口外禁止条項とは?|拒否・修正・例文・正当な理由・違約金まで【弁護士が解説】

不倫慰謝料の示談書や誓約書では、「本件について第三者に口外しない」という口外禁止条項が入ることがあります。もっとも、この条項を見たときに、「配偶者や家族にも話せないのか」「弁護士に相談したら違反になるのか」「違約金が高すぎてもサインしなければならないのか」と不安になる方は少なくありません。

口外禁止条項は、示談後の蒸し返しや職場・親族・SNSへの暴露を防ぎ、当事者の生活を落ち着かせるために重要な条項です。一方で、範囲が広すぎると、必要な相談や手続までためらうことになり、かえって後日の紛争原因になります。大切なのは、単に「入れるか拒否するか」ではなく、何を、誰に、どの方法で話してはいけないのか、どのような場合は例外にするのかを具体的に決めることです。

この記事では、不倫慰謝料の示談・誓約書で使われる口外禁止条項について、意味、例文、正当な理由・例外、拒否・修正のポイント、違反時の違約金や和解契約解除条項まで、サイン前に確認すべき観点を弁護士が解説します。

  • 口外禁止条項は、不倫の事実や示談内容を第三者に開示しないための条項です。
  • 弁護士・税理士・裁判所・官公庁などへの必要最小限の開示は、例外として明記するのが安全です。
  • 全面拒否よりも、対象情報・開示先・例外・違約金を修正する方が現実的です。
  • SNS投稿や職場・親族への連絡は、口外禁止条項だけでなく誹謗中傷禁止条項も問題になります。
  • 重大な違反を重く見る事案では、違約金だけでなく和解契約解除条項を検討する余地があります。

坂尾陽弁護士

サイン後に直すのは難しいため、広すぎる条項は署名押印前に調整しましょう。
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

不倫慰謝料に詳しい坂尾陽弁護士

慰謝料請求された事案の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


慰謝料減額・免除の無料法律相談 0120-299-045(24時間365日受付)

 

口外禁止条項とは?示談書・誓約書で何を禁止する条項か

口外禁止条項とは、示談や誓約の対象になった事実や合意内容を、当事者以外の第三者に話したり、送信したり、投稿したりしないことを定める条項です。不倫慰謝料の場面では、不倫の事実、慰謝料額、支払条件、示談の存在、証拠、交渉経緯、相手方の氏名・住所・勤務先などを外部に広げないために使われます。

名称としては、「口外禁止条項」「守秘義務条項」「秘密保持条項」などが使われます。厳密には、秘密保持条項の方が企業取引や業務上の秘密を含む広い言葉として使われることがありますが、不倫慰謝料の示談書では、当事者間の私生活上の情報を第三者に出さない約束として、ほぼ同じ目的で使われることが多いです。

口外という言葉から、口頭で話すことだけを想像するかもしれません。しかし、実務上は、LINE、メール、手紙、SNS、掲示板、口コミサイト、画像投稿、匿名アカウントでの投稿なども含めて禁止するのが通常です。むしろ、近年は口頭で一人に話すよりも、SNSやメッセージで拡散されるリスクの方が大きいため、条項上も「方法」を明確にする必要があります。

また、「第三者」の範囲にも注意が必要です。たとえば、不倫された配偶者と不倫相手の2者だけで示談する場合、配偶者、不倫をした配偶者、同居家族、勤務先、友人は原則として第三者に当たり得ます。これに対し、不倫された配偶者、不倫をした配偶者、不倫相手の3者で合意する場合、3者は当事者になるため、第三者の範囲は変わります。

示談書全体では、慰謝料額、支払方法、清算条項、求償権、期限の利益喪失、違約金なども一緒に定めます。口外禁止条項だけを切り離して判断すると、他の条項との矛盾を見落とすことがあります。示談書全体の作り方や記載事項は、不倫示談書の書き方で詳しく整理しています。

ポイント

口外禁止条項は、「誰にも一切話せない条項」ではなく、「秘密にする情報・話してはいけない相手・禁止される方法・例外・違反時の効果」を決める条項です。

そのため、条項を確認するときは、「口外禁止と書いてあるか」だけでは足りません。何が秘密情報に含まれるのか、弁護士や税理士への相談は例外になるのか、配偶者や同居親族への必要な説明は許されるのか、SNSや匿名投稿は明確に禁止されているのか、違反時にいくら支払うのかまで確認する必要があります。

口外禁止条項の例文|基本形・例外付き・SNS禁止・解除条項付き

ここでは、示談書や誓約書で使うことが考えられる口外禁止条項の例文を紹介します。実際の条項は、誰が当事者になるのか、既に誰が不倫の事実を知っているのか、慰謝料額や支払方法、職場・親族・SNSへの開示リスクがどの程度あるのかによって調整が必要です。

そのまま貼り付ければ常に安全というものではありませんが、自分の示談書に入っている条項が広すぎるのか、例外が足りないのか、違約金や解除条項まで必要なのかを確認する材料になります。誓約書全体の作成方法は、不倫誓約書の作成も参考にしてください。

基本形|本件の事実と示談内容を第三者に口外しない条項

もっとも基本的な口外禁止条項は、不倫の事実や示談内容を第三者に開示しないことを、当事者双方に義務づける形です。

例文

甲及び乙は、本件に関する事実、本示談の存在及び内容、交渉経緯その他本件に関連して知り得た相手方の情報を、正当な理由なく第三者に口外し、開示し、又は漏えいしてはならない。

この例文のポイントは、義務の主語を「甲及び乙」として、双方に同じ義務を負わせていることです。不倫慰謝料の示談では、請求する側だけ、または請求された側だけが秘密を守る形になっていることがあります。しかし、実際にはどちらの当事者にも、相手を責める投稿や周囲への説明をしたくなる場面があり得ます。公平性と実効性の観点からは、原則として相互義務にする方が安全です。

ただし、このままだと「本件に関連して知り得た情報」の範囲が広くなりすぎることがあります。家族や専門家に必要な説明をする可能性がある場合は、次のように対象情報や例外を具体化します。

