裁判所から不貞・不倫慰謝料の訴状が届いたら、まず確認すべきことは「答弁書をいつまでに出すのか」と「第1回口頭弁論期日がいつなのか」です。突然の書類に動揺して、封筒を開けること自体をためらう方もいますが、訴状を開封して中身を確認することは、不貞行為や慰謝料の支払義務を認めることではありません。
むしろ、封筒を開けないまま放置すると、答弁書の提出期限や期日を確認できず、反論する機会を逃してしまうおそれがあります。不倫慰謝料の訴状が届いた段階では、感情的に相手へ連絡することよりも、期限・書類・請求内容を整理し、必要に応じて早めに弁護士へ相談することが重要です。
- 訴状を開封するだけで、慰謝料を認めたことにはなりません。
- 最初に確認するのは、答弁書の提出期限、第1回口頭弁論期日、請求額です。
- 答弁書を出さずに期日も欠席すると、欠席判決のリスクが高まります。
- 受け取り拒否や未開封放置では、裁判対応を避けられるとは限りません。
- 期限が数日以内に迫っている場合は、訴状一式を手元に置いて早めに相談しましょう。
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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不貞・不倫慰謝料の訴状が届いたら最初に確認すること
訴状が届いた直後は、「何を書けばよいか」「裁判所に行かなければならないのか」「家族に知られないか」など、いくつもの不安が一気に出てきます。しかし、最初から全部を完璧に理解する必要はありません。まずは、裁判手続で落としてはいけない期限と、相手が何を求めているのかを確認することが先です。
訴状を開封しても、慰謝料を認めたことにはならない
訴状を受け取った方の中には、「封を切ったら裁判を認めたことになるのではないか」「中身を見たら負けを認めたことになるのではないか」と不安になる方がいます。しかし、訴状を開封して確認する行為そのものは、慰謝料の支払義務を認める意思表示ではありません。
訴状は、相手が裁判所に提出した主張や請求内容を知らせるための書類です。あなたが反論するか、減額を求めるか、和解を検討するかを判断するためにも、まず中身を見る必要があります。開封しなければ、答弁書の提出期限、第1回口頭弁論期日、請求額、裁判所名、事件番号など、対応に必要な情報を確認できません。
大切なのは、「開封するかどうか」ではなく、「開封した後に期限を落とさず、適切に対応するか」です。怖くても、まずは封筒を開けて書類を確認してください。
未開封のまま置いていても、裁判所から届いた訴状の期限が止まるわけではありません。開封しないことは、相手の請求を否定する方法にはならず、むしろ答弁書の提出期限を過ぎるリスクを高めます。
訴状・呼出状・答弁書催告状・証拠を確認する
裁判所から届く封筒には、通常、訴状だけでなく、期日の呼出状や答弁書に関する書類、証拠の写しなどが同封されています。書類の名称だけを見ると難しく感じますが、最初は次のように役割を分けて確認すれば十分です。
- 訴状:相手が、あなたにいくらの慰謝料を請求し、どのような事実を理由にしているかが書かれた書類です。
- 口頭弁論期日呼出状:第1回口頭弁論期日の日付、時間、裁判所、法廷などが書かれた書類です。
- 答弁書催告状・答弁書用紙:答弁書の提出を求める書類や、裁判所が用意した書式です。提出期限が書かれていることがあります。
- 証拠の写し・証拠説明書:相手が証拠として提出している資料です。探偵報告書、写真、LINE、メールなどの写しが入っていることがあります。
答弁書の書式や提出方法は、裁判所から届いた案内を優先して確認します。必要に応じて、裁判所が公表している民事訴訟で使う書式も参考になりますが、実際にどの書式を使うか、何をどこまで書くかは、訴状の内容や提出先の裁判所によって確認が必要です。
答弁書提出期限・第1回口頭弁論期日・請求額をメモする
封筒を開けたら、まず次の3つを紙やスマートフォンにメモしてください。細かい反論を考える前に、期限と期日を見える形にすることが重要です。
- 答弁書の提出期限
- 第1回口頭弁論期日の日付・時間・裁判所名
- 請求されている慰謝料額と請求の理由
この3点を確認できれば、期限までに答弁書を準備できるか、期日に出席する必要があるか、弁護士に急いで相談すべきかを判断しやすくなります。特に、答弁書の提出期限が数日以内に迫っている場合は、詳しい反論を一人で完成させようとするよりも、まず期限内にどのような対応を取るかを決めることが先です。
