不倫関係で妊娠が分かったとき、「中絶するべきか」「費用は誰が払うのか」「夫(妻)に知られずに手続できるのか」など、考えるべきことが一気に押し寄せます。とくに不倫中絶は、医療(週数・手術)と法律(同意書・慰謝料・責任分担)が同時に絡むため、感情面だけで動くとトラブルが長期化しやすいテーマです。
この記事では、母体保護法にもとづく基本ルールを前提に、「いま何を優先すべきか」を整理します。医療行為の最終判断は医師の説明を踏まえて行う必要がありますが、法律面は事前にポイントを押さえておくことで、後から揉める可能性を下げられます。
執筆は、弁護士実務10年以上の弁護士が、慰謝料請求・交渉の現場で多い争点(同意書、費用、証拠、増額要素)を踏まえて行っています。不倫をしてしまった側として慰謝料請求を受けるリスクがある方を主な読者として想定しつつ、状況によっては中絶に至った精神的苦痛を相手に請求したい場合の考え方も、必要な範囲で触れます。
- 中絶できる週数・手続きの流れ(まず最初に確認すべきこと)
- 中絶費用の相場と、相手が払わないときの現実的な交渉ポイント
- 中絶同意書(配偶者の署名)の扱いでつまずきやすい場面と注意点
- 配偶者に知られたくないときに、結果的に「バレやすくなる」落とし穴
- 中絶が慰謝料の増額要素になるケース/中絶強要が問題になるケース
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

Contents
慰謝料請求された事案の無料法律相談実施中!
- 0円!完全無料の法律相談
- 弁護士による無料の電話相談も対応
- お問合せは24時間365日受付
- 土日・夜間の法律相談も実施
- 全国どこでも対応いたします
不倫で妊娠したとき、まず押さえる「中絶」の全体像
不倫が原因で妊娠した場合、当事者の関係性が不安定になりやすく、話し合いが進まないまま妊娠週数だけが進んでしまうことがあります。しかし中絶は、妊娠週数によって選べる方法・費用・手続きが大きく変わります。
そこで最初にやるべきことは、精神的に落ち着くこと以上に、「週数・体調・手続き上の制約」を把握して、現実の選択肢を確定させることです。ここを押さえないと、後から「もっと早く知っていれば別の選択ができた」と後悔が残りやすくなります。
中絶手続きの基本:週数で変わる「できること」と負担
日本で行われる人工妊娠中絶は、主に母体保護法の枠組みの中で運用されています。細かい運用は医療機関で異なりますが、実務上は「妊娠初期(おおむね11週まで)」と「12週以降」で負担や手続きが大きく変わります。
- 妊娠週数には上限がある
原則として妊娠22週未満の範囲でしか中絶はできません。週数が進むほど選択肢が狭まり、心身の負担も増えます。 - 12週を境に「医療上の負担」と「事務手続き」が重くなりやすい
初期は通院で完結することが多い一方、12週以降は入院が必要になることがあり、手続きも増える傾向があります。 - 費用は週数が進むほど上がりやすい
人工妊娠中絶は原則として保険適用外(自費)で、初期でも10〜20万円程度が一つの目安ですが、12週以降は数十万円規模になることもあります(医療機関によって差があります)。
また、12週以降の中絶は、医療機関によっては遺体の取り扱い・届出・入院日数などの説明が増え、精神的な負担も大きくなりがちです。ここは病院の運用で差が出るため、受診時に「必要な手続き」「日程」「費用の内訳」まで確認してください。
「病院に行くのが怖い」「相手と話がついていない」などの理由で受診を先延ばしにすると、結果的に費用面・体調面・秘密保持のすべてが難しくなることがあります。まずは産婦人科で週数を確認し、医師から手続きの説明を受けた上で、法律面の整理に進むのが安全です。
不倫が絡むと、医療の話だけでは終わらない理由
妊娠と中絶は本来、当事者(妊婦)の身体と人生に直結する問題です。ところが不倫が絡むと、次のような「第三者の存在」が大きな影響を持ちます。
- 配偶者(夫・妻)
「中絶同意書に署名が必要か」「費用の出どころが家計に影響しないか」「受診や休暇を不審に思われないか」など、現実面で無視できない存在になります。 - 不倫相手
責任回避(連絡を絶つ、父性を否定する、費用負担を拒否する)が起きやすい一方、逆に「中絶を求める圧力」が強くなるケースもあります。 - 不倫をされた側(慰謝料請求の可能性がある人)
中絶に至った事情が、慰謝料の増額要素として主張されることがあります。妊娠・中絶それ自体が自動的に増額になるわけではありませんが、事情次第では無視できない争点になります。
とくに「夫(妻)にバレるか/バレないか」は、単なる秘密の問題ではなく、離婚・慰謝料・親族関係に波及しやすい点が重要です。逆に言えば、秘密保持を最優先にして動くことで、費用負担の揉めやすさが増したり、証拠が残らないために紛争が長引いたりして、結果的に発覚リスクが上がることもあります。
このように、医療上の判断と並行して「誰に何を説明するか」「どの範囲まで秘密にできるか」「金銭の負担や責任をどう整理するか」といった法律・実務の問題が同時進行になりやすいのが、不倫が絡む中絶の特徴です。
このページで扱うこと・扱わないこと
この記事は、主に「中絶をする(またはその可能性が高い)状況で、同意書・費用・慰謝料リスクをどう整理するか」を中心に解説します。
一方で、「妊娠を継続するか迷っている」「出産後に認知や養育費まで考えたい」という場合は、論点が大きく広がります(嫡出推定・嫡出否認・認知・養育費など)。出産・認知まで含めた全体像は、次の記事で整理しています。
不倫相手が妊娠・出産…どう対応すべき? 離婚・慰謝料・認知・嫡出否認・養育費を弁護士が徹底解説
また、不倫妊娠全般のトラブル(中絶に限らず、離婚・慰謝料・認知までパターン別に整理したい場合)は、こちらが便利です。
不倫妊娠トラブル総まとめ【5分で分かる×パターン別】|離婚・慰謝料・中絶・認知を弁護士が解説
「不倫相手が妊娠してしまい、どう動くべきか」という不倫をした側(男性側に限らず)の初動は、次の記事で詳しく解説しています。
不倫相手の妊娠で焦るあなたへ【弁護士解説】|離婚・慰謝料・認知・中絶問題はどうなる?
