを一つの書面に入れるかは慎重に判断する必要があります。実務上、三者間合意は必ずしも一般的ではありません。

なお、ダブル不倫では、不倫相手の配偶者も関係することがあります。この場合、二者間の示談書だけで、全員の慰謝料請求や求償関係まで当然に解決できるわけではありません。ダブル不倫の事案では四者間和解をするケースもあります。誰の請求を終わらせるのか、誰に義務を負わせるのかを、書面の当事者設計から確認する必要があります。

示談書・合意書に入れる条項と例文

テンプレートで全体像を確認したら、次は各条項の意味を理解して、事案に合わせて差し替えます。不倫示談書では、すべての条項を機械的に入れればよいわけではありません。必ず入れるべき条項、原則として入れた方がよい条項、事案によって入れる条項に分けて考えることが重要です。

テンプレートと例文・文例の使い分け

テンプレートは、示談書・合意書全体の雛形です。表題、前文、各条項、作成部数、署名押印欄まで含めて、書面全体の流れを確認するために使います。

これに対し、例文・文例は、各条項を差し替えるための部品です。たとえば、慰謝料支払条項、清算条項、口外禁止条項、接触禁止条項、違約金条項、求償権放棄条項などは、事案によって入れるかどうかや文言を変える必要があります。

したがって、テンプレートをそのまま写すのではなく、必要な条項を選び、金額、期限、禁止範囲、例外、違反時の効果を調整することが大切です。

条項の必要性にはグラデーションがある

不倫示談書に入れる条項は、重要度が同じではありません。金銭支払を合意するなら支払条項と清算条項は中心になりますが、接触禁止や違約金、求償権放棄、公正証書化は、事案に応じて必要性が変わります。

  • 必須に近い条項:当事者表示、不貞行為又は交際関係の特定、慰謝料・解決金・清算金の支払条項、支払方法・期限、清算条項。
  • 原則として検討すべき条項:口外禁止条項、支払遅延時の扱い、協議条項、作成部数、署名押印欄。
  • ケースバイケースの条項:接触禁止条項、違約金条項、求償権放棄条項、分割払いの期限の利益喪失条項、公正証書化条項、和解条項違反時の返還条項。

以下では、条項ごとに、なぜ必要なのか、どのような例文にするか、請求する側・請求された側がどこを確認すべきかを整理します。

当事者表示

当事者表示は、示談書・合意書の効力が誰に及ぶかを決める出発点です。示談書は、原則として署名押印した当事者を拘束します。そのため、不倫された配偶者と不倫相手だけの二者間合意なのか、不倫をした配偶者も含めた三者間合意なのかによって、支払義務、接触禁止義務、口外禁止義務、清算条項の効果が及ぶ範囲が変わります。

たとえば、不倫相手だけが慰謝料を支払う示談書であれば、不倫相手を乙として明確に表示します。不倫をした配偶者も、接触禁止や夫婦間の清算に関係させたいのであれば、署名当事者に入れるかを検討します。署名していない人に対して、後から「この示談書で義務を負ったはず」と主張することは難しくなります。

当事者表示の例文

甲及び乙は、乙と丙との不貞関係に関し、以下のとおり合意する。

三者間合意にする場合は、「甲、乙及び丙は、以下のとおり合意する」とし、丙の住所・氏名・署名押印欄も設けます。誰を当事者にするかは、清算条項や求償権放棄条項の効力にも関わるため、形式的な項目として軽く扱わないことが大切です。

不貞行為・交際関係の確認

不貞行為や交際関係の確認条項は、単に事実を認めさせるためだけの条項ではありません。どの事実を前提に金銭を支払うのか、どの範囲の紛争を清算するのかを特定する役割があります。

たとえば、「令和○年頃から令和○年頃までの不貞関係」と特定すれば、その期間の不倫慰謝料が清算対象になります。一方で、「本件交際関係及びその終了に関する一切の紛争」と書けば、不倫慰謝料だけでなく、交際終了に伴う解決金・清算金まで含む趣旨になり得ます。

請求する側は、まだ請求を残したい事項まで清算してしまわないように注意が必要です。請求された側は、支払った後に別の名目で再請求されないよう、清算対象となる事実関係を明確にしておく必要があります。

不貞行為を認める場合の例文

乙は、丙に配偶者があることを知りながら、令和○年○月頃から令和○年○月頃までの間、丙と不貞関係にあったことを認める。

乙は、前項の不貞関係により、甲に精神的苦痛を与えたことを認める。

責任の有無を争わず解決する場合の例文

乙は、甲との間で、本件に関する法的責任の有無及び範囲について争いがあることを前提に、紛争を早期かつ円満に解決するため、本示談書に定める金員を支払う。

事実関係に争いがある場合に、無理に「不貞行為を認める」と書かせると、かえって示談が成立しにくくなることがあります。事案によっては、責任を全面的に認める文言ではなく、紛争解決金として支払う形にすることも検討します。

