不倫・不貞をめぐる慰謝料トラブルがこじれて裁判になったとき、途中で「和解しませんか?」と裁判官や相手から言われると、
- ここで和解するのは妥協じゃないか
- 判決まで戦った方がいいのでは
- 提示された和解金額は高い?安い?
と不安になる方がほとんどです。
この記事では、不貞を理由とする慰謝料請求の裁判(以下「不貞裁判」といいます)で和解を検討している方に向けて、次のポイントを整理します。
• 裁判官から和解を勧められるタイミングとその背景
• 不貞裁判で和解を選ぶメリット・デメリット
• 和解金額や条件を検討するときの考え方・注意点
• 請求する側/請求された側それぞれが意識したいポイント
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

Contents
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不貞裁判と「和解」で悩んでいる方へ
この記事でお伝えしたいこと
不貞裁判の途中で和解を勧められると、「ここで折れたら負けなのでは」「でも裁判を続けるのもしんどい」と、感情と現実の間で揺れ動きます。
この記事では、そうした迷いを少しでも整理できるように、
- 不貞裁判における裁判上の和解の仕組み
- 和解が選ばれやすいタイミングと背景
- 和解を選ぶことのメリット・デメリット
- 和解金額・条件を検討するときのチェックポイント
といった点を、できるだけ専門用語を噛み砕きながら解説していきます。
特定の答えを押し付けるのではなく、「あなたの事情なら、こういうところを見て判断すると良い」という考え方のヒントをお伝えするイメージです。
この記事が想定している読者の立場
不倫・不貞をめぐる慰謝料トラブルでは、
- 配偶者の不貞相手に慰謝料を請求する側
- 自分が不倫をして慰謝料を請求されている側
の双方が、不貞裁判と和解について情報を探しています。
そこで本記事では、原則として両方の立場の方を念頭に置きつつ、
- 「請求する側」の視点:いくら・どのような条件で和解するか
- 「請求された側」の視点:どこまで減額・条件調整を求められるか
の両面からポイントを整理していきます。
「自分はどちらの立場なのか」を意識しながら読み進めていただければ、今の状況で何を検討すべきかが見えやすくなるはずです。
不貞裁判における「裁判上の和解」とは?
裁判上の和解の基本的な仕組み
「裁判上の和解」とは、簡単にいうと裁判所の関与のもとで当事者同士が話し合い、合意した内容を正式な書面(和解調書)にまとめる手続きです。
ポイントは、次の2つです。
- 裁判官がその場に立ち会い、合意内容を確認したうえで和解調書を作成する
- 出来上がった和解調書は、確定判決と同じ効力を持ち、支払われないときは強制執行(差押えなど)ができる
「和解=裁判をやめるだけの口約束」と誤解されがちですが、裁判上の和解は法律上かなり強い効力を持っています。判決を待たずに話し合いで解決しつつ、守られなかったときは判決と同じように差押え等ができる、というイメージで捉えてください。
裁判外の示談との違い
不倫・不貞の慰謝料トラブルでは、「裁判になる前に当事者同士(または弁護士同士)で話し合って合意する」いわゆる示談で解決することも多くあります。
示談と裁判上の和解の主な違いは、次のような点です。
- 示談
→ 裁判所は関与せず、当事者同士の合意書(示談書・合意書)として残る
→ 原則として、その書面だけでは強制執行はできず、支払われない場合は改めて裁判が必要になる - 裁判上の和解
→ 裁判所の手続きの一環として行われ、和解調書が作成される
→ 和解調書そのものが**強制執行のタイトル(根拠)**になる
どちらも「話し合いで折り合いをつける」という点では同じですが、支払いが滞ったときの強制力の有無が大きな差です。すでに裁判になっている不貞慰謝料の事案では、この裁判上の和解が使われるのが一般的です。
不貞裁判が和解で終わることが多い理由
不貞裁判は、実務上、かなりの割合が判決ではなく和解で終わると言われています。理由としては、例えば次のようなものがあります。
- 慰謝料額の争いが中心で、「ゼロか100か」ではなく金額の幅の中で折り合いがつきやすい