ダブル不倫など父子関係が複雑になりやすいケースは、争点が変わります。該当する場合は以下も参考にしてください。
ダブル不倫で妊娠すると誰の子ども?|父子関係・養育費・慰謝料まで徹底解説
中絶を決める前に考えるべき5つのポイント
中絶は「いつでも同じ条件でできる」手続きではありません。週数が進むほど、費用も負担も大きくなり、秘密保持も難しくなります。だからこそ、迷っている段階でも、次の5点を順番に整理していくと判断がぶれにくくなります。
- ① 週数・体調を確認し、医療上の選択肢を確定する
- ② 中絶同意書(夫以外の子でも配偶者の署名?)の見通しを立てる
- ③ 費用負担と支払い方法を決め、後日の紛争に備える
- ④ 相手とのやり取りを整理し、「言った・言わない」を防ぐ
- ⑤ 慰謝料・損害賠償の論点(増額・中絶強要等)を把握する
① 週数・体調を確認し、医療上の選択肢を確定する
最初の優先順位は、法律よりもまず週数確認です。妊娠検査薬で陽性が出た段階では、正確な週数や子宮外妊娠などのリスクは確定しません。受診をしてはじめて、手続きに必要な情報が揃います。
不倫が絡むと「相手と話がついていないから病院に行けない」と感じる方がいますが、医療機関の受診は相手の同意がなくても可能です(中絶手術に進むかどうかは別として、診察と相談はできます)。
受診時は、次の点をメモしておくだけでも後の迷いが減ります(病院から資料が出る場合は必ず保管してください)。
- 現在の妊娠週数(いつまでに決断が必要か)
- 予定される方法(通院か入院か、所要日数)
- 費用の総額と内訳(麻酔・検査・薬など)
- 同意書の要否、必要な署名者
- 支払い方法(現金/振込/カード等)
とくに12週に近づく場合、費用だけでなく仕事の休み方や術後の安静期間も含めて調整が必要になります。結果として配偶者に知られたくない方ほど、「受診の先延ばし」が不利に働きやすい点は意識しておくべきです。
② 中絶同意書:夫以外の子でも配偶者の署名が問題になる
不倫による妊娠でよくあるのが、「夫の子ではないのに、夫の署名が必要なのか?」という壁です。母体保護法の運用では、原則として妊婦本人と配偶者の同意が求められるとされ、ここでいう配偶者は戸籍上の配偶者(法律上の夫・妻)を指します。
そのため、妻が不倫相手の子を妊娠した場合でも、医療機関からは夫の署名を求められることがあります。逆に、不倫相手の男性は「父親候補」であっても、母体保護法上の「配偶者」ではないため、不倫相手の署名で代替できるとは限りません。
・同意書は「原則:本人+配偶者」だが、例外(同意が取れない事情)が問題になる。
・例外が認められるかは、最終的に医師・医療機関の運用判断になる場面が多い。
・だからこそ「誰の署名が必要か」を早い段階で医療機関に確認し、無理のある想定(夫以外で代替できる等)を避ける。
- 医療機関によって確認の厳しさが違う
同意書の取り扱いは、病院側が法的リスクをどう見ているかにも左右されます。形式を厳格に求める医療機関もあれば、事情を聴き取った上で判断する医療機関もあります。 - 例外が問題になるのは「同意が取れない」ケース
配偶者が長期不在・行方不明、意思表示ができない、DV等で意思確認が困難など、事情によっては本人の同意のみで進められると整理されることがあります。ただし、最終判断は医療機関の運用に委ねられる場面が多いのが実情です。 - 「夫以外の署名を用意すればよい」と単純化しない
同意書は単なる形式ではなく、後の紛争(医療機関とのトラブル、夫婦間の争い、費用負担の争い)にも影響します。
「夫にバレたくないから署名を代筆したい」「不倫相手に夫の名前を書いてもらえば大丈夫?」と考える方がいますが、同意書の偽造・代筆は犯罪(有印私文書偽造など)に該当するおそれがあります。発覚すれば、刑事事件・夫婦関係・慰謝料問題が一気に悪化します。バレる/バレない以前に、リスクが大きすぎるため選択肢にしない方が安全です。
「中絶同意書(夫以外)」で検索すると、「代筆したらバレるのか」といった疑問も見かけます。しかし現実には、医療機関の確認方法は一律ではありません。何より、偽造行為自体が重大なリスクを生むため、合法的に手続きが進められるルート(事情説明、医療機関の選定)で整理するのが安全です。
③ 費用負担と支払い方法を決め、後日の紛争に備える
中絶費用は「誰が払うのが当然」と法律が一律に決めているわけではなく、結局は当事者間の合意で決まることが多いのが実務です。ただ、不倫関係では合意形成が難しく、男性側が「払わない」「自分の子か分からない」と言い出して揉めることがあります。
ここで大切なのは、中絶の結論と費用の結論を切り分けることです。相手が非協力的でも、妊婦側は週数という制約の中で判断しなければなりません。一方で、費用をめぐる争いは後からでも起きるため、少なくとも「相手が何を言ったか/言っていないか」が分かる形で整理しておくことが重要です。
費用の話をするときは、単に金額だけでなく、次の点までセットで決めておくと紛争を減らせます。
- いつ・どの方法で支払うか
手術前に立替が必要なのか、手術後の精算なのか。現金か振込か、クレジットカードか。 - 領収書の名義・保管方法
配偶者に知られたくない場合、家計の支出として露出しないか、通帳や明細に痕跡が残らないようにできるかは現実的な問題になります(ただし、虚偽の説明や書類改ざんは避けるべきです)。 - 費用以外の条件
守秘義務(誰に話すか)、今後の連絡方法、追加請求の有無など。状況によっては合意書・示談書で形にしておく方が安全です。
当事者同士での合意書作成が不安な場合は、次の記事で示談書の作り方や落とし穴を整理しています。
不倫示談書マニュアル【テンプレート付】|書き方・記載事項・無効リスク・公正証書化まで弁護士が丸ごと解説
④ 相手とのやり取りを整理し、「言った・言わない」を防ぐ
中絶をめぐる紛争では、後から「言った・言わない」が激しく争われがちです。例えば、
- 男性側は「中絶を強要していない。お願いしただけ」と言う
- 女性側は「産みたいのに追い詰められた」と感じる
- 費用負担について「払うと言った/言っていない」が食い違う
このとき重要になるのは、当事者の主観だけでなく、客観的に残る資料です。LINE・メール・通話録音(適法な範囲)・送金履歴・受診に関する書類など、後で振り返れる材料があるかどうかで、交渉の強さも変わります。
一方で、感情的なメッセージ(暴言・脅し・侮辱)は、それ自体が不利な証拠になり得ます。とくに既婚男性が不倫相手に中絶を頼む場面では、相手を追い詰める言動が「強要」と評価されるリスクがあるため、言葉の選び方は慎重にしてください。
