はじめに:この記事で扱う「回避」とは何か
不倫(不貞)を理由に慰謝料を請求されると、「できれば払わずに済ませたい」「そもそも支払う必要があるのか分からない」と不安になりますよね。この記事を読めば慰謝料の回避に関するすべてが理解できます。
- 不倫(不貞)を理由に慰謝料を請求されたが、**不倫 慰謝料 回避(支払義務なし)**が狙える条件を知りたい
- 相手がどんな証拠を持っているか分からず、まず何から確認すべきか整理したい
- 無視・直談判・署名などで一気に不利になりたくない(初動のNGを先に押さえたい)
- 「回避が無理そうなとき」に、次に何へ切り替えるべきか判断基準を知りたい
この記事でいう 「回避」 とは、気合いや交渉術で踏み倒すことではなく、法律上「支払義務が生じない(慰謝料を負担しない)」といえる状況を押さえ、適切な対応でその結論に持っていくことを指します。つまり、争点はつねに「事実」と「証拠」です。
一方で、回避を狙うほど 初動のミスが致命傷になりやすいのも事実です。たとえば、焦って相手に連絡を返し続けたり、言われるがまま書面にサインしたり、話し合いの場で不用意に認めてしまったりすると、あとから修正するのは簡単ではありません。
そこで本記事では、まず最初に「回避できる可能性があるか」をYes/Noで判断する順番を示し、そのうえで回避の可否を左右するポイント(立証の考え方、反論の組み立て、やってはいけない対応)を整理します。
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

Contents
慰謝料請求された事案の無料法律相談実施中!
- 0円!完全無料の法律相談
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- お問合せは24時間365日受付
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- 全国どこでも対応いたします
結論先出し:慰謝料を回避できるかはこの順番で決まる(Yes/No判定フロー)
不倫 慰謝料 回避を考えるとき、検討の順番を間違えると遠回りになります。結論としては、次の順番で「支払義務なし」を狙える可能性を判定するのが安全です。
- ① 相手は「不貞(肉体関係)」を立証できそうか
- ② あなたに「既婚者だと知っていた/気づけた(故意・過失)」といえるか
- ③ 不倫前から「婚姻関係が破綻していた」といえる客観事情があるか
- ④ 時効(起算点・援用)の見込みはあるか
- ⑤ 証拠の強弱を踏まえ、反論の組み立てで崩せる部分があるか
ここからは、各ステップで「何を見ればよいか」「どこで落とし穴があるか」を、必要最低限に絞って説明します(詳細要件は別記事で扱います)。
STEP1 不貞(肉体関係)の立証ができるか
最初の分岐はとてもシンプルで、相手が 「不貞(肉体関係)」を証拠で示せるかです。
- NO(立証が難しい):回避の可能性が上がります
- YES(立証が強い):次のSTEPへ(別の条件で回避できるか/難しければ次善策へ)
ここで大事なのは、「肉体関係はない」と言い張ることそのものではなく、相手が何を証拠として出してくるかです。典型的には、ホテル出入り写真、宿泊記録、やり取りの内容、当事者の発言、同居家族の把握状況などが絡みます。
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STEP2 既婚性の認識(故意・過失)があるか
仮に交際があっても、あなたが 相手を既婚者だと知らず、かつ注意しても気づけなかったといえるなら、回避の余地が出ます。逆に、「知らなかった」と言っても、状況次第では **“気づけたはず(過失あり)”**と判断されることがあります。
- NO(故意・過失なしといえそう):回避の可能性が上がる
- YES(既婚と知っていた/気づけた事情が強い):次のSTEPへ
この論点は、あなたの主観だけで決まりません。交際の経緯、相手の説明、生活実態、あなたが確認したかどうかなど、外形的な事情が重要です。ここは言い方を誤ると不利になりやすいので、安易な断定は避けましょう。