訴状には、相手の主張する不貞行為の時期、回数、関係性、離婚や別居の有無、請求額の根拠などが書かれていることがあります。この段階では、すべてに結論を出せなくても構いません。「事実と違う点」「金額が高すぎると感じる点」「証拠がある部分とない部分」をざっと印を付けておくと、後の答弁書作成や弁護士相談に役立ちます。
家族や職場に知られたくない場合も、まず期限確認を優先する
不倫慰謝料の訴状が届いた方の中には、「家族に見られたらどうしよう」「職場に知られたら困る」という不安から、書類を隠したままにしてしまう方もいます。しかし、知られたくない場合ほど、未開封で放置するのは危険です。期限を過ぎて欠席判決や強制執行の問題に進むと、かえって家族や勤務先に知られるリスクが高まることがあります。
まずは、訴状一式を一か所にまとめ、なくさない場所に保管してください。スマートフォンで期日呼出状や答弁書催告状を撮影しておく、封筒・訴状・証拠の順にクリアファイルへ入れるなど、後で見返せる状態にしておくことも有効です。
家族・職場に知られたくない場合の対応は、送付先、連絡窓口、相手方とのやりとり、裁判所からの連絡方法などによって変わります。より詳しい対応は、不倫で訴えられた場合の対応も参考にしてください。
訴状・呼出状を無視するとどうなるか
訴状が届いたときに最も避けるべき対応は、何も確認せずに放置することです。相手の請求に納得できない場合でも、裁判所はあなたの代わりに反論を探してくれるわけではありません。不貞行為がなかった、請求額が高すぎる、婚姻関係が破綻していたなどの事情がある場合でも、それを手続の中で主張しなければ、十分に考慮されないまま進んでしまうおそれがあります。
答弁書を出さずに欠席すると、欠席判決のリスクがある
特に危険なのは、答弁書を提出せず、第1回口頭弁論期日にも出席しないという対応です。この場合、相手の請求や主張を争わないものとして扱われ、相手の請求内容に沿った判決が出るリスクが高まります。これが、いわゆる欠席判決が問題になる場面です。
不倫慰謝料の事案では、訴状に書かれた内容が必ずしもすべて正しいとは限りません。たとえば、不貞行為の有無、交際開始時期、相手が既婚者であることを知っていたか、夫婦関係が既に破綻していたか、慰謝料額が相当かなど、争点になる部分は複数あります。
- 「不貞行為はしていない」と主張したい場合でも、答弁書や期日で主張しなければ伝わりません。
- 「金額が高すぎる」と考えていても、減額理由を整理しなければ裁判所に十分伝わりません。
- 「相手の夫婦関係は破綻していた」と考えていても、その事情を具体的に主張する必要があります。
つまり、「自分には言い分があるから大丈夫」ではなく、「言い分があるなら、期限内に裁判所へ示すこと」が必要です。
判決が出ると、給与・預金などへの強制執行リスクがある
欠席判決などにより慰謝料の支払いを命じる判決が出て、その後も支払いをしない場合、相手は強制執行を検討できる立場になります。代表的には、給与や預金口座の差押えが問題になります。
給与の差押えが行われると、勤務先に裁判所から手続書類が届くことがあります。預金口座の差押えでは、口座が利用しにくくなったり、生活への影響が出たりすることがあります。家族や職場に知られたくない方ほど、裁判所から届いた訴状を放置する対応は逆効果になりやすいといえます。
もちろん、訴状が届いたからといって、直ちに差押えが行われるわけではありません。通常は、裁判手続、判決、支払いをしない状態などを経て問題になります。ただし、最初の段階で答弁書期限や期日対応を落としてしまうと、後から立て直す負担が大きくなります。
受け取り拒否や未開封放置では解決しない
「訴状を受け取らなければ裁判は進まないのではないか」「封を切らずに置いておけば何とかなるのではないか」と考えてしまう方もいます。しかし、受け取り拒否や未開封放置は、裁判対応を避けるための安全な方法ではありません。
裁判所からの訴状は、通常の郵便物とは異なり、特別送達などの方法で送られます。受け取りを拒否したり、不在を続けたりしたからといって、裁判が当然に止まるとは限りません。別の送達方法が取られたり、送達があったものとして扱われたりする可能性もあります。
また、封筒を開けずに保管していても、提出期限や期日が延びるわけではありません。未開封のまま期限が過ぎると、本人としては「まだ中身を見ていない」という感覚でも、手続上は対応しないまま時間が経過したことになります。
通知書・内容証明を無視する場合とは段階が違う
不倫慰謝料の請求では、裁判の前に、相手本人や相手の弁護士から通知書・内容証明郵便が届くこともあります。この段階でも放置にはリスクがありますが、裁判所から訴状が届いた段階とは意味が異なります。
