浮気・不倫を会社にばらされたら?名誉毀損の反撃・慰謝料減額・会社対応を弁護士が解説

浮気・不倫を会社にばらされた場合、最初に不安になるのは、「会社から呼び出されるのではないか」「解雇や懲戒処分になるのではないか」「職場で噂が広がって働き続けられないのではないか」という点ではないでしょうか。

結論からいうと、会社に知られたからといって、私生活上の浮気・不倫だけで当然に解雇されるわけではありません。ただし、社内不倫、勤務時間中のやり取り、社用端末の利用、取引先との関係、上司と部下の関係、会社の信用や業務への影響がある場合には、会社対応を誤ると不利な事情が増えることがあります。

また、会社に不倫をばらした相手の行為が、名誉毀損やプライバシー侵害として問題になることもあります。もっとも、「会社にばらされたから不倫慰謝料を払わなくてよい」「必ず慰謝料を減額できる」と単純に考えるのは危険です。不倫慰謝料の問題と、会社にばらした行為による損害賠償・再拡散防止の問題は、分けて整理する必要があります。

この記事では、すでに会社や職場に浮気・不倫をばらされた方に向けて、証拠保全、会社からの事情聴取・面談への対応、名誉毀損やプライバシー侵害による反撃、慰謝料減額への使い方、再拡散を防ぐ方法を解説します。会社へ報告・通報する行為そのものの違法性を詳しく知りたい方は、不貞行為の会社報告が名誉毀損になるかについての解説も確認してください。

まず押さえておきたいポイントは、次のとおりです。

  • 会社に知られても、不倫だけで当然に解雇とは限りません。
  • 証拠を消す、脅し返す、社内で反論を広める対応は避けましょう。
  • 会社対応では、私生活の詳細よりも業務への影響を整理します。
  • ばらした相手には、再拡散防止や損害賠償を別に検討できます。
  • 匿名通報やSNS投稿がある場合は、証拠化を急ぐ必要があります。

以下では、会社にばらされた直後の初動から順に整理します。

坂尾陽弁護士

会社にばらされた直後は、相手に言い返すよりも、証拠を残し、会社への説明と相手方への対応を分けて進めることが大切です。
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

不倫慰謝料に詳しい坂尾陽弁護士

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浮気・不倫を会社にばらされた直後にやるべきこと

会社に不倫をばらされた直後は、感情的に動くほど被害が広がりやすい場面です。相手に怒りをぶつけたくなるのは当然ですが、まずは「何が、誰に、どの範囲で伝わったのか」を確認し、証拠を残すことを優先してください。

特に、相手が会社に電話した、上司や人事にメールした、匿名で投書した、社内チャットやSNSに投稿したという場合は、後から内容や送信先を確認できなくなることがあります。会社対応と相手方対応のどちらでも、初動の証拠が重要になります。

証拠を保存する

まず保存すべきものは、ばらされた事実そのものと、ばらした相手の行動が分かる資料です。相手とのLINEやメールだけでなく、会社から届いた連絡、上司からの呼出し、社内で回っているメッセージ、匿名投書、電話履歴なども保存対象になります。

証拠は、スクリーンショットだけでなく、可能であれば日時・送信者・宛先・URL・投稿画面の前後関係が分かる形で残します。スマートフォンの画面だけを部分的に切り取ると、後で「誰が送ったのか」「いつ送ったのか」が分かりにくくなることがあります。

  • 相手からのLINE・メール・SMS
  • 会社に送られたメールや通知書の写し
  • 上司・人事からの呼出しメール
  • 社内チャットや掲示板の投稿画面
  • 匿名投書・怪文書・郵送物
  • 電話履歴・留守番電話・録音
  • SNS投稿やプロフィール画面

相手が投稿を削除したり、会社への連絡を否定したりすることもあるため、見つけた時点で保存しておくことが重要です。SNSや掲示板に広がっている場合は、後で削除請求や投稿者特定を検討する可能性もあるため、URLや投稿日時も含めて残しておきましょう。

証拠を消す、相手とのやり取りを削除する、会社に提出された資料を勝手に処分する対応は避けてください。会社対応でも相手方対応でも、後から説明が難しくなることがあります。

ばらした相手に感情的に連絡しない

会社にばらされた直後に、相手へ電話をかけ続けたり、「こちらも家族や職場に言う」などと返したりすると、今度はこちら側の発言が脅迫・名誉毀損・業務妨害のように扱われるおそれがあります。

また、相手から慰謝料を請求されている場合、その場で「会社に言ったことを取り消してほしい」「いくら払えば黙るのか」などと交渉すると、かえって高額な支払や不利な示談条項につながることがあります。相手の行為が違法になり得るとしても、こちらの対応が荒くなれば、交渉上の主張が弱くなることがあります。