不倫の当事者としては「証拠を残したくない」と感じるかもしれませんが、証拠がない状態で揉めると、結果として慰謝料問題が長期化し、配偶者に発覚するリスクが高まることもあります。隠すために曖昧にするほど、争いが深刻化しやすい点は逆説的ですが重要です。
⑤ 慰謝料・損害賠償の論点を把握する(増額/中絶強要/請求される側)
中絶が絡むと、慰謝料の論点は大きく2つに分かれます。
- 不倫をされた配偶者からの不倫慰謝料(中絶が増額要素として主張されることがある)
- 妊娠・中絶に関する慰謝料(中絶強要や不誠実対応などが問題になることがある)
まず、前者については、中絶をした事実だけで自動的に慰謝料が増えるわけではありません。ただし裁判例では、不貞関係の悪質性を評価する事情として、妊娠・中絶が考慮された例があります。例えば、東京地裁平成22年9月3日判決では、不貞関係が長期に及び、妻が交際中に複数回妊娠して中絶した事情などを踏まえ、慰謝料の増額要素として評価されています。
実務的には、次のような事情があると「増額要素」と主張されやすくなります(ただし最終的な評価は事案ごとです)。
- 不貞の期間が長い/回数が多い
- 妊娠させた(させられた)経緯が軽率・無責任と評価され得る
- 発覚後の対応が不誠実(口裏合わせ、虚偽説明、責任放棄など)
- 夫婦関係への悪影響が大きい(別居・離婚に至った等)
次に後者については、相手に対して「中絶を求めること」それ自体は直ちに違法とは限りません。しかし、
- 暴力・脅迫・人格攻撃で中絶を迫る
- 「産むなら一切責任を取らない」などと繰り返し告げ、実質的に選択肢を奪う
- 妊娠が分かった後に連絡を断ち、話し合いを拒否して放置する
といった態様になると、違法(不法行為)と評価され、慰謝料が認められることがあります。東京地裁令和5年11月6日判決では、避妊せずに性交した後、妊娠が判明すると男性が中絶以外の選択肢はないと繰り返し伝え、出産した場合の責任を負わない旨を表明し続けたことなどが、女性に中絶を強いたものと評価され、慰謝料が認められました。
また、東京地裁令和元年5月30日判決でも、妊娠を告げた女性に対し、男性が不合理な言動を重ね、第三者に親族を装わせて中絶を求めさせるなどした事情が不法行為と判断され、慰謝料が認められています。
つまり、「不倫をしてしまった側」であっても、中絶をめぐる言動や対応の仕方によっては、逆に請求される側に回ることがあります。逆に、妊娠した側が「追い詰められて中絶した」と感じている場合でも、相手の行為がどの程度違法といえるかは事案ごとに判断が分かれます。まずは、事実関係(時系列、発言、支払い)を整理することが重要です。
中絶同意書の問題点:不倫をした妻が妊娠したケース
不倫によって妊娠した場合、女性側が既婚者だと「夫の子ではない(不倫相手との子)のに、なぜ夫の同意が必要なのか」という壁にぶつかりやすくなります。検索でも「中絶同意書 夫以外」「中絶同意書 夫以外 バレる」「中絶同意書 代筆」などの悩みが多く、まさにここが不倫中絶トラブルの急所です。
結論からいうと、同意書の扱いを誤ると、医療機関で手続きが止まるだけでなく、刑事・民事のトラブルにまで広がるリスクも否定できません。逆に、制度の前提と例外、現実の運用を押さえると、無駄に追い詰められずに選択肢を整理できます。
人工妊娠中絶は、母体保護法にもとづき指定医師が行う医療行為です。実務では多くの医療機関で、妊婦本人の同意に加えて、配偶者(法律上の夫・妻)の同意を求めます。
ただし、例外として「配偶者の同意を得られない・得ることが不可能」等の事情があるときは、本人同意のみで対応されることもあります(最終的には医療機関・医師の判断になります)。
夫の子ではないのに「夫の同意」が必要と言われるのはなぜ?
妊娠の相手が不倫相手であっても、法律上の「配偶者」はあくまで戸籍上の夫(または妻)です。母体保護法の運用では、胎児の生物学上の父が誰かではなく、婚姻関係があるかどうかで「配偶者同意」の要否が判断される場面が多い、というのが実務上の現実です。
そのため、既婚女性が妊娠したケースでは、医療機関から「配偶者同意書を持ってきてください」と求められやすく、ここで初めて「夫にどう説明するのか」「夫以外が署名できないのか」という問題が顕在化します。
なお、不倫相手の男性が既婚者かどうかは、この同意書の話とは別です。女性が未婚なら配偶者同意はそもそも問題になりません(ただし後述のとおり、費用負担や慰謝料、強要の問題は残ります)。
中絶同意書は「夫以外」でもよい?代筆したらバレる?
ネット上では「夫に言えないから、不倫相手に署名してもらえばいいのでは」「夫の名前を代筆してしまえばバレないのでは」といった発想に触れることがあります。しかし、これはおすすめできません。
まず、一般論として配偶者同意書の「配偶者」は戸籍上の配偶者を指します。つまり、妻側が既婚なら、原則として「夫以外の男性」は該当しません。医療機関が形式的な確認にとどめるか、身分証の提示まで求めるかは施設によって差がありますが、医療機関側もトラブル回避のため慎重になっているのが近年の傾向です。
次に、夫の署名をあなたや第三者が書く、いわゆる代筆・偽造は、状況によっては有印私文書偽造罪等の刑事リスクが問題になります。さらに、あとから夫に発覚したとき、「中絶の事実」に加えて、「同意書の偽造」が大きな火種になり、離婚・慰謝料・親権など別の紛争にまで波及しかねません。
「バレるかどうか」だけでいえば、発覚ルートは同意書だけではありません。医療機関の確認、通院や費用、体調変化、同居家族の気づき、さらには後日の夫婦喧嘩でのスマホ確認など、きっかけは多様です。“一度でも矛盾が見つかると説明が崩れる”のがこの領域の怖さです。
例外として「配偶者同意なし」で進められることがあるケース
母体保護法の運用では、例外として配偶者同意が不要と扱われることがあります。典型例は次のとおりです。
- 配偶者の行方が不明(長期の音信不通・失踪など)
連絡自体が取れず、意思確認ができない状態が継続している。 - 配偶者が意思表示できない
重い精神疾患や重篤な病気、事故などで判断能力がなく、同意取得が現実的でない。 - 妊娠後に配偶者が死亡した
同意を得たくても得られない状況。 - 婚姻関係が実質的に破綻している
長期別居、DV・モラハラ等で協議が困難、生活実態が別で同意取得が危険・不可能に近い。
ただし重要なのは、例外に当たりそうでも「必ず本人同意だけでできる」とは限らないという点です。医療機関によっては、法律上のリスクや院内ルールから、配偶者同意が得られない場合に手術自体を断ることもあります。
この局面では、ネット情報だけで突っ走るよりも、医療機関に事情を説明して、必要書類(住民票、別居の事実、DV相談記録等)を確認する方が結果的に早いことが少なくありません。
夫に不倫がばれずに中絶する方法はある?
