不倫慰謝料が認められる条件とは?請求・減額交渉のポイントを解説

近年、不倫(不貞行為)による慰謝料問題は増加傾向にあると言われています。スマホやSNSの普及によって証拠が残りやすくなる一方、コミュニケーション手段の多様化で不倫が発覚するケースも増えました。こうした状況の中で、不倫慰謝料を「請求したい人」「請求された人」がそれぞれどのように対応すべきかを知っておくことはとても大切です。

本記事では、「不倫慰謝料が認められる条件」を中心に、慰謝料の法的根拠や相場、請求・減額のポイントなどを、双方の立場を考慮しながら解説します。過去の裁判例も参照しつつ、具体的な手続きを理解し、適切な対処法を身につけましょう。

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

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不倫慰謝料請求の法的根拠

不貞行為と不法行為責任

不倫慰謝料の請求は、民法に定められている「不法行為責任」(民法709条)に基づいて行われます。

民法709条:「故意または過失によって他人の権利・利益を侵害した者は、その損害を賠償する責任を負う」

ここで言う他人の権利・利益には「夫婦が互いに負う貞操義務」や「平穏な夫婦生活を過ごす利益」も含まれると解釈されており、不倫が成立した場合、既婚者側の配偶者が精神的損害を被ったと主張できるのです。

(参考)なぜ不倫慰謝料を請求できるのか? 二股交際との違いや貞操義務が理由か等を解説

 「不倫=違法」となる法的根拠

法律上、不倫は刑事罰の対象(姦通罪などの廃止)ではありません。しかし、平穏な夫婦生活を侵害する行為として、不法行為を構成するとされています。不倫によって平穏な夫婦生活を乱されること自体が、慰謝料請求の法的根拠となります。

民法724条の「時効」による慰謝料を請求できる期限

不倫慰謝料請求は、「不倫を知った時点から3年」または「不倫のあった時から20年」が経過すると時効によって請求できなくなります(民法724条)。

たとえば、不倫発覚後に「忙しい」「離婚後に慰謝料を請求しよう」といった事情で放置してしまうと、いつの間にか3年が経過してしまうことがあるため、早めの対応が重要です。詳しくは慰謝料を請求できる期限についての記事も参考にしてください。

共同不法行為責任(民法719条)

不倫による損害を配偶者と不倫相手が共同で引き起こしたと評価される場合、両者に対して慰謝料請求を行うことが可能です(民法719条)。ただし、その時点で夫婦関係が実質的に破綻していた場合や、不倫相手が「既婚者とは知らなかった」などの事情があると、請求が認められないこともあり得ます。

判例で確立された慰謝料請求の判断基準

不倫慰謝料請求が認められる条件としては「肉体関係があったかどうか」が大きなポイントとされてきました。最高裁判所でも、不倫の要件として「性的関係の有無」を重視する傾向が明確に示されています。裁判例においては既婚者と第三者が自由意思で性的関係を結んだ場合、配偶者に対する不法行為が認められるとの趣旨が示されています。

ただし、近年ではSNSなどで深い精神的なつながりがあった場合にも、状況によっては慰謝料の対象となる可能性があるとされています。明確に肉体関係が立証されなくても、夫婦関係を破綻させるほど密接かつ継続的な交流があれば、不倫と同程度の責任を問われるケースがないわけではありません。例えば、東京地裁平成24年11月28日判決は、メールを送信する行為について不法行為の成立を認めています。

オンラインによる慰謝料請求についての最近の動向

デジタル化が進む中で、「オンラインでの離婚手続き」や「オンラインでの示談交渉」などが今後増えていくと考えられます。現時点でも、弁護士との電話やビデオ会議システムによるオンライン相談は一般化しており、示談書の電子化などが一部で導入されています。

ただし、裁判所に出向かずオンラインのみで最終的な離婚が成立する制度は、今のところ日本では整備されていません。今後の法改正やIT化の進展次第で、慰謝料請求の手続きも変化していく可能性があります。

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不倫慰謝料が認められる条件

不倫慰謝料が認められる主な条件としては、以下の4点が挙げられます。

  • 肉体関係の有無
  • 不倫相手の故意・過失
  • 夫婦関係の破綻状況
  • 時効の問題

それぞれについて詳しく解説し、あわせて重要な裁判例を見ていきましょう。

肉体関係の有無:証拠として何が必要か

「肉体関係があった」という事実を裏付けるためには、以下のような証拠がよく用いられます。

  • メール・LINEなどのやり取り→過激な内容、会う約束のやり取り、宿泊先のやり取りなどが残っている場合。
  • ホテルの領収書・クレジットカード明細→連続して同じホテルを利用している証拠など。
  • 探偵の報告書→探偵の尾行による写真や時系列での行動記録。

裁判になった場合は不貞行為の有無についての証拠があるかがポイントになります。不倫の証拠についてはこちらの記事も参考にしてください。ただし、プライバシーの問題もあるため、違法な手段で得た証拠は裁判で問題視される可能性があります。正当な方法で収集することが大切です。