慰謝料・解決金・清算金の支払条項

金銭を支払う合意をする場合、支払条項は必須です。金額、名目、支払期限、支払方法が曖昧だと、後から「慰謝料なのか解決金なのか」「いつまでに支払うのか」「振込手数料は誰が負担するのか」が争いになります。

不倫慰謝料として責任を認める場合は「慰謝料」と書きます。責任の有無や範囲に争いを残しつつ解決する場合や、いわゆる手切れ金・清算金として支払う場合は、「解決金」「清算金」という表現を使うことがあります。

坂尾陽弁護士

なお、夫婦間では慰謝料・財産分与・養育費等の複数名目の支払いが問題になるため、どの名目でどの金額を支払ったかを明確にすることが非常に重要となります。

慰謝料支払条項の例文

乙は、甲に対し、本件不貞関係に関する慰謝料として、金○万円の支払義務があることを認める。

解決金・清算金として支払う場合の例文

乙は、甲に対し、本件に関する一切の紛争を解決するため、本件解決金として金○万円を支払う。

いわゆる手切れ金として支払う場合でも、条項上は「手切れ金」という俗称をそのまま使うより、「本件解決金」「本件清算金」としたうえで、何に関する解決金なのかを明確にする方が整理しやすくなります。

支払方法・期限

支払方法・期限は、実際に支払を受けるための実務的な条項です。金額の合意だけでは、支払日、振込先、手数料負担、分割の有無が曖昧になることがあります。

請求する側は、いつまでに入金されなければ不履行になるのかを明確にしておく必要があります。支払う側は、期限が短すぎないか、支払方法が現実的か、分割払いの場合に1回の遅れで過大な不利益を受けないかを確認します。

支払方法・期限の例文

乙は、甲に対し、前条の金員を、令和○年○月○日限り、甲が指定する金融機関口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。

支払期限を「速やかに」「近日中に」などと書くと、いつから遅滞になるのかが不明確になります。できる限り、年月日で特定しましょう。

清算条項

清算条項は、示談書・合意書で定めたもの以外に、当事者間に債権債務がないことを確認する条項です。不倫慰謝料の示談では、支払った後に再請求されることを防ぐため、非常に重要です。

ただし、清算条項は強い効果を持つため、請求する側にとっては注意も必要です。まだ残したい請求、未確定の損害、別の当事者に対する請求まで含めて消えてしまう文言になっていないか確認しましょう。

請求された側にとっては、清算条項の範囲が狭すぎると、支払後に「別の期間の不貞」「別名目の迷惑料」「手切れ金」などとして追加請求される余地が残ります。どの事実・どの期間・どの金銭問題を終わらせるのかを、支払条項や不貞行為確認条項と合わせて整えることが重要です。

清算条項の例文

甲及び乙は、本件不貞行為に関し、本示談書に定めるもののほか、甲乙間に何らの債権債務がないことを相互に確認する。

清算条項は、書面に署名した当事者間の清算を定めるものです。署名していない配偶者や第三者の請求まで当然に消えるわけではないため、誰との間で何を清算するのかを当事者表示とセットで確認してください。

口外禁止条項

口外禁止条項は、不倫の事実、示談書の内容、示談が成立したことなどを第三者に話さないことを定める条項です。不倫された側が周囲への拡散を防ぎたい場合だけでなく、請求された側にとっても、不倫の事実や示談内容を広められないという意味で有利に働くことがあります。

もっとも、口外禁止の範囲が広すぎると、弁護士への相談、税務上の確認、裁判所での手続、家族への必要最小限の説明までできなくなるように読めてしまいます。そのため、禁止対象と例外開示を分けて書くことが重要です。口外禁止条項の詳しい考え方は、口外禁止条項の例文と修正ポイントも参考になります。

口外禁止条項の例文

甲及び乙は、正当な理由なく、本件不貞関係、本示談書の内容及び本示談書を作成した事実を第三者に口外しない。

前項にかかわらず、弁護士その他の専門家への相談、裁判所その他の公的機関への手続、法令上必要な対応、権利の行使又は防御のために必要な範囲で開示する場合は、この限りでない。

口外禁止違反に違約金、残金支払停止、和解解除、既払金の返還などの効果を持たせたい場合は、単に「口外しない」と書くだけでは足りません。どの行為が違反になるのか、違反した場合にどのような効果が生じるのかを、別条項で明確にする必要があります。

