不倫慰謝料をめぐって「時効」という言葉を聞くと、
- もう何年も前の不倫だけど、まだ慰謝料を請求できるのか
- 過去の不倫について突然請求書が届いたが、本当に支払う必要があるのか
- 「3年で時効」と聞いたけれど、自分のケースにそのまま当てはまるのか
といった不安を抱える方が多いです。
まず押さえておきたいのは、「時効=請求できる期限」と、請求書などに書かれている「支払い期限(支払期日)」はまったく別物だということです。本記事では、法律で定められた「不倫慰謝料の時効」を中心に解説しつつ、支払い期限についても簡単に触れていきます。
この記事では次のようなお悩みにお答えします。
- 不倫慰謝料の時効は何年で、いつからカウントが始まるのか知りたい
- 「配偶者に対して」「不倫相手に対して」など、誰に請求するかで時効が変わるのかを知りたい
- 何年も前の不倫について突然請求されたが、もう時効ではないか確認したい
- 時効にかかりそうな状態で、**今からできる対策(請求側・された側の両方)**を知りたい
不倫慰謝料の「時効」とは?この記事で分かること
不倫慰謝料のトラブルでは、「期限」に関する誤解がとても多く見られます。まずは、本記事のゴールと、押さえておきたい前提を整理しておきましょう。
不倫慰謝料の「時効」は“請求できる期限”のこと
法律上の「時効」とは、簡単に言うと**『その権利を行使できる期限』**のことです。不倫慰謝料の場面では、次のようにイメージしておくと分かりやすくなります。
- 不倫をされた側から見た「時効」
→ 『不倫慰謝料を請求できる期限』(これを過ぎると、原則として請求しても認められない) - 不倫をした側・慰謝料を請求された側から見た「時効」
→ 『時効を主張すれば、支払いを拒める可能性がある期限』
つまり、同じ「時効」という言葉でも、立場によって見え方が違うだけで、法律上は「慰謝料請求権(お金を請求する権利)の有効期間」の話をしていることになります。
「請求期限(時効)」と「支払い期限」は別物
ここで混同しやすいのが、請求書・内容証明・示談書などに書かれている**「支払い期限(支払期日)」**です。
- 請求期限(時効)
→ 法律で決まっている「慰謝料を請求できる期間」。不倫の事実や不倫相手を知った日などを基準に、原則3年・最長20年と定められている。 - 支払い期限(支払期日)
→ 請求書や示談書で「◯月◯日までに◯万円を支払ってください」と書かれている日。- これは法律で一律に決まっているわけではなく、相手が提示した期日に過ぎない。
ですから、
- 「支払い期限までに払わなかった=すぐに時効」というわけではありませんし、
- 「時効まで余裕があるから、支払い期限は無視してよい」という話でもありません。
本記事では、とくに「請求期限(時効)」を中心に解説し、支払い期限や回答期限については別記事で詳しく整理します。
本記事でできること
本記事を一通り読んでいただくと、少なくとも次のポイントは整理できるはずです。
- 不倫慰謝料の時効が**「知った日から3年・最長20年」**というルールで決まっていること
- 「配偶者に請求する場合」「不倫相手に請求する場合」で、時効の起算点が変わる理由が分かること
- 「繰り返し・長期の不倫」「離婚後に不倫が判明した場合」など、グレーなケースで何が問題になるのかイメージできること
- 慰謝料を請求したい側/請求された側それぞれが、時効をめぐってどんな行動を取るべきかの方向性が見えること
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不倫慰謝料の時効の基本ルール(3年と20年の仕組み)
ここからは、法律上の条文に沿って、不倫慰謝料の時効がどのように決まっているのかを整理していきます。まずは「3年」と「20年」という2つの期間の意味を、シンプルな形で押さえましょう。
不倫慰謝料の時効は「知った日から3年・最長20年」
不倫慰謝料は、法律上は**「不法行為に基づく損害賠償請求権」**という位置づけになります。不法行為の時効は、民法で次のように定められています(条文そのものは要約します)。
- 被害者が損害と加害者を知った時から3年が経過すると、請求権は時効で消滅する。
- 不法行為の時から20年が経過しても、同じように請求権は時効で消滅する。
不倫慰謝料に当てはめると、次のようなイメージです。
- 不倫された側が、不倫の事実と不倫相手(加害者)を知った時から3年
→ これが、実務上もっとも重要な「3年」の時効。 - 不倫が行われた時点から数えて20年が経ってしまった場合
→ 不倫の事実を知らなかったとしても、原則として請求はできない。
つまり、
① 不倫の事実と不倫相手を知ってから3年
② 不倫行為自体から20年
のどちらか早い方が来た時点で、時効が完成するというイメージです。
実務では、②の「20年」が問題になることは多くありません。多くのケースで、「不倫が発覚してから3年以内かどうか」が焦点になります。
誰に請求するかで「起算点」が変わる
もう一つ重要なのが、「誰に対して、どんな慰謝料を請求するのか」によって、時効がいつからスタートするかが変わるという点です。