不倫相手の故意・過失

不倫慰謝料を請求するには、不倫相手が「相手が既婚者であること」を知っていた、または注意を払えば知り得たと認定される必要があります。たとえば、婚姻指輪を着用していた、SNSや日常会話で既婚者であることを明言していた場合などは、「知らなかった」という言い分が通らないケースが多いです。

【裁判例】東京地裁平成24年12月27日判決

この判決では、不倫相手が「配偶者のある者と認識しながら肉体関係を続けた」ことが、故意に基づく不法行為として認定されました。

解説:

裁判所は、不倫相手の故意・過失を「相手が既婚者と知る機会があったかどうか」で判断します。本件では交際当初は既婚者であると知らなかったものの、既婚者だと知った後も違法ではないと軽々しく信じて交際関係を継続したため慰謝料の請求が認められた事案です。

不倫相手の故意・過失に関する裁判例の記事も参考にしてください。

夫婦関係の破綻状況

不倫が行われた時点で夫婦関係が事実上破綻していた場合、不倫相手に対する慰謝料請求が認められない可能性があります。

裁判例においても、長期間の別居や夫婦間のコミュニケーション断絶などにより、すでに婚姻関係が形骸化していたと判断されると、配偶者の貞操権が法律的に保護されるべき状態にはなかったとされる場合があります。

(参考)不倫慰謝料における婚姻関係破たんの抗弁

【重要な裁判例】最高裁平成8年3月26日判決

夫婦が長期にわたって別居し、事実上の離婚協議を進めていた事案において、「不貞行為が夫婦関係の破綻を決定づけたものではない」と判断され、不倫相手に対する慰謝料請求が認められなかった事例です。裁判所は「不貞行為発生の前から夫婦関係が修復不可能な状態にあった」と認定し、不貞行為による違法性が否定されました。

解説:不倫が行われたタイミングで、夫婦が実質的に離婚状態であれば、「保護されるべき夫婦関係」が存在しなかったとみなされ、結果として慰謝料請求は認められないことがあります。破綻の度合いはケースバイケースですが、長期別居や法的離婚手続きの進展状況、当事者間の交渉記録などが重要な判断材料となります。

時効の成立

慰謝料請求には時効があるため不倫を知ってから3年または不倫が行われてから20年が経過していると、慰謝料請求はできなくなるおそれがあります。早めに行動を起こしましょう。

【重要な裁判例】最高裁平成6年1月20日判決

裁判所は、「不貞行為を知った時点」がいつであるかが時効の起算点になると明言しました。本判決では、同棲を伴う不倫についての慰謝料請求に関して、同棲が終了した時点で消滅時効が進行するのか、同棲関係を知った時から消滅時効が進行するのかが問題となりました。

解説:時効のカウントは「実際に不貞行為と不倫相手を知った日」からスタートします。時効の判断は簡単にできると思っている方もいますが、時効を巡って裁判例で激しく争われることもあるため、いつが慰謝料を請求できる期限かを慎重に時期を見極める必要があります。

また、いったん時効が完成すると、後からいかなる正当な理由を示しても請求が棄却されるリスクが非常に高いため、請求する側はタイミングを逃さないように注意しましょう。詳しくは慰謝料を請求できる期限の記事もご覧ください。

 

不倫慰謝料請求が難しいケース

不倫相手が既婚と知らなかった場合

不倫相手が「既婚とは全く知らなかった」場合、故意・過失が認められないとして慰謝料請求が難しくなることがあります。実際には、「相手が隠していた」「信じ込んでいただけ」など、立証が争点になりやすいケースです。

既に夫婦関係が破綻していた場合

夫婦が別居して数年経過していた場合や、離婚協議中で事実上の夫婦関係が成立していなかったとみなされる場合は、不倫による慰謝料請求が難しくなる可能性があります。なお、不倫相手が「夫婦関係は破たんしている」と聞かされていたような場合であっても、本当に夫婦関係が破たんしていなければ慰謝料請求が認められる可能性は高いのでご注意ください(詳しくはこちら。)。

証拠が不十分な場合

「肉体関係があった」という具体的な証拠がないと、交際の事実のみでは慰謝料請求が認められにくいのが現状です。探偵の報告書やSNSのやり取りなど、客観的な証拠が決め手となります。

時効が成立している場合

発覚してから放置していて3年を過ぎてしまった場合や、不倫時から20年が経過している場合は、裁判で請求が棄却される可能性が高いです。

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慰謝料請求の手順

不倫慰謝料を請求する際の一般的な流れを確認しておきましょう。

 

証拠の収集方法

  • 探偵の利用:尾行や張り込みによるホテルや自宅の出入りの写真・動画などが得られます。
  • メール・LINEの保存:不倫を示唆する具体的なやり取りや、継続的な連絡の履歴が有力な証拠となることがあります。
  • クレジットカード明細や領収書:日時や場所が特定でき、頻度を示す資料として有効です。