ダブル不倫では秘密保持の意味が大きくなることがある

ダブル不倫では、請求された側の配偶者が不倫を知らないまま、相手方との間で合意をすることがあります。この場合、支払われる解決金には、慰謝料だけでなく、家庭に知られないこと、職場や第三者に広めないことを前提にした秘密保持の意味合いが含まれることがあります。

もっとも、秘密保持が重要だからといって、口外禁止違反があれば常に解決金全額を返還できるとは限りません。不倫慰謝料には、過去の精神的苦痛に対する賠償という性質もあるためです。返還や残金支払停止を定める場合は、どの条項違反を対象にするのか、軽微な違反も含むのか、重大な違反に限るのか、一部返還にするのかを慎重に設計する必要があります。

ダブル不倫で家族に知られない形の解決や四者間の整理が問題になる場合は、ダブル不倫で慰謝料請求された場合の四者和解と家族バレ防止も確認しておくと、合意書に誰を当事者として入れるべきかを検討しやすくなります。

接触禁止条項

接触禁止条項は、不倫相手と不倫をした配偶者との再接触を防ぐための条項です。婚姻関係を継続する場合、不倫関係の再発を防ぎたい場合、職場や近隣などで接点が残る場合に問題になりやすい条項です。

ただし、接触禁止条項はケースバイケースです。すでに完全に関係が断たれている場合や、職場上どうしても必要な連絡がある場合には、禁止範囲を広くしすぎると、現実に守れない条項になります。

接触禁止条項の例文

乙は、正当な理由なく、丙に対し、面会、電話、メール、SNS、メッセージアプリその他方法を問わず、私的な連絡又は接触をしない。

乙と丙が同一の勤務先に所属する場合、業務上必要最小限の連絡を、業務目的の範囲内で行うことは、前項の違反に当たらない。

職場不倫では、「一切連絡しない」とだけ書くと、業務連絡まで違反になるのかが不明確になります。禁止するのは私的接触なのか、業務連絡も含むのか、相手から連絡が来た場合にどう対応するのかを具体化しましょう。

違約金条項

違約金条項は、接触禁止、口外禁止、求償権放棄などの条項に違反した場合に、あらかじめ定めた金額を支払うことを約束する条項です。違反があっても損害額を証明しにくい場面で、履行を促す意味があります。

もっとも、違約金額が高すぎると、後から全部又は一部が無効と判断されるリスクがあります。特に、「1回連絡しただけで1000万円」など、違反内容に比べて著しく高額な違約金は慎重に考える必要があります。不倫の違約金条項の有効性や裁判例は、不倫の違約金条項の有効性とリスクで詳しく解説しています。

違約金条項の例文

乙が第○条の接触禁止条項に違反した場合、乙は、甲に対し、違約金として1回の違反につき金○万円を支払う。

違約金条項を入れる場合は、対象となる違反条項を特定します。「本示談書に違反した場合」と広く書くよりも、「接触禁止条項に違反した場合」「口外禁止条項に違反した場合」のように、どの条項違反にいくらの違約金が発生するのかを明確にする方が安全です。

求償権放棄条項

求償権放棄条項は、不倫相手が慰謝料を支払った後、不倫をした配偶者に対して負担分の請求をしないことを定める条項です。不倫慰謝料は、不倫相手と不倫をした配偶者の双方が関係することがあるため、不倫相手が全額を支払った場合、後で求償が問題になることがあります。

請求する側から見ると、求償によって夫婦間の紛争が蒸し返されることを避けるメリットがあります。他方で、請求された側から見ると、本来であれば不倫をした配偶者に求償できた可能性を放棄することになるため、不利な条項になり得ます。

求償権放棄条項の例文

乙は、甲に対して本示談書に基づく金員を支払ったことに関し、丙に対し、求償、負担分の請求、立替金請求その他名目を問わず、何らの金銭請求をしない。

求償権放棄条項を入れる場合は、慰謝料額とのバランスが重要です。求償権放棄を求める代わりに慰謝料額を調整する、三者間合意にする、求償の範囲を限定するなど、事案に応じた設計が必要になります。

分割払い・期限の利益喪失・公正証書化

分割払いにする場合は、支払回数、各回の支払額、支払期日、振込先、遅れた場合の扱いを具体的に定めます。分割払いは、支払う側にとっては現実的な支払方法になり得ますが、請求する側にとっては未払いリスクが残ります。

期限の利益喪失条項を入れると、一定の支払遅れがあった場合に、残額を一括で請求できるようになります。ただし、支払う側から見ると、1回の軽微な遅れで直ちに残額全額を請求される内容は重すぎることがあります。催告期間を設けるなど、現実的に履行できる条件にすることも検討します。