- 判決まで進めると半年〜1年、場合によってはそれ以上かかり、当事者・裁判所双方の負担が大きい
- 本人尋問などで、プライバシーに踏み込んだ話を公開の法廷で行う負担が重い
そのため、「裁判の途中で和解を検討する」というのは、不貞裁判ではごく自然な流れです。和解を選ぶこと自体は特別なことではなく、多くの人が通る選択肢の一つだと考えていただいて大丈夫です。
不貞裁判で和解を勧められるタイミングと背景
尋問前に和解を打診されるケースが多い理由
不貞裁判では、訴状・答弁書・準備書面などの書面で主張と証拠のやり取りをある程度行った段階で、尋問(本人・証人尋問)に入る前に裁判官から「一度和解の可能性を検討してみませんか」と提案されることが多くあります。
これは、
- 尋問を行うと裁判の準備や当日の拘束時間が増える
- 当事者にとっても、プライバシーに踏み込んだ話を第三者の前で語る負担が大きい
といった事情があるためです。
裁判官としても、「このあたりが判決の落としどころになりそうだ」という心証を持ったうえで、その前に話し合いで解決できないかを探っているイメージです。
尋問後・判決直前に和解が提案されることもある
一方で、すでに本人尋問や証人尋問を終えている段階で、判決を出す前に改めて和解が持ち出されることもあります。
尋問を経ることで、
- 不貞の経緯や夫婦関係の実情について、裁判官の理解が深まる
- 当事者の反省の有無・態度など、書面だけでは分からない要素が見える
ため、この時点で「この範囲なら和解できるのではないか」と裁判官が考えるケースがあるからです。
尋問が終わったあとに和解案が提示されたからといって、**「もうほぼ判決は決まっているのに無理やり和解させられている」**という意味ではありません。裁判官としては、判決を出すか・和解を促すか、両にらみで進めているのが通常です。
裁判官の心証と和解案との関係
裁判官から具体的な和解案(「慰謝料○○万円を△回分割で」など)が示されることもあります。この金額は、多くの場合、
- これまでの主張・証拠を踏まえた裁判官の心証(見立て)
- 判決にした場合に出そうな金額の大まかなレンジ
を反映しています。
もっとも、和解案はあくまで**「裁判官の提案」**に過ぎず、絶対に受け入れなければならないものではありません。「この金額ではとても納得できない」と感じるなら、
- なぜ納得できないのか(事実認定・金額・支払方法など)
- どのような条件なら受け入れ可能か
を整理したうえで、弁護士を通じて調整を試みたり、最終的には判決まで進める選択もありえます。
大切なのは、裁判官の和解案を**「ありがたい参考意見」として冷静に評価すること**です。
不貞裁判で和解するメリット
早期にトラブルを解決できる
不貞裁判を判決まで進めると、通常でも半年〜1年程度、争点が多い事件ではそれ以上かかることも珍しくありません。その間、1〜2か月に1回程度のペースで期日が入り、書面や証拠の準備も続きます。
これに対して、和解で解決できれば、
- 判決まで行く場合よりも数か月単位で早く事件が終わる
- 先の見通しが立ち、心身の負担を軽くできる
というメリットがあります。
とくに、家庭や仕事への影響が大きい方にとっては、「できるだけ早くこの問題を終わらせたい」という気持ちは自然なものです。時間をお金に換算するとどうかという視点も含めて、和解のメリットを考えてみる価値があります。
柔軟な金額・支払方法を決められる
判決になると、裁判所が「この金額を○○日までに支払え」と一方的に命じる形になります。支払い方法も原則一括払いです。
一方で、裁判上の和解では、当事者の事情を踏まえた柔軟な条件設定が可能です。例えば、
- 慰謝料の金額自体を、お互いが受け入れられるラインで調整する
- 一括が難しければ、月々いくらの分割払いにするかを話し合う
- ボーナス時期に多めに払うなど、支払スケジュールを工夫する
といったこともできます。
請求する側にとっては、「判決で高額な慰謝料を勝ち取っても、相手に支払能力がなければ結局回収できない」というリスクがあります。現実的に支払える範囲で和解をまとめる方が、トータルで見れば多く回収できるケースも少なくありません。
尋問などの精神的負担を避けられる