対象情報を特定する例文|慰謝料額・支払条件・氏名・勤務先を明示する

口外禁止条項のトラブルは、「何を話してはいけないのか」が曖昧なときに起きやすくなります。対象情報を列挙しておくと、当事者が守るべき範囲を理解しやすくなります。

例文

甲及び乙は、第三者に対し、本件不貞行為の事実、本示談の存在、慰謝料額、支払方法、支払期日、当事者の氏名・住所・勤務先、証拠資料の内容、交渉経緯その他本示談に関連する事項を、正当な理由なく口外し、開示し、送信し、投稿してはならない。

このように列挙すると、慰謝料額や支払条件だけでなく、氏名・勤務先・証拠資料・交渉経緯も対象に含まれることが明確になります。特に、勤務先や家族に知られることを避けたい事案では、氏名、勤務先、職種、住所、SNSアカウント、写真など、個人を特定できる情報を含めるかを検討します。

一方で、対象情報を広げすぎると、必要な手続や相談まで萎縮するおそれがあります。そのため、対象情報を特定したうえで、次のような例外条項をセットで入れることが重要です。

正当な理由・例外付きの例文|弁護士・税理士・裁判所・家族への必要な開示

口外禁止条項で最も問題になりやすいのが、「正当な理由」の範囲です。弁護士に相談する、税務処理のために税理士に説明する、裁判所や官公庁の手続で提出する、同居家族に生活上必要な範囲で説明するなど、秘密保持と矛盾しない開示は条項上も明示しておくべきです。

例文

前項の定めにかかわらず、甲及び乙は、弁護士、税理士その他の専門家に相談する場合、裁判所、捜査機関、行政機関その他公的機関の手続上必要な場合、法令に基づき開示を求められた場合、又は配偶者・同居親族に対して生活上必要な範囲で説明する場合には、必要最小限度で本件に関する事項を開示することができる。ただし、開示を受けた者に対し、みだりに第三者へ漏えいしないよう求めるものとする。

この例文では、「専門家」「公的手続」「法令上必要な開示」「配偶者・同居親族への生活上必要な説明」を例外にしています。重要なのは、例外を広く書きすぎず、「必要最小限度」という制限を入れている点です。家族に話せるとしても、感情的に詳細を広めてよいわけではありません。専門家に相談できるとしても、SNSで相談内容を投稿することは別問題です。

配偶者や同居親族を例外に入れるかは、事案によって判断が分かれます。たとえば、請求された側にも配偶者がいるダブル不倫のケースでは、慰謝料支払や夫婦関係への影響から、配偶者への一定の説明が避けられないことがあります。反対に、相手方の家庭にあえて知らせることを防ぎたい場合は、配偶者への開示を無制限に認めるのではなく、「生活上必要な範囲」に絞るべきです。

SNS・ネット投稿禁止の例文|匿名投稿や画像投稿も含める

不倫慰謝料の示談では、口頭で周囲に話すことだけでなく、SNS、掲示板、口コミサイト、匿名アカウント、画像投稿による拡散を防ぐ必要があります。インターネット上の投稿は、本人が削除してもスクリーンショットや転載で残ることがあるため、条項上も明確に禁止しておく方が安全です。

例文

甲及び乙は、本件に関する事項について、SNS、ブログ、動画投稿サイト、掲示板、口コミサイトその他インターネット上の媒体に投稿し、掲載し、送信し、又は第三者が閲覧可能な状態に置いてはならない。匿名又は仮名による投稿、画像・音声・動画・スクリーンショットの投稿、当事者を推知させる投稿も同様とする。

この例文では、匿名投稿や「名前は出していないが分かる人には分かる投稿」も対象にしています。不倫の事実を直接書かなくても、勤務先、職種、地域、イニシャル、写真、会話画像などから相手が特定される場合があります。口外禁止条項を実効的にするには、「実名で言いふらす行為」だけでなく、推知可能な投稿も含めることが重要です。

もっとも、SNS投稿を禁止しても、投稿削除、発信者情報開示、損害賠償請求の手続までこの条項だけで完結するわけではありません。SNSで晒された場合の初動や削除対応は、後の見出しで別途整理します。

誹謗中傷禁止条項も併せて入れる例文|口外禁止だけでは足りない場合

口外禁止条項は、秘密を第三者に開示しないための条項です。しかし、既に不倫の事実を知っている人に対して、相手を非難するメッセージを送る、職場や親族に悪評を伝える、人格を攻撃する投稿をする、といった行為は、単なる「秘密の開示」だけでは整理しきれないことがあります。

例文

甲及び乙は、本件に関連して、相手方又は相手方の家族、勤務先、取引先その他関係者に対し、名誉、信用、人格又は生活の平穏を害する言動、投稿、送信、連絡、訪問その他一切の迷惑行為をしてはならない。

この条項は、誹謗中傷禁止条項や迷惑行為禁止条項や生活平穏条項として入れることが考えられます。不倫慰謝料の示談では、慰謝料支払や接触禁止と並んで、SNS投稿、職場への働きかけ、親族への連絡などが懸念される事案で検討される条項です。

なお、「生活平穏条項」という名称が常に一般的に使われるわけではありません。実務上は、独立した条項名にこだわるよりも、誹謗中傷禁止、接触禁止、訪問禁止、迷惑行為禁止などの形で、どの行為を禁止するのかを具体的に書く方が分かりやすいです。

違約金付きの例文|違反時の金額をあらかじめ決める

口外禁止条項に違反された場合、損害賠償請求をすることは考えられます。しかし、実際には「誰が話したのか」「どこまで広がったのか」「いくらの損害が生じたのか」を立証するのが難しいことがあります。そのため、違反時に一定額を支払う違約金条項を入れることがあります。

例文

甲又は乙が前各条の定めに違反した場合、違反した当事者は、相手方に対し、違約金として金○○万円を支払う。ただし、相手方に当該違約金額を超える損害が生じた場合、相手方は、当該超過損害の賠償を請求することを妨げられない。

