不倫の慰謝料を請求され、いきなり「500万円」などの金額を提示されると、驚きや恐怖で判断が鈍りやすくなります。ですが、不倫慰謝料 高すぎると感じたときほど、いきなり支払う・全面的に認める前に、事実と評価(増額/減額/そもそも責任なし)を整理することが重要です。
この記事では、次の疑問に答えます。
- 請求額が相場より高いか、まず何で判断すればいい?
- 慰謝料500万円は妥当なのか、増額・減額要素は?
- 初動で確認すべき事実と、そろえる資料は?
- 返信で言ってはいけないこと、書くべきことは?
- 交渉に入る前に、何を準備すればよい?
民法上の不法行為の考え方と裁判例の傾向を踏まえ、個別事情で結論が変わる点も含め、不倫慰謝料に10年以上取り組んできた弁護士の視点で整理します。
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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はじめに:高額請求で最初にやるべきこと(結論の先出し)
結論から言うと、「高すぎるかどうか」を判断する順番は次のとおりです。
- ① そもそも支払義務(責任)があるか
- ② 相場レンジのどの位置に入りそうか(高額側かどうか)
- ③ 増額・減額の要素(こちらの反論ポイント)が何か
- ④ 返信・交渉をどう始めるか(連絡手段も含む)
この順番を飛ばして、感情のままに「払えない」「認める」「無視する」と動くと、後から修正が難しくなります。
なお、「請求された側」の全体像(支払義務・初動・高すぎる/払えない等)をまとめて確認したい場合は、次のページもあわせて参考にしてください。
不倫慰謝料を請求されたら|初動対応・支払義務・高すぎる/払えないとき
「高すぎる」以前に確認すべき前提(支払義務・名目・期限)
そもそも慰謝料の支払義務があるか(0円の分岐を先に見る)
請求額の大小よりも先に、**「法的に支払義務があるか」**を確認します。ここが崩れると、議論のスタートが「減額」ではなく「責任なし(0円)」に変わります(詳しくは、慰謝料を払わない方法 をご覧ください。)。
一般に、不倫(不貞行為)を理由に第三者が慰謝料を請求される場面では、次のような点が争点になりやすいです。
- 不貞行為(基本的に肉体関係)があったといえるか(証拠の有無)
- 相手が既婚者だと知っていたか、知らなくても過失があるか
- 不倫時点で婚姻関係がすでに破綻していなかったか
- 不倫と精神的苦痛(婚姻破綻・離婚等)の因果関係があるか
特に、「既婚者だと知らなかった(過失もない)」、**「婚姻関係がすでに破綻していた」**は、請求全体が崩れることがあります。
反対に、ここが固い(支払義務が濃厚)なら、次に「相場より高いか」「どこで減額できるか」を詰めます。
「誰が・誰に・何を」請求しているか(名目の仕分け)
請求書面やメッセージを見たら、最低限次を仕分けします。
- 請求者:配偶者本人か(夫・妻)、それ以外か
- 請求先:あなた個人か、(まれに)配偶者と連帯を主張しているか
- 名目:慰謝料なのか、調査費用・弁護士費用・交通費等も含むのか
- 根拠:証拠(写真、LINE等)を示しているか、示していないか
同じ「500万円」でも、内訳が曖昧なことがあります。内訳が不明なままの合意(了承)は避けるのが安全です。
期限と連絡手段(LINE・メール・電話)は“証拠”になり得る
請求がLINE・メール・電話で来るケースでは、やり取り自体が後で証拠化します。
特に電話は「言った/言わない」になりやすく、冷静に整理するには不向きです。
連絡手段ごとの注意点(返信・無視・メッセージ上の合意のリスク)を整理したい場合は、次も参考になります。
LINE・メール・電話で不倫慰謝料を請求されたら|返信・無視・合意の注意点
相場の目安:500万円など高額請求の位置づけ
相場は「一点」ではなく「レンジ」で見る
不倫慰謝料の金額は、結局のところ個別事情で大きく動きます。
そのため、相場は「いくらが正解」と決め打ちするより、レンジ(幅)で見るのが実務的です。
一般的には、第三者(不倫相手)に対する慰謝料は、事案の重さにより数十万円〜数百万円の幅で問題になることが多く、500万円は高額側に位置づけられることが多いです。
ただし、後述の増額要素が重なると、高い金額が議論される場面もあります。
「高い/安い」を決める材料は、金額そのものよりも、増額・減額要素(事実)の積み上げです。
「500万円請求」が出てきやすいパターン
500万円という金額が提示される背景には、次のような主張がセットになっていることがあります。
- 不倫期間が長い(複数年)/回数・頻度が多い
- 夫婦が別居・離婚に至った(または別居中)
- 既婚と知りながら継続し、警告後もやめなかった
- 妊娠・中絶、同棲、生活侵害など、悪質性を強く主張されている
- 配偶者への挑発、SNS投稿等で精神的苦痛が増幅したと主張されている
ただし、相手の主張が強くても、こちらの事実確認で崩れることは珍しくありません(例:期間の誇張、破綻時期の見落とし、既婚認識の決めつけ等)。
「慰謝料以外の名目」が上乗せされていることもある
請求書面によっては、慰謝料に加えて次のような名目が混ざります。
- 探偵・調査費用
- 弁護士費用(相手が依頼した費用)
- 交通費・宿泊費・贈与等(広い意味での損害として主張)
これらは、すべてが当然に認められるわけではありません。必要性・相当性、因果関係、金額の裏付けの有無を冷静に確認します。
高すぎる慰謝料のチェックリスト