不貞裁判の中でも、本人尋問・証人尋問は当事者にとって精神的な負担が非常に大きい場面です。
- 夫婦関係のこと
- 不貞の経緯や回数
- 当時の気持ちやLINEのやりとりの詳細
といったプライベートな内容を、公開の法廷で第三者(裁判官・書記官・傍聴人)の前で話さなければなりません。
裁判上の和解で事件を終えれば、こうした尋問手続き自体が不要になります。とくに、
- 子どもや親族に事情を知られたくない
- 人前で詳しく話す自信がない
という方にとっては、和解の大きなメリットと言えるでしょう。
和解調書により強制執行がしやすくなる
すでに触れたとおり、裁判上の和解で作成される和解調書には確定判決と同じ効力があります。
そのため、相手が約束どおり慰謝料を支払わない場合には、
- 給与の差押え
- 預金口座の差押え
- 不動産などの差押え
といった強制執行の手続きをとることが可能です。
示談書だけしかない場合と比べると、「支払われなかったときにどうするか」という点で、裁判上の和解は非常に強力な武器になります。
請求する側にとっては、「多少金額を譲ってでも、和解調書という形で強制力のある約束を残しておきたい」という発想も十分あり得ます。
不貞裁判で和解するデメリット・注意点
判決ならもっと有利になった可能性とのトレードオフ
和解は「お互いが少しずつ譲り合って折り合いをつける」解決方法です。その性質上、
- 請求する側:
→ 判決まで行けば、もっと高い金額が認められた可能性がある - 請求された側:
→ 判決まで争えば、もっと低い金額で済んだ可能性がある
という面はどうしても残ります。
ただ、判決で有利な結論が出るかどうかは、最終的には裁判官の判断次第です。証拠の評価や夫婦関係の破綻の有無など、読みにくい要素も多くあります。
和解を検討するときには、
- 「どの程度までなら譲れるか」
- 「判決まで争うことで得られるかもしれない上乗せ分」と
- 「裁判を続けるコスト(時間・お金・精神的負担)」
を天秤にかけて考える必要がある、という点は意識しておきましょう。
支払能力がない相手との和解リスク
裁判で勝訴しても、相手に財産や収入がなければ、慰謝料の回収が難しいことがあります。これは判決でも和解でも共通する現実です。
とくに、
- すでに多額の借金がある
- 定職についておらず、収入が安定していない
- 財産を持っていない
といった相手と高額な和解をしてしまうと、和解調書はあるのに実際にはほとんど回収できないという結果になりかねません。
請求する側としては、和解に応じるかどうかを検討する前に、
- 相手の勤務先・収入状況
• 不動産や車などの名義
• 既存の借金の有無・金額
といった情報をできる限り把握しておくことが重要です。
逆に、請求された側としても、現実に支払える範囲を超えた金額で安易に合意してしまうと、のちほど支払いが行き詰まり、差押えや自己破産に追い込まれるおそれもあります。
一度合意した和解のやり直しの難しさ
裁判上の和解は、裁判所の手続の中で正式に成立するものです。そのため、
- 「よく意味が分からないままサインしてしまった」
- 「あとから考えたら不利な条件だった」
といった理由だけでは、原則としてやり直しはできません。
もちろん、極端な場合には、
- 相手にだまされていた(詐欺)
- 強迫されて無理やり署名させられた
などの事情があれば、和解の無効や取り消しが問題になる余地はありますが、裁判上の和解の場合にはそのようなケースに原則として当てはまりません。
ですから、裁判官や相手方から急かされる雰囲気があったとしても、
- 条件の意味をきちんと理解できているか
- 自分としてこの内容で本当に納得できるか
をよく確認したうえで、安易に合意しないことが大切です。少しでも不安があるときは、その場で即断せず、弁護士に相談してから判断する方が安全です。
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和解金額・条件の考え方とチェックポイント
ここからは、実際に提示された和解案をチェックするときの具体的なポイントを見ていきます。
- 「この慰謝料の金額は高いのか安いのか」
- 「分割払いの条件は現実的か」
- 「お金以外の条項に危ない内容が紛れ込んでいないか」