不倫が発覚した直後の一般的なNG行動や初動は、不倫がバレた直後にやるべきことでも整理しています。会社にばらされたケースでは、そこに会社対応と再拡散防止の視点を加えて考える必要があります。

会社対応と相手方対応を分ける

会社にばらされた場合、同時に二つの対応が走ります。一つは、会社や職場に対する対応です。もう一つは、ばらした相手に対する対応です。この二つを混ぜると、説明内容や交渉方針がぶれやすくなります。

会社に対しては、主に業務への影響、就業規則、社内秩序、取引先への影響、再発防止が問題になります。会社は、あなたの恋愛事情を細かく裁く機関ではありませんが、勤務時間中の行動や社内関係、職場環境への影響については確認することがあります。

一方、ばらした相手に対しては、名誉毀損・プライバシー侵害、再度会社に連絡しないこと、SNS投稿をしないこと、口外禁止、慰謝料請求への反論・減額交渉などが問題になります。相手への対応では、会社にどのような内容が伝わったのか、その内容が事実か誇張か、送信先が必要最小限だったか、多数に拡散されたかを整理します。

初動では、次のように分けて考えると整理しやすくなります。

  • 会社への対応:呼出し・事情聴取・処分の有無に備え、業務への影響、社内ルール、今後の勤務態度を整理する。
  • 相手方への対応:証拠を保存し、再拡散防止、損害賠償、慰謝料減額、示談条項を検討する。
  • 家族・職場への拡散防止:相手との直接連絡を避け、必要に応じて弁護士を窓口にして連絡経路を一本化する。

会社からまだ正式な連絡が来ていない段階でも、上司や人事に呼ばれた場合に備えて、時系列と証拠を先に整理しておきましょう。


会社にばらされた後に起こり得るリスク

浮気・不倫を会社にばらされたときのリスクは、解雇だけではありません。実際には、上司や人事からの確認、社内での噂、配置転換、評価への影響、取引先との関係悪化、相手方からの慰謝料請求など、複数の問題が同時に起こることがあります。

もっとも、会社に知られたというだけで、すべてのケースが重い処分になるわけではありません。会社がどこまで動くかは、不倫の内容だけでなく、業務との関係、職場への影響、就業規則、会社の業種、当事者の立場によって変わります。

会社が動く流れ

会社が不倫の情報を受け取った場合、いきなり処分を決めるのではなく、まず事実確認を行うことが多いです。特に、社内不倫や取引先との関係、勤務時間中の行動が問題になっている場合には、上司や人事が事情聴取をすることがあります。

一般的には、次のような流れで進みます。

  • 会社に電話・メール・投書などが届く
  • 上司・人事・総務が内容を確認する
  • 本人に事実確認や面談を求める
  • 業務影響や就業規則との関係を確認する
  • 必要に応じて注意・配置転換・処分を検討する

会社の関心は、私生活の善悪そのものではなく、会社の業務や職場環境にどのような影響があるかです。そのため、面談では、不倫の詳細を長々と説明するよりも、勤務時間中の行動、社用端末の使用、社内での接触、取引先への影響、今後の再発防止を整理して話すことが重要です。

不倫だけで当然に解雇とは限らない

私生活上の不倫があったとしても、それだけで直ちに解雇や懲戒処分が有効になるとは限りません。会社が処分をするには、就業規則上の根拠や、会社の業務・信用・職場秩序への具体的な影響が問題になります。

裁判例を見ても、結論は事案によって分かれています。たとえば、旭川地裁平成元年12月27日判決では、同僚男性社員との不倫を理由とする女性事務員の懲戒解雇が無効とされました。他方で、大阪地裁平成9年8月29日判決では、私立学校の教員が生徒の母親と情交関係をもった事案で、懲戒解雇が有効とされています。

このように、単に「不倫をしたか」だけでなく、職務内容、相手との関係、職場や取引先への影響、教育機関・公務・管理職などの立場、会社の信用への影響、勤務中の行為かどうかが判断に関係します。

したがって、会社にばらされたときは、「不倫が知られたからもう終わりだ」と決めつける必要はありません。一方で、「私生活のことだから会社には関係ない」と強く言い切るのも危険です。業務への影響が疑われている場合には、落ち着いて説明できる準備が必要です。

処分リスクが高くなるケース

次のような事情がある場合は、会社が重く見る可能性があります。該当する場合でも直ちに解雇が有効になるわけではありませんが、会社面談や相手方との交渉では慎重な対応が必要です。