STEP3 婚姻関係の破綻を言えるか
「夫婦関係はもう終わっていたと聞いていた」「別居していたらしい」という事情があっても、破綻の主張は簡単には通りません。ポイントは、あなたの認識ではなく、客観的に婚姻関係が破綻していたといえる事情が揃うかです。
- YES(破綻を裏付ける事情が強い):回避の可能性が上がる
- NO(同居・交流があり、破綻の客観証拠が弱い):次のSTEPへ
よくある誤解として、「夫婦仲が悪い=破綻」と思い込むケースがあります。しかし実務では、別居の期間、生活の分離、離婚協議の進捗など、かなり“形”が求められがちです。
STEP4 時効(援用・起算点)の見込み
慰謝料請求には時効が問題になることがあります。ただし、ここで注意すべきは「3年だから終わり」といった単純な話ではない点です。現実には、次の2つが核心になります。
- 起算点:いつから時効のカウントが始まるのか(いつ“知った”扱いになるのか)
- 援用:時効は、黙っていても自動的に成立するのではなく、原則として「時効を主張する」対応が必要になる
時効を狙えるかどうかは、当事者の発言や書面の書き方で不利になり得ます。焦って相手に説明しすぎないことが重要です。
STEP5 証拠の強弱と“反論の組み立て”で勝負が決まる
ここまでのSTEPで「回避の芽」が見えても、最後に大事なのは **“反論の設計”**です。回避に近づく対応は、ざっくり言うと次のセットで出来ています。
- 相手の主張を、要素ごとに分解する(不貞/認識/破綻/時効 など)
- 相手が出している証拠の意味を読み替える(何を立証していて、何が立証できていないか)
- 自分の説明を一貫させる(後から変わると不利になりやすい)
「とにかく否定」よりも、「争点を外さない反論」を積み上げたほうが、結果として回避に近づくことがあります。
不倫慰謝料の支払い回避が問題になる場面(請求の典型パターン)
不倫を理由とする慰謝料の話は、多くの場合、次のような流れで進みます。あなたが今どの段階にいるかで、取るべき対応も変わります。
- 段階1:連絡・警告が来る(LINE/メール/電話など)
感情的な文面で高額請求を告げられることもあります。ここで慌てて言い返したり、会いに行ったりすると不利になりがちです。 - 段階2:書面で請求される(内容証明など)
相手の主張が整理され、金額・期限・条件が書かれることがあります。回避を狙うなら、まず「何を根拠に請求しているのか」を読み解く必要があります。 - 段階3:示談交渉に入る
回避(支払義務なし)を主張するなら、争点(不貞の立証、故意過失、破綻、時効など)を外さずに、書面や回答の筋を通すことが重要です。 - 段階4:交渉決裂→訴訟提起(裁判)
訴状が届いたら、放置は危険です。反論や証拠の出し方で結果が大きく変わります。
この流れのなかで、回避が最も難しくなるのは「不用意な言動で争点が固まった後」です。たとえば、会話やメッセージで肉体関係を認めてしまったり、既婚性を知っていた事実が確定したり、時効の起算点になり得る事情を自分から言い過ぎたりするケースです。
だからこそ、次章では「回避できる5つの条件」を確認しつつ、各条件で 実務上どこが勝負(何をどう証明し、どう反論するか) になるのかを押さえていきます。
不倫慰謝料の支払いを回避できる「5つの条件」:結論+実務上のハードル
不倫 慰謝料 回避(支払義務なし)を狙えるかどうかは、結局のところ「条件に当てはまうか」だけでなく、その条件を“事実と証拠”で支えられるかで決まります。
まずは全体像として、回避が問題になる代表的な条件は次の5つです。
- 条件① 肉体関係がない(不貞不成立)
- 条件② 既婚者だと知らなかった(故意・過失なし)
- 条件③ 不倫以前に婚姻関係が破綻していた(破綻抗弁)
- 条件④ 時効が完成している(起算点+援用)
- 条件⑤ 相手が不貞を立証できない(証拠が薄い)
ここから先は、各条件の「細かい要件」ではなく、**回避を現実に近づけるための実務上のハードル(何が争点になり、どこで崩れやすいか)**を中心に説明します。要件や裁判例の掘り下げは、別記事で詳しく解説しています。
