不倫慰謝料 減額の完全マニュアル|相場・10の理由・交渉手順・失敗例・裁判の見通し

不倫慰謝料は減額できる?最初に知っておきたい結論

  • 不倫慰謝料を請求されたが、金額を減額できるか知りたい
  • 慰謝料の相場と比べて、高すぎる請求なのか判断したい
  • 減額交渉の進め方と、やってはいけない対応(失敗)を知りたい

不倫(法律上は「不貞行為」)が発覚すると、相手の配偶者から突然「慰謝料を支払ってください」と請求されることがあります。金額が100万円、200万円、場合によってはそれ以上と提示され、「このまま支払うしかないのでは…」と不安になる方も少なくありません。

ただ、結論からいうと 不倫慰謝料は、事情によって減額できる可能性があります。
請求書や内容証明に書かれている金額は、あくまで相手の「請求額(希望額)」であって、そのまま確定するとは限りません。交渉(示談)や裁判の場では、不倫の期間・回数、離婚の有無、夫婦関係の状況などを踏まえて、最終的な金額が調整されます。

一方で、注意点もあります。慰謝料の話は、ざっくり分けると次の2ルートがあります。

  • 減額:支払う前提で、相場や事情に照らして「金額を下げる」
  • 回避・拒否(支払義務を争う):そもそも支払義務があるかを争う(例:不貞行為の立証が弱い、故意・過失がない等)

本記事は、メインキーワードである 「不倫慰謝料 減額」 の検索意図に合わせて、基本は「減額」に焦点を当てて解説します。
ただし、実際には「減額より先に、支払義務自体を検討すべき」ケースもあり得るため、そこは混同しないように入口だけ触れていきます。

慰謝料の減額を成功させるための知識をまとめました!
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

不倫慰謝料に詳しい坂尾陽弁護士

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請求直後の初動:無視せず整理する

不倫慰謝料の減額を目指すにしても、まず大切なのは「初動で崩れない」ことです。請求を受けたときにやりがちな失敗として、次の3つが特に多く見られます。

  • 期限や要求内容を確認しないまま、感情的に連絡してしまう
  • こわくて無視・放置してしまい、手続が進んでしまう
  • 焦って事実と違う説明をしてしまい、後で矛盾が出る

減額交渉は、相場や法的な理由だけでなく、あなたの「対応の仕方」も大きく影響します。ここでは最低限、次の3点を押さえてください。

請求書・内容証明の確認ポイントだけ押さえる

まずは、請求書や内容証明を落ち着いて読み、次をチェックします。

  • 誰が誰に請求しているか(相手本人か、弁護士か)
  • 請求額はいくらか/何を根拠にしているか
  • 支払期限や回答期限があるか
  • 接触禁止・謝罪文提出など、お金以外の要求があるか

期限が切迫しているほど、相手は「早く結論を出したい」状況です。こちらも行動が遅れるほど、交渉の選択肢が狭まりやすい点に注意が必要です。

時系列メモを作る(減額理由につながる素材集め)

減額の主張は「気持ち」ではなく「事情」で組み立てます。そこで、あなたの側で先に時系列を整理しておくと、交渉が一気に進めやすくなります。

  • 不倫はいつ頃から/いつまで、どの程度の期間だったか
  • 肉体関係の回数・頻度のイメージ
  • 相手が既婚者だと知った時期(最初から知っていたか等)
  • 相手夫婦が離婚・別居しているか(わかる範囲で)
  • 発覚後、相手からどんな連絡があり、どう返したか

この整理ができるだけで、後の「相場との比較」や「減額理由の棚卸し」が一段と正確になります。

やってはいけない初動(無視・挑発・証拠処分)
初動で避けたいのは、次のタイプの対応です。詳しくは「慰謝料 請求されたときの初動対応ガイド」をご覧ください。

  • 無視・放置して連絡を断つ(相手の怒りが増幅し、手続に移行しやすい)
  • 逆ギレや挑発的な言い方をする(交渉が決裂しやすい)
  • やり取りの削除など、後で説明がつかなくなる行動をする

減額を狙うなら、まずは「誠実さ」と「冷静さ」を土台にしつつ、後で述べる減額理由を筋道立てて主張していくのが基本です。

不倫慰謝料を減額する前提―相場と見通しを立てる基本要素

不倫慰謝料の減額ができるかを考えるうえで、最初に必要なのが「相場観」です。相場がわからないと、相手の請求が高いのか妥当なのか、判断ができません。

ただし、不倫慰謝料には「必ずこの金額」という決まりはありません。最終的な金額は、当事者の合意(示談)や裁判所の判断で決まり、次のような事情で増減します。

相場の“幅”だけ押さえる(離婚の有無で大きく変わる)