といった点を、一つずつ整理して確認していきましょう。
不貞慰謝料の相場と金額決定の要素
不貞慰謝料の金額は、「不貞をしたら必ずいくら」と決まっているわけではなく、次のような事情を総合的に見て判断されます。
- 婚姻関係への影響
離婚に至ったのか、それとも夫婦関係を継続しているのか。
一般的には、離婚に至ったケースの方が慰謝料は高くなりやすい傾向があります。 - 不貞の期間・回数・態様
短期間の一度きりの関係か、数年単位の継続的な関係か。
旅行・同棲など、関係の深さも考慮されます。 - 当事者の年齢・収入・生活状況
高額の慰謝料であっても、相手に支払能力がなければ現実には回収が難しいこともあります。 - 婚姻関係の破綻の有無
不貞行為の時点で夫婦関係がすでに破綻していたかどうか。
最高裁平成8年3月26日判決などでも、破綻していた場合には不貞相手への慰謝料請求が認められないとされています。 - 謝罪の有無や解決に向けた姿勢
早期に謝罪・示談に応じたか、あくまで争う姿勢を貫いているかなども、金額に影響しうる要素です。
和解で金額を決める際にも、裁判官はこれらの事情を踏まえた「この事件なら、このくらいが妥当」というおおまかなレンジを意識しています。
和解案の金額が、
- あなたの事件の事情と比べて極端に高すぎないか
- 相場感から見て不自然に低すぎないか
を、上記の要素と照らし合わせながら検討してみると良いでしょう。
分割払い・支払期限・遅延損害金の決め方
和解では、慰謝料を分割払いにする合意をすることもよくあります。
分割を認める場合には、次のような点を確認しておきましょう。
- 分割回数は現実的か
月々の支払額が少なすぎると、支払いが長期間にわたってしまい、請求する側の負担が大きくなります。 - 具体的な支払日が決まっているか
「毎月末日」「毎月25日」など、支払日をはっきり決めておくことが重要です。 - 遅れたときの取り扱い
一回でも遅れたら残額を一括で支払う「期限の利益喪失条項」や、遅延損害金の有無・率をどうするかなども検討します。 - ボーナス月の増額などの工夫
相手の収入事情に合わせて、ボーナス月に多めに払ってもらうなど、負担と回収のバランスを取ることも可能です。
請求する側としては、「早く・確実に払ってもらう」ことが一番の目的になります。
請求された側としては、「無理のない範囲で支払いを続けられるか」が重要です。
どちらの立場であっても、「数字だけ見て何となく決める」のではなく、
- 3年・5年など、支払いが続く期間
- その間の生活やライフイベント(子どもの進学など)
を具体的にイメージしながら条件を検討しましょう。
接触禁止・口外禁止など入れておきたい条項例
不貞裁判の和解では、お金の取り決めに加えて、
- これから先、互いにどう接するのか
- 周囲にどこまで話をしてよいのか
といった点についても条項を入れることが多くあります。
よく見られるのは、次のような内容です。
- 今後の接触禁止条項
当事者同士が今後一切連絡を取らない、一定の範囲で接触を避ける(職場が同じ場合など配慮した内容にする)といった約束。 - SNS・第三者への口外禁止条項
不貞の事実や和解内容について、SNSや友人・知人にむやみに話さないとする取り決め。 - 夫婦関係に介入しないことの確認
不貞相手が今後夫婦関係に干渉しないことを明文化する条項。
請求する側にとっては、
- これ以上不倫相手と関わりたくない
- 子どもや会社に広められたくない
という気持ちが強いことが多いでしょう。
請求された側にとっても、
- 今後トラブルを蒸し返されたくない
- SNSなどで名誉を傷つけられたくない
という意味で、双方にメリットのある条項になることもあります。
見直しが必要な危険な和解条件のパターン
和解案の中には、よく読むとかなり不利な内容が紛れ込んでいることがあります。
例えば、次のような条項がある場合は慎重に検討すべきです。
- 現実とかけ離れた高額の違約金条項
接触禁止や口外禁止に違反しただけで、慰謝料とは別に数百万円の違約金を支払うなど、過度に重いペナルティが設定されている。 - 生活を維持できないほどの一括払い・短期分割
請求された側にとって明らかに無理な条件で、支払いが破綻することがほぼ確実な内容。 - 将来のあらゆる請求を包括的に放棄させる条項