「夫に知られずに中絶したい」という相談は現実に多い一方、弁護士としては、まず“絶対にバレない方法はない”という前提をお伝えせざるを得ません。理由はシンプルで、同意書という書類面の問題だけでなく、お金・通院・体調変化など、生活の中に痕跡が残り得るからです。
そのうえで、現実的な選択肢として語られやすいのは、次の3つです。
- (時間が許すなら)離婚成立後に手術を受ける
- 婚姻関係が実質破綻している事情を医療機関に説明し、本人同意での対応可否を確認する
- 複数の医療機関に問い合わせ、運用(同意書要件)を確認する
ただし、これは「裏技」ではありません。妊娠週数には制限があり、時間的余裕がなければ選択肢は狭まります。また、離婚や別居を急ぐと、今度は財産分与・親権・住まいといった別の問題が一気に動き出します。医療・法律・生活の3点を同時に見ないと、かえって苦しくなることがあります。
「後から発覚」しやすいポイント
夫に知られずに進めたい場合でも、次のような点が発覚のきっかけになります。
- 家計・クレジット明細・ATM出金
まとまった現金の動き、見慣れない医療機関名の支出が残ることがあります。 - 通院や手術当日の行動
半日〜数日の外出理由、迎えの手配、スマホの位置情報など、生活の動線に不自然さが出やすい。 - 術後の体調変化
出血や腹痛、倦怠感などで家事や仕事に影響が出ると、同居家族に気づかれることがあります。 - 妊娠週数が進んだ場合の手続き
12週以降の中期になると入院や手続きが増え、精神的・身体的負担も大きくなります。 - 後日の夫婦トラブル
不倫が疑われた後のスマホ確認や通帳確認などで、過去の痕跡がまとめて露見することがあります。
つまり、「同意書さえ何とかなれば大丈夫」という話ではありません。バレる・バレないだけで動くと、精神的に消耗し、結果的に交渉でも不利になりやすい点は押さえておきましょう。
不倫で中絶した場合の費用負担
中絶をめぐるもう一つの大きな火種が、「費用を誰がどこまで負担するのか」です。特に不倫が絡むと、相手が責任を回避しようとして連絡が途絶えたり、「俺の子ではない」と争いになったりして、費用の話し合いが一気に難航します。
この記事では、とくに不倫慰謝料を請求された側(加害側)の視点も意識しつつ、費用の問題は、男女いずれの立場でも“初動の対応”がその後の慰謝料交渉に直結する点を強調しておきます。
中絶費用の相場:週数で大きく変わる
中絶費用は医療機関や地域、麻酔方法などで幅がありますが、一般的には妊娠週数が進むほど高額になり、身体的負担も増します。健康保険が原則使えないケースが多く、家計へのインパクトも小さくありません。
- 妊娠初期(〜11週ごろ)
日帰り・通院で対応されることが多く、費用はおおむね10万〜20万円程度が一つの目安。 - 妊娠中期(12週〜22週未満)
入院や陣痛誘発の過程が必要になることがあり、費用は数十万円規模になることも珍しくありません。 - 合併症・追加処置
術後の処置や薬、通院回数などで追加費用が発生する場合があります。
費用が膨らむほど、相手との関係がこじれたときのダメージも大きくなります。費用面の合意は「後で考える」ほど不利になりやすいため、できる範囲で早めに整理しましょう。
不倫相手との費用折半・全額負担:法律が「何割」と決めているわけではない
中絶費用の負担については、「男性が全額負担する」「折半する」などの話し合いが多い一方で、法律が一律に“何割負担”と決めているわけではありません。性交渉に至った経緯、避妊の状況、妊娠発覚後の対応、経済状況など、個別事情で判断が変わります。
そのため、あなたが「費用を払え」と請求された側なら、感情だけで即答するのではなく、次の点を冷静に確認することが重要です。
「支払う/支払わない」を決める前に確認したいこと(請求された側)
- 請求額の根拠(領収書・見積り)
金額が妥当か、何にいくらかかったのかを確認します。後から「言った・言わない」にならないよう、証拠は必須です。 - 支払い方法(直接支払いか、立替精算か)
トラブル防止の観点では、医療機関へ直接支払う方が透明性は高い傾向があります(相手の事情も踏まえて協議します)。 - 中絶の意思決定が誰の意思か
強要・脅し・経済的圧迫などがあった場合、費用負担どころか別の慰謝料請求に発展し得ます。言動の記録も含めて整理が必要です。 - 妊娠週数とスケジュール
週数によって費用も手続きも変わるため、必要に応じて医療機関の説明資料や予約状況を確認します。 - 家庭(配偶者)への発覚リスク
あなたが既婚者の場合、支払いの痕跡が配偶者に発覚し、別途不倫慰謝料請求に直結するおそれがあります。
「払わない」と突っぱねてブロックしてしまうと、相手が弁護士へ相談し、請求が先鋭化することがあります。逆に、無条件で全額を支払うと、今度は“それとは別に慰謝料も”という話になりやすい。費用の支払いは、単体ではなく“紛争全体の着地点”の中で設計するのが安全です。
不倫相手に中絶費用の負担を拒否されたら?(請求したい側の補足)
ここは本題(請求された側)から少し外れますが、よくある質問として多いので補足します。不倫相手が「一切払わない」「連絡を絶った」という場合、当事者同士の話し合いでは限界が出ます。
このとき現実的な打ち手は、(1)証拠を揃える、(2)書面で合意を作る、(3)必要なら弁護士を介して交渉する、の順で整理することです。中絶費用は“医療行為の結果として発生した実費”なので、領収書等で立証しやすい反面、相手が父性や経緯を争ってくると長期化します。
当事者間で合意できるなら、口約束で終わらせず、示談書・合意書に落とすのが安全です。示談書の作り方や、無効になりやすい条項については、下記ページで詳しく解説しています。
不倫示談書マニュアル【テンプレート付】|書き方・記載事項・無効リスク・公正証書化まで弁護士が解説
費用負担を合意書・示談書に入れるなら:最低限のチェックリスト
費用の合意は、「いつ・いくら・どの方法で」まで決めて初めて紛争予防になります。さらに不倫が絡む場合は、費用だけでなく連絡・口外・今後の関係も同時に火消ししないと、問題が再燃しがちです。