期限の利益喪失条項の例文

乙が分割金の支払を怠り、甲から書面又は電磁的方法により催告を受けたにもかかわらず、催告到達後○日以内に未払額を支払わないときは、乙は期限の利益を失い、甲に対し、未払残額を直ちに一括して支払う。

支払期間が長い場合や、支払額が大きい場合、不払いの不安がある場合は、公正証書化を検討することがあります。公正証書に強制執行認諾文言を入れると、支払が滞ったときに裁判を経ずに強制執行へ進める可能性がありますが、支払う側にとっては負担の重い条項です。意味を理解したうえで合意する必要があります。

手切れ金・清算金を支払う合意書を作るときの注意点

不倫関係や交際関係を終わらせる場面では、「慰謝料」ではなく「手切れ金」「解決金」「清算金」などの名目で金銭を支払う合意をすることがあります。ただし、どの名目を使う場合でも、合意書で重要なのは、金銭の呼び方そのものではありません。何に関する支払なのか、支払後にどの請求が残るのか、秘密保持や接触禁止に違反したときにどう扱うのかを明確にすることです。

(参考)手切れ金とは? 意味や相場を解説

特に、手切れ金という言葉は日常的には使われますが、条項上は意味が広くなりやすい表現です。合意書では、事案に応じて「本件解決金」「本件清算金」「本件に関する一切の解決金」などの表現に置き換え、支払の対象を具体化する方が、後日の紛争を避けやすくなります。

「手切れ金」という名称だけで合意内容を曖昧にしない

合意書に「手切れ金として○万円を支払う」とだけ書くと、その金銭が何かしら法的根拠のある慰謝料(貞操権侵害に基づく慰謝料等)なのか、交際関係終了のための解決金なのか、過去の貸し借りや生活費の清算を含むのかが分かりにくくなることがあります。

支払う側から見ると、金銭を支払った後に、別の名目で追加請求を受けるリスクがあります。受け取る側から見ると、本来残しておきたかった請求まで清算条項で消えてしまうリスクがあります。そのため、手切れ金・清算金型の合意書では、金額だけでなく、支払対象を丁寧に特定する必要があります。

たとえば、不倫慰謝料も含めて解決するのであれば、「本件不貞行為に関する慰謝料、解決金その他一切の金銭問題を解決する趣旨で」などと書くことが考えられます。交際関係の終了だけを対象にするのであれば、その範囲に限定した表現にします。

何に関する解決金なのかを特定する

手切れ金・清算金型の合意書で最も重要なのは、「何の問題をこの合意書で終わらせるのか」です。対象を特定しないまま清算条項だけを入れると、清算される範囲をめぐって再び争いになることがあります。

典型的には、次のような範囲を意識して条項を作ります。

  • 法的根拠のある慰謝料を含めて清算するのか
  • 交際関係の終了に伴う金銭問題だけを清算するのか
  • 貸付金、立替金、生活費などの金銭問題を含めるのか
  • 口外禁止や接触禁止など、将来の義務も含めるのか

不倫された配偶者、不倫相手、不倫をした配偶者のうち、誰が合意書に署名するのかによっても、清算できる範囲は変わります。たとえば、不倫相手と不倫をした配偶者だけの合意では、不倫された配偶者の慰謝料請求まで当然に消えるわけではありません。誰のどの請求を終わらせるのかを、当事者表示と清算条項の両方でそろえることが大切です。

清算条項と口外禁止条項はセットで検討する

手切れ金・清算金を支払う合意書では、清算条項を入れるだけでは足りないことがあります。関係終了の経緯、支払金額、合意内容が周囲に広まると、職場、家庭、親族関係に影響が出ることがあるためです。

そのため、必要に応じて口外禁止条項を設けます。ただし、口外禁止の範囲を広げすぎると、弁護士への相談、税務処理、裁判所・公的機関への説明、家族への必要最小限の相談まで禁止されるように読めてしまいます。秘密保持を重視する場合でも、正当な理由のある開示や専門家への相談は例外として明記するのが安全です。

また、口外禁止違反があった場合の効果を定めるなら、「損害賠償を請求できる」といった一般的な表現だけで足りるのか、違約金、残金支払停止、和解解除、既払金の返還まで定めるのかを検討します。違反時の効果を重くするほど、対象行為、例外、重大性、返還範囲を具体的に書く必要があります。

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示談書・合意書にサインする前に確認すべきチェックポイント

不倫示談書・合意書を提示されたときは、金額だけを見て判断しないことが重要です。慰謝料額が想定より低い、または分割払いに応じてもらえるという理由で署名すると、後から接触禁止、口外禁止、違約金、求償権放棄、公正証書化などの条項が大きな負担になることがあります。