違約金を入れる目的は、違反を防ぐことと、違反時の請求をしやすくすることです。ただし、金額を高くすればよいわけではありません。慰謝料額、秘密にする必要性、漏えい時の影響、当事者の資力、禁止範囲の広さなどと比べて過大な金額にすると、後で争いになりやすくなります。不倫の違約金条項の有効性や金額調整は、不倫の違約金条項で詳しく解説しています。

また、違約金条項を入れる場合は、「違反したら慰謝料全額を返す」「一度の違反で極端に高額な金額を当然に支払う」など、過度に単純な条項にしないことが重要です。どの行為が違反になるのか、違約金以外の損害賠償請求を残すのか、既払い金との関係をどうするのかを整理しておきます。

和解契約解除条項付きの例文|重大な違反を重く見る高度な条項設計

口外禁止が示談の重要な前提になっている事案では、違約金だけでは抑止力として足りないことがあります。たとえば、職場・親族・SNSへの暴露を絶対に防ぐことが示談の核心であり、秘密保持が破られれば示談した意味が大きく失われるケースです。このような場合には、今後の実務上の条項設計として、重大な口外禁止違反があったときに和解契約を解除する旨の条項を検討する余地があります。

注意

口外禁止条項に違反したからといって、条項がないのに当然に和解契約全体を解除できるわけではありません。解除条項は、違反時の効果を事前に明確にしておくための高度な設計例です。

この種の条項は、一般的な示談書に機械的に入れるものではありません。口外禁止が本当に合意の重要な前提なのか、どのような違反を「重大」とするのか、解除によって清算条項や請求放棄条項をどこまで失効させるのか、既払い金をどう扱うのかを慎重に設計する必要があります。

特に、清算条項は「この示談で紛争を終わらせる」という強い意味を持つ条項です。後から「口外されたから清算条項は当然に消える」と主張しても、条項がなければ争いになります。口外禁止が重要な事案では、違約金だけでなく、解除または清算条項の不主張を含めた効果をあらかじめ明示することが、新たな実務的工夫として考えられます。

坂尾陽弁護士

解除条項は実務上一般的とは言えませんが、ダブル不倫で片方の配偶者が不倫を知らないケース等の口外条項の重要性に鑑みると今後の実務対応として検討する余地があると考えられます。

広すぎる条項を修正する例|「一切口外しない」を現実に守れる形にする

相手方から提示された示談書には、「本件について一切口外しない」とだけ書かれていることがあります。このような条項は一見分かりやすいものの、弁護士相談、税務処理、裁判所手続、家族への必要な説明まで禁止されるように読めるため、後で不安が残ります。

修正前

乙は、本件について、理由のいかんを問わず、第三者に一切口外してはならない。

 

修正後

甲及び乙は、本件不貞行為の事実、本示談の存在及び内容、慰謝料額、支払条件、交渉経緯その他本件に関する事項を、正当な理由なく第三者に口外し、開示し、送信し、投稿してはならない。ただし、弁護士、税理士、裁判所、官公庁その他法令上又は手続上必要な相手方に対し、必要最小限度で開示する場合を除く。

修正のポイントは、片方だけが義務を負う形を双方義務にし、禁止される情報をある程度特定し、正当な理由による例外を入れていることです。口外禁止条項は、広ければ広いほど安全というものではありません。実際に守れる範囲に調整しておくことが、示談後の紛争を防ぐうえで重要です。

正当な理由とは?弁護士・家族・裁判所・勤務先に話せる例外

口外禁止条項では、「正当な理由なく第三者に口外してはならない」という文言がよく使われます。ここでいう正当な理由とは、単に「話したかった」「不安だった」「相手を反省させたかった」という意味ではありません。紛争解決、権利保護、公的手続、生活上必要な説明など、秘密を守る利益よりも、必要最小限の開示を認めるべき事情がある場合を指します。

もっとも、「正当な理由がある場合を除く」とだけ書かれていると、どこまでが例外なのか分かりにくくなります。弁護士に相談することまで違反になるのではないか、配偶者に説明したら違約金を請求されるのではないか、裁判所に資料を出してよいのかと迷う原因になります。そのため、示談書では、正当な理由を抽象的に残すだけでなく、典型的な例外を具体的に列挙するのが安全です。

坂尾陽弁護士

なお、専門家への相談や公的手続きでの開示の場合は例示しなくても「正当な理由」に当たると判断される可能性が高いケースではあります。

弁護士・税理士など専門家への相談

まず、弁護士への相談は、口外禁止条項の例外として明記しておくべき代表例です。相手方から示談書の違反を疑われた場合にどう対応すべきかを確認するには、弁護士に事実関係や示談書の内容を説明する必要があります。

税理士への相談も、事案によっては例外に入れておくと安心です。慰謝料は通常、精神的損害の賠償として扱われますが、支払名目、金額、合意書の書き方、他の金銭給付との関係によって、税務上の確認が必要になることがあります。専門家への相談まで禁止してしまうと、かえって不適切な処理や後日の紛争につながります。

ただし、専門家に相談できるからといって、無制限に資料を共有してよいわけではありません。相談に必要な示談書、証拠、交渉経緯に絞り、SNSのグループや友人を介したトークルームなど、専門家以外も閲覧できる場所に投稿しないことが重要です。

裁判所・官公庁・警察など公的手続での開示

裁判所、調停、強制執行、弁護士会照会、税務署、官公庁、警察などの手続で必要な場合も、例外として整理しておくべきです。たとえば、相手が分割払いを怠ったため裁判や強制執行を検討する場合、示談書や支払状況を裁判所に提出する必要があります。相手から脅迫やつきまといを受けている場合には、警察や関係機関に相談する必要が生じることもあります。

このような手続上の開示は、相手を社会的に攻撃するための暴露とは性質が違います。条項上は、「裁判所、捜査機関、行政機関その他公的機関の手続上必要な場合」「法令に基づき開示を求められた場合」などと書いておくと、後で違反かどうかをめぐる争いを減らせます。

