不倫相手が「独身」と嘘をついていた｜別れ・責任・トラブル回避のポイント

不倫相手が「独身」と言っていたのに、後から既婚者だと分かった――この状況は、強いショックと混乱を伴います。「騙されたのに、私も慰謝料を払うの？」「相手（既婚者）にどう対応すべき？」「配偶者にバレたらどうなる？」と不安が一気に押し寄せる方も多いでしょう。

この記事では、次の疑問に答えます。

不倫慰謝料問題に10年以上取り組んできた弁護士の視点から、民事上の考え方（責任が問題になる場面）と、実務で拗れやすいポイントを踏まえて整理します（個別事情で結論が変わることはあります）。

独身と嘘をつかれたときに最初にやること（初動で差がつきます）

相手が既婚者だと分かった直後は、怒りや悲しさで衝動的に動きやすいタイミングです。ただ、この段階でやり方を誤ると、相手・配偶者・職場などに波及し、トラブルが大きくなりがちです。まずは次の3点を優先してください。

1）「独身だと言っていた証拠」を確保する（削除しない）

LINE・メール・DMなどで、相手が独身であることを示していたやり取りがあれば、スクリーンショット等で保存します。

あとで「最初から知っていたのでは？」と疑われる場面では、最初の説明（独身だと言っていたこと）を裏付ける記録が重要になります。

2）相手からの連絡・発言も記録する（後で効くことがある）

「実は結婚している」「バレたら困る」「離婚するつもりだった」など、相手の発言は、そのまま残しておきましょう。

この時点で相手が取り乱して、責任転嫁（あなたが誘った等）をしてくるケースもあります。記録があるだけで、状況はかなり落ち着きやすくなります。

3）安全確保（会う／会わないを冷静に決める）

相手が逆上しそう、待ち伏せや執着が心配、職場に来そう――このような不安があるなら、1対1で会って話すのは避けた方が安全です。

別れ話は「対面が必須」ではありません。むしろ、対面にすることで引き止め・言いくるめ・泣き落としが起き、関係が長引くこともあります。

自分に慰謝料の責任があるか（故意・過失の基本とチェックポイント）

相手が既婚者で、配偶者が不貞行為（一般的には肉体関係）を理由に損害賠償（慰謝料）を求める場合、あなた側に責任が問題になることがあります。ここで大事なのは、「騙された＝必ず責任ゼロ」とは限らない点です。

一般論としては、次のように整理されます。

• 相手が既婚者であることを**知っていた（故意）**場合は、責任を問われやすい
• 知らなかったとしても、状況によっては**注意すれば分かった（過失）**と評価されることがある
• 逆に、知らず、かつ注意しても分からなかった（過失なし）といえるなら、責任が否定される方向になり得る

また、婚姻関係がすでに実質的に破綻していた等、前提事情によっても結論が変わることがあります（この判断は事実関係の精査が重要です）。

「過失（不注意）があった」と見られやすい典型例として、次のような事情が重なるケースがあります。

もちろん、これらがあるから直ちに「過失あり」と決まるわけではありません。ただ、**「疑う事情があったか」「確認する機会があったか」**は、争いになったときに見られやすいポイントです。

故意・過失の法律上の整理（裁判例の傾向を含む）を詳しく知りたい方は、次の記事が参考になります。

不貞行為についての故意・過失とは。不倫慰謝料の裁判例を徹底分析。

独身と偽った相手への対処（別れ方・連絡・距離の置き方）

相手が既婚者だと分かった以上、あなたにとっては「関係を終わらせる」「火種を増やさない」ことが最優先になりやすいです。ここでのコツは、納得させることよりも、接点を減らす設計です。

1）別れは“短く・結論だけ”を基本にする

長い説明や議論は、相手に「交渉の余地」を与えます。

言うべきことは、基本的に次の3点で足ります。

• 既婚者だと分かったので関係を終える
• 今後は会わない・連絡しない
• これで最後にする（やり取りを続けない）

相手が「本気だった」「離婚する」などと言っても、そこで話し合いを始めるとズルズル続きやすいです。

2）連絡は“反応しない”が最強（必要なら段階的に遮断）

相手が引き止めるほど、返信が続くと関係が延命します。通知オフ→未読のまま→必要ならブロック等、あなたの生活に入り込ませない工夫が有効です。

しつこい連絡・執着が強い場合は、次の記事の距離の置き方が参考になります。

不倫相手が別れてくれない・しつこい｜安全な距離の置き方とトラブル回避

3）「相手に責任を取らせたい」ときほど、やり方に注意する

独身と偽っていたのが相手である以上、「せめて誠実に対応してほしい」「迷惑をかけた分を補償してほしい」と感じるのは自然です。

ただし、ここでやり方を誤ると、あなたが不利になったり、別のトラブルを招いたりします。

配偶者から慰謝料請求された場合の備え（示談の進め方・NG対応）

相手が既婚者だと判明した後に起きやすいのが、配偶者からの連絡（電話・手紙・内容証明など）です。ここでの目標は、不用意に不利な発言や合意をしないこと、そして必要なら示談で安全に着地させることです。

1）請求が来たら、まず「保存」と「整理」

届いた文書、メッセージ、着信履歴などは削除せず保存します。

そして、次を整理します。

• 誰からの請求か（配偶者本人か代理人か）
• いつ・どんな内容で請求しているか（期間・金額・根拠）
• 期限の指定があるか

2）やってはいけないNG対応（拗れやすい）

次の行動は、後で不利になりやすいので避けてください。

• その場で謝罪して、知っていたかのように受け取られる発言をする
• 金額や条件をよく読まずに示談書へサインする
• すぐに振り込む（「認めた」と解釈されるリスクがある）
• 感情的に反論して、やり取りを泥沼化させる

3）「知らなかった（過失なし）」を主張するなら、言い方が重要

あなたが本当に知らなかったのであれば、その旨を淡々と伝え、根拠となる記録を示す方向になります。

ただし、相手方が最初から強硬だったり、事実認定が争点になりそうだったりする場合は、早い段階で弁護士に相談した方が安全です（不用意なやり取りを減らせます）。

4）示談（合意）で着地する場合に決めるべきこと

示談は「払って終わり」ではなく、トラブルを終わらせるための条件設計です。代表的には次のような点を確認します。

• 金額（相場や事情に照らして妥当か）
• 支払方法（分割の可否、期限、振込先）
• 清算条項（これ以上請求しない約束）
• 口外禁止・接触禁止など（必要な範囲で）
• 文言の整合（自分に不利な記載が紛れ込んでいないか）

示談書の作り方・条項の注意点まで含めて確認したい方は、次の記事が参考になります。

不倫示談書マニュアル【テンプレート付】｜書き方・記載事項・無効リスク・公正証書化まで弁護士が丸ごと解説

まとめ

不倫相手が独身と嘘をついていた場合、あなたは被害者的な立場でもありますが、配偶者との関係では「責任（故意・過失）」が争点になることがあります。拗れないためには、初動の記録と距離の取り方が重要です。

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