反対に、請求する側が示談書を作る場合も、相手が理解しないまま署名した条項や、過大な違約金を入れた条項は、後から争われる原因になります。サイン前のチェックは、請求された側を守るだけでなく、請求する側にとっても、後から無効・取消しを主張されにくい書面にするために必要です。

注意

署名押印後に「内容をよく読んでいなかった」「思ったより重い条項だった」と主張しても、常に取り消せるわけではありません。迷う条項がある場合は、署名押印前に確認することが大切です。

金額と名目が事案に合っているか

まず確認すべきなのは、慰謝料・解決金・清算金の金額と名目です。不倫慰謝料として支払うのか、交際関係の終了に伴う解決金として支払うのか、いわゆる手切れ金・清算金として支払うのかによって、合意書の意味合いが変わります。

また高額すぎる金額を設定すると示談書の無効が問題となり得ることがあります(参考:示談書が無効になるケース)。

  • 金額が高すぎないか:不貞期間、婚姻関係への影響、離婚の有無、証拠の強さなどと比べて、著しく高額になっていないかを確認します。
  • 名目が曖昧ではないか:「迷惑料」「手切れ金」などの言葉だけでは、何を解決する金銭なのかが分かりにくいことがあります。
  • 追加請求の余地が残っていないか:支払後も別名目で請求される可能性が残る文言になっていないかを確認します。

支払う側から見ると、金銭を支払う以上、その支払でどの紛争が終わるのかを明確にする必要があります。請求する側から見ると、慰謝料以外に残しておきたい請求や条件がある場合、清算条項で不用意に消してしまわないようにする必要があります。

支払期限・分割払い・期限の利益喪失が現実的か

一括払いが難しい場合、分割払いにすることがあります。このときは、毎月の支払額、支払期限、振込先、振込手数料、遅れた場合の扱いを確認します。

特に注意したいのは、期限の利益喪失条項です。期限の利益喪失条項とは、分割払いを1回でも怠った場合などに、残額を一括で支払わなければならなくなる条項です。支払う側にとっては重い条項ですが、請求する側にとっては分割払いの不履行を防ぐ意味があります。

たとえば、「1回でも支払が遅れたら直ちに残額全額を支払う」とするのか、「2回分以上遅れた場合」「催告後も支払わない場合」とするのかで、負担は大きく変わります。支払能力に不安がある場合は、無理な分割計画にしないことが重要です。

接触禁止条項の範囲が広すぎないか

接触禁止条項は、不倫関係の再発防止や婚姻関係の修復を目的として設けられることがあります。もっとも、禁止範囲を広くしすぎると、現実の生活や仕事に支障が出ることがあります。

職場不倫では、業務上必要な連絡まで全面的に禁止すると、仕事が成り立たなくなることがあります。そのため、「正当な理由なく」「業務上必要な範囲を除き」「第三者を通じた私的連絡を含む」など、禁止したい行為と例外を具体的に分ける必要があります。

  • 誰との接触を禁止するのか:不倫相手本人だけか、家族・勤務先・第三者を通じた連絡も含むのかを確認します。
  • どの方法を禁止するのか:面会、電話、メール、SNS、メッセージアプリ、職場での私的接触など、対象を具体化します。
  • 例外を置く必要があるか:業務上必要な連絡、弁護士を通じた連絡、裁判手続に必要な連絡などをどう扱うかを確認します。

接触禁止条項はケースバイケースの条項です。婚姻継続や再接触防止が重要な事案では強く検討すべきですが、常に同じ文言を入れればよいわけではありません。

口外禁止条項の例外と違反時効果が明確か

口外禁止条項は、不倫の事実や示談内容を第三者に広めないための条項です。請求する側だけでなく、請求された側にとっても、不倫の事実や示談内容をむやみに広められないという意味で有利に働くことがあります。

ただし、口外禁止条項が広すぎると、弁護士への相談、税務上の確認、裁判手続、家族への必要な説明まで禁止されるように読めてしまうことがあります。口外禁止を入れる場合は、禁止対象と例外開示を分けて確認する必要があります。

  • 秘密にする情報の範囲:不貞行為の事実、示談の成立、示談書の内容、金額、相手方の氏名などをどこまで含めるかを確認します。
  • 例外開示の範囲:弁護士、税理士、裁判所、公的機関、同居家族などへの必要な相談・手続を例外にするかを確認します。
  • 違反時の効果:違約金、損害賠償、残金支払停止、和解解除、既払金返還などが定められている場合、その内容が過大・不明確でないかを確認します。