大まかには、次の3パターンを区別して考える必要があります。
- 不倫をした自分の配偶者に対して請求する不倫慰謝料
- 不倫相手(配偶者ではない側)に対して請求する不倫慰謝料
- 離婚に至ったことによる「離婚慰謝料」
- 配偶者に対する不倫慰謝料
配偶者に対しては、
- 「不倫の事実」
- 「その配偶者が加害者であること」
の両方を知った時から3年が時効の起算点になります。
配偶者については、通常、住所や氏名などの情報に疑いの余地はありませんので、「不倫の事実を知った時」=「損害および加害者を知った時」となる場面が多いです。
- 不倫相手に対する不倫慰謝料
不倫相手に対する慰謝料請求では、
- 相手の顔は見たことがあるが、名前や住所までは分からない
- SNSのアカウント名だけ知っている
といった状態があり得ます。
この場合、**「慰謝料を請求できる程度に、不倫相手の氏名や住所を特定していたか」**が問題になります。顔だけ見ただけでは「加害者を知った」とまでは言えず、判決でも「具体的に誰かを特定できる状態かどうか」が重視されています。
つまり、不倫相手に対する時効の起算点は、
「不倫の事実」+「不倫相手の身元を特定できた時」
の両方がそろった時点、と理解しておくとよいでしょう。
- 離婚慰謝料との関係
不倫が原因で離婚に至った場合、
- 不貞行為そのものによる精神的苦痛(不倫慰謝料)
- 離婚という結果に至ったことによる精神的苦痛(離婚慰謝料)
を区別できると考えられています。
このうち、離婚慰謝料については「離婚が成立した日」から3年が時効の起算点になるというのが原則です。他方で、不倫相手に対しては、原則として離婚慰謝料まで請求することはできず、不倫慰謝料のみが問題になります(この点は後述の最高裁判決で整理されています)。
最高裁平成31年2月19日判決が示したこと
不倫慰謝料の時効を語るうえで、最高裁平成31年2月19日判決は外せない判例です。少しだけ内容をかみ砕いて紹介しておきます。
この事件では、
- 夫(原告)が、妻の不倫相手である男性(被告)に対して慰謝料を請求した
- 夫は、不倫の事実自体は数年前から知っていたが、離婚が成立したのはもっと後だった
- 離婚から3年以内に訴えを起こしたものの、不倫を知ってからは5年以上経っていた
という事情がありました。
夫の主張は、「離婚に至った精神的苦痛に対する離婚慰謝料なのだから、離婚成立日から3年が時効の起算点だ」というものです。
これに対して最高裁は、おおまかに次のように判断しました。
- 不倫相手という第三者に対しては、特別な事情がない限り、離婚慰謝料を請求することはできない。
- 不倫相手に対して請求できるのは、あくまで**不倫行為そのものによる慰謝料(不倫慰謝料)**である。
- したがって、時効の起算点は「不倫の事実と加害者を知った時」であり、離婚成立日から3年ではない。
つまり、この判決が確認したのは、不倫相手に対する慰謝料請求の時効は、「不倫を知った時から3年」で見るべきという点です。離婚慰謝料と不倫慰謝料をきちんと分けて考える必要がある、という整理でもあります。
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時効の起算点が問題になる典型パターン
「不倫慰謝料の時効は3年」と聞くと、カレンダーを見て単純に判断してしまいそうになりますが、実際の裁判では
- いつ「損害および加害者を知った」と言えるのか
- どの時点の不倫行為までを慰謝料の対象にできるのか
が激しく争われます。この章では、典型的なパターンごとに、起算点がどう問題になるのかを整理します。
「損害および加害者を知ったとき」とはいつか
まず押さえておきたいのが、民法上の「損害および加害者を知った時」という言葉の意味です。これには、大きく分けて二つの要素があります。
- 損害を知った時
→ 不倫という不法行為により、精神的なダメージ(損害)が生じたことを認識した時 - 加害者を知った時
→ その損害を引き起こした相手が誰なのか、慰謝料請求が「事実上可能な程度」に分かった時
判例では、「加害者を知った」と言えるかどうかについて、
- 単に顔を見たことがあるだけ
- 名前は知っているが、住所や連絡先が分からない
といった段階では、まだ**「賠償請求が事実上可能な程度に知った」とは言えない**と判断されることがあります。
顔だけ知っている・SNSだけ知っている場合
例えば、夫がある女性と頻繁に会っていることに気付いて「怪しい」と感じていたとしても、
- その女性の本名や住所が分からない
- SNSのハンドルネームしか分からない
といった状態では、すぐに内容証明を送ったり訴訟を起こすことは難しいでしょう。このようなケースでは、多くの場合、
・興信所の調査報告書で氏名・住所が判明した時点
・住民票や戸籍謄本を取り寄せて、不倫相手の身元を知った時点
が「加害者を知った時」と評価されます。
「なんとなく知っていた」では足りないこともある
中には、不倫をした配偶者が「昔から関係があった」と打ち明けていた、というケースもあります。
この場合でも、
- いつ、どの程度具体的に話していたのか
- その時点で不倫相手の身元をどこまで把握していたのか