通知書や内容証明は、相手方からの請求や交渉の入口であることが多いのに対し、訴状は既に裁判所で民事訴訟が始まっていることを示す書類です。訴状が届いた後は、答弁書提出期限や口頭弁論期日という具体的な手続期限が発生します。
通知書・内容証明を受け取った段階の対応については、不倫慰謝料の通知書や内容証明を無視した場合のリスクで詳しく解説しています。この記事では、裁判所から訴状が届いた後の対応、特に答弁書と期日対応を中心に整理します。
次に、訴状が届いた直後に何から進めればよいかを、当日、3日以内、答弁書提出期限までの順に整理します。
訴状が届いた直後のToDoチェックリスト
訴状が届いた後は、気持ちが落ち着かないまま期限だけが進んでいきます。最初から完璧な反論や和解方針を決めようとすると、かえって手が止まりやすくなります。まずは、当日、3日以内、答弁書提出期限までに分けて、やるべきことを整理しましょう。
特に不倫慰謝料の裁判では、事実関係の整理、証拠の確認、家族や職場に知られないための連絡方法、相手方への対応など、手続以外の不安も重なりやすいです。期限を守るためには、感情面の整理と法的な準備を分けて考えることが大切です。
届いた当日から24時間以内にやること
訴状が届いた当日から24時間以内は、反論を完成させる時間ではなく、期限と書類を失わないための時間です。まずは、訴状一式を開封し、答弁書提出期限、第1回口頭弁論期日、裁判所名、事件番号、請求額を確認します。
- 封筒、訴状、呼出状、答弁書催告状、証拠を一式まとめる
- 答弁書提出期限と第1回口頭弁論期日をメモする
- 請求額、原告名、相手方代理人の有無を確認する
- 書類の写真やPDFを保存し、紛失しないようにする
- 相手方へ感情的に連絡する前に、相談先や対応方針を整理する
この段階で重要なのは、「すぐに相手へ反論すること」ではありません。相手に連絡して感情的なやり取りをすると、後で不利な証拠として使われるおそれがあります。まずは、裁判所から届いた書類を手元に置き、内容を落ち着いて確認してください。
3日以内に訴状・証拠・請求額を整理する
3日以内には、訴状に書かれている主張と、添付されている証拠を整理します。不倫慰謝料の訴状では、交際の経緯、肉体関係の有無、既婚者と知っていたか、夫婦関係の状況、請求額の根拠などが書かれていることがあります。
このときは、正しいか間違っているかを頭の中だけで判断するのではなく、訴状の記載を項目ごとに分けて、認める部分、違う部分、記憶が曖昧な部分に整理しておくと、答弁書や弁護士相談につなげやすくなります。
- 訴状の請求額:慰謝料、遅延損害金、訴訟費用など、相手が何を求めているかを確認します。
- 請求原因の内容:不貞行為の時期、回数、期間、交際開始時期、夫婦関係の説明などを確認します。
- 証拠の種類:LINE、メール、写真、ホテル利用、探偵報告書など、どのような証拠が出ているかを確認します。
- 自分側の資料:相手とのやり取り、交際経緯、既婚者と知らなかった事情、別居や夫婦関係の事情などを整理します。
証拠を見て不安になったとしても、その時点で直ちに全額支払うべきとは限りません。請求額が高すぎる場合や、婚姻関係の破綻、既婚者認識、時効などの争点がある場合は、答弁書を出す前に慎重な整理が必要です。
答弁書提出期限までに対応方針を決める
答弁書提出期限までには、少なくとも「請求を争うのか」「金額を争うのか」「和解を希望するのか」「弁護士に依頼するのか」を決める必要があります。期限まで時間があるように見えても、訴状の確認、資料整理、相談予約、答弁書作成には一定の時間がかかります。
- 請求自体を争う
- 不貞行為は争わないが、慰謝料額を争う
- 減額や分割払いを前提に和解を検討する
- 一部の事実だけを認め、それ以外は争う
- 弁護士に依頼して答弁書と期日対応を任せる
和解を検討する場合でも、最初から相手の請求額をそのまま受け入れる必要はありません。裁判では、事実関係、証拠、婚姻関係の状況、請求額の相当性などを踏まえて、減額や分割払いを含む和解を検討することがあります。不貞慰謝料裁判での和解については、不貞慰謝料裁判の和解で確認すべきポイントも参考になります。
やってはいけないことも確認する
訴状が届いた直後は、相手方に怒りをぶつけたくなったり、家族に知られることを恐れて書類を隠したくなったりすることがあります。しかし、初動の行動が、その後の答弁書や和解交渉に影響することがあります。
相手方や相手方の弁護士に連絡すること自体が常に禁止されるわけではありません。ただし、感情的な謝罪、支払約束、不貞行為を全面的に認める発言、証拠を消すような行動は避けるべきです。連絡が必要な場合でも、何を伝えるかを整理してから行いましょう。