特に、口外禁止違反があった場合に既に支払った金銭の返還まで定める条項は、合意の本質的条件と関係するため慎重な設計が必要です。違反があれば当然に全額返還という単純な書き方ではなく、どの違反を、どの程度重大な違反として扱い、どの範囲で返還や残金停止の効果を生じさせるのかを明確にしておく必要があります。

違約金が高すぎないか

違約金条項は、接触禁止、口外禁止、再度の不貞行為などに違反した場合の金銭負担をあらかじめ定める条項です。違反を防ぐ効果はありますが、金額が高すぎると、後から有効性が争われることがあります。

違約金を確認するときは、金額だけでなく、何に違反した場合に発生するのかを確認します。単なるメール1通でも同じ金額なのか、再度の不貞行為に限るのか、業務上必要な連絡まで対象になるのかで、条項の重さは大きく変わります。

請求する側は、抑止力を高めたいからといって、根拠なく高額な違約金を置くべきではありません。請求された側は、違約金額だけでなく、違反の範囲、例外、証拠の取り方、支払時期まで確認してからサインする必要があります。

求償権放棄・清算条項・公正証書化の意味を理解しているか

不倫示談書では、慰謝料の金額以外にも、将来の権利関係を大きく左右する条項があります。特に、求償権放棄、清算条項、公正証書化は、サイン前に意味を確認しておくべき条項です。

  • 求償権放棄:不倫相手が慰謝料を支払った後、不倫をした配偶者へ負担分を請求しないとする条項です。支払う側には不利になりやすいため、金額とのバランスを確認します。
  • 清算条項:示談書で定めたもの以外に債権債務がないことを確認する条項です。請求された側には再請求防止の意味がありますが、請求する側は残したい請求まで消さないよう注意します。
  • 公正証書化:分割払いで不払いがあった場合に備える手段です。強制執行認諾文言を入れると、支払う側にとっては強い負担になります。

これらの条項は、短い一文で書かれていても効果は大きいです。示談書・合意書にサインするときは、金額、支払期限、禁止条項、違約金だけでなく、将来どの権利を失い、どの義務を負うのかまで確認するようにしましょう。

裁判例から見る示談書・合意書作成の注意点

不倫示談書・合意書は、当事者が署名押印すれば有力な証拠になります。しかし、どのような内容でも当然に有効になるわけではありません。金額が著しく高すぎる場合、署名までの経緯に問題がある場合、違反時の効果が条項上明確でない場合には、後から有効性や解釈が争われることがあります。

ここでは、不倫の示談書・念書・誓約書に関する裁判例から、条項を作る側とサインする側の双方が注意すべきポイントを整理します。裁判例は個別事案ごとの判断であり、同じ金額なら必ず同じ結論になるわけではありませんが、条項設計の危ないポイントを知る手がかりになります。

高額な金額をその場で書かせると有効性が争われやすい

東京地裁平成20年6月17日判決では、不倫に関して1000万円を支払う旨の念書について、意思表示の有効性が問題になりました。このような裁判例から分かるのは、書面に署名押印がある場合でも、金額の合理性や作成経緯が後から争点になり得るということです。

請求する側は、怒りや不安が強い場面でも、相場から大きく外れた金額や、相手が現実に支払えない金額をその場で書かせることには注意が必要です。高額な金額を約束させても、後から「真意ではなかった」「その場を逃れるために署名した」と争われれば、解決までの時間と負担が増えてしまいます。

請求された側も、相手から高額な念書や示談書を出された場合、金額だけでなく、清算条項、違約金、求償権放棄、口外禁止、接触禁止などを含めて確認する必要があります。その場で支払えない金額や、意味を理解できない条項があるときは、すぐに署名しないことが重要です。

長時間の詰問後に作成した書面は任意性が問題になりやすい

東京地裁平成22年9月28日判決では、長時間の詰問後に作成された念書について、内容の真実性や作成の任意性が問題になりました。不倫発覚直後は、当事者の感情が強く動きやすく、その場で事実確認書や誓約書を書かせたくなることがあります。

しかし、相手を長時間問い詰めたり、職場や家族に暴露すると強く迫ったり、内容を十分に読ませないまま署名させたりすると、後日、強迫、錯誤、任意性の欠如などが主張されやすくなります。請求する側にとっても、無理に署名させた書面は、かえって紛争を長引かせる原因になります。

後から争われにくい示談書にするには、相手に内容を読ませる、必要に応じて修正の機会を与える、支払金額や期限を具体的に確認する、可能であれば冷静な状態で署名押印する、といった手順が大切です。請求された側は、威圧的な状況で署名を求められた場合、持ち帰って確認することを求めるのが安全です。