あくまで一般的な目安ですが、不倫慰謝料は次のように語られることが多いです。

  • 離婚しない(婚姻継続):100〜150万円程度
  • 不倫が原因で離婚した:200〜300万円程度

ここで重要なのは、「請求額が300万円だからといって、必ず300万円を払う」わけではない、という点です。相場の目安とあなたの事情を照らし合わせ、減額余地を検討することになります。

また、請求の中には慰謝料以外に、調査費用などが含まれている(または上乗せされて主張される)こともあります。何が含まれている請求なのかも、いったん整理しておくと交渉の見通しが立ちやすくなります。

減額の見通しを左右する評価項目

不倫慰謝料の減額を考えるとき、実務上よく問題になるのは次の観点です。これは交渉でも裁判でも、金額を左右しやすいポイントです。

  • 不倫の期間・回数(短い、少ないほど減額されやすい傾向)
  • 不倫の態様(悪質性が高いか/発覚後も継続したか等)
  • 相手夫婦の状況(離婚・別居の有無、夫婦関係の悪化状況)
  • 婚姻期間の長さ、子どもの有無など家庭への影響
  • あなたの対応(反省・謝罪の有無、連絡を無視したか等)

あなたのケースで「減額理由になりそうな事情」が複数あるほど、交渉材料は厚くなります。逆に、事情が弱い場合は、金額の落とし所を現実的に探る必要が出てきます。

「相場より高い請求」への考え方(交渉の前提)

相手からの請求額が相場より高く見えるとき、減額交渉の出発点はシンプルです。

  • まずは 相場の目安と比べて、どの程度上振れしているか を確認する
  • 次に 上振れが正当化される事情(長期・悪質・離婚直結等)があるか を点検する
  • 正当化が難しければ、次章で整理する 慰謝料減額の理由 を根拠にして、金額の見直しを求めていく

ここまで整理できると、減額交渉は「お願い」ではなく「理由のある提案」に変わります。次は、実際にどんな事情が減額理由になり得るのか、チェックリスト形式で具体的に見ていきましょう。

 

不倫慰謝料が減額されやすい10の理由(チェックポイント)

不倫慰謝料の減額交渉は、「お願い」ではなく、“法的に見て慰謝料が大きくなりにくい事情”を具体的に示すことが重要です。
逆にいうと、あなたに有利な事情があっても、整理できていなければ相手に伝わらず、相場より高い金額のまま固まってしまうことがあります。

まずは、あなたのケースに当てはまるものがないか、ざっとチェックしてみてください。

  • 離婚・別居に至っていない(婚姻継続)
  • 婚姻期間が短い(家庭への影響が限定的)
  • 不倫期間が短い/回数が少ない
  • 不倫前から夫婦関係が悪化していた(破綻に近い)
  • 既婚者と知らなかった/誤信した事情がある
  • 不倫に消極的だった(誘われた・断れなかった等)
  • W不倫(双方が請求し得る構造)
  • 自分だけに請求された/すでに一部支払いがある
  • 支払能力が乏しい(現実的な支払設計が必要)
  • 求償権放棄など、条件調整で減額を引き出せる

ここから先は、それぞれについて「なぜ減額理由になるのか」「どう整理して伝えるべきか」を、交渉に使える形で解説します。
なお、減額の話をするうえでも、嘘や事実隠しは厳禁です。後で矛盾が出ると、減額どころか不利になりやすいので注意してください。

減額の説得力は「感情」ではなく「具体性」です。“いつからいつまで”“どれくらい”“どういう状況だったか”を数字や時系列で整理できるほど強くなります。

離婚・別居に至っていない(婚姻継続)

 

不倫慰謝料の金額を大きく左右しやすいのが、「不倫が原因で離婚したのか」「婚姻を継続しているのか」です。
一般に、離婚に至ったケースは精神的苦痛が大きいと評価されやすく、逆に離婚していない(同居継続・関係修復中等)場合は、相対的に慰謝料が下がりやすい傾向
があります。

