マッチングアプリ経由の不倫は、相手が匿名になりやすく、やり取りが消えやすいこともあって「証拠」と「身元特定」でつまずきがちです。一方で、慰謝料のルール自体は“アプリだから特別”というものではありません。
この記事では、次の疑問に答えます。
- アプリで出会った相手でも、慰謝料は発生するのか
- やり取りのスクショは証拠になるのか/足りないのは何か
- 相手が匿名で名前も住所も分からないとき、どう進めるのか
- 逆に請求された側は、まず何を確認してどう反論するのか
- 示談で再燃しないために、最低限入れるべき条項は何か
不貞慰謝料は、主に「不貞行為の有無」「婚姻関係への影響」「当事者の認識(故意・過失)」「証拠の強さ」などを軸に判断されます(結論は個別事情で変わります)。
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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マッチングアプリ経由でも慰謝料は請求できる?結論と前提
結論として、出会いがマッチングアプリでも、不貞行為(肉体関係)があれば慰謝料が発生し得ます。法律上は「どこで出会ったか」よりも、次のポイントが重要です。
- 配偶者がいる人が、配偶者以外と肉体関係を持ったか(不貞行為)
- その結果として、配偶者が精神的苦痛を受けたといえるか
- 不倫相手(アプリ相手)に、既婚と知っていた(または注意すれば分かった)といえるか
つまり、配偶者(請求する側)から見ると、請求先は一般に次のどちらもあり得ます。
- 不貞をした配偶者(夫・妻)
- 不倫相手(アプリで知り合った相手)
ただし、アプリ不倫でとくに揉めやすいのは次の2点です。
1)「肉体関係があったか」の立証が弱い(チャットはあるが決定打がない等)
2)相手の氏名・住所が分からず、請求手続きが進まない(匿名・偽名・連絡遮断等)
なお、アプリ内のやり取りが“恋愛っぽい”だけで、肉体関係がない場合、一般に不貞慰謝料としてはハードルが上がります。離婚原因としての評価や夫婦間の問題は別として、第三者(不倫相手)への慰謝料請求では、肉体関係の有無が大きな分岐点になりやすいです。
アプリ不倫を含む「ケース別」の全体像は、次のページにもまとまっています。
不倫慰謝料のケース別まとめ|社内不倫・妊娠・アプリ・学生・愛人(特殊事情も整理)
証拠の集め方:アプリのやり取りはどこまで使える?
アプリのメッセージやプロフィールは、「関係性」や「既婚認識」を示す材料にはなります。ただし、それだけで肉体関係まで認定できるかは別問題です。
たとえば、次のような証拠は“強弱”が分かれやすいです。
- 強くなりやすい:ラブホテル・宿泊・旅行の客観記録、肉体関係を具体的にうかがわせるやり取り、継続的な密会の裏付け
- 補強にはなる:アプリやDMのやり取り、写真、通話履歴、金銭のやり取り、位置情報の履歴
- 弱くなりやすい:恋愛感情だけが読み取れる文面(会っていない/会っても食事だけ等)
アプリのスクショは「撮った時点の画面」を残すだけなので、相手が後から否認することもあります。日時・相手アカウントが分かる形で保存し、可能なら他の客観資料(移動・宿泊・会計等)で“点を線にする”意識が大切です。
また、証拠集めで絶対に避けたいのが、違法・強引な手段です。たとえば、次のような行為は、後で不利になったり別のトラブルを招いたりします。
- 相手や配偶者の端末に無断でログインしてデータを抜く
- 盗聴・盗撮、職場や自宅への押しかけ、SNS晒し
- 脅し文句で自白を引き出す(強要・恐喝と評価され得る)
証拠の全体像や、探偵・自力調査の考え方は、次のページも参考になります。
不倫の証拠ガイド【弁護士解説】|慰謝請求の証拠一覧・自力調査・探偵活用法
また、アプリからLINEやDMに移行しているケースは多いので、メッセージ証拠の扱いはここで一度整理しておくと安全です。
LINE・DMは不倫の証拠になる?スクショの保存方法と注意点
身元特定(名前・住所)が壁:請求する側の現実的な進め方
アプリ不倫の「詰まりポイント」は、慰謝料の理屈よりも、むしろ**相手の特定(氏名・住所)**です。相手の住所が分からないと、内容証明を送ることも、裁判を起こして訴状を届けることも難しくなります。
請求する側としては、現実には次の順番で検討することが多いです。
- まずは配偶者本人から、相手の情報(本名・住所・勤務先・連絡先)を確認する
- アプリのプロフィールや過去のやり取りから、同一人物と特定できる手掛かりを整理する
- 弁護士に相談し、交渉ルート・調査ルートを現実的に設計する(必要に応じて探偵も検討)