配偶者・同居親族への説明

配偶者や同居親族への説明は、もっとも悩みやすい例外です。不倫慰謝料の示談では、当事者以外の家族は形式的には第三者に当たり得ます。そのため、条項に何も書かれていない場合、「配偶者に話しただけでも違反なのか」という問題が出ます。

請求された側が既婚者である場合、慰謝料の支払、家計への影響、夫婦関係の修復、今後の生活設計のために、配偶者へ一定の説明が避けられないことがあります。反対に、相手方の家庭に知らせること自体が紛争拡大の原因になる事案では、配偶者への開示を無制限に認めると、口外禁止条項の意味が弱くなります。

そのため、家族への開示を認める場合は、「配偶者・同居親族に対して生活上必要な範囲で説明する場合」「必要最小限度で開示する場合」など、範囲を絞るのが実務的です。友人、職場の同僚、親戚一同に広く話すことまで含めないようにする必要があります。

勤務先・金融機関などへの必要な説明

勤務先への開示は、特に慎重に扱うべきです。給与差押え、分割払いの資金調整、事後的に裁判対応を行った旨の説明など、生活上・手続上やむを得ない範囲で説明が必要になることはあります。しかし、相手に制裁を与える目的で不倫の事実や示談内容を勤務先に知らせる行為は、名誉毀損やプライバシー侵害として問題になる可能性があります。

勤務先に伝える必要がある場合でも、「何のために」「誰に」「どの範囲で」伝えるのかを限定すべきです。人事部や上司に対して、休暇や手続に必要な限度で説明する場合と、相手方を処分してもらう目的で詳細な証拠や示談内容を送る場合とでは、法的リスクが大きく異なります。

不貞行為を会社に知らせることのリスクは、不貞行為を会社に報告するリスクで詳しく整理しています。口外禁止条項の例外として勤務先への開示を入れる場合でも、必要最小限に限定し、制裁目的の報告と混同しないことが重要です。

金融機関への説明も、必要がある場合に限られます。たとえば、慰謝料の支払原資を準備するための借入れ、家計管理、送金手続などで説明が必要になることがあります。ただし、この場合も、示談書全体や相手方の個人情報を不要に共有するのではなく、手続に必要な範囲に絞るべきです。

「正当な理由」を条項に落とし込むときの考え方

正当な理由を条項に入れるときは、例外を広げすぎても、狭めすぎても問題があります。広げすぎると、口外禁止条項の実効性が弱くなります。狭めすぎると、弁護士相談や公的手続まで不安になり、当事者が必要な対応を取れなくなります。

実務上は、次のような方向で調整するのが使いやすいです。

  • 専門家相談、公的手続、法令上必要な開示は例外にする
  • 家族への説明は、配偶者・同居親族など必要な範囲に絞る
  • 勤務先への開示は、制裁目的ではなく手続上必要な範囲に限定する
  • いずれの例外も「必要最小限度」の開示にする
  • 開示を受けた人にも、みだりに漏えいしないよう求める

口外禁止条項は、秘密を守るための条項であると同時に、必要な相談や手続を妨げないように設計する条項でもあります。「正当な理由」という言葉を入れるだけで安心せず、どの開示を許すのかを具体的に書くことが、サイン後のトラブルを防ぎます。

慰謝料請求された事案の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


慰謝料減額・免除の無料法律相談 0120-299-045(24時間365日受付)

 

口外禁止条項だけでは防げない行為|接触禁止条項・誹謗中傷禁止条項との違い

口外禁止条項は、不倫の事実や示談内容を第三者に開示しないための条項です。しかし、示談後のトラブルは「秘密を話したかどうか」だけで起きるわけではありません。相手に直接連絡する、職場や自宅に押しかける、SNSで人格を攻撃する、既に事情を知っている人に悪評を広げるなど、口外禁止条項だけでは十分に処理しにくい行為もあります。

そのため、不倫慰謝料の示談書では、事案に応じて、接触禁止条項、誹謗中傷禁止条項、迷惑行為禁止条項などを組み合わせることがあります。これらは似ているようで、禁止する対象が違います。

  • 口外禁止条項:不倫の事実、示談内容、慰謝料額、証拠、交渉経緯などを第三者に開示しないための条項です。
  • 接触禁止条項:電話、LINE、メール、面会、待ち伏せなど、不倫当事者間の連絡や接触を防ぎ、不倫再発を防止するための条項です。
  • 誹謗中傷禁止条項:相手方や家族、勤務先、関係者の名誉・信用・人格を害する発信や連絡を防ぐための条項です。
  • 迷惑行為禁止条項:職場や自宅への押しかけ、関係者への執拗な連絡など、生活の平穏を害する行為を防ぐための条項です。

接触禁止条項の主な目的は、不倫関係の再開や再接触を防ぐことです。たとえば、不倫をした配偶者と不倫相手が再び連絡を取らないようにする、勤務先や通勤経路で待ち伏せしないようにする、といった場面で問題になります。接触禁止条項の詳しい考え方は、接触禁止条項で整理しています。

これに対し、誹謗中傷禁止条項は、相手の名誉や信用を傷つける言動を防ぐための条項です。不倫慰謝料の示談書で常に必須というわけではありませんが、SNS投稿、職場への働きかけ、親族への連絡、友人へのメッセージ送信などが懸念される事案では、比較的一般的に検討される実務条項といえます。一般的には口外禁止条項で防げるものが多いですが、例えば、不倫の事実を知っている者を相手に誹謗中傷を繰り返すような場合には差異が生じることも考えられます。

迷惑行為禁止条項や生活平穏条項は、不倫慰謝料の示談実務で常に定着した名称ではないかもしれません。離婚や男女関係の紛争では、生活の平穏を害する行為を禁止する趣旨の文言が使われることがありますが、不倫慰謝料の示談書では、独立した名称にこだわるより、迷惑行為禁止、訪問禁止、誹謗中傷禁止、接触禁止などとして、具体的な禁止行為を書く方が実務上は分かりやすいです。例えば、自宅への押しかけは、示談の当事者の連絡・接触であり、第三者に対して不倫を暴露するわけではないため口外禁止条項の違反にはなりません。そのため、口外禁止条項とは別に迷惑行為禁止条項等を設ける意味があります。