  • 社内不倫の場合:同じ部署、同じチーム、直属の上司・部下など、職場環境への影響が出やすい関係では注意が必要です。
  • 取引先・顧客との不倫の場合:会社の信用や取引関係への影響が問題にされることがあります。
  • 勤務時間中や社用端末を使っていた場合:勤務態度、服務規律、情報管理の問題として扱われることがあります。
  • 上司と部下の関係の場合:人事権、評価、断りにくさ、ハラスメントの有無が問題になることがあります。
  • 会社に虚偽説明をした場合:不倫そのものより、調査への虚偽説明や証拠隠しが不利に評価されることがあります。

社内不倫で慰謝料請求や退職・配置転換が絡む場合は、社内不倫で慰謝料を請求された場合の対応も確認しておくとよいでしょう。上司と部下の関係がある場合は、上司と部下の社内不倫の慰謝料・会社対応も問題になります。

職場での信用・評価・配置転換への影響

会社にばらされた場合、法律上の処分だけでなく、職場での信用や働きやすさへの影響も無視できません。上司や同僚に知られることで、チーム内の関係がぎくしゃくしたり、業務上必要な連絡がしづらくなったりすることがあります。

また、会社が職場環境を整えるために、当事者の配置転換、担当変更、勤務場所の変更を検討することもあります。これらが常に違法・不当というわけではありませんが、本人の説明を聞かずに退職を迫られたり、過度に不利益な扱いを受けたりした場合には、対応を検討する必要があります。

大切なのは、職場で自分から反論を広げないことです。噂を否定したい気持ちがあっても、社内で相手を非難したり、関係者に長文で説明を送ったりすると、かえって「職場を巻き込んでいる」と見られるおそれがあります。会社への説明は、必要な相手に、必要な範囲で、業務への影響を中心に行うのが安全です。


会社から事情聴取・面談を求められた場合の対応

会社から呼び出された場合、焦ってすべてをその場で話そうとする必要はありません。面談の目的が、事実確認なのか、処分前の弁明なのか、業務上の調整なのかによって、準備すべき内容は変わります。

面談で重要なのは、嘘をつかないこと、必要以上に私生活の詳細を話しすぎないこと、業務への影響を中心に整理して説明することです。会社に伝わっている内容が誇張されている場合は、どこが事実でどこが違うのかを落ち着いて分けて説明します。

面談前に整理すること

会社面談の前には、少なくとも次の点を整理しておきましょう。何も準備せずに面談へ行くと、感情的に話してしまったり、後で訂正が必要な説明をしてしまったりすることがあります。

  • 誰が会社に伝えたのか:配偶者、不倫相手の配偶者、同僚、匿名通報者など、分かる範囲で整理します。
  • 誰に伝わったのか:上司、人事、総務、代表者、同僚、取引先など、拡散範囲を確認します。
  • 何が伝わったのか:不倫の事実、期間、相手、証拠、慰謝料請求、訴訟の有無など、内容を分けます。
  • 業務への影響があるか:勤務時間中の行動、社用端末、取引先、同じ部署での勤務などを確認します。
  • 会社から何を求められているか:説明、謝罪、配置転換、退職、誓約書、報告書などを確認します。

内容証明や通知書が職場に届いた場合には、社内で誰が開封・閲覧したのか、どの部署に届いたのかも重要です。職場宛ての内容証明や請求書については、内容証明が職場に届いた場合の注意点も参考になります。

会社が見ているのは不倫の詳細より業務影響

面談で、交際の経緯、会った回数、家族との関係などを詳しく聞かれることもあります。しかし、会社が本来確認すべき中心は、会社の業務や職場秩序に影響があるかどうかです。

たとえば、同じ職場の相手と勤務時間中に頻繁に私的連絡をしていた、社用スマートフォンや社内チャットを使っていた、取引先との関係で会社に苦情が入った、相手とのトラブルで業務に支障が出ているという事情があれば、会社が確認する合理性が出てきます。

一方で、会社が私生活の細部に踏み込みすぎている場合には、答える範囲を慎重に考える必要があります。「その点は私生活に関する内容であり、業務への影響に関係する範囲で説明します」といった形で、説明の軸を業務影響に戻すことも考えられます。

会社に対しては、次のような説明を準備すると実務上整理しやすくなります。

  • 勤務時間中の私的接触の有無
  • 社用端末・社内システムの使用有無
  • 同じ部署・指揮命令関係の有無
  • 取引先・顧客への影響の有無
  • 今後の接触・再発防止の方針

説明は短くても構いません。むしろ、話を広げすぎず、会社が確認したい点に絞って答える方が、職場での混乱を抑えやすくなります。

退職勧奨・配置転換・懲戒処分を示されたとき

会社から退職を勧められたり、配置転換や懲戒処分を示されたりした場合、その場で承諾する必要はありません。特に、退職届、誓約書、始末書、処分同意書のような書面に署名する場合は、内容を持ち帰って確認することが重要です。