によって、時効の起算点が変わり得ます。「何となく噂で聞いていた」程度では、裁判所が直ちに「損害および加害者を知った」と認めるとは限りません。
繰り返し・長期の不倫の場合の考え方
次に問題となるのが、不倫が一度きりではなく長期間にわたって繰り返されているケースです。
長期不倫では、
- 数年前から不倫関係が始まり
- 一度「反省する」と約束した後も、実は関係が続いていた
といった事情がよく見られます。このような場合、「いつ時効がスタートするのか」が問題になります。
過去分は時効でも、最近分は時効ではないことがある
裁判例の中には、
- 最初の発覚から一定期間については時効が完成している
- しかし、その後も不倫関係が続いていた期間については、別個の不法行為として慰謝料請求の対象にできる
と判断したものがあります。
イメージとしては、次のようなイメージです。
- AさんとBさんの不倫が、5年前から2年前まで続いていた
- 3年前の時点で一度発覚したが、その後も1年間、不倫が継続していた
- 被害者が訴えを起こしたのは、発覚から4年後
この場合、
- 発覚から3年を超えている最初の数年間の分については、時効が完成しているとみなされる可能性が高い
- しかし、発覚後も続いていた不倫行為については、時効期間内と評価され、慰謝料の算定に含められる
といった判断がされることがあります。
「一連の不倫」と見るか、「複数の不倫」と見るか
もう一つのポイントは、裁判所が
- 不倫の全期間を「一連の不法行為」と見るのか
- ある時点で区切って「別々の不法行為」と見るのか
という点です。
例えば、
- 一度は夫婦で話し合い、誓約書まで作った
- その後しばらくは関係が途切れていたが、数年後に再び不倫関係になった
ような場合、後半の不倫関係は**「新たな不法行為」として扱われる余地**があります。このときは、後半部分については改めて「不倫の事実と加害者を知った時」から3年、というカウントになり得ます。
離婚後に不倫が発覚した場合
最後に、離婚後になって初めて不倫の事実を知った場合について触れておきます。
離婚後発覚型の事案では、
- そもそも不倫慰謝料を請求できるのか
- 請求できるとして、時効はいつからスタートするのか
の二つが問題になります。
離婚後に不倫を知った場合の時効の起算点
時効の起算点だけを取り出して考えると、民法の条文上は、
離婚後に興信所の調査などによって、不倫の事実と加害者を知った時
が「損害および加害者を知った時」に当たると考えられます。実際、裁判例の中には、
- 離婚後に調査報告書で不倫が判明した
- 報告書の日付から訴訟提起まで3年以上経っていない
といった事情を踏まえ、「時効は完成していない」と判断したものもあります。
そもそも慰謝料請求が認められないケースもある
もっとも、離婚後発覚型では、時効以前に「そもそも不倫慰謝料を認めるべきか」という問題が立ちはだかります。
不倫慰謝料は、
不倫によって平穏な夫婦関係が侵害されたことによる精神的苦痛
に対する賠償です。もし、
- 離婚時点で既に婚姻関係が破綻していた
- 不倫が発覚してもしなくても、離婚という結果は同じだった
と評価される事情があると、不倫行為と損害(夫婦関係の破綻)の間に因果関係がないとして、慰謝料請求自体が認められないことがあります。
また、
- 離婚後かなりの年月が経過してから、偶然不倫を知った
- その間、元配偶者との関係は完全に切れていた
といったケースでは、「平穏な夫婦関係が侵害された」というよりも、「過去の事実を知ってショックを受けた」という側面が強くなり、慰謝料の範囲や金額が大きく制限されることもあります。
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ここまでで、不倫慰謝料の時効について、
- 基本ルール(3年・20年)
- 配偶者/不倫相手/離婚慰謝料の違い
- 起算点が問題になる典型パターン
の全体像を整理しました。次のパート以降では、「時効を止める・伸ばす方法」「時効を主張して支払いを免れることができるのか」といった、より実務的なポイントを掘り下げていきます。
不倫慰謝料の時効に関する代表的な裁判例
ここからは、実際の裁判例を通して、不倫慰謝料の時効がどのように判断されているかを見ていきます。裁判例を知っておくと、
- 自分のケースが時効かどうかの「感覚」
- 裁判所がどこを重視しているのか
がイメージしやすくなります。
不倫相手を特定できた時点を起算点とした裁判例
まずは、**「不倫相手をいつ特定できたか」**が争点になった裁判例です。
ある東京地方裁判所の事件では、次のような事情がありました。
- 夫は、妻が誰かと不倫をしていることは離婚の前から薄々気づいていた。
- しかし、その不倫相手が誰なのか、名前も住所も分からなかった。
- 離婚後、養育費の支払い状況を確認するために戸籍謄本を取り寄せたところ、その戸籍から不倫相手の男性の氏名・住所を知ることになった。
- 夫は、その後3年以内に、不倫相手の男性に対して慰謝料請求訴訟を提起した。
このケースで、不倫相手側は「夫はもっと前から不倫を知っていたのだから、3年の時効は既に過ぎている」と主張しました。