「不倫をバラす」行為は、条項がなくても違法になることがある

口外禁止条項がない場合でも、不倫の事実や示談内容を職場、親族、知人、SNSなどに広げる行為が常に自由になるわけではありません。内容や方法によっては、名誉毀損、プライバシー侵害、業務妨害などが問題になります。

東京地裁平成24年12月21日判決では、不貞行為を疑った側が、代理人弁護士を通じて相手方の勤務先に通告したことなどが問題になりました。同判決は、勤務先に対し、相手方が不貞行為をしたことや法的紛争を抱えていることを通知した行為について、プライバシー侵害等として不法行為に当たると判断し、反訴で193万3998円の支払を命じています。

また、東京地裁令和2年2月10日判決では、不貞相手とされた者の父親へのはがき、配偶者側親族への手紙・資料、知人へのInstagramメッセージ送信が問題になりました。同判決は、これらの送付・送信について名誉毀損及びプライバシー侵害を認め、反訴で33万円の支払を命じています。

これらの裁判例から分かるのは、口外禁止条項があるかどうか以前に、私生活上の情報を第三者へ広げること自体にリスクがあるという点です。特に、勤務先、親族、友人、SNSに向けた発信は、相手の社会的評価や生活に直接影響しやすいため、慎重に扱う必要があります。不倫を第三者に知らせる行為の違法性は、不倫をバラす行為の違法性でも詳しく解説しています。

条項を分けておくと、違反時の主張が整理しやすい

口外禁止条項、接触禁止条項、誹謗中傷禁止条項をまとめて一文に詰め込むと、後で「どの義務に違反したのか」が分かりにくくなります。たとえば、相手がSNSで「相手の名前は出さずに悪口を書いた」場合、それが口外禁止違反なのか、誹謗中傷禁止違反なのか、迷惑行為禁止違反なのかが争いになります。

そのため、重要な事案では、条項を次のように役割分担させるのが実務的です。

  • 秘密情報の開示を防ぐなら、口外禁止条項
  • 再連絡や再接触を防ぐなら、接触禁止条項
  • 人格攻撃や悪評拡散を防ぐなら、誹謗中傷禁止条項
  • 職場・自宅への押しかけを防ぐなら、迷惑行為禁止条項

示談後の平穏を守るには、「口外しない」とだけ書くのでは足りないことがあります。何を防ぎたいのかを先に整理し、その目的に合う条項を組み合わせることが大切です。

口外禁止条項は拒否できる?全面拒否より修正が現実的な理由

口外禁止条項は、契約の一部です。そのため、提示された条項に必ずそのまま応じなければならないわけではなく、拒否や修正交渉は可能です。特に、条項が一方的である、例外がない、違約金が高すぎる、家族や専門家への相談まで禁止されるように読める場合には、サイン前に修正を求めるべきです。

もっとも、口外禁止条項を全面的に拒否することが常に最善とは限りません。不倫慰謝料の示談では、相手方が「示談後に職場やSNSで言いふらされるのではないか」「親族や知人に広げられるのではないか」と不安を持っていることがあります。そのため、何の説明もなく拒否すると、「秘密を守るつもりがないのではないか」と受け取られ、示談全体がまとまりにくくなることがあります。

実務上は、全面拒否ではなく、問題のある部分を具体的に修正する方が現実的です。たとえば、次のような条項は、そのままサインする前に調整を検討します。

  • 片方だけが義務を負う条項:請求された側だけが秘密を守る形ではなく、原則として双方義務にすることを検討します。
  • 「理由のいかんを問わず一切口外しない」という条項:弁護士相談や公的手続まで不安になるため、正当な理由・必要最小限の例外を入れます。
  • 対象情報が広すぎる条項:何を秘密にするのか分からない場合は、不倫の事実、示談内容、慰謝料額、証拠、交渉経緯などに整理します。
  • 家族・専門家・裁判所への開示例外がない条項:生活上必要な説明や手続上必要な開示まで禁止されないようにします。
  • 違約金が過大な条項:違反内容や損害とのバランスを踏まえ、金額や発生条件を調整します。
  • 解除や清算条項失効の効果が広すぎる条項:重大な違反に限定するのか、どの条項が失効するのかを明確にします。

請求された側から見ると、広すぎる口外禁止条項は、サイン後の生活を不安定にします。配偶者に説明すべきか迷う、弁護士相談をためらう、勤務先や裁判所の手続に必要な資料を出してよいか分からない、という状態になるからです。だからこそ、サイン前に「この例外を入れてください」「この違約金額は高すぎます」「この条項は双方義務にしてください」と具体的に提案する必要があります。

請求する側から見ても、広く強い条項を入れれば安心というものではありません。相手が守れない条項、意味が曖昧な条項、高額すぎる違約金条項は、示談後にかえって争いになります。実際に守れる条項にしたうえで、SNS投稿、職場・親族への連絡、誹謗中傷、再接触など、問題になりやすい行為を具体的に禁止する方が、結果として実効性が高くなります。

拒否・修正を求めるときの伝え方

修正を求めるときは、「口外禁止条項には一切応じない」とだけ伝えるより、相手の不安を踏まえたうえで、修正理由を具体的に説明する方がよいです。たとえば、「秘密を守ること自体には異議はありませんが、弁護士相談や裁判所手続まで禁止されると困るため、例外を明記してください」という形です。

修正案としては、次のような方向が考えられます。

  • 片務条項を双方義務にする
  • 禁止される情報を具体的に列挙する
  • 弁護士・税理士・裁判所・官公庁への開示を例外にする
  • 配偶者・同居親族への説明は生活上必要な範囲に絞る
  • SNS・匿名投稿・画像投稿は禁止対象として明記する
  • 違約金や解除条項は、重大性とバランスを取る