また、LINEやメール、写真、領収書などを削除すると、後で事実関係を確認できなくなります。不利に見える資料であっても、全体の経緯を説明するために必要になることがあります。削除する前に保存し、弁護士へ相談する場合はそのまま見せられる状態にしておくことが重要です。
答弁書には何を書くのか|不倫慰謝料で押さえる基本パーツ
答弁書は、訴状に対して被告側の立場を裁判所に伝える書面です。不倫慰謝料の訴状が届いた場合、答弁書では、単に「支払いたくない」と書くだけでは足りません。相手の請求を争うのか、どの事実を認めるのか、どの事実を争うのか、減額や和解を希望するのかを整理する必要があります。
もっとも、この記事で答弁書の完成版テンプレートを示すことは適切ではありません。不倫慰謝料の答弁書は、事案ごとに、認めてよい事実、争うべき事実、あえて詳しく書かない方がよい事情が変わるためです。ここでは、弁護士に相談する前にも理解しておきたい基本パーツを確認します。
答弁書の役割は、請求に対する立場を裁判所へ示すこと
答弁書の役割は、原告の請求に対して、被告としてどのような立場を取るのかを裁判所へ示すことです。第1回口頭弁論期日前に答弁書を提出しておけば、少なくとも、裁判所や相手方に対して「請求を争う意思がある」「今後主張を整理する意思がある」と伝えることができます。
裁判所のウェブサイトには、民事訴訟で使用する書式として、地裁・簡裁の答弁書書式や記載例が掲載されています。もっとも、裁判所の一般的な書式は、不倫慰謝料の争点を個別に整理してくれるものではありません。実際にどのような認否や反論を書くかは、訴状の内容と証拠を見て判断する必要があります。
書式を確認する場合は、裁判所の案内や同封書類に従い、必要に応じて裁判所の民事訴訟で使う書式も確認してください。なお、裁判所の案内では、令和8年5月21日より前に訴えが提起された事件と、同日以降に訴えが提起された事件では、使用する書式が異なる場合があるとされています。
請求の趣旨に対する答弁
答弁書の基本パーツの1つ目は、請求の趣旨に対する答弁です。これは、原告が求めている判決に対して、被告としてどのような判決を求めるかを示す部分です。
たとえば、慰謝料請求を争う場合には、「原告の請求を棄却する」「訴訟費用は原告の負担とする」といった形式の記載が用いられることがあります。ただし、このような記載はあくまで一般的な形式のイメージであり、実際にそのまま使ってよいかは、訴状の内容や方針によって異なります。
不倫慰謝料の裁判では、請求を全面的に争う場合もあれば、不貞行為自体は争わず、金額や支払方法を争う場合もあります。答弁書の冒頭でどの程度強く争うかは、その後の認否や和解方針とも関係します。
請求原因に対する認否は慎重に整理する
答弁書で特に注意が必要なのは、請求原因に対する認否です。請求原因とは、原告が慰謝料を請求する根拠として主張している事実です。不倫慰謝料であれば、不貞行為の有無、交際期間、既婚者と知っていたか、夫婦関係への影響、精神的苦痛などが問題になります。
認否では、訴状に書かれた事実について、認めるのか、否認するのか、知らないのかを整理します。ここで安易に「認める」と書いてしまうと、後で撤回や修正が難しくなることがあります。逆に、明らかな事実まで全て否認すると、裁判所から見て不自然になり、和解交渉にも影響することがあります。
- 認める部分:争いがなく、認めても方針に反しない事実を整理します。
- 否認する部分:事実と異なる部分、証拠が不足している部分、相手の評価が入っている部分を整理します。
- 知らない部分:相手夫婦の内部事情など、自分には分からない事実を整理します。
- 詳しく反論すべき部分:不貞の有無、婚姻関係の破綻、既婚者認識、時効、請求額の相当性などを検討します。
答弁書は、提出期限に間に合わせることも重要ですが、不利な認否を避けることも重要です。期限が迫っている場合こそ、訴状のどの部分を認め、どの部分を争うのかを、できるだけ早く相談する必要があります。
不貞慰謝料で主張し得る事情・反論
不倫慰謝料の答弁書では、一般的な民事訴訟の答弁書とは異なり、不貞慰謝料特有の争点を意識する必要があります。単に「高すぎる」「払えない」と書くだけでは、法的な反論として十分でないことがあります。
典型的には、不貞行為が本当にあったのか、交際開始時に相手が既婚者であることを知っていたのか、相手夫婦の婚姻関係が既に破綻していたのか、請求が時効にかかっていないか、請求額が相場や事情に照らして高すぎないか、といった点を検討します。
これらの争点を全て答弁書に詳しく書くべきとは限りません。第1回期日前の答弁書では、まず争う立場を示し、その後の準備書面で詳しく主張することもあります。ただし、どの争点を後で主張する可能性があるのかは、答弁書提出前に把握しておくべきです。