しかし、裁判所は、
- 夫は以前から「妻に不倫の疑いがある」と感じていたとしても、
- 不倫相手の身元を具体的に知ったのは戸籍謄本を取寄せた時点である
と判断し、その時点から3年以内であれば時効は完成していないとしました。
この裁判例から読み取れるポイントは、
- 「損害(不倫による精神的苦痛)」を知っただけでは足りず、
慰謝料を請求できる程度に加害者(不倫相手)を特定できたかが重要になる。 - 顔を一度見た程度、あだ名だけ知っている程度では、
直ちに「加害者を知った」とは限らない。
不倫相手に対する時効が問題となるときは、
「いつ、どのタイミングで氏名や住所まで把握したのか」を、できるだけ具体的に振り返っておくことが大切です。
繰り返し・長期の不倫に関する裁判例
次に、不倫が長期間続いたケースで、どこまでが時効にかかるかが争われた裁判例を見てみます。
ある裁判例では、おおむね次のような事案が問題になりました。
- 夫と不倫相手の関係は、10年以上にわたり断続的に続いていた。
- 妻は、関係の途中で一度不倫を知り、夫と不倫相手に対して抗議した。
- 二人は「二度と会わない」と約束したが、実際にはその後も不倫関係が続いていた。
- 妻は、不倫が完全に終わったと思っていた時期もあったが、数年後に再び不倫の証拠を掴み、最終的に慰謝料を請求した。
この事件で裁判所は、
- 最初に不倫が発覚した時点から3年以上が経過している過去の期間については、
- 消滅時効が完成していると判断。
- しかし、その後も続いていた不倫行為(再発以降の期間)については、
- 別個の不法行為として、慰謝料の算定要素に含めることができるとしました。
ここで重要なのは、
「不倫の全期間が一つのブロックとして評価されるわけではなく、状況によっては期間ごとに分けて考えられる」
という点です。
とくに、
- 一度は不倫関係が解消されたと信じていた
- 誓約書や謝罪文を交わしていったん区切りが付いた
といった事情があると、その後に再び始まった不倫は新たな不法行為と評価される余地があります。
長期不倫の場合、「いつからいつまでの分が請求可能なのか」という視点で整理することが重要です。
婚姻関係の破たん・離婚後発覚が絡む裁判例
もう一つ、婚姻関係の破たんや離婚後に不倫が発覚したケースについての裁判例も押さえておきましょう。
裁判例の中には、
- 夫婦の関係が既に形だけになっていた
- 別居が長期間続いており、実質的に夫婦関係は解消していた
といった事情がある場合に、そもそも不倫慰謝料を認めないと判断したものがいくつも存在します。
なぜなら、不倫慰謝料は、
「平穏な夫婦関係が、不倫によって侵害されたこと」
に対する損害賠償だからです。すでに夫婦関係が破たんしており、
- 同居もしていない
- 会話や生活実態もない
といった状態であれば、不倫行為があったとしても「破たんした夫婦関係をさらに侵害した」とまでは言えない、という考え方が取られることがあります。
また、離婚後に不倫が発覚したケースについては、
- 離婚時点で「平穏な婚姻生活」はすでに存在していない
- 不倫行為と離婚・精神的損害との因果関係が弱い
と判断され、慰謝料請求が否定される可能性もあります。
このような事案では、
- 「時効かどうか」という問題
- 「そもそも慰謝料を認めるべきか」という問題
が重なり合うため、裁判所の判断も複雑になりがちです。
最高裁平成31年2月19日判決から学べること
先ほども触れた、最高裁平成31年2月19日判決は、不倫慰謝料の時効を考えるうえで象徴的な事件です。
この判決のポイントを、あらためて整理すると次のようになります。
- 不倫相手に対しては、原則として**「離婚慰謝料」は請求できない**。
(例外的に、夫婦を離婚させることを強く意図した悪質な干渉などがある場合を除く) - 不倫相手に対する慰謝料請求は、あくまで**「不倫そのものによる慰謝料(不倫慰謝料)」**である。
- そのため、時効の起算点は「不倫の事実と加害者を知った時」であり、
離婚が成立した時ではない。
この判決から、実務上の教訓として次のようなことが言えます。
- 不倫相手に慰謝料を請求したいのであれば、
「不倫を知ってから3年以内」に動く必要があること。
- 「離婚してから3年以内だから大丈夫」と思っていると、
すでに不倫慰謝料の時効だけが先に完成している可能性があること。
- 不倫慰謝料を巡る裁判では、
「いつ、どの程度まで不倫の事実を知っていたか」が細かく争われうること。
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不倫慰謝料を請求する側:時効を止める・伸ばす方法
ここまで見てきたとおり、不倫慰謝料には**「不倫を知ってから3年・最長20年」**という時効があります。すでに不倫から数年が経っている場合、
- 「3年ギリギリだけど、まだ準備が整っていない」
- 「相手が話し合いに応じてくれず、時効になってしまいそう」
という状況もあり得ます。この章では、請求する側の立場から、時効を止める・伸ばすために使える手段を整理します。
まずは「いつから3年か」を冷静に確認する