ただし、「離婚していない=必ず低額」というわけではありません。次のような点も一緒に見られます。

  • 不倫の期間・回数が長く、悪質性が高いといえるか
  • 発覚後も関係が続いていたか
  • 相手に強い精神的ショックを与える事情があるか

交渉の第一歩としては、相手が“離婚した”前提で請求しているのか、あるいは離婚していないのに高額を提示しているのかを切り分けることが大切です。
請求書や内容証明に「離婚に至った」「別居中」などの記載がなければ、まだ離婚していない可能性もあります。

主張のポイントはシンプルで、たとえば次のような整理になります。

  • 現時点でも婚姻は継続している
  • 別居に至っていない/すでに同居に戻っている(分かる範囲で)
  • 家庭の崩壊という結果が生じていない

婚姻期間が短い/子どもがいない等(家庭への影響が限定的)

夫婦の婚姻期間が長いほど、生活の結びつきが強く、裏切りによる精神的苦痛も大きいと評価されやすい傾向があります。
逆に、婚姻期間が短い場合は、慰謝料が相対的に低く見積もられることがあります。

また、一般論としては、家庭への影響を測る材料として、次のような事情も一緒に語られやすいです。

  • 夫婦の同居期間が短い/結婚後まもなくの出来事
  • 子どもがいない(家庭生活への影響が比較的限定的と評価される余地)
  • 経済的・生活上の結びつきが薄い事情

交渉で大事なのは、「相手を傷つけていない」と言い張ることではなく、“損害の評価が大きくなりにくい事情”として淡々と整理することです。
感情に触れやすいテーマなので、言い方を誤ると逆効果になりやすい点は注意してください。

不倫期間が短い・回数が少ない(短期・単発)

「不倫期間が短い」「肉体関係が少数回」という事情は、減額理由として非常に使いやすい代表例です。
なぜなら、不倫慰謝料は精神的苦痛の大きさに応じて評価されるため、一般論として 長期・反復の関係より、短期・限定的な関係のほうが損害が小さいと整理されやすいからです。

たとえば、交渉での整理材料としては次のような切り口があります。

  • 期間が短い(例:数週間〜数か月程度で終了)
  • 会った回数が少ない(例:数回程度)
  • 発覚後は連絡を断ち、関係が終わっている

ここで重要なのは、相手が「期間・回数」を多めに見積もって請求しているケースがあることです。

たとえばLINEの文面や会った頻度の推測だけで「長期だった」と決めつけられている場合、こちらの実際の事情(いつからいつまで、何回程度か)を、矛盾なく説明できる状態にしておくことが減額の第一歩になります。

最初に時系列メモを固めておくのが重要です。説明がブレると、減額交渉は一気に難しくなります。

不倫前から夫婦関係が悪化・破綻していた(“程度”がポイント)

不倫慰謝料は「不倫によって夫婦関係が損なわれたこと」を前提に評価されます。
そのため、不倫の前から夫婦関係がかなり悪化していた場合は、「不倫による精神的苦痛が相対的に小さい」と整理され、減額につながることがあります。

ただし、この主張は強力な反面、争いになりやすいポイントです。単に「夫婦仲が悪かった」程度では足りず、どの程度“破綻に近かったか”が問題になります。

交渉で使いやすい整理の方向性は、次のようなものです。

  • 別居が長期間続いていた
  • 夫婦の連絡・交流がほとんどなかった
  • 生活費の分離、寝室別、家庭内別居が固定化していた

なお、「破綻していた」場合は、減額ではなく**支払義務自体(請求の可否)**が問題になることもあります。
このあたりは判断を誤ると大きく不利になり得るため、該当しそうな場合は、破綻の基準や主張の組み方を別途整理したうえで進めるのが安全です。

既婚者と知らなかった/誤信した事情がある(故意・過失が弱い)

「相手が既婚者だと知らなかった」「独身だと信じていた」というケースは、単なる減額にとどまらず、責任の有無そのものが問題になり得ます。
とはいえ、現実の交渉では、いきなり“ゼロ”を断言しようとしてこじれることも多いため、まずは次のように落ち着いて整理していくのが基本です。

  • いつ、どの時点で既婚だと認識したのか
  • 独身と信じた根拠は何か(相手の説明、周囲の状況等)
  • 注意すれば気付けた事情があったか(同居家族の話題、休日の過ごし方等)

ここは「言った・言わない」になりやすく、出し方を誤ると一気に泥沼化します。
“減額理由として使える可能性が高い”一方で、扱いが難しい論点でもあるため、丁寧に準備して進めることが重要です。

不倫に消極的だった(誘われた・断れなかった・力関係がある)