合意書・示談書に盛り込みたい項目は、例えば次のとおりです。
- 中絶費用の金額と支払期限
実費の範囲、支払い回数、遅れた場合の扱い(遅延損害金まで入れるか)を明確にします。 - 支払方法(振込先・直接支払い等)
証拠が残る方法を基本にし、現金手渡しの場合は受領書を用意します。 - その他の金銭(慰謝料・解決金)の有無
費用とは別に解決金を払うのか、払うなら総額はいくらか、相互に清算するのかを整理します。 - 守秘義務(口外禁止)
配偶者や勤務先への連絡、SNS投稿などを禁止する条項を設けることがあります(ただし内容は適法範囲に限ります)。 - 今後の連絡手段・接触禁止
連絡を取るなら手段を限定し、不要なら接触禁止を明確化します。 - 違反時のペナルティ(違約金)
高すぎる違約金は無効・減額のリスクがあるため、相場感とバランスが重要です。
「中絶費用だけ払えば終わり」という設計にすると、後から不倫慰謝料(配偶者からの請求)が飛んできたり、相手との間で追加請求が始まったりして、結果的に二重三重の負担になることがあります。金額の大小だけで判断せず、紛争の全体像(誰が誰に何を請求し得るか)を一度整理するのが安全です。
不倫×中絶費用と夫の関与(「夫が払うしかない?」問題)
既婚女性が不倫相手の子を妊娠した場合、女性側の経済力が弱いと「結局、夫に頼るしかないのでは」と考えてしまいがちです。しかし、夫の立場から見れば、自分の子ではないのに中絶費用を負担する合理性は乏しいのが通常です。
もちろん、夫婦関係を続けるために夫が費用を出す選択をすることはあり得ますが、その場合でも不倫発覚・離婚協議・慰謝料請求に直結しやすく、事実上の“別問題”が始まります。「費用をどうするか」だけでなく、夫婦関係をどうするかの決断が避けられなくなることが多いのです。
一方で、請求された側(不倫相手の男性など)としては、夫が費用を出したからといって安心はできません。あとから夫が不貞を知った場合、費用負担の経緯が“夫の精神的苦痛”を補強する事情として使われることもあります。ここでもやはり、費用だけの小手先対応ではなく、全体の火消しが必要です。
費用トラブルをこじらせないために:やってはいけない対応
不倫と中絶が絡む局面は、当事者が強いストレス下にあり、言葉が荒くなりがちです。しかし、次の行動は事態を悪化させやすい典型です。
- 一方的にブロック・音信不通にする
- 「産め」「おろせ」など決定を強く迫る(強要と評価され得る)
- 金銭の支払いと引き換えに口封じをするような不適切な条件を出す
- 証拠が残らない現金手渡しだけで済ませようとする
この段階で対応を誤ると、費用負担の話が追加の慰謝料請求(中絶強要、人格権侵害、脅迫的言動など)にすり替わり、紛争が拡大します。少しでも不安があるなら、早めに弁護士へ相談し、連絡方法や支払い方法を含めて安全に設計しましょう。
慰謝料請求された事案の無料法律相談実施中!
- 0円!完全無料の法律相談
- 弁護士による無料の電話相談も対応
- お問合せは24時間365日受付
- 土日・夜間の法律相談も実施
- 全国どこでも対応いたします
不倫で中絶した場合に慰謝料は請求できる?(中絶慰謝料・不倫慰謝料の整理と裁判例)
不倫で妊娠し中絶に至ったとき、「中絶の慰謝料は請求できるの?」「逆に、配偶者からの不倫慰謝料は高くなる?」と不安になる方は少なくありません。ここで混同されやすいのが、“誰が誰に”請求する慰謝料なのかです。
不倫慰謝料:配偶者(不倫被害者)から、不貞をした配偶者や不倫相手に請求される慰謝料
中絶慰謝料:妊娠・中絶をめぐる言動(強要、虚偽説明、見捨てる対応など)により、相手から請求される慰謝料
状況によっては、同時に2つの慰謝料問題が発生します。たとえば、既婚女性が不倫相手男性に中絶費用や慰謝料を求めた結果、夫に発覚し、今度は夫から不倫慰謝料を請求されるケースなどです。
原則:中絶しただけでは「中絶慰謝料」は当然には発生しない
不倫関係で妊娠・中絶に至っても、中絶そのものを理由に、直ちに相手に慰謝料を請求できるとは限りません。慰謝料が認められるには、相手の言動が民法上の不法行為(違法な権利侵害)にあたることが必要です。
当事者同士が話し合い、互いの意思で中絶に至った場合は、「誰か一方が悪い」と評価しづらい面があります。もちろん妊娠・中絶は女性側の心身への負担が大きく、男性側も他人事で済ませてよいわけではありませんが、“合意のある中絶=直ちに慰謝料”とはなりにくいのが現実です。
例外:中絶慰謝料が問題になりやすい典型パターン
一方で、次のような事情があると、妊娠・中絶にまつわる慰謝料(いわゆる中絶慰謝料)が認められる可能性が高まります。
- 中絶の強要・圧力がある
暴力や脅迫はもちろん、人格否定、執拗な連絡、仕事や家族へばらすと示唆するなど、「自由な意思決定」を歪めるような圧力がある場合です。 - 妊娠が判明した後に連絡を遮断し、協力を拒む
妊娠を告げられた側が、一方的に逃げる・無視する・話し合いを拒否するなどして相手を追い詰めると、違法と評価されることがあります。 - 「避妊している」「妊娠しない」など重要事項の虚偽説明
避妊の有無は妊娠リスクに直結します。意図的な虚偽説明があると、違法性が認められやすくなります。 - 既婚であることを隠して交際していた
独身だと信じて交際・妊娠したのに、後から既婚者と判明し、社会的な不利益を避けるため中絶せざるを得なくなった等のケースです。 - 侮辱的な言動や、責任を一切負わない旨の一方的通告
「産むなら責任は取らない」「認知もしない」などと突き放し、相手を精神的に追い詰める対応は、状況次第で不法行為と評価され得ます。
ポイントは、「妊娠・中絶の問題を、相手の意思決定に配慮せず自己都合で処理しようとした」と評価されるかどうかです。LINE・メールなどのやり取りは、後から最重要の証拠になります。
裁判例から見る「中絶慰謝料」の判断ポイント
中絶慰謝料は「必ず勝てる/必ず負ける」と単純ではありません。裁判例を見ると、金額も認定のされ方も幅があります。ここでは、実務上参考になりやすい例を紹介します。