具体的な手段に入る前に、最初にやるべきことは、
「不倫の事実と不倫相手をいつ知ったのか」をできるだけ明確にすること
です。ここを曖昧にしたまま動き出すと、
- 本当はまだ時効になっていないのに、諦めてしまう
- 逆に、もう時効が完成しているのに、訴訟を起こしてしまう
といったミスにつながります。
次のような点をメモや時系列表に整理しておくと、弁護士に相談する際にも役立ちます。
- 初めて「不倫かもしれない」と疑った時期
(例:LINEやメールを見た/帰宅時間が極端に遅くなったなど) - 「不倫の事実がほぼ確実だ」と思った出来事
(例:ホテルのレシート、親密な写真、GPS履歴など) - 不倫相手の氏名・住所・職場などを把握したタイミング
(例:興信所の報告書の日付、住民票や戸籍を確認した日) - 別居や離婚の話し合いが始まった時期・離婚が成立した日
同じ「不倫を知った」という表現でも、
- どの程度の証拠が揃っていたか
- 誰について(配偶者か不倫相手か)知っていたのか
によって、時効の評価が変わり得ます。まずは、事実をできる限り正確に整理しておきましょう。
内容証明郵便による「6か月の完成猶予」
時効が迫っているときに、比較的使いやすい手段が**「内容証明郵便による催告」**です。
内容証明郵便とは、
「いつ」「誰が」「誰に」「どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれる郵便
のこと。これを使って不倫相手に慰謝料請求を行うと、次のような法律上の効果があります。
- 時効完成の直前に内容証明で催告すると、そこから6か月間、時効の完成が猶予される。
- ただし、6か月の間に訴訟や調停など、より強い法的手続を取らなければ、再び時効が近づいてくる。
実務では、次のような使い方をすることが多いです。
- 不倫を知ってからすでに2年半〜2年10か月ほど経っている
→ 訴訟の準備を進めつつ、まず内容証明で正式に慰謝料を請求する。 - 相手が話し合いに応じるかどうか分からない
→ 「こちらは本気で請求する意思がある」というメッセージとしても有効。
ただし、内容証明でできるのはあくまで「6か月の完成猶予」だけです。
その間に交渉が長引いてしまい、結局訴訟も起こさないまま6か月が過ぎると、時効が完成してしまうリスクがあります。
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訴訟・調停など裁判手続で時効を「更新」する
時効を本格的に止めてしまいたい場合は、裁判所での手続を検討することになります。典型的には、次のような手段があります。
- 不倫相手や配偶者に対する慰謝料請求訴訟を提起する
- 離婚や慰謝料に関する調停を申し立てる
- 慰謝料を支払う義務があることの確認を求める債務不存在確認訴訟とは逆に、「支払義務がある」ことを前提とした訴訟を起こす場合もある
裁判所に訴えを起こしたり、調停を申し立てると、
- 手続きが続いている間は時効の完成が猶予され、
- 一定のタイミングで**「時効の更新」**という扱いになり、そこから新たに時効期間が進行する
という効果が認められます。
「裁判まではしたくない」と感じる方も多いのですが、
- 相手が全く話し合いに応じない
- 3年がかなり近づいている
といった場合には、「請求権を守るための最後の手段」として真剣に検討する価値があります。
債務承認・協議合意を利用する場合の注意点
改正民法では、時効に関して**「完成猶予」「更新」**という概念が整理され、
内容証明以外にも次のような事由で時効が動くようになりました。
- 不倫相手が「慰謝料を支払う」と認める、いわゆる債務の承認
- 双方が「慰謝料について協議を行う」という書面の合意を結ぶ
例えば、
- 不倫相手が「分割で払わせてほしい」「金額を減らしてほしい」と交渉してくる
- その際に、書面やメールで「支払う意思」を表明する
といった場面では、債務の承認があったとして時効が更新される可能性があります。
もっとも、これらの手段は法律的な評価がやや複雑で、
- どの時点で「承認があった」とみなされるのか
- どの程度の文言で協議の合意が成立するのか
などを巡って、将来的に争いになるリスクもあります。
そのため、
- 単に口頭で「払います」と言わせるだけでなく、
- 必要に応じて弁護士を通じて文面や合意書の内容を整える
といった慎重な対応が大切です。
不倫慰謝料を請求された側:時効の援用で支払いを免れることはできるか
ここからは逆に、不倫慰謝料を請求された側の視点から、時効について考えていきます。
- 「もう何年も前に終わった不倫なのに、今さら請求された」
- 「時効になっているのでは?と感じている」
という方にとって、**「時効の援用」**は重要なキーワードです。
自分のケースが「時効かもしれない」と思ったときのチェックポイント
まず、「時効が完成しているかもしれない」と感じた場合に、確認しておきたいポイントを整理しておきましょう。
- 不倫の期間
→ 最初の不貞行為はいつ頃か/最後に肉体関係を持ったのはいつか - 不倫被害者(配偶者側)が、不倫の事実をいつ知ったか