今後生じうる損害まで含めて一切請求できない、と広く書かれている条文。 - 内容が抽象的で解釈に幅がある条項
何をしたら違反になるのかが曖昧で、後から相手の解釈次第で不利に扱われる余地がある内容。
こうした条項は、専門家でなければ危険性に気付きにくいものも多く、焦ってサインしてしまうと取り返しがつかないこともあります。
和解案を受け取ったときには、
- 金額だけで判断しない
- 条文全体を読み、意味が分からない箇所はそのままにしない
ことを意識してください。少しでも不安があれば、合意する前に弁護士に見てもらうのが安全です。
和解すべきか/判決まで行くべきかの判断基準
ここまで見てきたように、不貞裁判での和解にはメリットもデメリットもあります。
最終的に
- 「和解する」のか
- 「判決まで行く」のか
を決めるのは、あくまであなた自身です。
ここでは、請求する側と請求された側それぞれの立場から、考えるべきポイントを整理します。
請求する側が考えるべきポイント
配偶者の不貞相手に慰謝料を請求している側としては、主に次のような点を考慮する必要があります。
- 不貞の証拠の強さ
ホテルの領収書や宿泊記録、SNSやLINEのやり取り、探偵報告書など、客観的な証拠がどれだけ揃っているか。 - 夫婦関係への影響
すでに離婚しているのか、修復を目指しているのか。
離婚に至っている場合は金額面でプラスになりやすい一方、精神的負担も大きくなりがちです。 - 相手の支払能力
職業・収入・財産状況などから見て、判決で高額が認められても実際に回収できる見込みがあるか。 - 裁判を続けることによる負担
仕事や子育てとの両立、通院等の事情など、半年〜1年以上裁判を続けることが現実的か。 - 感情面の整理と今後の生活
「白黒つけたい気持ち」と、「これ以上この問題に時間や気力を割きたくない気持ち」、どちらを優先するか。
これらを踏まえたうえで、
- 和解案が「自分の許容ライン」に入るか
- 判決まで行って得られるかもしれない上乗せ分と、裁判を続ける負担とのバランス
を冷静に考えてみることが大切です。
請求された側が考えるべきポイント
一方、不倫をして慰謝料を請求されている側としては、次のような視点が重要になります。
- 減額につながりうる事情の有無
不貞期間が短い、肉体関係がない、夫婦関係がすでに事実上破綻していた、謝罪や解決に向けた努力をしている…など。 - 既婚者であることを知っていたかどうか
本当に既婚者だと知らなかった場合には、慰謝料が大きく減額される、あるいは認められない可能性も理論上はあり得ます。 - 自分の収入・生活状況から見た支払可能額
現実に支払える範囲を大きく超える金額で和解してしまうと、その後の生活が立ち行かなくなるおそれがあります。 - 今後の仕事・家族への影響
破産などに追い込まれれば、仕事や家族への影響も無視できません。
和解である程度ダメージをコントロールする方が良い場合もあります。 - 裁判を続けることによる社会的なリスク
長期化することで、家族や周囲の人に知られる可能性が高まることへの懸念も考慮する必要があります。
請求された側としては、「とにかく少しでも安く」という考えになりがちですが、数字だけでなく、自分と家族の今後の生活も含めた全体像を見ながら判断することが重要です。
和解を検討するための簡易チェックリスト
最後に、「和解を前向きに検討した方がよいサイン」とも言えるポイントを、簡単なチェックリストとしてまとめます。
次の項目のうち、当てはまるものが多いほど、和解のメリットが大きい可能性があります(あくまで目安です)。
- 裁判が始まってから半年以上が経過し、精神的・時間的な負担が重くなってきている
- 裁判官の和解案が、自分の「最低限ここまであれば納得できる」というラインに近い
- 相手の収入や財産から見て、判決で上乗せを狙っても回収が難しそうだと感じている
- これ以上、尋問などでプライベートな話を掘り返されたくない
- 家族や仕事への影響を考えると、早く事件を終わらせたい気持ちが強い
- 裁判で争ったとしても、証拠の面で不安があり、「絶対に有利な判決が出る」とまでは言えない
- 条文をよく読んだうえで、金額以外の条件(接触禁止や口外禁止など)にも大きな問題はなさそうだと感じる