【裁判例】中絶以外の選択肢を否定し、責任を負わない旨を繰り返し表明したとして中絶強要が認められた例(東京地裁令和5年11月6日判決)
女性が妊娠を告げた後、男性が「堕ろすしか選択肢はない」「産むのは無理。責任がとれない。結婚もしない」などと繰り返し伝え、出産した場合の協力を否定する態度を示した事案で、裁判所は中絶を強いた不法行為を認め、男性に慰謝料150万円の支払を命じました。
この事案では、女性側にも避妊をしない性交に同意した点などの事情があり、男性の暴力・脅迫が明確に認められたわけでもありません。それでも裁判所は、最終的に中絶を選択したのは女性であることを前提にしつつ、その意思決定が男性の態度によって「出産という選択を断念させられた結果」であると評価しています。
【裁判例】妊娠を告げられた後の言動が「社会関係上の常識を逸脱」するとして慰謝料が認められた例(東京地裁令和元年5月30日判決)
妊娠を告げられた男性が中絶を求めつつ「産むなら責任は取らない」といった趣旨の言動を重ね、さらに母親からも「産んだら(育てることは)できないから中絶しなさい」などの電話があった事案で、裁判所は、男性の対応が単なる交際解消の範囲を超え、不合理で社会関係上の常識を逸脱するとして不法行為責任を認め、男性に慰謝料120万円等の支払を命じました。
これらの裁判例からも分かるとおり、暴力がなくても、妊娠発覚後の言動が相手を追い詰めるものであれば、慰謝料が認められる可能性があります。特に既婚男性は「配偶者に知られたくない」焦りから強い口調になりがちですが、その対応自体が中絶強要と評価されるリスクがある点に注意が必要です。
不倫で中絶したことは「不倫慰謝料(配偶者の請求)」を増額させるのか
次に、不倫中絶が配偶者からの不倫慰謝料にどう影響するかを整理します。結論から言うと、「中絶した=必ず増額」ではありません。ただし、妊娠・中絶という事実は、婚姻関係への影響や精神的苦痛の程度を強める事情として考慮されることがあります。
不倫慰謝料では、一般に次のような事情が金額に影響します。
- 増額要素になりやすい事情
交際期間が長い/回数・頻度が多い/同居・旅行など夫婦同然の実態/妊娠・出産・中絶の事実/夫婦関係の破綻(別居・離婚)に直結した、など - 減額要素になりやすい事情
交際期間が短い/一時的な関係に近い/夫婦関係がすでに破綻していた/不倫発覚後すぐに関係を解消した、など
妊娠・中絶は、単なる肉体関係にとどまらず、「避妊しないほど関係が深かった」、または「家族を揺るがす出来事が起きた」と評価されやすく、増額方向に働く可能性があります。
【裁判例】妻が2回中絶した事情を「慰謝料増額要素」として400万円を認めた例(東京地裁平成22年9月3日判決)
夫が妻の不倫相手に慰謝料を請求した事案で、裁判所は、交際期間が約6年半と長く、頻度も週1~2回程度であったことなどに加え、妻が交際中に2回妊娠して中絶していた点を重視し、妊娠した子が不倫相手の子であると断定まではできないものの、妊娠させる可能性が高い交際をしていたことは明らかで、これは慰謝料の増額要素として考慮すべきと述べ、慰謝料400万円を認めました。
【裁判例】「不貞行為と2度の中絶」に加え嫌がらせ行為も問題になり、187万円が認められた例(東京地裁平成24年6月19日判決)
妻が夫の不倫相手に慰謝料等を請求した事案で、裁判所は、不倫相手が夫が既婚者であることを認識しながら交際を継続し、交際中に2度にわたる中絶があったこと、さらに無言電話や手袋を投げつけるなどの行為が問題になった事情を踏まえ、慰謝料170万円+弁護士費用17万円(合計187万円)の支払を命じました。
同じ「中絶が絡む不倫」でも、400万円級になるケースもあれば、200万円未満にとどまるケースもあります。交際の長さ・夫婦関係への影響・当事者それぞれの事情で結論が変わるため、相場感だけで判断するのは危険です。
不倫慰謝料の金額の考え方や減額のポイントは、別記事で体系的に解説しています。あわせて参考にしてください。
不倫相手から「中絶慰謝料」を請求されたときの注意点
近年は、妊娠・中絶をきっかけに、不倫相手(または交際相手)から「慰謝料を払え」「示談金を払わないと暴露する」と迫られる相談も増えています。請求された側としては、次の点を押さえておくことが大切です。
- 連絡を一方的に断つと、紛争が深刻化しやすい
無視やブロックは「逃げた」と受け取られ、弁護士介入や訴訟・職場への連絡など、事態を大きくする原因になり得ます。危険を感じる場合は、本人対応をやめて弁護士に窓口を一本化しましょう。 - その場で「いくら払う」と約束しない
焦って高額の支払を口約束すると、後から撤回しづらくなります。支払うとしても、法的に整理したうえで条件を詰めるのが基本です。 - 「中絶費用」と「慰謝料」は分けて考える
医療費の負担(中絶費用)と、精神的損害の賠償(慰謝料)は別物です。領収書の有無、支払済みか、どこまでが相当かを整理します。 - 支払うなら、必ず示談書で清算する
振込だけで終わらせると、後日「追加請求」が来ても止めにくくなります。清算条項・守秘義務・接触禁止など、再燃防止の条項を入れておくことが重要です。示談書の作り方は、不倫示談書マニュアル【テンプレート付】で詳しく解説しています。 - 「夫(妻)にバレない」ことを最優先にし過ぎない
目先の隠蔽を優先して不適切な対応をすると、結果的に裁判・内容証明・職場連絡などで発覚リスクが上がることがあります。万が一訴えられた場合の「家族バレ」の経路は、不倫慰謝料で訴えられたら家族にバレる?典型ルートと回避策も参考になります。
中絶に関する請求は、感情が激しくぶつかりやすい分野です。放置すると、配偶者への発覚や名誉毀損・脅迫等の別問題に発展するおそれもあります。「請求された側」「請求したい側」いずれの立場でも、早い段階で弁護士に相談し、着地点を設計することが重要です。
不倫中絶が絡むトラブルのポイントまとめ
ここまで、中絶同意書・費用負担・慰謝料(増額事由や中絶強要)など、法的に揉めやすい論点を整理してきました。
最後に、「いま何を優先して、どんな順番で動くべきか」という実務面をまとめます。不倫が絡む中絶は、医療手続きと法的トラブルが同時進行しやすく、判断や連絡の順番を間違えると、後から修正が難しくなるのが特徴です。
