不倫慰謝料の話が出ると、「不倫=必ず慰謝料」と思いがちです。ですが実際は、要件を欠くと請求が通らないこともありますし、請求された側も**支払義務がない(または強く争える)**ケースがあります。
この記事は、結論を急ぐ人のために「不倫慰謝料が請求できない/支払わなくてよい」典型例を、**チェックリスト(10選)**としてまとめたものです。
全体の要件(成立条件)から整理したい場合は、先にこちらを確認すると迷いません。
慰謝料を請求できる条件とは?(不倫慰謝料を中心に)成立要件・支払義務がないケースまで整理
- 自分のケースが「請求できない/支払わなくてよい」に当たりそうかを10項目で確認できる
- 破綻・故意過失なし・時効・証拠不足など、反論の柱(または弱点)を短時間で把握できる
- 当てはまるか判断するための“事実整理”のやり方が分かる
※以下は一般的な整理です。個別事情(別居の実態、交際開始時期、発覚時期、証拠の内容など)で結論が変わります。
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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結論:不倫慰謝料が「通らない/争える」主因は4つ(破綻・故意過失・時効・証拠)
不倫慰謝料が請求できない(または支払義務を争える)理由は、だいたい次の4つに集約されます。
① そもそも不貞行為(肉体関係等)が立証できない(証拠不足)
② 不倫開始時点で婚姻関係が実質的に破綻していた(特に第三者への請求で争点になりやすい)
③ 不倫相手が既婚と知らず、過失もない(第三者の責任が否定される)
④ 時効にかかっている(起算点の整理が重要)
このあと紹介する「典型例10選」に当てはまるかどうかを確認して、当てはまるものがあれば、そこで深掘りするのが効率的です。
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不倫慰謝料が請求できない/支払わなくてよい典型例10選(チェックリスト)
まずは一覧で確認してください。複数当てはまるほど「請求が難しい/支払わなくてよい(少なくとも強く争える)」可能性が上がります。
- 不貞行為(肉体関係等)の証拠が弱い/そもそも不貞行為ではない
- 不倫開始前から婚姻関係が実質的に破綻していた(長期別居・離婚協議など)
- 別居中(家庭内別居含む)の実態から破綻と評価されやすい
- 不倫相手が既婚と知らなかった+注意しても知りえなかった(故意過失なし)
- 「既婚と知った後」の関係継続がなく、責任が否定/限定される事情が強い
- 時効(原則3年・最長20年)にかかっている可能性がある
- すでに示談・和解で免責(清算条項)に合意している/蒸し返しに近い
- 請求する人が配偶者ではない(親族など第三者からの請求)
- 請求相手の特定が誤っている/別人の可能性がある
- 事実関係が曖昧で、立証の見込みが低い(時系列が矛盾・推測中心など)
ここからは、各項目の意味と「何を見れば判断できるか」を短く補足します。
(1)不貞行為(肉体関係等)の証拠が弱い/そもそも不貞行為ではない
不倫慰謝料は、一般に「肉体関係(またはこれに準ずる関係)」が前提になりやすく、単なる親密交際・食事・連絡頻度だけでは争いになりがちです。
請求された側は「証拠は何か(写真?ホテル?LINE?)」を確認し、請求する側は「裁判でも耐えるか」を点検します。
証拠全体の考え方を整理したい場合は、次のまとめが起点になります。
(2)不倫開始前から婚姻関係が実質的に破綻していた(長期別居・離婚協議など)
婚姻関係がすでに壊れていた(回復見込みが乏しい)場合、特に不倫相手(第三者)への請求は否定される方向で争われやすいです。
破綻の判断は、別居期間だけでなく、交流の有無、離婚協議・調停の進行、生活の独立などを総合して見られます。
破綻の判断基準を詳しく知りたい場合は、こちらで整理できます。
婚姻関係が“破綻”していたら慰謝料請求はできない?—破綻の判断基準と請求の可否を徹底解説
(3)別居中(家庭内別居含む)の実態から破綻と評価されやすい
「別居=即破綻」ではありませんが、別居の実態次第では破綻評価が強くなります。
たとえば、連絡がほぼ断絶、同居再開の話し合いがない、離婚に向けた具体的行動が進んでいる、などが重なると争点になります。
別居中のケースに特化して判断ポイントを確認したい場合はこちらです。
別居中の不倫は慰謝料請求できる?別居期間・破綻の判断と「破綻していない」主張の立て方
(4)不倫相手が既婚と知らなかった+注意しても知りえなかった(故意過失なし)
この反論が使えるのは、基本的に不倫相手(第三者)として請求されている側です(不倫した配偶者本人は、自分が既婚であることを当然知っています)。
「知らなかった」だけでなく、「注意しても知りようがなかった(過失がない)」まで言えるかがポイントです。
既婚者と知らなかったのに慰謝料請求された|支払義務(過失)と証拠
(5)「既婚と知った後」の関係継続がなく、責任が否定/限定される事情が強い