ここからは、「高すぎるか」を見立てるためのチェックリストです。
当てはまる項目に印を付けるイメージで読むと、反論の方向性が見えます。
請求する側が主張してきやすい事情
次が多いほど、慰謝料は高額になりやすい傾向があります。
- 不倫期間が長い/回数が多い
- 婚姻期間が長く、未成熟子がいる
- 不倫が原因で別居・離婚に至った(または強く影響した)
- 既婚と知りながら積極的に関係を主導した
- 警告後も継続、発覚後に隠蔽・口裏合わせがある
- 反省がなく、被害感情を強める言動があった(挑発、SNS等)
請求された側から確認・主張したいポイント(反論の芯)
次が多いほど、減額(または大幅な調整)の余地が出やすくなります。
- 不倫期間が短い/回数が少ない
- 夫婦関係が冷え切っていた・別居していた等、破綻に近い事情がある
- 離婚していない(関係修復している)/別居は不倫以前から
- 既婚だと知った時点で距離を置いた(継続していない)
- 相手の主張する時期・回数・内容に誤りがある(証拠が弱い)
- 早期解決の意向がある(ただし安易な自白・口約束はしない)
詳しくは 不倫慰謝料減額の完全マニュアル をご覧ください。
0円/責任なしにつながるポイント(最優先で確認)
次に当てはまる場合、「高すぎる」以前に、請求自体を争える可能性があります。
- 肉体関係がない(または不貞といえる証拠が乏しい)
- 既婚者だと知らず、注意しても分からない事情があった
- 不倫開始前から婚姻関係が実質的に破綻していた
- 不倫と離婚・別居の因果関係が薄い(別の原因が大きい)
「減額したい」気持ちが強いと、つい謝罪や説明を急ぎがちですが、先に“責任なし”の分岐を潰してしまうことがあります。言葉選びは慎重に。
なお、請求直後にやりがちなNG対応(無視、口約束、全面自白など)を網羅で確認したい方は、次も参考になります。
不倫慰謝料を請求されたときのNG行動|不利になる対応と安全な初動
初動の進め方(証拠整理→返信→交渉の入口まで)
ここでは「高額請求を受けた側」が、不利を増やさずに進めるための基本手順をまとめます。
ポイントは、交渉に入る前に「材料」を揃えることです。
ステップ1:証拠・請求書面を保全し、時系列メモを作る
まずは、来たものをそのまま保存します。
- 書面:封筒ごと保管、日付が分かるように保存
- LINE/メール:スクショだけでなく、可能なら全文の保存
- 電話:日時・内容をメモ(録音の可否は状況次第なので慎重に)
- 自分用メモ:出会い〜関係〜発覚までの時系列(いつ・どこで・何が)
時系列が曖昧なまま返信すると、相手の主張に引っ張られます。
ステップ2:「何が争点か」を3つに絞って仮説を立てる
高額請求への反論は、全部を否定するより、争点を絞る方が強いです。たとえば次の3つです。
- 支払義務:既婚認識、破綻の有無、不貞の有無
- 金額:増額・減額要素(期間、悪質性、離婚の有無など)
- 名目:慰謝料以外(調査費用等)の相当性・裏付け
ステップ3:いったん「受領・検討中」の返信で時間を確保する
相手が期限を切っている場合でも、焦って“結論”を返さないことが大切です。
まずは、次のように検討中であることを短く伝え、連絡手段を整えます。
ご連絡ありがとうございます。現在、事実関係を確認しており、内容を精査のうえ改めてご連絡します。今後の連絡は、記録が残る方法(メール等)でお願いします。
※「全面的に認めます」「申し訳ないので払います」など、結論や自白に直結する表現は避けます。
ステップ4:こちらの反論ポイントを「事実」で固める(言い分より証拠)
減額・争う方向性が見えたら、裏付けを考えます。例としては次のとおりです。
- 既婚を知らなかった事情:プロフィール、会話履歴、第三者の証言等
- 破綻の事情:別居開始時期、離婚協議の開始、家庭内状況の客観資料
- 期間・回数のズレ:連絡履歴、会った日程、出張・勤務地情報等
- 不貞(肉体関係)の有無:相手の立証の弱点の把握
この段階で「言い争い」を始めると、メッセージが証拠化し、引き返しにくくなります。
ステップ5:交渉は“入口”までにとどめ、落とし所設計は別途進める
本記事は「高すぎるかの見立て+初動」が主題なので、交渉の詳細(落とし所・分割・示談条項の組み方)までは踏み込みません。
ただし、実務ではここが結果を左右します。
この先の論点として、たとえば次が重要になります。
ステップ6:弁護士に相談すべきタイミング(高額ほど早い)
次に当てはまる場合は、早めの相談が合理的です。
- 請求額が大きい(例:300万円超、500万円など)
- 既婚認識や破綻の有無など、法的評価が割れる
- 相手が弁護士を付けている/書面が法的に整っている
- 会社・家族に波及しそう(連絡先を握られている、SNS懸念)
- 自分の返信が不利になりそうで怖い
弁護士に依頼するかどうかは別としても、初動の文面や争点整理だけでも、損を防げることが多いです。弁護士なしで対応するかの判断基準は、弁護士なしで大丈夫?をご覧ください。
まとめ
最後に、この記事の要点を整理します。
- 高すぎるかの前に、支払義務(責任)があるかを先に確認する
- 相場は一点ではなくレンジで見て、500万円は高額側になりやすい
- 増額/減額要素をチェックし、反論ポイントを「事実」で固める
- 返信は“検討中”にとどめ、安易な自白・口約束は避ける
- 高額請求ほど、初動の段階で弁護士に相談するメリットが大きい
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