妊娠週数で「選べる手続き」「負担」「露見リスク」が一気に変わる
中絶の是非そのものは、医療・心身の問題が中心です。ただ、不倫が絡む場合は、週数が進むにつれて次の3つが同時に重くなりやすい点に注意が必要です。
- 医療面の負担:妊娠初期(一般に〜11週頃)と、12週以降(中期)では、手術内容・回復・通院の重さが変わり、心身の負担が増える傾向があります。
- 金銭面の負担:週数が進むほど費用が上がりやすく、交通費・休業損害・付き添い等の“周辺コスト”も増えがちです(支払い方法によっては家計上の不審な出費として見られるリスクも高まります)。
- 秘密保持の難易度:通院回数や体調変化が増えると、同居家族に気づかれる可能性が上がりやすく、同意書の運用次第では配偶者の関与が必要になることもあります。
つまり、「相手が逃げているから」「お金がないから」と先延ばしにするほど、医療面も法務面も詰みやすくなるということです。まずは産婦人科で週数と選択肢の確認をしたうえで、法的な対処(費用の分担や連絡の取り方)を並行して整理するのが現実的です。
夫に秘密のまま進めたいときに、つまずきやすい“3つの壁”
既婚女性が「夫以外(不倫相手)の子ども」を妊娠して中絶を考える場面では、「夫に知られたくない」という切実さがある一方で、次の壁が出やすいです。
- 中絶同意書(配偶者同意)の壁
- 支払い方法・領収書・家計の壁
- 通院・休養・体調変化(行動の壁)
中絶同意書(配偶者同意)の壁は、まさに「中絶同意書 夫以外」と検索される典型論点です。法律上の建付けや医療機関の運用により、戸籍上の配偶者(夫)の同意を求められることがあります。ここで「夫にバレたくないから、同意書を代筆(偽造)したい」と考えてしまう方もいますが、これは避けるのが安全だと言わざるを得ません。
中絶同意書の代筆や署名の偽造は、刑事上の問題になり得ます。また、医療機関側もリスクを避けるため確認を厳格にすることがあり、「中絶同意書を代筆したらバレるか」という発想自体が、後から自分を追い込む原因になります。
夫に秘密のまま進めたい場合ほど、「偽造で乗り切る」ではなく「正しい手続きで通るルートを探す」ことが大切です。具体的には、医療機関に事情を伝えた上での運用確認(必要書類の確認)、どうしても難しい場合の代替策(別居・離婚協議など)を含めた現実的な設計が必要になります。
次に、支払い方法・領収書・家計の壁です。中絶費用は、支払方法(現金・振込・クレジット等)によっては家計の明細に残りやすく、同居の配偶者が家計管理をしている場合、説明が難しい出費になります。ここは「どう隠すか」ではなく、最終的に説明が必要になった場合に破綻しない設計かという視点で考えるのが安全です。
最後に、通院・休養・体調変化(行動の壁)です。手術や処置の内容により、当日〜数日の安静が必要になったり、出血・腹痛などが出たりすることがあります。仕事の休み方、家族との生活動線、緊急時の連絡先など、「秘密」よりも「安全」を優先して備える必要があります。無理をして体調を崩すと、結果的に長期の不調や精神的負担につながり、家庭や職場にも影響が広がりやすくなります。
連絡の取り方ひとつで、慰謝料リスクが増えることがある
不倫中絶の局面では、相手との連絡が生々しくなりやすく、感情的なやり取りが増えがちです。しかし、あとで慰謝料の争いになると、LINEやメールの言い回しが「強要」「侮辱」「脅し」「責任放棄」などと評価されることがあります。
特に、既婚男性側が不倫相手女性に中絶を「お願いする」場面は要注意です。暴力や明確な脅迫がなくても、言葉の圧力や、責任を放棄して追い込む態度が重なれば、結果として「中絶を強いられた」と評価され得ます(実際に、裁判例でも“態度”が問題視されることがあります)。
反対に、女性側も、相手が逃げたからといって、自宅や職場周辺に押しかけたり、執拗な接触を続けたりすると、別の法的トラブル(迷惑行為・ストーカー的行為の評価など)を招くおそれがあります。感情が爆発しやすい局面ほど、連絡や接触の設計を間違えないことが重要です。
相手と話し合いが必要なときほど、「言った/言わない」にならない形(テキストで残る方法)を基本にし、電話・対面中心で押し切らないのが安全です。やり取りは、後から読み返したときに第三者が理解できるよう、冷静な文面に寄せたほうが結果的に自分を守ります。
裁判例から見える「慰謝料が問題化するライン」
中絶それ自体が直ちに慰謝料(または増額)の決定打になるわけではありません。ただ、裁判例を見ると、①不倫関係の深さ(期間・頻度・生活への侵入度)と、②妊娠・中絶が示す関係の重大性、③当事者の不誠実さ(逃げる/脅す/虚偽)が重なると、争点化しやすい傾向が読み取れます。
代表的な裁判例を、この記事のテーマに合わせて「何が問題視されたのか」という観点で整理します(いずれも事案は個別であり、結論はケースにより異なります)。
- 妊娠・中絶が“増額要素”として考慮された例(東京地裁平成22年9月3日判決)
配偶者が不倫相手に慰謝料請求した事案で、不倫関係が長期かつ頻繁で、旅行や自宅での関係などもあり、さらに不倫期間中に妊娠・中絶が複数回あった事情が認定されています。裁判所は、妊娠した子が誰の子か断定できないとしつつも、被告が妊娠させる可能性が高い交際をしていた点を慰謝料の増額要素として考慮し、比較的高額の慰謝料を認めました。 - 不倫相手(第三者)への請求で、中絶を含む事情が認定された例(東京地裁平成24年6月19日判決)
妻が夫の不倫相手に慰謝料請求した事案です。判決では、不倫関係の継続に加え、妊娠・中絶に関する事情も認定されています。一方で、当事者間の力関係や周辺事情(嫌がらせの有無など)も評価され、金額は一律ではありません。「中絶がある=必ず高額」ではなく、全体事情の中で位置づけられる点がポイントです。 - 男性の不誠実な対応が“中絶慰謝料”に繋がった例(東京地裁令和元年5月30日判決)