和解・減額・分割を希望する場合の記載
不倫慰謝料の裁判では、判決まで進まず、途中で和解することも少なくありません。答弁書でも、事案によっては、請求額を争いつつ和解協議を希望する旨を示すことがあります。
ただし、「和解したい」と書くことと、「相手の請求を全て認める」ことは同じではありません。減額、分割払い、支払時期、接触禁止条項、口外禁止条項など、和解条件には検討すべき点があります。和解を希望する場合でも、請求額や事実関係をどこまで争うかを整理したうえで記載することが大切です。
期限までに詳しい反論を書けない場合|いわゆる三行答弁という考え方
答弁書提出期限が目前に迫っている場合、訴状の全ての事実について詳しい認否や反論を整理する時間がないことがあります。このような場面で、実務上、いわゆる「三行答弁」という考え方が話題になることがあります。
三行答弁とは、詳しい認否や反論を期限までに整理しきれない場合に、まず請求を争う意思を示し、具体的な主張は追って行うという簡潔な答弁書を指すことがあります。もっとも、正式な万能テンプレートではなく、事案に応じて慎重に使うべき緊急的な対応の考え方です。
たとえば、請求を争う場合には、請求の趣旨に対する答弁として、原告の請求を棄却することを求める趣旨の記載が用いられることがあります。また、請求原因に対する詳しい認否や反論については、追って主張するという形にすることがあります。
しかし、三行答弁は「とりあえず短く出せば安全」という意味ではありません。不倫慰謝料では、認めてよい事実と争うべき事実を誤ると、その後の減額交渉や和解に影響することがあります。期限まで時間がない場合でも、可能な限り早く弁護士に相談し、少なくとも提出期限を守るための現実的な対応を確認してください。
提出方法・控え・送付先を確認する
答弁書を作成したら、裁判所の案内に従って提出します。提出方法は、裁判所への持参、郵送、電子提出の対象となる場合など、事件や裁判所の運用によって異なることがあります。訴状に同封されている説明書や裁判所の案内を確認してください。
提出期限との関係では、「いつ作成したか」ではなく、「期限までに裁判所へ適切に提出できるか」が問題になります。郵送する場合は、到着までの日数を考える必要があります。控えを残し、提出した日、送付方法、送付先を記録しておくと、その後の確認もしやすくなります。
慰謝料請求された事案の無料法律相談実施中!
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第1回口頭弁論期日にはどう対応すべきか
訴状と一緒に届く呼出状には、第1回口頭弁論期日が記載されています。答弁書の提出と第1回期日への対応は、どちらか一方だけを見ればよいものではありません。答弁書を出すか、期日に出頭するか、弁護士に依頼するかによって、対応の仕方が変わります。
第1回口頭弁論期日で確認されること
第1回口頭弁論期日では、原告の訴状と被告の答弁書を前提に、今後どのように裁判を進めるかが確認されます。不倫慰謝料の事件では、事実関係を争うのか、金額を争うのか、和解の可能性があるのかなどが、その後の進行に関係します。
弁護士に依頼した場合は、弁護士が代理人として期日に対応することが多くなります。本人で対応する場合は、裁判所から届いた呼出状、答弁書、訴状、証拠を確認し、当日何を聞かれる可能性があるのかを整理しておく必要があります。
答弁書を提出していれば、初回期日に出頭しなくても扱われる場合がある
第1回口頭弁論期日については、答弁書を事前に提出していれば、その答弁書の内容を陳述したものとして扱われる場合があります。このため、仕事や家庭の事情で初回期日に出頭できない場合でも、答弁書を期限内に提出しておくことが重要です。
ただし、「答弁書を出せば、期日には一切行かなくてよい」と単純に考えるのは危険です。事件の内容、裁判所の運用、第2回以降の期日、和解協議の進め方によっては、本人又は代理人の対応が必要になります。特に第2回以降は、初回期日と同じようには扱われないことがあります。
答弁書なしで欠席するのは特に危険
最も避けるべきなのは、答弁書も出さず、第1回口頭弁論期日にも出頭しないことです。この場合、原告の主張を争わないものとして扱われ、欠席判決につながるリスクが高くなります。
欠席判決が出ると、相手の請求額に近い内容で判決が出る可能性があり、その後、給与や預金などに対する強制執行の問題に発展することがあります。訴状が届いた後に何もしないことは、交渉を避ける行動ではなく、むしろ不利な結果を招く行動になり得ます。
予定が合わない場合は早めに確認する