接触禁止・違約金条項は有効になり得るが金額設定に注意する

東京地裁平成25年12月4日判決では、原告の妻と不貞関係にあった相手が、原告との間で、面会・連絡等禁止条項、違反時の違約金1000万円、誓約書の内容などを妻に知らせない開示禁止条項を含む誓約書を作成した事案が問題になりました。

この事案では、相手方は強迫による取消しなどを主張しましたが、裁判所は、慰謝料額等についていったん拒絶し、その意向を受けて条項が修正されていたこと、面会・連絡等禁止条項や違約金条項の趣旨は理解できる内容だったこと、やり取りの場所がファミリーレストランで、暴言や物理的強制がなかったことなどを踏まえ、和解契約の成立を認めました。

一方で、裁判所は、接触禁止条項の履行を確保するために違約金を定めること自体は必要かつ相当としながらも、違約金1000万円は高すぎるとして、150万円を超える部分を公序良俗違反により無効と判断しました。最終的には、本件不貞の慰謝料150万円、再度の不貞に関する違約金150万円、再度の不貞の慰謝料50万円などが認められています。

この裁判例からは、接触禁止条項や違約金条項を入れること自体は有効になり得る一方で、違約金額は事案とのバランスを踏まえて設定する必要があることが分かります。単に「強い抑止力が必要だから」として高額な違約金を置くと、一部無効になるリスクがあります。

開示禁止・口外禁止の違反時効果は条項上明確にする

東京地裁平成25年12月4日判決では、開示禁止条項を含む和解契約の成立は認められました。しかし、開示禁止条項に違反した場合にも、違約金1000万円を支払う約束があったことまでは認められていません。

この点は、口外禁止条項や秘密保持条項を作るときに重要です。単に「口外してはならない」と書いただけでは、違反した場合に違約金を請求できるのか、損害賠償だけなのか、残金支払を止められるのか、和解解除や既払金返還まで求められるのかが不明確になることがあります。

口外禁止違反に特別な効果を持たせたい場合は、対象となる行為、例外として許される開示、違反時の効果、金額、返還範囲を条項上明確にする必要があります。特に、和解金の返還や残金支払停止まで定める場合は、軽微な違反と重大な違反を区別し、過大な内容にならないように注意します。

裁判例から見た実務上のチェックポイント

裁判例を踏まえると、不倫示談書・合意書では、単にテンプレートを埋めるだけでなく、金額、禁止範囲、違反時効果、作成経緯を整えることが重要です。特に、サイン前には次の点を確認しておくべきです。

  • 慰謝料や違約金の金額が事案に比べて高すぎないか
  • 接触禁止の範囲が仕事や生活に照らして広すぎないか
  • 口外禁止違反時の効果が条項上明確になっているか
  • その場で無理に署名させるような作成経緯になっていないか

サイン後に無効や取消しを主張できるかは、金額、作成状況、証拠、相手方の認識などによって変わります。すでに署名してしまった場合の対応は、不倫の示談書が無効になる場合で詳しく解説しています。本記事では、できるだけ署名押印前に条項の意味を確認し、争われにくい合意書にすることを重視してください。

和解条項に違反した場合に和解金の返還を定めることはできるか

不倫示談書・合意書では、金銭の支払だけでなく、口外禁止、接触禁止、追加請求をしないこと、一定の連絡をしないことなど、複数の条件を前提に解決することがあります。そのため、重要な和解条項に違反した場合に、違約金だけでなく、和解契約の解除、既に支払った解決金の全部または一部返還、残金支払義務の停止・消滅などを定めることができないかが問題になります。

この点は、すべての不倫示談書に入れる一般的な条項ではありません。むしろ、条項違反があった場合に当然に全額返還されると考えるのは危険です。不倫慰謝料には、過去の精神的苦痛に対する賠償という性質があるため、後日の条項違反だけで、支払済みの金銭がすべて理由を失うとは限らないからです。

坂尾陽弁護士

現在の実務において一般的な条項ではありませんが、今後検討の余地がある取扱いであると当事務所では考えています。

返還条項や残金停止条項を検討する場面

返還条項や残金支払停止条項を検討しやすいのは、特定の和解条項が合意の本質的条件になっている場合です。たとえば、秘密保持が守られること、今後接触しないことを前提に、通常の慰謝料額とは異なる金額で合意するケースが考えられます。

  • 秘密保持が重要な条件になっている場合:不倫の事実や示談内容を第三者に口外しないことを前提に、解決金を支払うケースです。
  • 接触しないことが重要な条件になっている場合:再接触を防ぐことを重視し、接触禁止条項と違反時効果を定めるケースです。