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条件① 肉体関係がない(不貞不成立)—ポイントは“線引き”より“立証の攻防”
不倫慰謝料は、基本的に「不貞行為(性交渉)」があったことを前提に議論が進みます。つまり、肉体関係がないなら、回避の可能性が上がるのは確かです。
ただし実務では、「肉体関係の有無」をめぐって次のような攻防が起きます。
- 相手は“直接証拠”がなくても、周辺事情を積み上げて立証しようとする
例:ホテル出入り写真、宿泊の領収書、深夜帯の滞在、LINEのやり取り、会う頻度など。 - こちらの不用意な発言が“自白”扱いされるリスクがある
電話での会話やメッセージでの曖昧な認め方でも、後から争いづらくなることがあります。 - 「肉体関係はない」主張は、説明がブレると一気に弱くなる
会った回数や場所、時間帯などを、その場しのぎで変えると信用性を落としがちです。
この条件で大事なのは、単に「ありません」と言うことではなく、相手の主張が何を証明しようとしているのか(何が証明できていないのか)を見抜いて、説明の一貫性を守ることです。
肉体関係の判断枠組みや「どこから不貞か」の詳細は、別記事(例:「不貞行為の定義はどこから?」)で確認してください。
条件② 既婚者だと知らなかった(故意・過失なし)—「知らなかった」だけでは足りない
「相手が既婚者だと知らなかった」は、回避の可能性が出る代表的な事情です。しかし、ここでつまずきやすいのが、法律上は **“知らなかった”だけで終わらず、「注意すれば気づけたか(過失)」**が問題になりやすい点です。
実務上のハードルは、次の2つに集約されます。
- 相手が“既婚を隠した言動”をしていたか(あなたが誤信した合理性)
何を言われ、どんな状況で信じたのかが重要になります。 - あなたが“既婚に気づけるサイン”を見落としていないか(過失の有無)
生活実態・連絡の取り方・会える時間帯・身辺情報など、外形的事情から「気づけたはず」と反論されることがあります。
この論点は、言い方を間違えると不利になりやすいので注意してください。たとえば「まったく疑わなかった」と言い切った後に、実は不自然な事情が出てくると、全体の信用性が落ちます。
具体的にどのような事情が「過失あり/なし」に傾くかは、別記事(例:「既婚者と知らなかったのに慰謝料請求されたときの対応方法」「不貞行為についての故意・過失とは」など)で詳しく確認してください。
条件③ 婚姻関係が破綻していた(破綻抗弁)—“客観事情”が鍵で、ハードルは高め
「夫婦関係はもう終わっていたと聞いていた」「別居していたらしい」という話を聞くと、回避できそうに思えるかもしれません。ですが、破綻抗弁はよく主張される一方で、通すのは簡単ではありません。
実務上のハードルはここです。
- 「破綻していた」は“あなたの感想”では足りない
裁判や交渉では、別居期間、生活の分離、離婚協議の状況など、客観的事情が重視されがちです。 - 「婚姻関係が冷えていた」程度だと押し返されやすい
揉めていた・会話が少ない、というだけでは破綻と評価されないことも少なくありません。 - 相手(配偶者側)は“破綻していない証拠”を出してくることがある
同居、家計の一体性、夫婦としての行動、家族イベントなどを持ち出されると主張が難しくなります。
この条件で回避を狙うなら、最初から「破綻」を前提に強く出すより、客観事情を整理して、通る見込みがあるか冷静に見極めることが重要です。
破綻の判断基準や典型例は、別記事(例:「婚姻関係が“破綻”していたら慰謝料請求はできない?」)で確認してください。
条件④ 時効(援用・起算点)—「3年だから終わり」は危険
時効を理由に回避できるケースはありますが、ここは誤解がとても多いです。実務的に押さえるべきポイントは次の2つです。
- 起算点:いつから時効が始まるか(いつ「不貞と相手」を知った扱いになるか)
「いつ発覚したか」「いつ相手を特定したか」で争いになることがあります。 - 援用:時効は“黙っていれば自動で勝てる”ものではない
一般に、時効を主張する意思表示(援用)が必要で、タイミングや伝え方も重要です。