口外禁止条項は、拒否できるかどうかだけでなく、どのように直せば示談後に守れる条項になるかが重要です。相手方から提示された条項に違和感がある場合は、署名押印前に、対象情報、第三者の範囲、例外、違約金、解除条項の有無を確認しましょう。

慰謝料請求された事案の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


慰謝料減額・免除の無料法律相談 0120-299-045(24時間365日受付)

 

違反した場合の違約金・損害賠償・和解契約解除条項

示談書で口外禁止条項に違反した場合、どのような請求ができるかは、条項の書き方によって大きく変わります。まず確認すべきなのは、単に「口外してはならない」と書かれているだけなのか、違反時の違約金、損害賠償、和解契約解除、清算条項の扱いまで定めているのかです。

口外禁止条項に違反したからといって、当然に刑事事件になるわけではありません。また、条項がないのに当然に和解契約全体を解除できる、当然に清算条項や請求放棄条項が消える、当然に慰謝料全額を追加請求できる、というものでもありません。だからこそ、口外禁止を重視する事案では、違反時の効果を示談書の中で具体的に決めておく必要があります。

違約金条項がある場合

示談書に「口外禁止条項に違反した場合は違約金として金○○万円を支払う」と定めている場合、違反された側は、契約上の違約金請求を検討できます。違約金条項のメリットは、実際にいくらの損害が発生したかを細かく立証しなくても、あらかじめ定めた金額を請求しやすくなる点にあります。

もっとも、違約金条項があっても、違反の事実まで不要になるわけではありません。誰が、いつ、どの情報を、誰に、どの方法で伝えたのかを示す必要があります。SNS投稿であれば、投稿内容、URL、投稿日時、アカウント、閲覧範囲、スクリーンショットなどが重要になります。親族や勤務先への連絡であれば、送付された文書、メッセージ、通話記録、受け取った人の説明などが問題になります。

また、違約金額が高ければ常に有効というものでもありません。禁止される行為の範囲が広すぎるのに、軽微な違反でも高額な違約金が発生する条項にすると、後で金額の相当性や条項の解釈をめぐって争いになりやすくなります。

違約金条項がない場合

違約金条項がない場合でも、口外禁止条項に違反すれば、債務不履行に基づく損害賠償請求が問題になります。さらに、口外の内容や方法によっては、契約違反とは別に、名誉毀損、プライバシー侵害、業務妨害などの不法行為が問題になることもあります。

ただし、この場合は、違反の事実だけでなく、どのような損害が生じたのか、その損害と口外行為との間にどのような因果関係があるのかを主張立証する負担が重くなります。たとえば、「精神的苦痛を受けた」「職場で不利益を受けた」「家族関係が悪化した」といった事情を、どの証拠で説明できるかが問題になります。

そのため、口外禁止が示談の重要な前提になる事案では、「違反した場合は損害賠償を請求できる」と抽象的に書くだけでは足りないことがあります。違約金を定めるのか、追加損害の請求を残すのか、重大違反時に和解契約解除まで認めるのかを、事案に応じて検討する必要があります。

違約金の相場感は、事案の重さで変わる

口外禁止条項の違約金に、法律上決まった相場はありません。実務上は、数十万円程度から、重い事案では100万円前後を検討することもありますが、機械的に「この金額なら安全」といえるものではありません。

金額を決めるときは、慰謝料本体の金額、秘密にする必要性、漏えい時の影響、SNSや勤務先への拡散リスク、相手方の資力、条項違反の立証の難しさなどを総合して考えます。たとえば、慰謝料本体が50万円なのに、軽微な口外で違約金300万円が発生するような条項は、後で争いになりやすいでしょう。反対に、勤務先やSNSへの暴露で生活に重大な影響が出る事案では、低すぎる違約金では抑止力として不十分なこともあります。

違約金条項は、相手を罰するためだけの条項ではありません。示談後に紛争を蒸し返さず、当事者が安心して生活を立て直すための条項です。金額だけでなく、発生条件、対象行為、追加損害の請求可否まで合わせて設計することが重要です。

重大な違反では、和解契約解除条項を検討する余地がある

口外禁止が合意の核心になっている事案では、違約金だけでは十分でないことがあります。たとえば、請求された側が「職場や家族に絶対に知らせない」ことを重視して示談に応じたのに、相手方が示談後すぐに勤務先や親族へ暴露した場合、単に違約金を支払えば済むという扱いでは納得しにくいことがあります。

このような事案では、今後の実務的な工夫として、重大な口外禁止違反があった場合に、和解契約を解除できる旨の条項を入れることが考えられます。これは、現時点であらゆる不倫示談に一般的に入る条項というより、口外禁止の重要性が特に高い事案で、選択肢として検討すべき高度な条項設計です。

もっとも、解除条項を入れる場合は、抽象的に「違反したら解除できる」と書くだけでは不十分です。少なくとも、次の点を整理しておく必要があります。

  • 重大な違反の内容:勤務先への通知、SNS投稿、親族や知人への送付・送信など、解除を認める違反類型をできるだけ具体化します。
  • 解除の方法:書面による通知で足りるのか、一定期間内の是正を求めるのかを決めます。
  • 失効する条項の範囲:清算条項、請求放棄条項、求償権放棄など、どの効果を失わせるのかを明確にします。
  • 既払い金の扱い:既に支払われた慰謝料をどう扱うのか、返還や追加請求の関係を整理します。
  • 違約金・損害賠償との関係:解除しても違約金や損害賠償を請求できるのか、重複をどう調整するのかを定めます。

重要なのは、条項がない場合に和解契約解除が当然に認められると考えないことです。清算条項や請求放棄条項は、紛争を終局的に解決するための強い条項です。口外禁止違反によってその効力を失わせたいのであれば、「どのような違反があった場合に、どの条項の効力を失わせるのか」を示談書に明記しておく必要があります。