→ 不倫をした配偶者から聞かされた時期、探偵報告書の日付、LINEやメールが見つかった時期など - 不倫被害者が、不倫相手であるあなたをいつ特定したか
→ 実名や住所まで知った時期/会ったことがあるかどうか - それ以降、慰謝料に関して内容証明や訴訟などの動きがあったかどうか
→ 過去に内容証明が届いている場合、そこから6か月の猶予が生じている可能性
ここで重要なのは、「不倫をした時から3年」ではなく、あくまで**「不倫の事実と加害者を知った時から3年」**という点です。
例えば、
- 不倫自体は5年前に終わっているが、被害者が知ったのは2年前で、
- そこから3年が経過していない場合
には、まだ時効が完成していない可能性が高くなります。
逆に、
- 不倫被害者が3年以上前から不倫の事実と相手を知っていた
- その後も内容証明や訴訟などの手続が取られていない
といった事情がある場合、時効の成立を主張できる余地があります。
時効の援用」とは何か〜主張の仕方のイメージ
「時効の援用」とは、
「この慰謝料請求は既に時効が完成しているので、支払う義務はありません」
と、正式に主張することです。時効は、裁判所が自動的に判断してくれるものではなく、援用(主張)しない限り考慮されません。
時効の援用は、
- 裁判の中で主張する
- 裁判になる前に、内容証明郵便などで「時効を理由に支払わない」ことを伝える
といった方法で行われます。
書面のイメージとしては、次のような内容になります(あくまでイメージです)。
- 不倫の事実や時期について簡潔に整理する
- 不倫被害者が不倫の事実と加害者を知った時期が、すでに3年以上前であることを指摘する
- 民法上の時効規定を踏まえ、「本件慰謝料請求権は時効により消滅していると考えられる」旨を明記する
- そのうえで、「時効を援用し、一切の支払義務を負わない」と結論づける
もっとも、どの時点を「知った時」と評価できるかは、当事者間で認識が食い違うことが多く、
最終的には裁判所が判断するテーマでもあります。
そのため、「何となく3年以上経っていそうだから」といった印象だけで援用するのではなく、
事実関係をできるだけ正確に整理した上で、専門家にアドバイスを求めるのが望ましいと言えます。
安易な「時効主張」が招くリスク
「時効が完成しているかもしれない」と感じたときに、
最も避けたいのが十分な検討もなく時効を盾にすることです。
なぜなら、次のようなリスクがあるからです。
- 実はまだ時効が完成していなかった場合、
「時効が完成している」と偽って主張することになり、不誠実な対応と評価されるおそれがある。 - 不倫被害者側の怒りをかえって強め、
裁判に発展して慰謝料が増額される要素として扱われる可能性がある。 - 「時効を理由に一切払わない」という強硬な態度をとることで、
減額交渉などの柔軟な解決のチャンスを自ら潰してしまう。
とくに、「時効にかかっているかどうか微妙なライン」のケースでは、
- 争って勝てる見込みがどの程度あるのか
- 裁判になった場合の費用や時間、家族・職場への影響はどうか
といった点を総合的に考える必要があります。
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時効が微妙なときは「減額交渉」も視野に入れる
最後に、時効の成立が微妙なケースでの選択肢について触れておきます。
- 不倫の事実を知ったタイミングに争いがある
- 不倫相手をいつ特定したかがはっきりしない
- 途中で内容証明が送られており、その法律効果が問題になる
といった場合、裁判で白黒はっきりさせるのは簡単ではありません。
そのようなときには、
- 時効の争点も踏まえたうえで、慰謝料の金額や支払方法の「現実的な落としどころ」を探る
- 「無条件に払う」のでも「一切払わない」のでもなく、交渉の中で減額や分割払いを提案する
という選択肢も十分にあります。
実務上も、
- 不倫慰謝料の「相場」や事案の重さ
- 不倫期間や回数、婚姻関係の破たん状況
- 時効の争点がどこまであるか
などを総合した結果として、当事者同士の話し合いや弁護士を通じた交渉の中で、一定額で和解するという解決が数多く見られます。
もしあなたが不倫慰謝料を請求されており、
- 時効かどうかはっきりしない
- でも、できれば家族や職場に知られず、早めに終わらせたい
と考えているのであれば、「時効の援用」一本に絞るのではなく、
減額交渉を含めた柔軟な選択肢を弁護士と一緒に検討することをおすすめします。
不倫慰謝料の時効と婚姻関係の破綻・離婚との関係
ここまで、不倫慰謝料の「時効」そのものに焦点を当てて解説してきました。
しかし実務では、婚姻関係の破綻や離婚のタイミングが絡むことで、
- そもそも慰謝料請求が認められるのか
- 認められるとして、時効はどこから進行するのか
という点がさらに複雑になります。
婚姻関係が「破綻」していた場合は、そもそも慰謝料請求できないことも
不倫慰謝料はあくまで、
「平穏な婚姻生活が、不貞行為によって侵害されたこと」
に対する損害賠償です。
そのため、
- すでに夫婦としての実態がなくなっていた
- 長期別居・暴力・経済的な放置などにより、実質的に婚姻関係は壊れていた