もちろん、チェックの結果だけで「必ず和解すべき」と決まるわけではありません。
ただ、感情に流されるのではなく、自分の状況を客観的に振り返る一つのきっかけにはなるはずです。
和解成立後に相手が支払わない場合の対応
「せっかく不貞裁判で和解までしたのに、相手が約束どおり払ってこない…」
残念ながら、こうした相談も少なくありません。
ここでは、和解後に支払いが滞った場合の基本的な対応の流れを確認しておきましょう。
和解調書に基づく強制執行の流れ
裁判上の和解で作成された和解調書は、確定判決と同じく強制執行のタイトルになります。
支払が滞ったときには、概ね次のような流れで差押えを検討することになります。
- 支払状況の確認と催告
入金状況を確認し、遅れている場合にはまず督促状や連絡で任意の支払いを促す。 - 強制執行の準備
給与や預金口座など、どの財産を差し押さえるのが効果的かを検討し、必要な情報・書類をそろえる。 - 裁判所への申立て
管轄の裁判所に差押命令の申立てを行い、和解調書の正本などを提出する。 - 差押えの実行
給与であれば勤務先、預金であれば銀行等に差押命令が送達され、一定の範囲内で回収が図られる。
強制執行の手続きは、法律や実務のルールが細かく定められており、専門的な判断が必要になる場面も多いため、実際に行う場合には弁護士に相談することをおすすめします。
差押えを成功させるための情報収集
強制執行を行う際に重要になるのが、「相手の財産に関する情報」です。
和解の時点から、次のような情報を把握しておくと、いざというときに差押えを行いやすくなります。
- 相手の勤務先(会社名・所在地)
- 相手が主に使っている銀行名・支店名
- 不動産(自宅など)の有無と所在地
- 車両など高額な動産の有無
もちろん、これらの情報は違法な手段で取得してはいけません。
和解交渉の中で相手から聞き取ったり、既に把握している範囲で整理しておくイメージです。
情報が十分にない場合でも、弁護士を通じて財産開示手続などを検討できることもありますので、支払いが滞った段階で一度相談してみるとよいでしょう。
【H3-8-3】無資力の場合の現実的な対応策
強制執行をしても、
- 差し押さえられるだけの給与がない
- 預金残高がほとんどない
- 差し押さえるべき財産自体が見つからない
といったケースでは、実際にはほとんど回収できないこともあります。
そのような場合の対応としては、例えば次のようなものが考えられます。
- 和解条件の見直しを打診する
月々の支払額を減らし、その分支払期間を延ばすなど、現実的な条件に組み替えを提案する。 - 一定額での一括清算を検討する
今後の支払いをすべて免除する代わりに、手元にある範囲での一括払いを受けるなど、「落としどころ」を探る。 - これ以上の回収を求めず、一定程度で区切りをつける
費用対効果やご自身の心身の負担を考え、あえて強制執行を続けない決断をする。
「判決や和解調書さえあれば必ず全額回収できる」というわけではありません。
どこまで回収を目指すのか、どこで区切りをつけるのかも含めて、トータルで見たときに自分にとってベストな選択は何かを考えることが重要です。
不貞裁判の和解で弁護士に相談した方がよい場面
不貞裁判で和解を検討している方の中には、
- 「今さら弁護士に相談してもいいのだろうか」
- 「全部丸投げしないといけないのでは?」
と迷っている方も少なくありません。
ここでは、特に弁護士への相談を強くおすすめしたい場面を挙げておきます。
裁判官の提示する和解案が妥当か分からないとき
裁判官から具体的な和解案が提示されると、「裁判官が言うなら従うべきなのかな…」と感じてしまいがちです。
しかし、裁判官の和解案はあくまで
「この事件なら、このくらいでまとまれば妥当」という一つの提案
にすぎません。
- あなたの事情からすると、もっと有利な条件を目指せるのか
- 逆に、これ以上争うと不利な展開になるリスクはないのか
といった点は、和解案だけを見ても分かりにくいものです。
弁護士であれば、
- これまでの裁判の経過
- 提出されている証拠
- 不貞慰謝料に関する一般的な相場感
などを踏まえて、その和解案が妥当なラインかどうかについて、一定の見立てを示すことができます。