時効を狙える場面でも、相手とのやり取りで不用意に話しすぎると、起算点に関する争点が不利に固まることがあります(例:発覚時期を自分で確定させてしまう等)。まずは事実関係を整理し、どの時点を起算点として争うのかを慎重に組み立てる必要があります。
時効の基本(期間・起算点・援用)と実務上の注意点は、別記事(例:「慰謝料の請求期限は3年?時効のカウント開始と例外ケースを解説!」)で詳しく確認してください。
条件⑤ 相手が不貞を立証できない(証拠が薄い)—“否認”ではなく“反論設計”
回避の現場では、「相手が証拠を持っていない/弱い」ことが決定打になることがあります。とはいえ、ここでやりがちなのが 「証拠ないでしょ?」と強く出て、相手を刺激して証拠収集や訴訟に踏み切らせるパターンです。
この条件での実務上のハードルは、次のとおりです。
- 相手の“言い分(主張)”と“証拠”を切り分ける
主張が強くても、立証できなければ裁判では通りにくいことがあります。 - こちらの説明を「崩しづらい形」に整える
会った事実がある/やり取りがある場合でも、何を認め、何を争うかを整理し、説明を一貫させます。 - 反論は“争点別”に組み立てる
不貞の有無、既婚性の認識、破綻、時効などを混ぜると説得力が下がりがちです。それぞれの争点毎に反論を整理しましょう。
証拠の種類(写真・LINE・ホテル・探偵報告書など)と、裁判での評価のポイントは、別記事(例:「不倫の証拠はどこまで使える?」「不貞行為の有無を裁判で争う方法について解説」)もあわせて確認してください。
ここまでが「回避できる5つの条件」と、各条件で現実に勝負になる“実務上のハードル”です。次の章では、回避を狙うほど重要になる **「やってはいけないNG対応」**を先に押さえ、取り返しのつかない失点を防いでいきます。
回避を狙うときほど「やってはいけないNG対応」(事故予防)
不倫 慰謝料 回避(支払義務なし)を狙う場面では、条件論より先に**「失点しないこと」**が重要です。
なぜなら、回避の可否は「証拠」と「説明の整合性」で決まるのに、NG対応をすると 自分で不利な証拠を作ったり、争点を固めたりしてしまうからです。
・相手からの連絡・書面を無視する
・直接会う/電話で長時間話す(録音・脅し・自白リスク)
・示談書・誓約書・合意書に、弁護士確認なしでサインする
・その場しのぎで話を変える/認めたり否定したりブレる
ここでは、特に相談が多い3点(無視・直談判・署名)を、なぜ危険なのかまで含めて整理します。
無視がNGな理由:交渉せずに裁判が進む
「身に覚えがない」「証拠がないはず」「相手が感情的で怖い」などの理由で、連絡を無視したくなる気持ちは分かります。
ただ、無視を続けると次のリスクが一気に上がります。
- 相手が交渉を飛ばして訴訟に移行しやすくなる
「話し合う気がない」と受け取られると、裁判で決着をつけようとする心理になりがちです。 - 訴状が届いた後に対応しないと、不利な形で判決が出ることがある
答弁書を出さない・期日も欠席する、といった対応をしてしまうと、相手の主張が通りやすくなります。 - 判決が確定すると、差押えなど強制執行のリスクが現実化する
「相手の言い分どおりの金額」で確定してしまうと、後から争うのは難しくなります。
ポイントは、「すぐに詳しい説明をする必要はないが、放置はしない」ということです。
受領したことは前提にしつつ、争点(不貞の有無/既婚性の認識/破綻/時効)を整理する時間を確保するほうが、回避に近づけます。
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直接会う・電話で詰めるのが危険な理由
不倫慰謝料のトラブルでは、「誠意を見せたいから会う」「その場で話せば解決するかも」と思ってしまいがちです。
しかし、回避を狙うなら直接対応はデメリットが大きいことが多いです。
- 感情のぶつけ合いになりやすく、発言がブレる
回避の主張は“整合性”が命です。強い口調で責められると、つい余計なことを言ってしまいがちです。 - 録音・録画で「認めた」ように切り取られるリスクがある