退職勧奨は、会社が退職を勧めるものですが、本人が自由な意思で応じるかどうかを判断すべきものです。強い圧力の下で退職届を出してしまうと、後から争うことが難しくなることがあります。

配置転換や懲戒処分についても、会社の判断が常に適法とは限りません。就業規則上の根拠、処分理由、業務上の必要性、他の従業員との均衡、本人への弁明機会などを確認する必要があります。

  • 退職届や同意書にその場で署名しない
  • 処分理由をできるだけ書面で確認する
  • 就業規則の該当条項を確認する
  • 面談日時・発言内容をメモに残す
  • 弁護士に相談してから回答する

会社にばらされた後の対応では、会社との関係を悪化させないことも大切です。その一方で、不当な退職要求や過度な処分をそのまま受け入れる必要もありません。会社対応と相手方対応を分け、必要な証拠を残しながら、落ち着いて次の対応を検討しましょう。


会社にばらされたら名誉毀損・プライバシー侵害で反撃できる?

浮気・不倫を会社にばらされた場合、ばらした相手に対して名誉毀損やプライバシー侵害を理由に損害賠償を請求できるかが問題になります。

不倫をした側であっても、会社や職場に私生活上の事情を広められてよいわけではありません。会社に伝えられた内容、伝えられた相手、伝え方、目的、拡散範囲によっては、ばらした側の行為が違法と評価される可能性があります。

ただし、会社に伝えられたというだけで、直ちに名誉毀損やプライバシー侵害が認められるわけではありません。会社側に伝える必要性があったのか、業務上の問題といえるのか、必要な範囲を超えて広めていないかを具体的に見ます。

会社報告・勤務先連絡そのものの違法性や裁判例を詳しく知りたい場合は、不貞行為を会社に報告する行為の違法性で整理しています。ここでは、会社にばらされた側がどのように反撃や交渉材料として使えるかに絞って説明します。

事実でも違法になる可能性がある

「不倫は事実なのだから、会社に言われても仕方がない」と考える必要はありません。名誉毀損やプライバシー侵害では、伝えた内容が事実かどうかだけでなく、誰に、どの範囲で、どのような目的で伝えたのかが重要になります。

たとえば、配偶者や不倫相手の配偶者が、怒りや報復感情から、上司、人事、総務、同僚、取引先などに不倫の事実を広めた場合、本人の社会的評価や職場での信用を下げる行為として問題になり得ます。

一方で、社内不倫により業務に現実の支障が出ている、上司と部下の関係でハラスメントや職場秩序への影響がある、取引先との関係で会社が対応を迫られているなど、会社が確認する必要性があるケースもあります。したがって、単に「会社に言ったから違法」と決めつけず、伝え方と必要性を分けて検討します。

反撃を考えるときは、「不倫したこと」と「会社に広められたこと」を分けて整理します。不倫慰謝料の責任が残る場合でも、会社への拡散行為が別の不法行為になる可能性はあります。

誰に・どこまで・どの目的で伝えたかが重要

会社にばらされた場合は、送信先と拡散範囲を確認します。代表者や人事担当者だけに送ったのか、複数の上司や同僚に送ったのか、メーリングリストや社内チャットに流したのかで、評価は変わります。

また、伝えた内容も重要です。不倫の事実だけでなく、「会社を辞めさせろ」「処分しろ」「営業先にも知らせる」「全員に広める」などの表現がある場合、報復目的や加害目的が読み取りやすくなることがあります。事実に反する内容や、証拠以上に誇張された内容が含まれている場合も、反論材料になります。

確認しておきたいポイントは、次のとおりです。

  • 送信先:上司、人事、総務、同僚、取引先、顧客、会社代表者など
  • 送信方法:電話、メール、内容証明、匿名投書、社内チャット、SNS、掲示板など
  • 伝えた内容:不倫の事実、証拠、慰謝料請求、訴訟、人格攻撃、処分要求など
  • 目的:業務上の相談なのか、報復・嫌がらせ・退職させる目的なのか
  • 範囲:必要最小限の相手にとどまるのか、多数に拡散しているのか

これらは、名誉毀損やプライバシー侵害の成否だけでなく、相手方との示談交渉、慰謝料減額交渉、再拡散防止条項の設計にも関係します。

裁判例から見る会社連絡・職場拡散のリスク

裁判例でも、不倫を会社や職場に知らせる行為が問題になったものがあります。もっとも、裁判例は事案ごとの事情に強く左右されます。金額だけを切り取って「相場」と見るのではなく、どのような伝え方が問題視されたのかを参考にしてください。