と評価されるような場合には、そもそも不倫慰謝料が認められないという結論もあり得ます。
具体的には、次のような事情が重なると「婚姻関係は破綻していた」と判断されやすくなります。
- 数年以上にわたる別居状態(別居理由や生活費の支払い状況も考慮)
- 夫婦間に実質的な会話や協力関係がない状態が長期間続いていた
- 暴力・モラハラ・生活費の不払いなどにより、すでに夫婦関係が崩壊していた
- 離婚の話し合いや離婚届の準備が具体的に進んでいた など
こうした事情が認められた場合、裁判所は
「すでに保護に値する婚姻共同生活は存在していなかった」
として、不倫相手の不法行為責任を否定することがあります。
つまり、
- 婚姻関係がまだ続いていたか
- それとも、既に客観的に見て破綻していたか
という点は、「慰謝料が認められるか否か」という入り口の部分で大きな意味を持ちます。
時効だけでなく、
- 破綻の有無
- 破綻の時期
も含めて、トータルで事案を評価する必要があるのです。
離婚後に不倫を知った場合のポイント
次に、離婚後になって初めて不倫が発覚したケースを考えてみます。
例えば、
- 離婚後しばらくしてから、元配偶者の不倫を知った
- 興信所の調査や第三者からの情報提供で、不倫相手と不貞の事実が判明した
というような場合です。
このケースでは、
- 時効の起算点
- そもそも慰謝料請求が認められるか
の両方が問題になります。
- 時効の起算点
時効の起算点だけを条文通りに考えれば、
不倫の事実と不倫相手(加害者)を知った時点
から3年間が、消滅時効の期間となります。
離婚の時点では不倫の存在を知らなかったのであれば、
- 離婚時から時効がスタートするのではなく、
- 離婚後に不倫を知ったタイミングから3年
というカウントになるのが基本的な考え方です。
- 慰謝料請求が認められるかどうか
もっと難しいのが、離婚後に発覚した不倫について、そもそも慰謝料が認められるかという問題です。
先ほど見たように、不倫慰謝料は「平穏な婚姻生活」が侵害されたことによる損害を前提とします。
離婚後に不倫が発覚したケースでは、
- 離婚自体が不倫とは無関係に行われていた
- 夫婦関係は既に破綻しており、不倫がなくても離婚していた
と判断される余地があります。
また、不倫が発覚した時点では既に婚姻関係は終了しており、「これから先の婚姻生活」が侵害されるという構造もありません。そのため、「過去の事実を知ってショックを受けた」という精神的苦痛だけで、どこまで慰謝料を認めるべきかという点については、裁判例でも判断が分かれています。
離婚後発覚型では、
- 時効の問題
- 婚姻関係の破綻・離婚との因果関係
が複雑に絡むため、自己判断で「これは絶対に時効だ」「絶対に請求できる」と決めつけるのは危険です。
時効と「婚姻関係破綻の抗弁」が重なるとき
実務では、不倫をした側(請求された側)が、
- 「時効は完成している」と主張すると同時に
- 「そもそも婚姻関係は既に破綻していた」とも主張する
という場面が少なくありません。
この場合、裁判所は、
- いつの時点で婚姻関係が破綻していたのか
- 破綻前の不倫行為が、どの範囲で夫婦関係に影響したのか
- 被害者が不倫の事実・加害者を知ったタイミングはいつか
といった事情を総合的に見て、
- 慰謝料請求が認められるとすればどの期間の不倫か
- その部分について、時効は完成しているのか
を判断します。
たとえば、
- 破綻前から不倫が始まっていたものの、すでにその時点で夫婦関係は修復困難だった
- 破綻後の不倫については、原則として慰謝料の対象にならない
といった評価がされることもあります。
このように、「婚姻関係破綻の抗弁」と「時効」は、しばしばセットで検討される論点です。
どちらも専門的な判断が必要になるため、早めに弁護士に相談して見通しを立てることが重要になります。
不倫慰謝料の時効が問題になりそうなときに弁護士に相談するメリット
ここまで読んで、
- 「自分のケースは時効になっているのかどうか、正直よく分からない」
- 「請求するにしても、されたにしても、どう動くべきか判断に迷う」
と感じている方も多いと思います。
不倫慰謝料の時効は、条文だけを見ると「3年・20年」という単純な数字に見えますが、実際の事件では
- 不倫の始まりと終わりの時期
- 不倫を知ったタイミングとその証拠
- 婚姻関係の破綻状況や離婚の経緯
- 内容証明・訴訟・合意書など過去のやり取り
といった要素が複雑に絡み合います。
ここでは、時効が問題になりそうなときに弁護士へ相談するメリットを整理しておきます。
「本当に時効かどうか」の見通しを、専門家の目でチェックしてもらえる
まず一番大きいのは、
**「本当に時効なのか」「時効にかかる可能性はどの程度か」**について、専門家の視点で見立てができることです。
弁護士は、
- 過去の裁判例で、どのような事情が「損害および加害者を知った時」と評価されているか
- 繰り返し不倫・別居・破綻・離婚などが絡むケースで、どの時点から時効が進行すると判断されてきたか
- 内容証明や合意書がある場合に、それが「完成猶予」や「更新」と評価されるかどうか