このような場合でも、返還条項を置けば常にそのまま有効になるとは限りません。違反の内容、違反の重大性、支払われた金銭の性質、既に履行された部分との関係を踏まえて、過大にならないように設計する必要があります。

典型例としてダブル不倫で秘密保持が問題になることがある

典型的に検討されるのは、ダブル不倫で、請求された側の配偶者が不倫を知らないまま示談する場面です。このようなケースでは、支払われる解決金に、過去の不倫慰謝料だけでなく、秘密保持や紛争拡大防止の意味合いが含まれることがあります。

たとえば、請求する側が、請求された側の配偶者や勤務先などに不倫の事実を知らせないことを重要な条件として合意する場合です。この場合、口外禁止条項が和解の本質的条件であるなら、重大な口外禁止違反があったときに、既払金の一部返還や残金支払停止を定める余地があります。

もっとも、ダブル不倫であっても、口外禁止違反があれば当然に全額返還されるわけではありません。すでに慰謝料としての意味を持つ部分まで全て返還させる条項は、過大と評価されるおそれがあります。返還範囲を全部にするのか一部にするのか、残金支払中であれば未払分の扱いをどうするのかを、事案に応じて調整する必要があります。

条項にする場合は対象行為と効果を分けて書く

和解条項違反時の返還・残金停止を定める場合は、「何に違反したら」「どのような効果が生じるのか」を分けて書くことが重要です。単に「違反した場合は返還する」とだけ書くと、軽微な違反まで含むのか、過去に支払われた全額を返すのか、未払分だけ支払わなくてよいのかが曖昧になります。

たとえば、次のような要素を分けて検討します。

  • 対象となる違反行為:口外禁止違反、接触禁止違反、虚偽説明など、どの条項違反を対象にするか。
  • 違反の程度:軽微な過失まで含めるのか、故意または重大な過失による違反に限るのか。
  • 効果の内容:違約金、損害賠償、解除、既払金の一部返還、残金支払停止、残金支払義務の消滅のどれを定めるか。
  • 例外開示:弁護士、裁判所、公的機関、税務上必要な相談など、違反と扱わない開示を明確にするか。
  • 立証方法:口外や接触があったことをどのように確認するのか、推測だけで効果を発生させない設計にするか。

違反時効果を定めるほど、条項は強くなります。その分、対象行為や効果が曖昧だと、後から争われやすくなります。特に、返還条項や残金停止条項は負担が大きいため、例文をそのまま使うのではなく、合意の目的に合わせて調整する必要があります。

まずは違約金・残金停止・返還のどれが適切かを分けて考える

和解条項違反に対する効果は、必ず返還条項にしなければならないわけではありません。違反を抑止したいだけであれば、合理的な違約金条項で足りることもあります。分割払いの途中であれば、重大な違反があった場合に未払残金の支払義務を停止・消滅させる条項の方が、既払金の返還よりも設計しやすいこともあります。

返還条項は、支払済みの金銭を戻すという強い効果を持ちます。そのため、過去の慰謝料部分と、秘密保持や追加請求禁止などの将来条件に対応する部分をどのように分けるかが問題になります。返還条項を検討するときは、「不倫慰謝料そのものを返す」のか、「秘密保持を前提に上乗せした解決金部分を返す」のかという整理をしておくと、条項の必要性を説明しやすくなります。

まとめ

不倫示談書・合意書は、テンプレートを埋めるだけで完成するものではありません。誰と誰の間の合意なのか、どの不倫関係・交際関係を清算するのか、どの条項に違反した場合にどのような効果が生じるのかまで確認することが重要です。

  • テンプレートは書面全体の雛形、例文は条項ごとの差し替えパーツです。
  • 慰謝料・解決金・清算金の支払条項と清算条項は、金銭合意では特に重要です。
  • 口外禁止、接触禁止、違約金、求償権放棄、公正証書化は、事案に応じて必要性が変わります。
  • サイン前には、金額だけでなく、禁止範囲、違反時効果、清算範囲まで確認しましょう。
  • 手切れ金・清算金やダブル不倫では、秘密保持・追加請求防止・返還条項の設計が重要になることがあります。

請求する側は、後から争われにくい示談書にするため、相手が理解できる内容と合理的な条項にすることが大切です。請求された側は、署名押印によって将来の権利や行動が制限されることがあるため、少しでも不安がある条項はその場でサインせず、内容を確認してから判断するようにしましょう。

坂尾陽弁護士

署名押印前に、金額だけでなく、清算範囲・禁止範囲・違反時効果まで確認しましょう。

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不倫示談書・合意書の作成では、条項ごとに確認すべきポイントが変わります。より詳しい論点は、次の記事もあわせて確認してください。

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