謝罪や曖昧な言い回しが、「不貞を認めた」趣旨に使われることがあります(言い方は慎重に)。 - その場で書面への署名を迫られることがある
「今日サインしないなら会社に言う」などと圧をかけられるケースもあります。
連絡手段は、基本は書面(メール・郵便)中心にして、争点を外さず冷静に進めるのが安全です。
どうしても電話対応が必要なら、先に要点を紙にまとめ、“答えないこと(保留すること)”も決めておくと事故が減ります。
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示談書・誓約書にサインする前に最低限見るべき条項
相手が提示する書面(示談書・誓約書・合意書)は、内容次第で回避がほぼ不可能になります。
特に危ないのは、サインにより「不貞を認めた」前提の書面が完成してしまうことです。
サイン前に最低限チェックしたい観点は、次のとおりです。
- 事実の記載(あなたが認めていない事実が書かれていないか)
「肉体関係を認める」「既婚と知っていた」など、争点に直結する文言は致命傷になります。 - 金額と支払条件(一括か分割か、期限、遅延損害金)
支払方法の条件が厳しすぎると、別のトラブルに発展します。 - **清算条項(これ以上請求しない)**の有無
合意後の追加請求を防ぐ核です。 - 違約金条項(金額が過大/発動条件が広すぎないか)
「少しでも連絡したら〇〇万円」など、現実離れした違約金はリスクになります。 - 接触禁止条項の範囲(職場・SNS・共通の場など)
生活上守れない条件が入ると、違反リスクが残ります。 - 守秘・口外禁止(どこまで話してよいのか)
家族や弁護士への相談まで制限するような書き方は要注意です。
「一度サインした書面」は後からひっくり返しづらいので、“持ち帰って確認する”が基本です。
回避の芽があるかどうかの判断も含め、早めに弁護士に相談する価値が高い場面です。
「証拠を残さない」をどう扱うべきか:実務上の危機管理と落とし穴
回避を考える人の多くが気にするのが「証拠」です。
ただし、ここで誤解してほしくないのは、“証拠を消せば回避できる”という話ではないという点です。
- 端末から消しても、相手側の端末・スクショ・バックアップ等で残っていることは珍しくありません。
- 請求後にメッセージ削除などをすると、相手の怒りを強め、交渉がこじれることもあります。
- 争いになっている以上、やるべきは「消すこと」よりも、“これ以上不利な証拠を増やさない”ことです。
相手の端末に不正アクセスする、盗み見する、アプリで盗聴するといった行為は絶対にしないでください(別の法的トラブルになります)。
請求が来た後に、慌てて履歴を消したり改ざんしたりすると、かえって不利に働くことがあります。
“証拠になりやすいもの”の整理(まず全部を把握する)
不倫慰謝料の場面で「証拠」として問題になりやすいのは、必ずしも探偵写真だけではありません。典型例を押さえておくと、争点の見立てがしやすくなります。
- メッセージ:LINE・SNS・メールの文面、送受信の頻度、スタンプの内容
- 画像・動画:ツーショット、ホテル前後、車内、画面キャプチャ
- 位置・移動:GPS、位置情報共有、タグ付け、移動履歴
- 支払い:クレカ明細、ICカード、領収書、ホテルや飲食の予約履歴
- 第三者情報:同僚・友人の目撃、SNS投稿、家族の把握
- 当事者の発言:電話の録音、謝罪文、書面の署名、SNSでの投稿
「自分には証拠がないはず」と思っていても、相手側がどこから情報を集めているかは分かりません。最終的には不倫発覚まで証拠がなくても、不倫当事者の一方が自白をすれば「当事者の発言」という証拠が出てくることになります。
「証拠がない」と思い込まず、まずは、“どれが存在し得るか”を冷静に棚卸しするのが先です。
やりがちな失敗:消したつもりが別ルートで残る
証拠の話でよくあるのが、「消したから大丈夫」と思い込むパターンです。
実際には、次のような理由で“消しても残る”ことが多いです。
- 相手側がすでにスクリーンショットを取っている
- PC・クラウド・バックアップに残っている
- 相手の端末側に会話履歴が残っている