あなたが不倫に積極的ではなく、相手からの強い働きかけで関係が始まった場合、責任の重さ(悪質性)の評価に影響することがあります。
典型例としては、職場の上下関係、執拗な誘い、断りにくい力関係などです。

ただし、ここで注意したいのは、言い方を間違えると「開き直り」に見えて逆効果になりやすい点です。
減額交渉での基本姿勢は、次の組み合わせが安全です。

  • 不適切な関係だったことは認め、謝罪と反省の意思は示す
  • そのうえで、経緯として“主導したのは相手側だった”などの事情を淡々と説明する

要するに、「責任逃れ」ではなく「評価すべき事情の提示」として、冷静に出すのがポイントです。

W不倫(相互請求・ゼロ和解があり得る)

あなたも既婚者であるW不倫の場合、理屈のうえでは、相手配偶者だけでなく、あなたの配偶者も慰謝料請求をし得る立場になります。
そのため、交渉上は「双方の請求がぶつかる構造」を踏まえて、落とし所(和解条件)を探りやすくなることがあります。

ただし、W不倫で注意したいのは、安易に「相殺できるからゼロでいい」と言ってしまうことです。
相手の感情を強く刺激し、逆に関係が悪化することがあります。

W不倫での減額を考えるときは、たとえば次のように整理すると安全です。

  • 双方が請求し得る構造であることを前提に、過度な請求になっていないか検討する
  • 解決条件(今後の接触禁止、清算条項、守秘等)を重視して和解を組み立てる

自分だけに請求された/すでに一部支払いがある(“不公平”を交渉材料に)

不倫慰謝料では、「不倫した配偶者」と「不倫相手(あなた)」が共同で責任を負う構造(共同不法行為)が問題になることがあります。
そのため、ケースによっては「なぜ自分だけに請求が来るのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。

ただし、ここは結論を急ぐほど危険です。相手からすると、次のような事情で“あなたにだけ”請求することも現実にあります。

  • まずは支払い能力がありそうな相手に請求している
  • 配偶者側との関係で別の解決(離婚条件等)が動いている
  • すでに相手配偶者が一部を負担している(または見込みがある)

交渉では、「不公平だから払わない」と言うのではなく、**すでに支払い・負担があるなら“二重の評価にならないように調整すべき”**という方向で冷静に整理するのがポイントです。詳しくは不倫慰謝料の二重取り問題肩代わりさせる方法についての記事をご覧ください。

(この論点は別途深掘りすると長くなるため、該当する場合は丁寧に整理して進めるのが安全です。)

支払能力が乏しい(ただし“言い方”と“設計”が重要)

「お金がないから減額してほしい」という主張は、やり方を誤ると逆効果になりやすい代表例です。
強く出しすぎると、相手に「反省がない」「逃げたいだけ」と受け取られてしまい、交渉が硬直することがあります。

減額に結びつけるには、発想を変えるのがポイントです。
つまり、争点は「払える/払えない」ではなく、**“現実に履行できる条件で解決することが双方の利益になる”**という設計にすることです。

交渉の現場で使いやすい考え方は次のとおりです。

  • 一括が難しいなら、分割・期限・支払方法の提案に落とす
  • 口約束ではなく、示談書で条件と清算を明確化する

資金面が厳しい場合でも、条件設計を誤らなければ、結果として支払総額の調整(減額)につながることがあります。

求償権を放棄して減額を引き出す(交渉カード)

不倫慰謝料は、場合によっては「あなたが払った後、配偶者に一部を負担させる(求償)」という発想が出てきます(詳しくは「不倫慰謝料と求償権」で解説しています。)。

ただし、相手夫婦が離婚していない場合などは、結局“家計の中でお金が移動するだけ”になることがあり、被害者側からすると「それなら最初から減らして終わらせたい」と考えることもあります。

そこで実務上よく使われるのが、**「求償権を放棄する代わりに、慰謝料を減額してもらう」**という交渉です。

たとえば、考え方としては次のようになります。

  • あなたが一定額を支払う(ただし減額した金額)
  • その代わり、後から配偶者に負担分を請求しない(求償権放棄)
  • 示談書に“求償しない”ことを明記して、蒸し返しを防ぐ

求償権放棄は、減額交渉で“相手が受け入れやすい交換条件”になりやすい一方、示談書の書き方が重要です。
後でトラブルにならないよう、合意内容は必ず書面で明確に残すことをおすすめします。