裁判例 問題になった行為 記事で押さえるポイント
東京地裁平成26年12月9日判決 勤務先の上司、事業部長、総務部、総務部採用グループのメーリングリストなどに、社内不倫を記載したメールを送信した事案です。 会社関係者に不倫を広める行為は、報復目的や社会的評価の低下が問題になり得ます。同判決では、合計49万5000円の支払が命じられています。
東京地裁立川支部平成25年7月30日判決 職場のある建物のロビーで、職員や来訪者がいる前で「不倫している」などと述べた行為等が問題になりました。 職場で直接言いふらす行為は、名誉毀損や職場への中傷行為として大きな紛争になり得ます。ただし、同判決の金額は複数の事情を含むため、名誉毀損だけの相場としては扱わない方が安全です。

このような裁判例からいえるのは、不倫の事実があっても、会社に広める方法や範囲を誤ると、ばらした側にも損害賠償リスクが生じ得るということです。会社にばらされた側としては、相手の行為を証拠化し、どの範囲まで広がったのかを具体的に整理することが重要です。

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会社にばらされたことは慰謝料減額・反訴に使える?

会社にばらされた方からよくある相談が、「相手が会社にばらしたのだから、不倫慰謝料は払わなくてよいのではないか」というものです。

結論として、会社にばらされた事情は、不倫慰謝料の減額交渉、反訴、別途損害賠償請求の材料になる可能性があります。しかし、それだけで当然に慰謝料がゼロになるわけではありません。

不倫慰謝料と暴露による損害賠償は別問題

不倫慰謝料は、配偶者との婚姻共同生活の平穏を侵害したことについて問題になるものです。一方、会社にばらす行為による損害賠償は、名誉、プライバシー、職場での信用、生活の平穏などを侵害したことについて問題になります。

つまり、法律上は別の問題です。あなたに不倫慰謝料の責任がある場合でも、相手が会社へ不必要に広めた行為について、別途責任を問える可能性があります。逆に、相手の暴露行為が問題になるとしても、不倫慰謝料の責任が当然に消えるわけではありません。

そのため、交渉では「不倫慰謝料としていくらが相当か」と「会社にばらした行為による損害をどう評価するか」を分けたうえで、最終的な解決金額や示談条件を調整していきます。

減額交渉・反訴・別途請求の材料になり得る

相手から不倫慰謝料を請求されている場合、会社にばらされた事情は、減額交渉の中で主張できることがあります。たとえば、相手が勤務先に不倫を広め、職場で事情聴取を受けた、処分の不安を受けた、精神的負担が大きくなったという事情は、交渉上無視できません。

訴訟になっている場合には、反訴として損害賠償を請求する、又は別訴で請求することも検討対象になります。ただし、反訴をするかどうかは、証拠の強さ、請求額、訴訟が長期化するリスク、相手方との最終的な解決可能性を見て判断します。

減額や反撃の材料として整理すべき事情は、次のとおりです。

  • 会社に伝えられた日時・方法
  • 伝えられた内容が事実か、誇張や虚偽があるか
  • 誰に伝わったか、どこまで拡散したか
  • 会社から事情聴取・注意・処分を受けたか
  • 精神的負担、通院、欠勤、収入減などがあるか
  • 相手が再度会社に連絡すると言っているか

一般的な不倫慰謝料の減額要素については、不倫慰謝料を減額できる事情も参考になります。ただし、会社にばらされたケースでは、通常の減額要素に加えて、相手の暴露行為を別枠で整理する必要があります。

収入減・退職が生じた場合の注意

会社にばらされた結果、退職、降格、配置転換、賞与減額、契約打切りなどが生じた場合には、損害額が大きくなる可能性があります。ただし、その全額を当然に相手へ請求できるわけではありません。

重要なのは、会社への暴露行為と収入減・退職との因果関係です。たとえば、会社がどのような理由で処分したのか、本人が任意に退職したのか、もともと別の理由で配置転換が予定されていたのかによって、評価は変わります。

退職や収入減を主張する場合は、会社からの通知、面談メモ、就業規則、処分理由書、給与明細、退職勧奨の記録、医師の診断書などを残しておきましょう。証拠がないまま「会社にばらされたせいで損をした」と主張しても、交渉や裁判で認められるとは限りません。

会社にばらされた怒りから、相手への慰謝料を一方的に差し引いて支払わない対応は危険です。請求を受けている場合は、減額交渉・反訴・別途請求のどれで整理するかを検討してください。


ばらした相手に再拡散をやめさせる方法

会社に一度ばらされた後に最も避けたいのは、相手が再び会社へ連絡したり、別の部署、取引先、家族、SNSへ広げたりすることです。慰謝料の金額だけを急いで決めても、再拡散を止める条項が弱いと、同じトラブルが繰り返されることがあります。