- 消した行動自体が疑いを強め、調査や訴訟の引き金になる
回避を狙うなら、焦って操作するよりも、「相手が何を握っているか(証拠の提示があるか)」を見極めることのほうが重要です。
回避を遠ざける行動(証拠隠滅と疑われる/新しい不利証拠を作る)
回避の局面で本当に怖いのは、証拠そのものよりも、あなたの行動が“悪質”と評価される方向に転ぶことです。次の行動は特に注意してください。
- 請求後に、相手への連絡を繰り返してしまう(脅し・口止め・暴言などが残る)
- 相手の要求に流されて、事実関係が確定する書面にサインしてしまう
- その場しのぎの説明で話を変え、後から矛盾が出る
- 相手や不倫相手に「証拠を消して」と依頼し、やり取り自体が新しい証拠になる
一方で、あなた自身を守るためにやっておきたいのは、**「相手から来た資料・連絡を保全する」**ことです。
- 内容証明・封筒・同封書面は保管する
- 受け取った日時、連絡の頻度、相手の要求内容をメモする
- 脅迫的な文面があるなら、スクショ等で保存する
この整理ができると、回避(支払義務なし)の主張を組み立てる場合でも、減額に切り替える場合でも、判断が格段にしやすくなります。
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回避が難しいときは「減額・支払い条件の設計」に切り替える
「支払義務なし(0円)」を狙えるなら徹底的に検討すべきです。一方で、立証状況や相手の出方によっては、回避に固執するほどリスクが上がるケースもあります。
「回避が厳しい」サイン
次の事情がそろうほど、回避(支払義務なし)の成功確率は下がります。
- 肉体関係をうかがわせる証拠(ホテル出入り写真・同泊の記録・具体的な自白のLINE等)が揃っている
- 相手が既婚者であることを知っていた/知り得た事情が濃い(SNS・指輪・同居の話など)
- 婚姻関係の破綻を裏付ける客観資料が乏しい(別居の実態・婚姻費用・調停の経過などが弱い)
- 時効の主張をするには「発覚時期・相手特定時期」の説明が難しい
- 相手に代理人弁護士が就いていて、主張が固まっている
次善策:減額・分割など「条件設計」でダメージを抑える
回避が難しいと判断したら、早めに“戦場”を切り替えた方が結果的に得をすることがあります。具体的には、次の3点を最短で整えるのが基本です。
- ① 相手の請求根拠(証拠・主張・金額算定)を把握する
- ② こちらの落とし所(上限額・一括/分割・接触禁止条項の線引き)を決める
- ③ 署名前に「条項レビュー」を入れる(清算条項・違約金・求償など)
減額交渉の具体策は、当サイトの「不倫慰謝料の減額」系の記事で詳しくまとめています(本記事では概要に留めます)。また、支払い方法(分割・借入など)を詰めたい場合は「払えないときの支払方法」系の記事、合意書の事故を防ぎたい場合は「示談書マニュアル(テンプレ付き)」の記事も合わせて確認してください。
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裁判例でみる「回避ライン」と実務上のヒント
ここでは、回避(支払義務なし)を判断するときに参考になる裁判例を3つ紹介します。数を並べるより、事実関係が具体的なものを選びました。
婚姻関係の破綻は「別居した」だけでは足りない(最高裁平成8年3月26日判決)
婚姻関係破綻の抗弁(破綻していたので不法行為にならない/責任が軽い)を考えるとき、代表例として引用されるのが最高裁平成8年3月26日判決です。
この事案では、夫婦関係が長年悪化し、別居調停申立ても行われ、さらに夫が別居を固めて自宅を出てマンションへ転居しています。その後、夫はスナックで知り合った女性と交際を深め、別居後に肉体関係を持ち、同棲に至り、子の出生・認知まで進んでいました。
実務上の示唆はシンプルで、**破綻は「気持ち」ではなく「客観的な経過」**で見られる、という点です。別居年数、調停や協議の履歴、生活費の流れ、同居実態など、第三者が見ても「婚姻共同生活が戻らない」と分かる材料が必要になります。
「既婚者と知らなかった」で回避できるのは“特殊事情”があるとき(東京地裁平成23年4月26日判決 ほか)