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減額が難しい・逆に不利になりやすいケース

不倫慰謝料は、事情次第で減額できる可能性があります。ただし、どんなケースでも大幅に下げられるわけではなく、減額が通りにくい典型パターンもあります。

ここを先に押さえておくと、「無理筋の主張で相手の感情を刺激してしまう」「交渉がこじれて条件が悪化する」といった失敗を避けやすくなります。

減額が通りにくい典型(長期・悪質・離婚直結など)

次のような事情が揃うほど、慰謝料の評価は上がりやすく、減額交渉は難しくなる傾向があります。

  • 不倫期間が長い/関係が反復している(長期間・頻回)
  • 発覚後も関係を続けた、隠し方が悪質と評価されやすい事情がある
  • 不倫が原因で離婚・別居に至った(家庭崩壊に直結している)
  • 相手に強い精神的ダメージを与えたと評価されやすい事情がある
  • 初動対応を誤って相手が感情的になってしまった
  • 不利な言質を取られた/誤った説明をして不信感を持たれた

もちろん、上記に当てはまっても「減額がゼロ」という意味ではありません。
ただし、このタイプの事案では、**“金額を大きく下げる”よりも、“現実的な落とし所をつくって早期に終わらせる”**という発想のほうが結果的に有利になることもあります。

初動・態度で不利を拡大させる例(虚偽・挑発・無視)

同じ事実関係でも、こちらの対応次第で交渉の空気が大きく変わります。減額を狙うなら、次の対応は避けてください。

  • 無視・放置して連絡を断つ
  • 逆ギレや挑発的な言い方をする
  • 嘘や事実隠しでその場をしのごうとする

相手の怒りを増幅させると、減額の余地があっても話し合いが成立しにくくなり、結果として条件が硬直しやすくなります。
「謝罪・誠実な姿勢」と「減額理由の主張」は両立できます。感情を燃やさず、淡々と整理して進めることが大切です。

減額より先に“支払義務自体”を検討すべきサイン

あなたの事案によっては、減額(=支払う前提で金額を下げる)ではなく、そもそも支払義務があるのかが先に問題になることがあります。たとえば、次のような事情がある場合です。

  • 肉体関係(不貞行為)自体が争点になりそう
  • 相手が既婚者だと知らなかった(独身と偽られた等)
  • 不倫前から夫婦関係が破綻していた(破綻の抗弁が問題になり得る)
  • 時効(請求期限)が成立している可能性がある
  • 相手の証拠が弱く、主張が過大に見える

このあたりは判断を誤ると、交渉方針がズレてしまいます。
該当しそうな場合は、本記事の「減額」と並行して、回避・拒否(支払義務の争い)や時効・証拠の整理も検討してください(詳しくは「不倫慰謝料回避の完全マニュアル」をご覧ください。)。

不倫慰謝料の減額交渉の流れ(示談まで:本記事の核)

慰謝料の減額交渉は、勢いで押し切るものではありません。「順番」と「型」を守るだけで、無用な摩擦を減らし、合意に近づきやすくなります。

基本の流れは次のとおりです。

  • 請求内容を確認する(期限・金額・根拠・要求事項)
  • 事実関係を整理する(期間・回数・夫婦状況など)
  • 謝罪の姿勢を示しつつ、減額理由を筋道立てて提示する
  • 金額・支払方法・条件を詰め、示談書にまとめる

最初の返信:謝罪と減額主張を混ぜない

最初のやり取りで多い失敗が、「謝罪」と「減額要求」を同じ文章・同じテンションで出してしまうことです。相手が感情的な段階では、減額の話が“言い訳”として受け取られやすくなります。

おすすめは、次の順序です。

  • 不適切な行為だったことを認め、謝罪と反省を示す
  • そのうえで、落ち着いたトーンで「金額の妥当性」を検討したい旨を伝える
  • 減額理由は、後段で整理して提示する(時間を置いてもよい)

「減額のために謝る」のではなく、誠実に謝ったうえで、法的・実務的に妥当な金額に調整するという姿勢が、結果として交渉を進めやすくします。

減額理由の組み立て方(相場→事情→結論)

減額理由は、思いついた順に並べるより、相手が納得しやすい形に“整形”したほうが強くなります。基本の型は次のとおりです。

  • 相場の枠組みを示す(離婚の有無、期間・回数など評価項目)
  • 自分の事案の事情を、具体的に当てはめる(数字・時系列)
  • その結果、請求額は過大なので見直しを求めたい、と結論づける