第1回口頭弁論期日にどうしても出頭できない場合は、直前まで放置せず、早めに裁判所の案内や弁護士への相談で対応を確認してください。期日変更が可能か、答弁書提出でどこまで対応できるか、弁護士に依頼すれば代理対応できるかは、状況によって異なります。
不倫慰謝料裁判の全体の流れや、期日が進んだ後の対応については、不倫慰謝料裁判の手続全体も確認しておくと、答弁書提出後の見通しを立てやすくなります。
次に、答弁書を出す前に整理しておきたい不倫慰謝料特有の争点を確認します。
答弁書を出す前に整理したい不倫慰謝料の争点
答弁書は、単に期限までに提出すればよい書類ではありません。不倫慰謝料の請求では、相手の主張のうちどこを認め、どこを争い、どの事情を減額や免責の理由として主張するのかを整理する必要があります。
もっとも、訴状が届いた直後に、すべての反論を完璧にまとめることは簡単ではありません。まずは、答弁書を出す前に確認すべき主な争点を、次のように分けて考えると整理しやすくなります。
- 不貞行為の有無:肉体関係があったか、証拠でどこまで裏付けられているか
- 婚姻関係の破綻:交際開始時点で、相手夫婦の関係が既に破綻していたといえるか
- 故意・過失:相手が既婚者であることを知っていたか、又は知り得たといえるか
- 時効:相手が不貞行為と相手方を知ってから長期間が経過していないか
- 請求額:請求額が裁判で認められそうな金額と比べて高すぎないか
これらの争点は、どれか1つだけで結論が決まるとは限りません。例えば、不貞行為自体は争いにくい場合でも、婚姻関係の状況、交際期間、謝罪や交渉経過、請求額の根拠によって、減額や和解条件の調整を検討できることがあります。
不貞行為があったか・証拠があるか
不倫慰謝料の中心的な争点は、不貞行為があったかどうかです。ここでいう不貞行為は、一般には、配偶者以外の人との肉体関係を指します。交際していたこと、頻繁に連絡を取っていたこと、食事や旅行に行ったことだけで、直ちに不貞行為が認められるとは限りません。
もっとも、訴状と一緒にホテルの利用記録、写真、LINEやメール、探偵調査報告書などが証拠として提出されている場合には、単に「違います」と否認するだけでは足りないことがあります。どの証拠が、どの事実を裏付けるものとして提出されているのかを確認し、認める部分と争う部分を分ける必要があります。
証拠を見て不安になっても、相手に感情的な謝罪や支払約束を送ったり、メッセージや写真を削除したりすることは避けてください。答弁書を作る前に、自分の記憶、相手とのやり取り、訴状と一緒に届いた証拠を分けて整理することが大切です。
交際開始時に婚姻関係が破綻していたか
交際開始時点で相手夫婦の婚姻関係が既に破綻していたといえる場合、不倫慰謝料の支払義務を争えることがあります。例えば、長期間別居していた、離婚協議が具体的に進んでいた、夫婦としての共同生活が実質的に失われていた、といった事情が問題になります。
ただし、「夫婦仲が悪いと聞いていた」「離婚する予定だと言われていた」というだけで、常に婚姻関係の破綻が認められるわけではありません。破綻を主張する場合には、交際開始時点の別居状況、夫婦間の連絡、生活費、離婚協議の有無など、客観的に説明できる事情を整理する必要があります。
婚姻関係破綻の抗弁については、不倫慰謝料における婚姻関係破綻の抗弁で詳しく解説しています。この記事では、答弁書を作る前に、破綻を争点として出すべきかを意識しておく程度で十分です。
既婚者と知っていたか・知り得たか
不倫慰謝料では、相手が既婚者であることを知っていたか、又は注意すれば知り得たかも問題になります。相手から独身だと聞かされていた、婚活アプリや職場で独身として振る舞っていた、結婚指輪や家族の話がなかったなどの事情がある場合には、故意・過失を争う余地があるかを検討します。
もっとも、途中で既婚者だと分かった後も関係を続けた場合や、既婚者であることを疑わせる事情があった場合には、責任を否定することが難しくなることがあります。訴状に書かれている時期ごとに、自分が何を知っていたのか、どのような説明を受けていたのかを整理してください。
この争点は、認否の書き方に直結します。既婚者だと知っていた時期を安易に広く認めてしまうと、後から不利になることがあります。事実関係が曖昧な場合は、答弁書に書く前に弁護士へ相談することが望ましいです。
時効が成立している可能性
不倫慰謝料の請求では、時効が問題になることがあります。一般に、不法行為に基づく慰謝料請求では、損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年という期間が問題になります。