再拡散を防ぐには、相手の連絡窓口を整理し、必要に応じて弁護士名義で警告し、示談書では口外禁止や再通知禁止を具体的に定めることが重要です。

弁護士名義の警告書・受任通知

相手が会社に再度連絡しそうな場合や、すでに複数回連絡している場合は、弁護士から警告書や受任通知を送ることを検討します。弁護士が窓口になることで、本人同士の感情的なやり取りを止め、会社や第三者への連絡を控えるよう求めやすくなります。

警告書では、会社に連絡した事実、今後同様の連絡をしないこと、SNSや第三者への投稿・口外をしないこと、違反した場合には損害賠償請求等を検討することを、事案に応じて整理します。

ただし、強すぎる文面や相手を追い詰める表現は、かえって反発を招くことがあります。相手が不倫慰謝料を請求している側である場合は、請求への対応と再拡散防止を同時に設計する必要があります。

口外禁止・接触禁止・再通知禁止・SNS投稿禁止

示談で解決する場合は、金額だけでなく、今後の行動を具体的に決めることが重要です。特に会社にばらされたケースでは、単に「口外しない」と書くだけでは不十分なことがあります。

たとえば、次のような条項を検討します。

  • 口外禁止:不倫関係や慰謝料請求の事実を、家族・会社・第三者に話さない。
  • 再通知禁止:勤務先、上司、人事、取引先、顧客に再度連絡しない。
  • 接触禁止:本人、家族、勤務先、関係者に直接連絡しない。
  • SNS投稿禁止:SNS、掲示板、口コミ、ブログ等に投稿しない。
  • 削除条項:既に投稿した内容や送信済みの公開投稿を削除する。
  • 違約金条項:違反した場合の金額を定める。ただし高すぎる金額は争いになり得る。

不倫示談書の基本的な作り方は、不倫の示談書・合意書で整理しています。社内不倫で接触禁止条項を入れる場合は、業務連絡の例外や部署異動後の扱いも問題になるため、社内不倫の接触禁止条項も確認しておくとよいでしょう。

なお、会社や家族にこれ以上知られずに処理したい場合は、郵便物、電話、メール、訴状送達などの管理も重要です。秘密に進めるための実務は、家族や職場に知られずに不倫慰謝料問題を解決する方法も参考になります。

「会社に言うぞ」と脅されている場合

まだ会社にばらされていない段階で、「会社に言うぞ」「職場に広めるぞ」「払わなければ上司に連絡する」と言われている場合は、脅迫や恐喝の問題になる可能性があります。この場合は、会社にばらされた後の対応よりも、脅しを止める初動が優先されます。

やってはいけないのは、焦ってその場で高額な支払を約束したり、相手の言うままに不利な示談書へ署名したりすることです。まずは、相手の発言をLINE、メール、録音、電話履歴などで残し、直接交渉を続けるべきか、弁護士を窓口にするべきかを検討してください。

「会社にばらす」「家族にばらす」と言われている場合の対応は、不倫トラブルで脅迫された場合の対処法で詳しく解説しています。

すでに会社にばらされた場合でも、再度の連絡を止める必要があります。証拠を残し、会社対応と相手方対応を切り分けたうえで、再拡散防止を含む解決条件を整えることが、被害拡大を防ぐポイントです。


匿名通報・社内の噂・SNS投稿が絡む場合

会社にばらされたケースでは、「誰が会社に伝えたのか分からない」「匿名の投書やメールだった」「社内で噂だけが広がっている」という相談もあります。

匿名通報や社内の噂が絡む場合、最初から犯人探しに走ると、かえって職場での印象が悪くなったり、関係のない同僚を巻き込んだりするおそれがあります。まずは、誰がしたかよりも、何が、どこに、どの範囲で伝わっているのかを確認し、証拠として残すことを優先しましょう。

匿名通報であっても、内容、送信方法、送信先、会社の反応、通報後の相手の言動を組み合わせることで、誰が関与したかを推測できる場合があります。ただし、社内で独自に詮索を広げるのは避けるべきです。

匿名で会社に通報された場合の初動

匿名通報があった場合、会社は、通報者の名前を本人に開示しないことがあります。社内通報制度やコンプライアンス窓口を通じた連絡であれば、会社側も通報者保護の観点から慎重に扱うことがあるためです。

そのため、本人としては、会社に対して「誰が言ったのか」を強く問い詰めるよりも、まず次の点を確認する方が実務的です。

  • 会社が受け取った通報の内容
  • 通報が届いた日時と方法
  • 通報先が上司、人事、コンプライアンス窓口、代表メール等のどこだったか
  • 通報に資料やスクリーンショットがあるか
  • 会社がどの範囲の人に共有しているか
  • 会社が今後どのような確認を予定しているか