たとえば「不倫期間が短い」「離婚していない」「破綻寸前だった」など、具体的な減額理由を、**“評価項目に沿って”**並べ直すだけで説得力が上がります。

減額交渉で強いのは、「気持ち」よりも「事実の整理」です。期間・回数・別居期間など、数字で説明できる部分が増えるほど通りやすくなります。

金額・支払方法の落とし所(分割・期限・条件)※概要

慰謝料の話し合いは、金額だけでなく 「どう払うか」 もセットで決めるのが通常です。ここで大切なのは、無理な条件で合意して後から破綻させないことです。

交渉では、次の観点で落とし所を作ります。

  • 一括が難しいなら、分割・支払期限・支払方法をセットで提案する
  • 支払能力を理由にする場合でも、開き直らず「実行可能な条件」を示す
  • 迷うなら“支払条件と減額”を一体で設計する(後で揉めにくい)

支払方法(分割・借入・減額とセットの考え方)は、別の「払えないときの支払方法ガイド」でより詳しく整理しています。資金面が不安な方は、必ずあわせて確認してください。

示談書で必須の条項(清算条項・求償権など)

減額できても、示談書が弱いと「蒸し返し」「再請求」「追加請求」で揉めることがあります。示談書(合意書)では、最低限次のポイントは押さえてください。

  • 金額(合意額)と支払方法(期日・分割回数・振込先)
  • 遅延した場合の扱い(期限の利益喪失、遅延損害金など)
  • 清算条項(本件について今後互いに請求しない)
  • 求償権の扱い(放棄するのか、一定範囲で留保するのか)
  • 接触禁止・SNS投稿禁止などを入れる場合の範囲(過剰にしない)
  • 守秘条項(家族・職場に知られたくない場合の重要ポイント)

雛形・テンプレを使う場合でも、事案に合わない条項をそのまま入れると事故のもとです。示談書の具体的な作り方は、テンプレ付きの解説記事で詳しく扱っています。

慰謝料減額でよくある失敗パターン(NG集)

「慰謝料 減額 失敗」と検索する方が多いのは、減額理由があっても、対応を間違えると結果が悪くなることが実際にあるからです。
ここでは、特に多い失敗パターンを4つに絞って解説します。

注意

失敗の多くは「減額理由が弱い」よりも、「対応で相手の感情を燃やす」「自分の信用を落とす」ことで起きます。

無視・放置(手続が進む/条件が悪化)

怖くて連絡できず、請求を放置してしまうケースは少なくありません。しかし、無視は基本的に悪手です。

  • 相手の怒りが増幅し、「弁護士に依頼」「訴訟提起」に進みやすい
  • 交渉の余地が狭まり、条件が硬直しやすい
  • “誠意がない”と受け取られ、減額の雰囲気が消える

すぐに結論を出せない場合でも、「確認して検討するので少し時間がほしい」といった形で、完全な沈黙は避けるのが安全です。

逆ギレ・挑発(感情を燃やして交渉決裂)

減額を主張する場面で、相手を責めたり、挑発したりすると、交渉が止まりやすくなります。よくあるのが次のタイプです。

  • 「そっちだって悪いだろ」など責任転嫁に見える言い方をする
  • 「裁判でも何でもやれ」など強い言葉で煽る

減額理由を言うこと自体は構いませんが、言い方がすべてです。謝罪と反省を前提に、減額理由は「評価項目として淡々と」提示しましょう。

嘘・隠しごと(信用崩壊で減額が遠のく)

その場をしのぐための嘘は、後で矛盾が出た瞬間に一気に不利になります。

  • 供述がぶれると「言っていることが信用できない」と評価される
  • 相手が強硬化し、減額が難しくなる
  • 裁判になった場合も不利な印象を持たれやすい

「どこまで言うか」は戦略の問題ですが、言ったことの整合性を崩さないことが最優先です。迷う場合は、先に時系列を整理してから対応しましょう。

嘘をついたつもりがなくても、説明の仕方が下手だったせいで「嘘をつかれた」と相手に思わせることもあるので注意が必要です。

その場で署名・支払い(撤回しにくい)

「早く終わらせたい」という気持ちから、相手に言われるまま示談書にサインしたり、言い値で支払ったりすると、後から修正が難しくなります。

  • 署名前に、金額・支払条件・清算条項・求償権の扱いは必ず確認する
  • 分割の場合は、無理のない回数・金額にする(破綻すると再燃しやすい)
  • 不安があるなら、署名前に弁護士に見てもらう

減額交渉は「早く終わらせる」ことも大切ですが、終わり方を間違えると、より長引くことがあります。焦って決めず、最低限のチェックをしてから合意しましょう。

裁判になっても慰謝料減額はできる?