既婚者だと知らなかった(故意・過失なし)で回避したい場合、重要なのは「なぜ気づけなかったのか」を客観的に説明できるかです。
東京地裁平成23年4月26日判決では、お見合いパーティーで知り合った男性が、氏名・年齢・住所・学歴まで偽り、一貫して独身のように振る舞っていたという事情があり、女性側の故意・過失が否定されました。
一方で、東京地裁平成19年4月24日判決では、相手男性が「バツイチ」と説明していたため故意は否定されたものの、「単純に信じた」点が不注意として評価され、過失が認められたとされています。
つまり、「独身だと聞いた」だけでは足りず、だまされ方/確認可能性/交際の状況などで結論が分かれやすい領域です。
時効の起算点は簡単には判断できない(最高裁平成31年2月19日判決)
時効(消滅時効・援用)の主張は、回避の中でも強力ですが、起算点の考え方で事故が起きやすい論点です。
最高裁平成31年2月19日判決では、不貞発覚から3年を経過した後に「離婚したこと」を理由に不貞相手へ慰謝料請求した事案で、最高裁は請求を認めませんでした(特段の事情がない限り、第三者が“離婚させたこと”自体の責任を負うとはいえない、という整理)。
時効の主張と言っても意外な論点があり、漠然と「3年経過しているから回避できる」と思い込むと大きな落とし穴があることが分かる判例です。
よくある質問(FAQ)
- 「回避」と「拒否」は同じですか?
- 実務上は近い意味で使われますが、この記事では「回避=支払義務なし(0円)が狙える状態を作る/維持する」として扱っています。拒否は、そのための主張(不貞不成立・故意過失なし・破綻・時効など)を前面に出して“ゼロ”を取りにいくイメージです。
- 既婚者と知らなかったと言えば、回避できますか?
- 口で言うだけでは足りません。「なぜ気づけなかったのか」「普通に注意しても分からなかったのか」を裏付ける事情が必要です。LINEのやり取り、相手の説明の一貫性、会う時間帯・場所、周辺事情などを整理してから主張を組み立てましょう。
- 別居していれば、婚姻破綻で回避できますか?
- いいえ。別居は重要な事情ですが、それだけで自動的に破綻が認められるわけではありません。別居に至る経緯、期間、生活の実態など“総合評価”になります。
- 相手が「証拠はある」と言います。見せないなら無視していい?
- 無視はおすすめしません。証拠の有無は別として、沈黙は「反論できない」と受け取られやすく、手続きが進むと止めづらくなります。まずは請求内容(根拠・証拠の種類)を確認し、こちらも不用意な自白や断定を避けつつ、反論方針を整えるのが安全です。
- 時効は“勝手に”成立しますか?
- 勝手にゼロになるわけではなく、原則としてこちらが時効を主張(援用)して初めて効いてきます。起算点も揉めやすいので、時効を軸に回避を狙うなら早めに専門家へ相談した方が安全です。
- 回避が難しそうなとき、いつ減額へ切り替えるべき?
- 決定的な証拠が揃っている/こちらの主張が客観資料で支えられない/相手の姿勢が硬い、というときは、長期戦にするほど条件が悪化しやすいです。早い段階で「落とし所(上限額・支払方法・条項)」を作る方が、結果的に負担が小さくなることがあります。
まとめ|「条件を満たす」より“証明できるか”が勝負
不倫慰謝料の回避(支払義務なし)を狙うなら、結局は条件の当てはめではなく、証拠と立証の組み立てで決まります。
- 回避は「不貞の立証」「故意・過失」「婚姻破綻」「時効」の順に潰していくと判断がブレにくい
- 条件は知っていても、実務では「何で証明するか」が一番難しい
- 回避が厳しいと感じたら、減額・支払い条件・示談条項の設計に早めに切り替える方が安全なこともある
回避できるかの見立ては、事実関係の整理だけで大きく変わります。請求額が大きい、相手が弁護士を立てている、書面への署名を急かされている——こうした状況なら、早めに弁護士へ相談し、回避か減額かの方針を固めてから動くのがおすすめです。
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