訴状が届いた段階でも、相手がいつ不貞行為を知ったのか、いつ誰に対する請求が可能になったのか、どの時期の不貞行為を請求対象にしているのかによって、時効を主張できるかを検討する余地があります。
ただし、時効は自動的に裁判所が判断してくれるものではなく、主張しなければならないことがあります。また、相手が裁判を起こした時期や、それまでの通知・交渉経過によって判断が変わることもあります。時効の詳しい考え方は、不倫慰謝料の時効で解説しています。
請求額が高すぎるか
訴状に300万円、500万円など高額な請求が書かれていると、その金額を必ず支払わなければならないように感じるかもしれません。しかし、訴状に書かれた請求額と、最終的に裁判で認められる金額は同じとは限りません。
慰謝料額は、婚姻期間、子どもの有無、不貞期間、回数、夫婦関係への影響、離婚や別居の有無、謝罪や交渉経過など、複数の事情を踏まえて判断されます。相手の請求額が高い場合でも、減額を主張できる事情があるかを確認する必要があります。
減額理由や交渉の考え方については、不倫慰謝料を減額できる理由と交渉方法で詳しく解説しています。訴状が届いた段階では、請求額を見て慌てて支払約束をするのではなく、金額の根拠と反論材料を整理しましょう。
和解・減額・分割を検討するか
不貞行為や責任を完全には争えない場合でも、すぐに判決まで進めるしかないわけではありません。裁判では、途中で和解協議が行われることも多く、金額、支払期限、分割払い、接触禁止、口外禁止などの条件を調整できる場合があります。
ただし、和解は一度成立すると、その内容に従って支払う必要があります。支払えない金額や無理な分割条件で合意してしまうと、後から履行できず、かえって問題が大きくなることがあります。
裁判上の和解を検討する場合は、判決になった場合の見通し、支払能力、家族や職場への影響、早期解決のメリットを比較して判断します。和解の判断基準は、不貞慰謝料裁判の和解で迷った場合の考え方も参考にしてください。
答弁書期限が迫っている場合に弁護士へ相談すべきケース
訴状が届いたすべてのケースで、必ず弁護士に依頼しなければならないわけではありません。しかし、答弁書提出期限が迫っている場合、不利な認否をしてしまいそうな場合、請求額が高い場合には、早めに相談することが読者自身の利益につながります。
答弁書提出期限が数日以内に迫っている場合は、訴状、呼出状、答弁書催告状、証拠、封筒を一式そろえて、できるだけ早く弁護士へ相談してください。期限直前になるほど、事実整理、答弁書作成、提出方法の確認に使える時間が限られます。
期限が数日以内なら、すぐに訴状一式を持って相談する
答弁書期限が近い場合、最も避けたいのは、「自分で調べているうちに期限が過ぎる」ことです。期限を過ぎたからといって直ちにすべて終わるとは限りませんが、答弁書なしで第1回口頭弁論期日を迎えると、欠席判決のリスクが高まります。
相談時には、法律的に完璧な説明を準備する必要はありません。訴状一式、相手とのやり取り、不貞関係の時期が分かる資料、支払能力に関する資料を持参又は共有できれば、弁護士側で争点と対応方針を整理しやすくなります。
請求額が高い・証拠が多い・争点が複数ある場合
請求額が高い場合や、探偵報告書、写真、メッセージ履歴などの証拠が多く提出されている場合は、どこを認め、どこを争うかの判断が難しくなります。また、不貞の有無、既婚者認識、婚姻関係破綻、時効、請求額の相当性など、複数の争点が重なる場合もあります。
このようなケースで、答弁書に不用意な認否を書いてしまうと、後から主張を修正しにくくなることがあります。特に、「不貞行為があった」「既婚者だと知っていた」「請求額を分割で支払う」といった内容は、書き方によって大きな意味を持つため、慎重に検討すべきです。
家族や職場に知られたくない場合
不倫慰謝料の訴状が届いた場合、法的な争点だけでなく、家族や職場に知られたくないという不安も大きいはずです。封筒を隠したり、期限を確認しないまま放置したりすると、かえって裁判対応が遅れ、家族・職場に知られるリスクが高まることがあります。
送付先、連絡方法、裁判所や相手方代理人とのやり取り、勤務先への影響を整理したい場合は、早めに相談して対応窓口を決めることが重要です。家族・職場バレの典型ルートや回避策については、不倫慰謝料で訴えられた場合の家族・職場バレ対策で詳しく解説しています。
相談前に準備しておくもの
弁護士に相談する前には、次の資料を可能な範囲でそろえておくと、短時間でも具体的な相談がしやすくなります。全部がそろっていなくても、答弁書期限が迫っている場合は、手元にあるものだけで早めに相談してください。
- 裁判所から届いた封筒、訴状、呼出状、答弁書催告状