ここで焦ってやりがちなのが、配偶者に無理な詰問をして「データ削除」「口裏合わせ」「関係継続」を招くことです。**情報確保→事実整理→出口(示談or手続き)**の順に進めた方が、結果として回収可能性は上がりやすいです。
「住所が分からない」「相手が逃げている」場合の進め方は、次のページが参考になります。
浮気相手の住所がわからない|住所不明でも不倫慰謝料請求できる?調べ方と進め方
請求された側の注意点:既婚と知らなかった/関係がなかった/高すぎる
アプリ相手として慰謝料を請求された側は、最初に次の3点を切り分けて考えるのが重要です。
1)そもそも肉体関係があったのか(不貞行為の有無)
2)相手が既婚だと知っていた(または注意すれば分かった)のか(故意・過失)
3)金額が相場や事案に照らして妥当か(増減要素・証拠・婚姻状況)
特にアプリでは、プロフィールで「独身」とされていたり、既婚であることを隠して交際が始まったりします。この場合、「既婚者と知らなかった」ことが争点になりやすいです。
ただし、「知らなかった」と言えば必ず免責されるわけではありません。やり取りの内容や、会う頻度・時間帯・生活感のズレなどから、**注意すれば分かった(過失がある)**と評価される可能性があります。
一方で、次のようなケースでは、請求をそのまま受けない余地が出やすいです。
- 肉体関係がない(会っていない/会っても食事のみ等)
- 既婚と知りようがなかった(相手が独身と偽り、合理的に信じた)
- 婚姻関係がすでに破綻に近く、損害との関係が弱い
- 請求額が極端に高い、根拠が薄い、脅しに近い請求になっている
請求が来たときに、焦って「とりあえず謝って認める」「言われるままに払う」のは危険です。特に“既婚認識”や“肉体関係”は、一度認めると後で覆すのが難しくなります。
なお、マッチングアプリでは、配偶者側ではなく「交際相手(あなた)」から、既婚者に対して別の損害賠償(いわゆる貞操権の問題など)が話題になることがあります。これは不貞慰謝料とは別の枠組みで、要件や見通しが異なるため、論点を混ぜずに個別に検討するのが安全です。
アプリだけでなく、SNSや出会い系も含めた「請求された側の落とし穴」は、次の記事で整理しています(アプリ特化ではない総論)。
【弁護士執筆】SNSや出会い系の不倫で慰謝料請求されたときの落とし穴
示談で損しない注意点:口外禁止・接触禁止・違約金・清算条項
アプリ不倫は、示談(和解)で終わったように見えても、次の理由で再燃しやすい傾向があります。
- アカウントを作り直せば、再接触が比較的容易
- やり取りが残っていて、後から蒸し返されやすい
- 相手(不倫相手)が匿名のまま逃げたり、逆に“晒し”に走ったりしやすい
示談で大切なのは、金額だけでなく「終わらせ方」を条項で設計することです。最低限、事案に応じて次の条項を検討します。
- 口外禁止:SNS投稿・第三者への拡散も含めるか
- 接触禁止:連絡・面会の禁止(例外の要否も含めて)
- 清算条項:今後一切請求しない(蒸し返し防止)
- 違約金:条項違反時のペナルティ(抑止力)
- 求償の扱い:当事者間の負担調整が必要な場合の整理
示談書の作り方・条項設計の基本は、次のページで体系的に確認できます。
不倫示談書マニュアル【テンプレート付】|書き方・記載事項・無効リスク・公正証書化まで弁護士が解説
ミニQ&A(よくある疑問)
Q:アプリのメッセージだけで、慰謝料は取れますか?
A:メッセージは有力な手掛かりになりますが、一般に不貞慰謝料では肉体関係の立証が壁になりやすいです。文面の具体性や、会った事実を裏付ける資料の有無で見通しは変わります。
Q:相手が匿名で住所も分かりません。請求は無理ですか?
A:すぐに諦める必要はありません。ただ、請求の現実性は「特定できる材料がどれだけあるか」「配偶者から情報が出るか」などで大きく変わります。早い段階で方針を立てた方が空振りが減ります。
Q:請求された側ですが、相手が本当に既婚者の配偶者か分かりません。
A:アプリ絡みでは“なりすまし”や誇張もゼロではありません。請求の根拠(婚姻関係、経緯、証拠の有無)を冷静に確認し、必要なら弁護士を窓口にした方が安全です。
まとめ
マッチングアプリ経由の不倫でも、慰謝料の基本ルールは同じです。ただし、アプリ特有の「証拠の薄さ」「身元特定の難しさ」で、戦い方が変わります。
- アプリでも不貞行為があれば慰謝料は発生し得る(出会い方は本質でない)
- 重要なのは「肉体関係の立証」と「既婚認識(故意過失)」
- スクショは有用だが万能ではなく、客観資料で補強するのが基本
- 匿名相手は身元特定が最大の壁。焦って動くほど詰みやすい
- 請求された側は、安易な自白・支払いより先に争点整理が必要
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