したがって、口外禁止が特に重要な事案では、今後の実務として、違約金条項だけでなく、和解契約解除条項や清算条項不主張の条項を組み合わせることが考えられます。ただし、強い条項であるほど、相手方が受け入れにくくなり、条項の有効性や解釈も争われやすくなります。事案の重さに応じて、必要性と相当性のバランスを取ることが大切です。

違反された・違反してしまったときの初動

口外禁止条項に違反された、又は違反した疑いをかけられた場合は、感情的に反論する前に、まず事実関係と証拠を整理することが重要です。特にSNSやメッセージでの投稿・送信は、削除されると後から確認しにくくなるため、初動を誤ると請求や防御が難しくなります。

違反された側は、証拠保全を優先する

相手が口外した可能性がある場合、最初にすべきことは証拠保全です。相手をすぐに問い詰めると、投稿やメッセージを削除されることがあります。削除自体は拡散防止として必要な場面もありますが、証拠が残らないと、違約金や損害賠償を請求する際に不利になります。

保存しておきたい証拠は、次のようなものです。

  • 投稿・メッセージの本文、画像、送信された資料
  • URL、投稿日時、アカウント名、閲覧範囲
  • スクリーンショット、画面録画、保存したファイル
  • 勤務先、親族、知人から連絡を受けた日時と内容
  • 相手が口外を認めたLINE、メール、通話メモ

証拠を残したうえで、削除要求、再発防止の申入れ、違約金請求、損害賠償請求を検討します。SNSや掲示板で拡散している場合には、投稿削除や発信者情報開示が問題になることもあります。ネット上で不倫を暴露された場合の対応は、不倫を暴露された・晒された場合の対処で詳しく整理しています。

違反してしまった側・疑いをかけられた側の対応

自分が口外禁止条項に違反した可能性がある場合は、まず拡散を止めることが優先です。SNS投稿、ストーリー、ブログ、掲示板、知人へのメッセージなどが残っているなら、証拠関係を確認したうえで、削除や訂正を検討します。ただし、削除前に何を投稿したのかを自分でも保存しておかないと、後で事実関係を説明できなくなることがあります。

違反した疑いをかけられた場合でも、相手の主張をそのまま認める必要はありません。示談書の条項、口外したとされる情報、開示先、開示方法、正当な理由・例外、違約金の発生条件を確認します。弁護士や税理士への相談、公的手続での提出、生活上必要な家族への最小限の説明など、条項上又は事案上、例外として説明できる場合もあります。

一番避けるべきなのは、相手から責められたことに腹を立てて、SNSや第三者への連絡で再反論することです。追加投稿や追加送信は、新たな口外や誹謗中傷と見られるおそれがあります。違反の有無が争いになるときほど、当事者間で感情的にやり取りを重ねるのではなく、条項と証拠を確認しながら、削除、謝罪、再発防止、金銭解決の要否を冷静に検討する必要があります。

裁判上の和解・調停で口外禁止条項を入れるときの注意点

口外禁止条項は、当事者だけで作る示談書や誓約書だけでなく、裁判上の和解や調停で問題になることもあります。裁判や調停では、慰謝料額、支払期限、分割払い、期限の利益喪失、清算条項、求償権、接触禁止条項などと一緒に、口外禁止条項をどう入れるかを検討することになります。

裁判所で和解する場合、条項は後から読み返される前提で残ります。そのため、口外禁止条項も、感情的な希望をそのまま書くのではなく、「何を秘密にするのか」「誰に話すことまで禁止するのか」「例外はどこまで認めるのか」「違反した場合に何が起きるのか」を、通常の示談書以上に明確にしておく必要があります。

和解条項では、口外禁止だけを単独で見ない

裁判上の和解では、口外禁止条項だけを独立して考えると、他の条項との関係が分かりにくくなります。たとえば、慰謝料を分割払いにする場合には、期限の利益喪失条項や遅延損害金条項が問題になります。示談後に追加請求をしない前提なら清算条項が問題になります。不倫当事者の接触を避けたいなら接触禁止条項も必要になります。

このように、口外禁止条項は「示談後に蒸し返さないための条項」の一つです。口外禁止、接触禁止、清算条項、違約金、解除条項の関係を整理しないまま和解すると、後で違反があったときに「どの条項に違反したのか」「何を請求できるのか」が分かりにくくなります。裁判上の和解条項全体の考え方は、裁判上の和解条項で整理しています。

裁判所や調停での提出・説明は例外として明確にする

口外禁止条項を裁判上の和解や調停条項に入れる場合でも、裁判所、調停委員、官公庁、弁護士、税理士などへの必要な説明まで禁止してしまうと、現実に守りにくい条項になります。離婚調停、婚姻費用、養育費、税務処理、破産・債務整理、勤務先の必要手続など、別の手続で最低限の説明が必要になることもあります。

そのため、裁判所で和解する場合も、「法令上又は手続上必要な範囲で、裁判所、官公庁、専門家その他必要な相手方に開示する場合を除く」といった例外を置くことが重要です。特に、夫婦間の離婚・別居・財産分与の手続と不倫慰謝料の和解が並行している場合には、どの範囲まで説明できるかを事前に整理しておく必要があります。

違反時の効果は、金銭条項と分けて設計する

裁判上の和解調書や調停調書では、金銭の支払条項については、強制執行を見据えて明確に作るのが通常です。一方で、口外禁止そのものは「してはならない」という不作為義務です。違反があったときに、すぐにどの金額を請求できるのか、清算条項にどう影響するのかは、条項で具体化しておかないと争いになりやすくなります。

そのため、口外禁止を重視する事案では、単に「第三者に口外しない」と書くだけでなく、違反時の違約金、追加損害の請求可否、重大違反時の和解契約解除、清算条項・請求放棄条項の扱いを分けて検討します。特に、勤務先、親族、SNSへの暴露を強く防ぎたい場合は、どの違反を「重大な違反」と見るかを条項上明示しておくことが重要です。