- 訴状と一緒に届いた証拠一式
- 相手や相手配偶者とのLINE、メール、SNS、通話履歴
- 交際開始時期、既婚者と知った時期、別れた時期のメモ
- 支払能力や分割希望を説明できる収入・支出の資料
相談時には、「裁判で全面的に争いたいのか」「金額を下げて和解したいのか」「家族や職場に知られない対応を優先したいのか」も伝えると、答弁書と今後の方針を整理しやすくなります。
相談後の流れ
弁護士に相談すると、まず答弁書提出期限と第1回口頭弁論期日を確認し、提出までに何を優先すべきかを整理します。そのうえで、本人で提出するのか、弁護士が代理人として答弁書を作成・提出するのか、期日に誰が対応するのかを決めていきます。
その後は、相手方の主張と証拠に対する認否、減額や和解の方針、追加で必要な証拠、裁判費用や弁護士費用の見通しを確認します。裁判対応にかかる費用が不安な場合は、不倫慰謝料裁判の費用も確認しておくと、依頼するかどうかを判断しやすくなります。
よくある質問
訴状を封を切らずに置いておいてもよいですか
おすすめできません。封を切らずに置いておいても、答弁書提出期限や第1回口頭弁論期日が止まるわけではありません。まず開封して、期限、期日、請求額、同封書類を確認してください。
訴状を開封すると、慰謝料を認めたことになりますか
訴状を開封して中身を確認するだけで、不貞行為や慰謝料の支払義務を認めたことにはなりません。開封は、相手の主張や裁判所の期限を確認するための行動です。
訴状を受け取り拒否すれば裁判を避けられますか
受け取り拒否をすれば裁判を避けられる、とは考えない方がよいです。訴状は通常の郵便物とは異なる方法で送達され、受け取り拒否や不在が続いても、手続が進む可能性があります。
答弁書の提出期限に間に合わない場合はどうすればよいですか
まず、提出期限と第1回口頭弁論期日を正確に確認し、すぐに弁護士へ相談してください。詳しい反論を期限までにまとめられない場合でも、請求を争う意思を示す緊急的な答弁を検討することがあります。ただし、安易な三行答弁だけで十分とは限らないため、可能な限り個別事情を踏まえて判断すべきです。
第1回口頭弁論期日に行けない場合はどうすればよいですか
第1回期日に出頭できない場合でも、答弁書を期限内に提出しておくことが重要です。ただし、第2回以降の期日や和解協議では本人又は代理人の対応が必要になることがあります。予定が合わない場合は、直前まで放置せず、早めに確認してください。
相手や相手の弁護士に直接連絡してもよいですか
連絡自体が常に禁止されるわけではありませんが、感情的な謝罪、支払約束、不貞行為を全面的に認める発言は避けるべきです。連絡する前に、何を伝えるべきか、書面やメールに残してよい内容かを慎重に整理してください。
請求額が高すぎる場合でも払わないといけませんか
訴状に書かれた請求額を、そのまま支払わなければならないとは限りません。不貞行為の内容、婚姻関係への影響、請求額の根拠、支払能力などを踏まえて、減額や和解条件を検討できる場合があります。
家族や職場に知られずに対応できますか
完全に知られないと断言することはできませんが、送付先、連絡方法、期日対応、支払い方法を整理することで、知られるリスクを下げられる場合があります。未開封放置や無視は、かえってリスクを高めることがあるため避けましょう。
まとめ|訴状が届いたら、まず期限を確認して答弁書対応を進める
不貞・不倫慰謝料の訴状が届いた場合、最初にすべきことは、相手に連絡することでも、すぐに支払約束をすることでもありません。まず封筒を開けて、答弁書提出期限、第1回口頭弁論期日、請求額、同封書類を確認することが出発点です。
- 訴状を開封しても、慰謝料を認めたことにはなりません。
- 答弁書なしで期日を欠席すると、欠席判決のリスクがあります。
- 答弁書では、請求の趣旨への答弁、認否、反論、和解希望を整理します。
- 不貞の有無、婚姻関係破綻、故意過失、時効、請求額を確認しましょう。
- 答弁書期限が迫っている場合は、訴状一式を手元に置いて早めに相談してください。
特に、期限が数日以内に迫っている場合や、請求額が高い場合、家族や職場に知られたくない場合は、本人だけで悩んでいるうちに対応時間がなくなりやすいです。答弁書を出す前に、認める部分と争う部分、和解を検討する部分を整理できるかどうかで、その後の裁判対応は大きく変わります。
不倫慰謝料の訴状が届いたら、封筒を閉じたままにせず、まず期限を確認し、必要な資料をまとめて早めに相談することをおすすめします。
坂尾陽弁護士
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