会社が通報文書の写しを交付してくれない場合でも、面談で示された内容、会社から質問された事項、会社担当者の発言をメモに残しておきましょう。会社から受け取ったメール、面談通知、議事メモ、処分検討資料なども保存します。

匿名通報の内容が明らかに誇張されている、虚偽が含まれている、私生活上の詳細まで広げられている場合には、その点を会社に落ち着いて説明することが大切です。反対に、通報者を責める発言や、社内での探り合いを始めると、会社から「職場秩序を乱している」と見られるおそれがあります。

社内で犯人探し・反論拡散をしない

社内で噂が広がった場合、つい「誰が言ったのか」「どこまで知っているのか」を同僚に聞いて回りたくなるかもしれません。しかし、社内で聞き込みをすると、それ自体が新たな噂の材料になったり、会社から問題視されたりすることがあります。

また、社内チャットやメールで長文の反論を送ることも、基本的には避けるべきです。不倫の事実関係や相手方とのやり取りを自分から詳しく説明してしまうと、かえって職場内に情報が広がります。反論する場合でも、会社の担当者に対して、業務上必要な範囲で、簡潔に説明することを意識してください。

避けたい対応 理由 代わりにすべきこと
同僚に聞いて回る 噂を広げ、自分から職場を巻き込む結果になりやすい 会社担当者に共有範囲と今後の対応を確認する
社内チャットで反論する 私生活情報を自分から拡散してしまう 必要な説明は上司・人事との面談で行う
通報者を決めつけて責める 名誉毀損やハラスメントと受け取られるおそれがある 通報内容・通報時期・相手方の言動を証拠化する
証拠を削除する 会社対応や慰謝料交渉で不利になることがある 削除せず、日時が分かる形で保存する

会社に対しては、事実関係を必要な範囲で説明したうえで、職場内でこれ以上情報が広がらないよう、共有範囲を限定してもらうことを求めるのが現実的です。会社側も、従業員の私生活情報を必要以上に広めてよいわけではありません。

SNS・掲示板・ネット投稿がある場合

会社への通報だけでなく、SNS、掲示板、口コミサイト、ブログなどに不倫や浮気の情報が投稿されている場合は、対応の優先順位が変わります。ネット上の投稿は、社内の噂よりも拡散が速く、スクリーンショットや転載によって残り続けることがあるためです。

まず、投稿を見つけたら、すぐに反論コメントを書き込むのではなく、証拠を保存してください。投稿URL、投稿日時、アカウント名、プロフィール、投稿内容、画像、コメント欄、フォロー先、検索結果画面などを、日時が分かる形で保存します。

  • 投稿のURLと画面全体のスクリーンショット
  • 投稿日時、アカウント名、プロフィール画像
  • 会社名や氏名が分かる記載の有無
  • 画像、LINE、書類など関連資料の有無
  • 誰が閲覧・反応しているかが分かる情報
  • 削除前後の画面や検索結果

東京地裁令和3年1月27日判決では、W不倫で家庭を壊された旨のアカウント名を作成し、勤務先等の複数の公式アカウントをフォローした行為について、名誉毀損・プライバシー侵害が問題となりました。SNS上では、直接投稿を拡散しなくても、アカウント名やフォロー行為の態様によって、勤務先や関係者に情報が伝わることがあります。

SNSやネット投稿が絡む場合は、削除請求、発信者情報開示、投稿者への警告、再投稿禁止の合意など、会社対応とは別の対応が必要になることがあります。詳しくは、不倫を暴露された・晒された場合の法的対処で整理しています。


弁護士に相談すべきケース

会社に浮気・不倫をばらされた場合でも、すべてのケースで直ちに弁護士へ依頼しなければならないわけではありません。もっとも、会社対応、慰謝料請求、再拡散防止、SNS投稿、退職勧奨などが同時に動いている場合は、本人だけで整理するのが難しくなります。

特に、次のような場合は、早めに弁護士へ相談することを検討してください。

状況 相談した方がよい理由
会社から事情聴取・面談を求められている 業務影響と私生活の問題を分けて説明し、不要な自白や退職合意を避けるためです。
退職勧奨・懲戒処分・配置転換の話が出ている 処分理由、就業規則、手続、会社対応の相当性を確認する必要があります。
相手方から慰謝料請求も受けている 不倫慰謝料の減額交渉と、会社にばらした行為への反撃を同時に整理する必要があります。
相手が再度会社に連絡すると言っている 警告書、受任通知、再通知禁止条項などで被害拡大を止める必要があります。
匿名通報やSNS投稿がある 証拠保全、削除、投稿者特定、社内対応を並行して検討する必要があります。
家族や職場にこれ以上知られたくない 連絡窓口、郵送先、示談書の口外禁止条項を設計する必要があります。