不倫慰謝料の減額交渉がまとまらない場合、次のステップとして「裁判(訴訟)」に進むことがあります。
ただし、裁判=必ず最後まで争う、というわけではありません。実務上は、裁判の途中で和解が成立して終わるケースも少なくありません。

また、相手から高額な請求を受けている場合、裁判に移行することで 裁判所が“妥当な金額”を基準に検討するため、結果として慰謝料が整理される可能性もあります(もちろん事案によります)。

交渉→訴訟の全体像(和解で終わることも多い)

大まかな流れは、次のイメージです。

  • 請求(内容証明、メール、弁護士からの通知など)
  • 示談交渉(減額理由の整理→提示→条件調整)
  • 決裂した場合は、裁判(訴訟)に移行することがある
  • 裁判中でも、和解(裁判所を介した合意)で終わることがある

「調停」を挟むことも理屈上はありますが、不倫慰謝料(不法行為に基づく損害賠償)は、最初から訴訟で進むケースが多い印象です。
いずれにせよ、裁判になったら突然すべてが決まるのではなく、手続の途中で主張・立証を重ねながら、合意(和解)を目指す場面も多いと思っておくとよいでしょう。

注意

裁判を起こされた(訴状が届いた)場合、無視を続けるのは危険です。期限内に対応しないと、相手の主張どおりに判断が進むリスクがあります。裁判になっても慰謝料の減額は可能ですので早めに弁護士に相談しましょう。

裁判で争点になりやすいポイント(破綻・期間・故意過失など)

裁判では、感情の強さではなく、事実と証拠を前提に「慰謝料額が妥当か」が検討されます。
減額の見通しに関わる代表的な争点は、次のとおりです。

  • 不貞行為(肉体関係)の有無(そもそも支払義務があるかに直結)
  • 不倫期間・回数・態様(短期か、反復か、悪質性が高いか)
  • 不倫前後の夫婦関係(破綻していた/悪化していたか、離婚・別居に至ったか)
  • 既婚者だと知っていたか(故意・過失の有無)
  • 発覚後の対応(反省、関係解消、挑発的対応の有無など)

ここで大切なのは、裁判になると「相手が言った金額をそのまま払う」構造ではない、という点です。
相場や事情から見て過大な請求であれば、裁判所が評価を調整する余地があります。一方で、悪質性が高い・長期・離婚直結などの事情が強い場合は、減額の余地が小さくなり得ます。

裁判は「怖いから避ける」だけでなく、過度な請求を整理する場になり得ることも、現実的な見通しとして押さえておきましょう。

裁判の期間・費用・家族バレの不安について

裁判の期間は、争点の多さや当事者の対応によって変わりますが、一般に次のようなイメージです。

  • 示談交渉だけなら:1〜3か月程度でまとまることもある
  • 裁判まで進むと:数か月〜1年程度かかることもある

費用についても、当事者本人で対応するか、弁護士に依頼するかで変わります。
弁護士費用の詳細は別の「費用」解説で整理していますが、裁判まで見据えるなら「費用対効果(減額幅・手続負担・バレ回避)」を含めて検討したほうが安全です。

また、「裁判になると家族や職場にバレるのでは?」という不安は非常に多いです。
裁判は公開の手続である一方、実際に第三者に知られるかは事情次第で、“絶対にバレない”とも“必ずバレる”とも言い切れません。 書類の送達や郵送物の扱い、生活状況によってリスクは変わります。

不倫がバレたくない気持ちは自然です。家族にバレずに減額する方法もあるのでまずは弁護士にご相談ください。

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弁護士に依頼するメリット・費用の考え方(費用詳細は費用解説へ)

減額交渉はご本人でも進められますが、相手の感情が強い・相手に弁護士が付いている・争点が複雑などの場合、途中で行き詰まることも少なくありません。
そのときに、弁護士への依頼が「支払額を下げる」だけでなく、手続を破綻させないための保険になることがあります。

依頼メリット(窓口一本化・主張整理・示談書の安全性)

弁護士に依頼する代表的なメリットは、次のとおりです。

  • 交渉窓口が弁護士に一本化され、直接のやり取りのストレスが減る
  • 減額理由を「通りやすい形」に整理して主張できる:減額金額がアップ
  • 示談書の条項(清算条項・求償権・支払条件など)で後のトラブルを防ぎやすい
  • 裁判になっても対応できる(訴状対応、答弁、和解交渉など)