相手だけに弁護士が付いている/一人で対応しているとき
相手方には弁護士が付いているのに、自分は一人で対応しているというケースもよくあります。
このような状況では、
- 法律知識や交渉力に大きな差がある
- 和解条項の意味を十分理解しないままサインしてしまうリスクが高い
といった不安があります。
- 弁護士が作った和解案の文言の意味が分からない
- こちらからどのような条件を提案すればいいか見当がつかない
という場合には、一度あなた側も弁護士に相談し、対等な立場で交渉を進められるようにしておくことが大切です。
和解書案のチェックや条件交渉を任せたいとき
「裁判全体を最初から最後までお願いする」という形だけでなく、
- 和解案が出てからピンポイントで相談する
- 和解条項のチェックや交渉のサポートだけ依頼する
といった関わり方も可能です。
例えば、次のようなニーズに弁護士が対応することができます。
- 和解書案をチェックし、危険な条項や改善すべき点を指摘してほしい
- 和解条件の相場感を踏まえて、どこまで譲れるか一緒に整理してほしい
- 裁判所での和解の場に同席し、相手方や裁判官とのやり取りを任せたい
不貞裁判の和解は、一度合意するとやり直しが難しい重要な局面です。
「ここだけは失敗したくない」というポイントで弁護士の力を借りるのは、とても合理的な選択と言えるでしょう。
現在の裁判案件に関する相談や和解書案のチェックは有料となりますが、弁護士費用は有料相談で1~3万円、書面チェックで5~10万円程度です。数十万円から数百万円の慰謝料に関する重要な裁判なので費用をかけても弁護士を利用する方が安心です。
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まとめ:不貞裁判の和解は「妥協」ではなく選択肢の一つ
最後に、不貞裁判における和解についてのポイントを整理します。
不貞裁判の多くが和解で終わるという現実
不貞を理由とする慰謝料裁判は、実務上、判決まで行かずに和解で終わるケースが多数を占めています。
- 慰謝料の金額を中心に、一定の幅の中で折り合いをつけやすい
- 判決まで進めると、時間・費用・精神的負担が大きい
- 尋問でプライベートな内容を話す負担を避けたいニーズが強い
こうした事情から、和解は特別な例外ではなく、ごく一般的な解決方法の一つだと考えて差し支えありません。
和解は「妥協」ではなく戦略的な選択肢
和解というと、「途中であきらめる」「妥協する」というイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、本記事で見てきたように、和解には
- 早期解決により、時間・費用・精神的負担を抑えられる
- 金額や支払方法を、判決よりも柔軟に決めることができる
- 和解調書により、支払われない場合は強制執行も視野に入れられる
といった大きなメリットがあります。
一方で、
- 判決ならもっと有利な結果が出たかもしれない可能性
- 感情面での「白黒つけたい」気持ちとのギャップ
- 不利な条項を飲んでしまうリスクや、やり直しの難しさ
といったデメリット・注意点も見逃せません。
和解は、「勝ち負け」だけでなく、
- これからの生活
- 家族との関係
- 自分の心身の状態
も含めて、トータルで見たときのベストに近い選択肢を探るための手段だと位置づけるとよいでしょう。
迷ったときは一人で抱え込まないことの重要性
不貞裁判の和解は、金額も条件も一つひとつの判断が重い局面です。
その一方で、
- 裁判所や相手方のペースで話が進んでしまう
- 和解案に対して返事を求められる期限が迫ってくる
といった状況の中で、一人で悩み続けてしまう方も少なくありません。
- 和解するかどうか、自分だけでは決めきれない
- 提示された和解案が妥当かどうか判断できない
- 条文の意味が分からず、このままサインしてよいのか不安
このようなときには、一度弁護士に相談して、第三者の視点を入れてみることをおすすめします。
あなたの事情や希望を踏まえて、和解のメリット・デメリットを一緒に整理していくことで、納得のいく決断に近づきやすくなります。
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