サイン前チェックリスト|口外禁止条項で最低限見るべき項目

口外禁止条項は、読み流すと「よくある条項」に見えます。しかし、広すぎる文言にそのままサインすると、後で弁護士相談、家族への説明、公的手続での提出、SNS投稿、勤務先対応などをめぐって争いになることがあります。署名押印前には、少なくとも次の点を確認してください。

  • 対象情報:不倫の事実だけでなく、示談の存在、慰謝料額、支払条件、氏名、勤務先、証拠、交渉経緯まで含むのかを確認します。
  • 第三者の範囲:配偶者、親族、友人、勤務先、専門家、公的機関が第三者に含まれるのかを確認します。
  • 正当な理由・例外:弁護士、税理士、裁判所、官公庁、警察、配偶者・同居親族への必要最小限の説明を例外にできているかを確認します。
  • 禁止される方法:口頭だけでなく、LINE、メール、手紙、SNS、掲示板、匿名投稿、画像投稿まで含むのかを確認します。
  • 相互義務か片務義務か:一方だけが義務を負うのか、双方が同じ義務を負うのかを確認します。
  • 違約金・損害賠償:違約金の金額、発生条件、追加損害の請求可否が明確かを確認します。
  • 解除条項の有無:重大な違反時に和解契約解除や清算条項の失効を主張できる設計にするのかを確認します。

すべての項目を重く書けばよいわけではありません。大切なのは、その事案で本当に問題になりそうな開示先や方法を具体的に想定し、必要な例外と違反時の効果を過不足なく入れることです。特に、配偶者や弁護士への相談まで不安になる文言、勤務先やSNSへの暴露リスクを十分に防げない文言、高額な違約金だけが一方的に入っている文言は、サイン前に修正を検討すべきです。

よくある質問

配偶者に話すのも違反ですか?

条項の書き方によりますが、一般的には配偶者に話すの違反となり得ます。口外禁止条項で「第三者」とだけ書かれている場合、配偶者も形式的には第三者に含まれると読まれることになります。配偶者に説明する必要があるなら、「配偶者又は同居親族に対する生活上必要最小限の説明」を例外として入れておく方が安全です。

弁護士に相談するのも違反ですか?

通常、弁護士への相談は紛争解決や権利保護のために必要性が高い開示です。したがって、口外禁止条項のおける「正当な理由」に該当すると主張しやすいです。ただし、後日の争いを避けるには、条項上も「弁護士その他専門家への相談のため必要な範囲で開示する場合を除く」と明記しておく方がよいでしょう。税務処理が関係する場合は、税理士への開示も例外に入れることがあります。

SNSに匿名で書くのも違反ですか?

匿名投稿でも、内容から当事者が推測できる場合や、示談内容・慰謝料額・相手方の属性が分かる場合には、口外禁止条項違反になり得ます。匿名であれば安全というわけではありません。画像、スクリーンショット、イニシャル、勤務先の特徴、時期などを組み合わせると、第三者が誰のことか推測できることがあります。

違約金が高すぎる場合は拒否できますか?

口外禁止条項も契約条項なので、サイン前であれば拒否や修正交渉ができます。もっとも、全面拒否よりも、金額、対象行為、発生条件、例外、相互義務化を修正する方が現実的です。軽微な違反でも高額な違約金が発生する文言や、片方だけに高額な違約金を負わせる文言は、修正を求める余地があります。

誹謗中傷禁止条項も入れるべきですか?

SNS投稿、職場・親族への連絡、人格非難、侮辱的なメッセージ、勤務先への働きかけが心配な事案では、誹謗中傷禁止条項を併せて入れることを検討します。口外禁止条項は秘密の開示を防ぐ条項ですが、誹謗中傷禁止条項は名誉、信用、人格、生活の平穏を害する言動を防ぐ条項です。目的が違うため、必要に応じて併用します。

口外禁止条項は意味ないのでしょうか?

意味がないわけではありません。確かに、口外の証拠が残らない場合や、誰が漏らしたのか分からない場合には立証が難しいことがあります。しかし、SNS、LINE、メール、手紙、勤務先への通知などは証拠が残ることも多く、違約金や損害賠償の根拠になります。また、条項があることで、相手方への抑止力や、違反後の削除・再発防止交渉の根拠にもなります。

まとめ

口外禁止条項は、不倫慰謝料の示談書や誓約書でよく使われる条項ですが、単に「第三者に口外しない」と書けば十分というものではありません。広すぎる条項は守りにくく、狭すぎる条項はSNS投稿や勤務先への暴露を防ぎきれないことがあります。

  • 口外禁止条項は、秘密にする情報、開示先、方法、例外、違反時の効果を決める条項です。
  • 弁護士、税理士、裁判所、官公庁、配偶者・同居親族への必要な説明は、例外として明記する方が安全です。
  • SNS投稿、職場・親族への連絡、人格非難が心配な事案では、誹謗中傷禁止条項や接触禁止条項も検討します。
  • 違反時の違約金は、金額だけでなく、発生条件、追加損害、立証方法まで確認します。
  • 口外禁止が特に重要な事案では、重大違反時の和解契約解除条項も高度な設計例として検討できます。

相手から提示された条項に少しでも違和感がある場合は、「拒否するかどうか」だけで考えるのではなく、どこを修正すれば現実に守れる条項になるかを確認することが重要です。署名押印後に条項を直すのは難しくなるため、対象情報、第三者の範囲、正当な理由、違約金、解除条項の有無をサイン前に確認しましょう。

坂尾陽弁護士

署名押印前に、対象情報・例外・違反時の効果を一つずつ確認しましょう。

関連記事

口外禁止条項は、示談書全体、誓約書、違約金、接触禁止、裁判上の和解、SNS暴露への対応と関係します。詳しい論点は、次の記事も確認してください。

慰謝料請求された事案の無料法律相談実施中!

  • 0円!完全無料の法律相談
  • 弁護士による無料の電話相談も対応
  • お問合せは24時間365日受付
  • 土日・夜間の法律相談も実施
  • 全国どこでも対応いたします


慰謝料減額・免除の無料法律相談 0120-299-045(24時間365日受付)