特に、不倫慰謝料は「金額」だけでなく「接触禁止」「守秘」「支払い条件」などが絡みます。
減額できても、示談書の穴で揉め直すと意味がないため、書面の安全性まで含めて判断することが大切です。

相談すべきタイミング(相手に弁護士/期限切迫/訴訟示唆など)

次のような状況では、早めに弁護士へ相談したほうが事故を防ぎやすいです。

  • 内容証明や弁護士名義の通知が届いた
  • 請求額が相場から見て明らかに高い(100万円以上)
  • 既婚者と知らなかった、破綻していた等の争点がある
  • 「訴える」「訴状を出す」と言われている
  • 家族・職場に知られたくない事情が強い

「まだ揉めていないから相談は早いかも…」と思う方もいますが、早期のほうが選択肢が多いこともあります。
交渉がこじれる前に、“落とし所の設計”だけでも助けになるケースがあります。

相談前に準備する資料(請求書・時系列・やり取り等)

相談の質を上げるために、最低限次を用意しておくとスムーズです。

  • 請求書(内容証明、メール、LINE、弁護士通知など)
  • 不倫の時系列メモ(期間・回数・発覚経緯・その後の対応)
  • 相手の主張(離婚の有無、金額根拠、要求条件)
  • これまでのやり取りが分かる資料(ただし削除・改ざんはしない)

もっとも、時系列メモや資料を用意できなくても構いません。入念な準備よりは、まず早めに弁護士に相談することを優先してください。

費用の仕組み(相談料・着手金・報酬金など)は事務所ごとに異なります。
不安がある場合は「総額の見込み」「どの範囲まで対応してくれるか」「成功報酬の条件」を先に確認すると安心です。

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よくある質問(FAQ)

減額交渉はどれくらいの期間がかかりますか?

示談交渉だけでまとまるなら、1〜3か月程度で決着するケースもあります。
ただし、相手が高額請求に固執している、相手に弁護士が付いている、争点(破綻・既婚不知など)が多い場合は長引くことがあります。裁判に移行すると数か月〜1年程度かかる場合もあります。

お金がない場合、分割や減額は可能ですか?

可能性はありますが、「払えないからゼロにしてほしい」という言い方は逆効果になりがちです。
現実的には、分割・支払期限・条件の調整を含めて「実行できる形」で和解を作る方向が中心になります。資金面が厳しい場合は、支払方法(分割・借入・条件設計)を整理した解説もあわせて確認してください。

「減額には応じない」と言われたらどうすればいいですか?

交渉では、相手が強気に出ることもあります。その場合は、

  • 減額理由を“評価項目に沿って”整理し直す(期間・回数・離婚の有無など)
  • 条件交渉(求償権放棄、一括払い、支払期限など)で落とし所を探る
  • どうしてもまとまらない場合、裁判で妥当性を整理する可能性も視野に入れる

という順で考えるのが基本です。相手の感情を刺激する言い方を避け、こちらの主張は淡々と積み上げるほうが結果的に近道になることが多いです。

最終的には妥当な金額で解決できるケースが大半ですので、相手が減額に応じないと強固な姿勢であっても、少なくとも弁護士が介入すれば「慰謝料は減額できる」と考えてください。

既婚者だと知らなかった場合、慰謝料はゼロになりますか?

既婚者であることを知らなかった場合、責任(故意・過失)が問題になり、減額にとどまらず支払義務自体が争点になる可能性があります。
ただし、「知らなかった」と言えば必ずゼロになるわけではなく、状況によって判断が分かれます(気付けた事情があったか等)。扱いが難しい論点なので、時系列の整理や説明の整合性を固めたうえで進めることが重要です。

まとめ:減額のための行動チェック(次の一手)

不倫慰謝料は、相手に言われた金額をそのまま支払う必要があるとは限りません。
ただし、減額を目指すなら「初動」「整理」「交渉の型」を外さないことが大切です。

  • 請求を無視せず、期限と要求内容を確認する
  • 相場の枠組みで、請求額が過大かどうかを一度整理する
  • 不倫期間・回数・離婚の有無など、減額理由(事情)を具体化する
  • 交渉は「謝罪」と「減額主張」を分け、型に沿って進める
  • 示談書では清算条項・求償権・支払条件を必ず確認する

減額交渉は、焦って動くほど失敗しやすくなります。事実を整理し、落ち着いて“通る主張”を組み立てることが、適正額で早期解決する一番の近道です。

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