交際関係で妊娠が判明した後、男性が“責任は取らないが中絶してほしい”という態度を取り、常識を逸脱した不合理な言動を重ねたことが不法行為とされ、慰謝料が認められました。不倫の有無に限らず、妊娠告知後の対応が「著しく不誠実」と評価されると、慰謝料が問題化しやすくなります。 - 中絶強要の主張が争点になった例(東京地裁令和5年11月6日判決)
避妊なしの性交渉後、妊娠が判明すると男性が中絶を求めたとして争われた事案です。裁判では、中絶に至る経緯や当事者の言動が細かく検討され、慰謝料が一部認められた一方で、女性側の行動についても別途責任が認められています。“感情が先走って強い言動・過度な接触を重ねる”ことが、後の紛争で不利に働くこともあるため注意が必要です。
不倫の当事者(請求された側)としては、「中絶した/させた」という一点で勝敗が決まると考えるのではなく、時系列で何をしたか・何を言ったかが評価される、と捉えるのが安全です。
チェックリスト:不倫中絶で“後から詰む”のを避けるために
「請求された側」になりやすいパターンと、早めに相談すべきサイン
このサイト全体の主な読者像は、基本的に「不倫慰謝料を請求された側(不倫をした側)」です。不倫中絶の問題では、次のような形で“請求された側”になることがあります。
- 配偶者から不倫慰謝料を請求される(中絶の事実や経緯が加わり、悪質性の主張が強まる)
- 不倫相手から中絶費用・慰謝料を請求される(「中絶を強いられた」「逃げられた」などの主張)
- 不倫相手の配偶者から請求される(ダブル不倫・相手が既婚の場合に典型)
次のいずれかに当てはまる場合は、相手と直接やり取りを重ねる前に弁護士へ相談したほうが安全です。
- 相手(または相手の配偶者)から金額・期限を区切った請求が来ている
- 「中絶強要」「脅された」「同意書を用意しろ」といった強い非難が届いている
- あなた自身が感情的になってしまい、強い文面を送りそうで不安がある
- 相手の素性(氏名・住所等)が曖昧、または相手が急に連絡を絶った
- 中絶費用や慰謝料について口約束だけで進み、後から覆りそう
弁護士に相談することで、窓口を一本化して余計な接触を止める、示談書(守秘義務や清算条項を含む)を整える、慰謝料の減額・分割・支払条件の調整など、実務的に“収束させる手段”が取りやすくなります。
相談前に整理しておくとスムーズな情報
相談の時点で完璧に揃っている必要はありませんが、次をメモにしておくと状況整理が早くなります。
- 時系列:交際開始、妊娠判明、相手への報告、話し合いの経過、中絶(または予定)日
- 相手の情報:氏名、勤務先、住所、既婚かどうか、配偶者の存在など(分かる範囲で)
- やり取りの証拠:LINE・メール・SNS(妊娠報告後の反応、費用負担の約束、責任放棄の言動など)
- 金銭関係:費用の見積り、支払者、支払い方法、領収書の有無、分担の合意の有無
- 現在のリスク:配偶者にバレそうか、相手が暴走しそうか、職場や家族に波及しそうか
「情報を揃えてから相談しよう」と待っているうちに状況が悪化することも多いので、不安が強い段階でも“相談の入口”に入ってしまうほうが結果的に損失が小さくなることがあります。
よくある質問
Q. 夫以外の子どもを妊娠した場合でも、夫の同意が必要ですか?
A. 医療機関の運用にもよりますが、戸籍上の配偶者がいる場合に配偶者同意を求められることがあります。事情を説明して本人同意のみで対応する運用の医療機関もありますが、断られる場合もあるため、早めに確認し、代替策も含めて検討するのが安全です。
Q. 中絶同意書を代筆したらバレますか?
A. 「バレるかどうか」の問題ではなく、代筆・偽造は法的リスクが大きく、後から自分の首を絞めるため避けるべきです。医療機関が厳格に確認する場合もありますし、仮に一時的に通ったとしても、トラブルが起きたときに不利になります。
Q. 不倫相手が中絶費用を払わないと言っています。どうすればいいですか?
A. まずは医療のタイムリミット(週数)を優先しつつ、費用は「誰が・いつ・いくら・どう払うか」をできる限り文章で残すことが重要です。話し合いが崩れそうなら、示談書を作る・弁護士を介して請求するなど、連絡経路を切り替えることを検討します。
Q. 中絶したことは、不倫慰謝料の増額事由になりますか?
A. 一律に増額されるわけではありません。ただ、交際期間の長さ、妊娠の経緯、回数、当事者の態度などによっては、悪質性を基礎づける事情として評価されることがあります。特に、関係が長期化し、妊娠・中絶が絡むと、裁判所が事情を重く見る余地はあります。
Q. 不倫相手に「中絶してほしい」と言ったら中絶強要になりますか?
A. 単発のお願いで直ちに違法になるとは限りませんが、相手の心身の負担を無視して追い込む言動、責任放棄、執拗な圧力などが重なると、「中絶を強いられた」と評価されるリスクがあります。特に既婚男性側は、発覚回避のために強い言葉を使ってしまいがちなので慎重さが必要です。
Q. 不倫妊娠や不倫出産もまとめて知りたいです。
A. 妊娠を継続するか・出産するかの論点は、慰謝料や認知・養育費など別の論点が大きくなるため、別ページで整理しています。状況に近いページから読むほうが混乱しにくいです(末尾の関連記事も参考にしてください)。
まとめ要点
- 不倫が絡む中絶は、同意書・費用・慰謝料が連動しやすく、先延ばしほど不利になりやすい
- 「夫にバレたくない」事情があっても、同意書の代筆・偽造は避ける(法的リスクが大きい)
- 中絶費用や経緯は、後日の紛争に備えてやり取りを残す/連絡の仕方を誤らないことが重要
- 中絶強要や責任放棄が疑われる状況、または慰謝料請求を受けた状況では、早めの法律相談が有効
不倫と中絶の問題は、医療のタイムリミットがある一方で、連絡の取り方・合意の残し方・配偶者への波及など、法的に“詰みやすい分岐”が多いのが現実です。焦って動くほど、余計な証拠を残したり、逆に不利な立場に立ってしまうこともあります。
坂尾陽弁護士
関連記事・あわせて読みたい
慰謝料請求された事案の無料法律相談実施中!
- 0円!完全無料の法律相談
- 弁護士による無料の電話相談も対応
- お問合せは24時間365日受付
- 土日・夜間の法律相談も実施
- 全国どこでも対応いたします



