肉体関係がないのに慰謝料請求された：不貞行為がないと主張できる？

「肉体関係はないのに、不倫慰謝料を請求された」「LINEのやり取りや食事だけで“不貞行為だ”と言われている」「認めてないのに内容証明が届いた」――このようなケースでは、焦って対応すると不利になりがちです。

不倫慰謝料の中心は、法律上の「不貞行為（性的関係）」です。肉体関係がないなら、本来は請求が通りにくい場面も多い一方で、証拠の積み上げや発言の切り取りで“あることになってしまう”リスクもあります。

この記事では、請求された側の初動に絞って、反論の軸とNG対応をテンプレ化して解説します。

肉体関係なしでも慰謝料請求される理由：不貞行為の“推認”と誤解

肉体関係がないのに慰謝料請求されるのは、珍しい話ではありません。理由は主に次の2つです。

1つ目は、不貞行為は直接証拠がなくても、状況証拠の積み上げで「推認」されることがあるためです。

たとえば、ホテル出入り、深夜の長時間滞在、親密なメッセージ、継続的な密会などが重なると、「肉体関係があった」と判断されやすくなります。

2つ目は、当事者の心理として、怒りや不安から“疑い”を“確信”として請求してしまうケースがあることです。

「怪しい＝不貞」と短絡されると、LINEや飲み会程度でも請求が来ることがあります。

特に誤解が生まれやすい典型は次のとおりです。

「肉体関係はない」と言いたい場合でも、状況証拠が強いと推認が働くことがあるため、反論は証拠ベースで組み立てる必要があります。

結論：不貞行為がないなら「不貞慰謝料」は成立しにくい（ただし例外あり）

結論として、肉体関係（性交渉やそれに準ずる行為）がないのであれば、一般に 不貞行為に基づく慰謝料請求は成立しにくいです。

ただし、注意したいのは「肉体関係がない」という一言だけで終わらない点です。実務では次の2つが分岐点になります。

また、“不貞慰謝料”が難しくても、状況によっては別の論点で揉めることがあります（例：脅迫的な請求、名誉毀損的な言動、職場への暴露など）。ただ、本記事では中心テーマである「不貞行為がないと主張できるか」に絞ります。

不貞行為の定義・要件（肉体関係が必要か等）の全体像は、こちらで整理しています。

不貞行為とは？法律上の定義と要件（肉体関係が必要か）

反論の軸（テンプレ）｜まずは5つに分解して考える

請求された側は、感情的に否定するよりも、「どの争点で勝つか」を決めた方が強いです。反論は、次のテンプレで整理できます。

① 不貞行為の不存在（推認の否定）

中心はここです。

• 性的関係がない
• 状況証拠からも合理的に推認できない
• そもそも二人きり・密室の証明がない

② 証拠の弱さ（信用性・連続性・特定）

• 写真が本人か不明（人物特定）
• 入った場面だけ／出た場面だけ（連続性がない）
• 日時場所が曖昧（加工・切り取りの疑い等）

③ （第三者請求なら）既婚者だと知らなかった／知り得なかった

不倫相手として請求されている場合、相手が既婚者だと知っていたかは争点になります。

• 交際当初は知らない合理的理由がある
• 既婚者と分かる情報がなかった、など

④ 婚姻関係の破綻（第三者請求で重要になりやすい）

夫婦関係が実質的に破綻していた場合、第三者への請求は難しくなる方向に働くことがあります。

（別居期間や経緯など、事実の積み上げが必要です）

⑤ 金額（仮に責任があるとしても減額）

証拠が強い・争点が不利なら、早期示談や減額に切り替える判断もあります。

• 期間が短い、回数が少ない
• 夫婦関係への影響が小さい
• 請求額が相場感から大きく外れている
• などを具体化します。

証拠別の反論ポイント：LINEだけ／ホテル／食事・旅行 など

ここからは、相手がよく出してくる証拠ごとに、反論の“型”を整理します。

LINE・DMだけ（会っていない／具体性が弱い）

LINEは関係性の証拠にはなりますが、それだけで不貞行為（肉体関係）を立証するのは難しいことが多いです。

反論では、次をセットで整理します。

• 会っていない（会ったとしても二人きりではない）
• 肉体関係を具体的に示す文言がない
• 文脈が切り取られていないか（前後の流れ）

LINEのみで不倫を疑われるケースは、こちらの記事も参考になります。

LINEだけ・会ってない不倫は不貞行為？慰謝料請求リスクと対応

ホテル出入り（ラブホ写真・探偵）

ホテルは推認が強く働きやすいので、反論は「証拠の質」に集中するのが基本です。

• 人物特定（本人か）
• 入退館の連続性（入っただけ、出た写真がない等）
• 同室滞在の推認が飛躍していないか
• 滞在時間、回数、補強証拠の有無

ホテル証拠の評価は、こちらで詳しく解説しています。

ラブホテルに入っただけで不貞行為？証拠としての評価と反論ポイント

食事・飲み会・旅行の写真

デート写真は親密さの材料になりますが、不貞行為そのものの立証としては弱いことが多いです。

ただし、旅行で「同室」「宿泊」「深夜帯」などが補強されると推認が強まります。

反論の軸は「二人きり・密室・同室」の立証があるか、です。

周囲の証言（同僚・友人）

証言は内容が抽象的だと弱く、伝聞（又聞き）だと争点化しやすいです。

反論では、誰が・いつ・どこで・何を見たのかが具体的かを点検します。

NG対応と初動の正解：不用意な自白・謝罪文・放置は危険

肉体関係がないのに請求されたケースで、最も多い失敗は「焦って自分から不利な材料を作る」ことです。

初動の“正解”は次の流れです。

「認めない（否認）」で進めるときの説得・交渉の組み方は、次の記事も参考になります。

不貞行為を認めない場合も諦めない｜説得術・証拠集め・慰謝料請求方法

まとめ：まずやることチェックリスト（請求された側）

肉体関係がない（または証拠が弱い）のに慰謝料請求された場合、結論は「要件」と「証拠」で決まります。焦って動くほど不利になりやすいので、まずは次をチェックしてください。

関連記事・次に読むべき記事