交際開始時に独身だと信じる合理的事情があり、既婚を知った後は関係を断っている(肉体関係がない/継続していない)など、事情によっては責任が争えることがあります。
ここは「どの時点で何を知って、どう行動したか」の時系列が勝負になります。
(6)時効(原則3年・最長20年)にかかっている可能性がある
不倫慰謝料は時効が争点になりやすく、特に「いつ知ったか」「誰が相手か分かったのはいつか(加害者の特定)」「不倫が継続していた場合の整理」などで結論が動きます。
時効の基本と注意点は、こちらで整理できます。
不倫慰謝料【時効】|請求期限3年・20年の仕組みや裁判例【弁護士解説】
(7)すでに示談・和解で免責(清算条項)に合意している/蒸し返しに近い
過去に示談書・和解調書などで「これ以上請求しない(清算条項)」に合意していると、同じ問題を蒸し返す請求は難しくなることがあります。
ただし、誰との合意か(配偶者のみ/不倫相手も含むか)、文言の範囲、支払いの趣旨によって扱いが変わるため、書面の確認が重要です。
(8)請求する人が配偶者ではない(親族など第三者からの請求)
典型的な不倫慰謝料(婚姻生活の平穏侵害)は、原則として「配偶者」が請求する類型です。
配偶者以外(親族など)から来た請求は、法的根拠や請求の立て付け自体に無理があることがあり、慎重に検討すべきです。
(9)請求相手の特定が誤っている/別人の可能性がある
同姓同名、勘違い、SNSの誤認などで、別人に請求が来ることもゼロではありません。
請求された側は、相手が挙げる日時・場所・やり取りの内容に整合性があるかを確認し、身に覚えがない部分は曖昧にせず整理します。
(10)事実関係が曖昧で、立証の見込みが低い(時系列が矛盾・推測中心など)
請求する側は、感情的に「怪しい」だけだと立証で詰まります。請求された側は、相手の主張が推測中心なら争点化しやすいです。
この場合は「いつ/どこで/誰と/何があったか」を時系列で詰めるだけで、見込みが見えることが多いです。
なお、破綻が争点になったときの“反論の型”(破綻の抗弁)を深掘りしたい場合は、次の記事が近道です。
当てはまるか判断するための事実整理(時系列・証拠・起算点)
チェックリストに当てはまりそうでも、最後は「事実の並べ方」で結論が変わることがあります。次の3点を押さえると、判断が速くなります。
1)時系列メモを作る(最重要)
- 夫婦の状況:同居/別居の開始日、別居理由、交流の有無、離婚協議・調停の開始時期
- 不倫の状況:交際開始、肉体関係の有無(争うならその根拠)、発覚時期、相手の婚姻認識(いつ知ったか)
- 証拠の所在:LINE、写真、ホテルの出入り、第三者の証言、家計の動き など
2)「破綻」と「別居」を混同しない
別居していても交流がある、再構築の話があった、子どもの行事で家族として動いていた、などがあれば「破綻していない」主張の材料になります。
逆に、長期別居+連絡断絶+離婚へ進む動きが具体的なら「破綻していた」反論が組み立てやすいです。
3)時効は“知った日”の整理が必須
時効は、発覚した日、相手(不倫相手)が誰か特定できた日、継続性があるか、で争いになりがちです。
請求側は「起算点を説明できるか」、被請求側は「もっと早く知っていたのでは」を確認します。
当てはまったときの次の一手(請求する側/請求された側)
当てはまる項目があった場合、「何もしない」のが最悪手になることもあります(逆に、早まって認めるのも危険です)。
(1)請求された側:払う前に“争点”を固定する
- 破綻(別居の実態)で争うのか
- 故意過失(既婚と知らなかった)で争うのか
- 時効で争うのか
- そもそも不貞や証拠で争うのか
焦って謝罪文を出す/その場で一部入金する/不利な文言の示談書にサインする、は後から撤回しづらいことがあります。争点整理をしてから動くのが安全です。
(2)請求する側:弱点があるなら“補強できるか”を判断する
チェックリストに当てはまった場合でも、補強できるなら請求の組み立てを見直す価値はあります。
- 破綻が争点なら、別居後の交流・再構築の動きを具体化できるか
- 故意過失が争点なら、既婚を疑う事情を積み上げられるか
- 時効が争点なら、発覚・特定の時期を説明できるか
- 証拠が弱いなら、裁判で耐える証拠に近づけられるか
(3)迷ったら「要件の全体像」へ戻る
どの項目にもピンと来ない場合は、「請求できる条件」を先に確認し、成立要件から逆算すると整理しやすいです。
慰謝料を請求できる条件とは?(不倫慰謝料を中心に)成立要件・支払義務がないケースまで整理
まとめ
不倫慰謝料が「請求できない/支払わなくてよい」かどうかは、感情よりも要件(破綻・故意過失・時効・証拠)で決まる部分が大きいです。
- 「不貞の立証」「破綻」「故意過失」「時効」のどれが争点かを先に固定する
- 別居中でも請求できることはあるが、実態次第で破綻評価が強くなる
- 既婚と知らなかった主張は、第三者側で「過失なし」まで言えるかが鍵
- 時効は起算点(いつ知ったか・いつ特定したか)で結論が動く
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