弁護士に相談する際は、会社から届いたメール、相手とのLINE、通報文書、SNS投稿、慰謝料請求書、会社面談のメモ、就業規則、処分通知書などを可能な範囲でまとめておくと、初回相談で方針を立てやすくなります。

弁護士相談の準備や聞くべきことは、不倫慰謝料を弁護士に相談する方法で詳しく解説しています。また、家族・職場に知られずに慰謝料請求への対応を進めたい場合は、不倫慰謝料を家族・職場に秘密で解決するためのポイントも参考になります。


よくある質問

会社に浮気・不倫をばらされた場合によくある質問を整理します。

会社に不倫をばらされたら名誉毀損になりますか?

名誉毀損やプライバシー侵害になる可能性はあります。ただし、会社に伝えられたというだけで、必ず違法になるわけではありません。誰に、どのような内容を、どの範囲で、どのような目的で伝えたかが重要です。

上司や人事に必要最小限の事実を伝えた場合と、同僚やメーリングリストに広く送った場合では評価が異なります。会社報告の違法性を詳しく知りたい場合は、関連記事も確認してください。

会社にばらされたら不倫慰謝料を減額できますか?

減額交渉の材料になることはあります。相手が会社に不倫を広めたことで、名誉毀損やプライバシー侵害が問題になる場合、請求額の減額、双方の請求を清算する示談、反訴や別途請求を検討することがあります。

ただし、会社にばらされたからといって、不倫慰謝料が当然にゼロになるわけではありません。不倫慰謝料の責任と、相手の暴露行為による損害賠償は別問題として整理する必要があります。

会社にばらされたら解雇されますか?

私生活上の浮気・不倫だけで当然に解雇されるわけではありません。会社が問題にできるのは、業務への影響、職場秩序、会社の信用、就業規則との関係などです。

もっとも、社内不倫、上司と部下の関係、取引先との関係、勤務時間中のやり取り、社用端末の利用、ハラスメント性がある事情などがある場合には、会社対応を慎重に進める必要があります。社内不倫の慰謝料・退職・懲戒の詳しい論点は、関連記事も確認してください。

匿名で会社に通報された場合、誰がやったか調べられますか?

通報経路や投稿手段によります。会社が通報者を開示しないこともありますし、匿名メールや投書では、直ちに送信者を特定できないこともあります。

ただし、通報内容、送信時期、通報先、関連資料、相手方のLINEや発言、SNS投稿などを組み合わせることで、誰が関与したかを推測できる場合があります。まずは犯人探しよりも、通報内容と会社の反応を証拠化することが重要です。

相手が会社に再度連絡すると言っています。どうすべきですか?

相手の発言をLINE、メール、録音などで保存し、その場で支払いや署名を約束しないでください。「会社に言うぞ」と金銭を要求されている場合は、脅迫・恐喝の問題になることもあります。

再度の会社連絡を止めるには、弁護士名義の警告書、受任通知、再通知禁止条項、口外禁止条項などを検討します。脅迫的な言動がある場合は、脅迫・恐喝への対応も早めに整理してください。


まとめ:会社にばらされた後は、証拠保全・会社対応・再拡散防止を分けて進める

浮気・不倫を会社にばらされた場合、まず大切なのは、感情的に相手へ言い返すことではなく、証拠を保存し、会社対応と相手方対応を分けて進めることです。

会社対応では、会社が知りたいのは私生活の細部ではなく、業務への影響、職場秩序、社用端末や勤務時間の使い方、取引先や社内関係への影響です。面談では、必要以上に私生活を広げず、事実関係と今後の業務上の対応を整理して説明することが重要です。

相手方対応では、会社にばらした行為が名誉毀損やプライバシー侵害になるか、慰謝料減額や反訴の材料になるか、再拡散を止める条項を入れられるかを検討します。匿名通報やSNS投稿が絡む場合は、証拠保全と削除・特定の要否も早めに確認しましょう。

会社にばらされた事実があるからといって、必ず慰謝料がゼロになる、必ず解雇が違法になる、必ず名誉毀損が成立する、というわけではありません。だからこそ、会社からの連絡、相手の発言、通報内容、職場での影響を整理し、次の一手を誤らないことが大切です。

坂尾陽弁護士

会社にばらされた後の対応は、早い段階で「会社にどう説明するか」と「相手に再拡散をやめさせるか」を分けて整理するほど、被害の拡大を抑えやすくなります。

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