といったポイントを踏まえつつ、あなたの事案を分析します。
その結果、
- 請求する側であれば「今からでも十分に請求する余地があるのか」
- 請求された側であれば「時効の援用を検討できるのか」
の方向性を、より現実的に把握することができます。
「時効だけ」にこだわらない解決策を一緒に考えられる
時効は、あくまで不倫慰謝料トラブルの中の一つの要素にすぎません。
実務では、
- 慰謝料の金額(相場との比較)
- 支払方法(分割・一括・猶予)
- 家族や職場への影響(バレるリスク)
- 今後、不倫相手との関係をどう整理するか
といった点も、同時に検討する必要があります。
弁護士に相談すれば、
- 時効の主張をするかどうか
- する場合、どのタイミングで、どのような文言で行うか
- 時効だけで争うのではなく、減額や分割払いを交渉して和解できないか
- 慰謝料だけでなく、今後の関係や接触禁止条項なども含めて、トータルでベストな解決パターンは何か
といった「現実的な落としどころ」を一緒に考えることができます。
相手との直接やり取りのストレス・リスクを減らせる
不倫慰謝料の話し合いは、感情的な対立が非常に強くなりやすい場面です。
- 請求する側は、深い裏切りと怒り、悲しみを抱えている
- 請求された側は、罪悪感・恐怖・焦り・家族バレへの不安などで追い詰められている
その中で、当事者同士が直接やり取りを続けるのは、精神的にも大きな負担となります。
また、感情的なやり取りがLINEやメールに残ることで、後の裁判で不利な証拠になってしまうこともあります。
弁護士に依頼すれば、
- 相手方との連絡や交渉の窓口を、弁護士に一本化できる
- 感情的に書きがちな文面を、法的な観点からチェックしてもらえる
- 不要な挑発や、時効に関する不用意な発言を避けることができる
といったメリットがあり、「相手の顔を見るのも怖い」という状況から少し距離を置くことができます。
時効が迫っている」ケースでは、スピードがそのまま結果を左右する
最後に、時効が迫っているケースでは、とにかくスピードが重要です。
請求する側であれば、
- 内容証明を送るのか
- すぐに訴訟や調停を起こすのか
といった判断を数か月単位ではなく「数週間単位」で決めていかなければなりません。
請求された側であれば、
- 本当に時効かどうか
- 時効でなければ、どの程度の減額を目指せそうか
を早めに分析しないと、交渉のチャンスを逃してしまいます。
どちらの立場にとっても、早く動いた方が取れる選択肢が増えるのは共通です。
「時効が気になっている」という段階で一度相談しておけば、いざというときにも迷いにくくなるでしょう。
まとめ:不倫慰謝料の時効を正しく理解して、損をしないために
最後に、不倫慰謝料の時効について押さえておきたいポイントを整理します。
- 不倫慰謝料の「時効」は、原則として
「不倫の事実と不倫相手(加害者)を知った時から3年」、
最長で「不倫行為から20年」という2本立てになっている。 - 誰に対してどのような慰謝料を請求するか(配偶者/不倫相手/離婚慰謝料)によって、時効の起算点が変わるため、「離婚から3年あれば大丈夫」とは限らない。
- 不倫相手に対する慰謝料は、原則として「不倫そのものによる慰謝料(不倫慰謝料)」であり、
離婚慰謝料まで請求できないのが基本。そのため、「不倫を知ってから3年」が特に重要になる。 - 不倫を知った時期や不倫相手を特定した時期、婚姻関係の破綻状況などは、
裁判例でも細かく争われるポイントであり、自己判断で「時効だ/時効でない」と決めつけるのは危険。 - 時効が迫っているときには、内容証明郵便や訴訟・調停、債務承認・協議合意などを利用して、
時効の完成猶予・更新を図ることができる(ただし一時しのぎに過ぎない手段も多い)。 - 請求された側は、条件が整えば「時効の援用」によって支払いを拒否できる可能性がある一方で、
安易な時効主張は増額リスクや交渉不調を招くおそれがあり、慎重な判断が必要。 - 婚姻関係が既に破綻していた場合や、離婚後に不倫が発覚した場合には、
そもそも慰謝料請求が認められない・限定されるケースもあるため、
時効だけでなく「婚姻関係破綻の有無」とセットで検討することが重要。
不倫慰謝料の時効は、条文だけでは説明しきれないグレーゾーンが多く、判断を誤ると「本来受け取れるはずの慰謝料を逃す」「本来払わなくてよい金額まで払ってしまう」リスクがあるため、早めに不倫慰謝料に詳しい弁護士へ相談することが、結果的に一番の近道になります。
不倫慰謝料の問題は、誰にとっても精神的な負担が大きく、いつまでも頭から離れないものです。
一人で悩み続けていると、「もう時効かもしれない」「まだ請求されるかもしれない」と不安ばかりが膨らんでしまいます。
「自分のケースは時効なのか」「今動くべきか、待つべきか」と迷ったときこそ、
一度専門家の意見を聞いて、現実的な見通しと取るべき選択肢を整理してみてください。
そのうえで、あなたやご家族にとって納得のいく形で、不倫問題を終わらせるための一歩を踏み出していただければと思います。
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