不倫相手の特定と連絡

証拠が一定程度揃ったら、不倫相手に直接連絡をします。弁護士を代理人として立て、内容証明郵便で慰謝料請求書を送付する方法も一般的です。

示談交渉と合意書作成

話し合いで解決が見込める場合は、示談交渉を行い、合意書を作成して慰謝料の金額・支払い方法・期限などを明記します。公正証書にしておくと強制執行が可能になり、支払いを担保しやすくなります。

裁判での請求の流れ

示談がまとまらない場合は、調停→訴訟という流れになることが一般的です。裁判所が「不貞行為があった」と認定すれば、判決で支払い義務が確定し、強制執行が可能です。

支払いが拒否された場合の対処法

合意書や判決があるのに支払いが行われない場合、給与や預金口座の差押えなど、強制執行の手段をとることができます。

 

慰謝料の相場と増減要因

一般的な慰謝料の相場

不倫慰謝料の相場は、概ね50〜300万円程度とされることが多いです。ただし、個別の事情に大きく左右され、数十万円で済むこともあれば、数百万円にのぼることもあります。

慰謝料が増額されるケース

  • 不倫期間が長期にわたる場合:配偶者が受ける精神的苦痛が大きいとされる。
  • 悪質なケース:夫婦関係を積極的に破壊しようとする意図があったり、妊娠・出産など重大な結果に発展するケース。
  • 配偶者がうつ病などの精神疾患を発症した場合:不倫が原因で重篤なダメージを被ったと認められれば、増額される可能性がある。

慰謝料が減額されるケース

  • 配偶者が不倫を黙認していた場合:事実上容認していたと判断されれば、損害が軽減される。
  • 夫婦関係が既に破綻していた場合:破綻状況に応じて慰謝料が減額・免除される。
  • 請求者側にも過失がある場合:たとえばDVや長期間の別居などで、もともと夫婦関係が維持できない要因があった場合

一般的に高額な慰謝料を請求された場合でも適切に対応をすれば慰謝料を減額できることがほとんどです。慰謝料の減額理由の記事も参考にしてください。

 

慰謝料請求が認められる条件関するQ&A

慰謝料請求する側のQ&A

 

不倫の証拠はどんなものが必要?

LINEやメールのやり取り、ホテルの領収書、探偵の報告書、クレジットカード明細など、不倫の事実を客観的に示すものが有力です。

 

不倫相手に慰謝料請求する方法は?

内容証明郵便で請求書を送る、あるいは弁護士を通じて交渉するのが一般的です。示談がまとまらない場合は調停や訴訟を行います。

 

時効が過ぎていた場合、慰謝料請求は無理?

はい。不倫を知ってから3年(または不倫時から20年)が経過すると、原則として請求は認められなくなります。

 

慰謝料請求された側のQ&A

 

慰謝料請求を受けたが、支払う義務はある?

不倫の事実があり、相手に損害が生じたと立証されれば支払い義務が発生する可能性があります。ただし、不倫相手が既婚者であると知らなかった場合などは、責任が否定されることもあります。

 

慰謝料の減額交渉は可能?

可能です。夫婦関係の破綻が既にあった場合や、相手にも責任がある場合など、事情によっては減額が認められることがあります。

 

慰謝料請求を無視するとどうなる?

慰謝料請求を無視すると裁判を起こされ、最終的には給与や財産の差押えなどの強制執行を受けるリスクがあります。慰謝料を請求された場合に無視するのは最悪の対応ですので注意しましょう。

 

裁判で争うメリットとデメリットは?

メリットは、支払い義務の有無や金額が明確になる点です。一方、デメリットとして、訴訟費用や時間的・精神的負担が大きいこと、証拠の開示によりプライベートが公開される可能性があることが挙げられます。

 

特殊ケースのQ&A

 

不倫の証拠を集めるために探偵を雇うべき?

必要な証拠を得られる可能性は高いですが、探偵費用が高額になりがちです。事前に費用や調査方法を確認し、違法な手段が使われないよう注意しましょう。最初に弁護士に相談し、現時点で証拠が十分揃っているかを確認するべきです。

 

 不倫相手が海外に住んでいる場合、慰謝料請求はできる?

可能ですが、相手の所在が分からない場合や、海外在住の場合は手続きが複雑化します。国際裁判管轄や送達手続きなどをクリアする必要がありますので、専門家に相談するのが望ましいです。

 

不倫慰謝料に関するリスクと注意点

感情的な対立を避ける方法

不倫は当事者の感情が強く絡む問題です。特に慰謝料請求は対立を深める可能性もあります。話し合いが難航するときは、弁護士や第三者の専門家を間に入れることで冷静な協議が行いやすくなります。

 交渉がこじれた場合の対処法

示談交渉がこじれた場合、当事者同士での話し合いをどうしても希望するなら家庭裁判所の調停を利用してみるのも一案です。それでも折り合いがつかない場合は、正式な訴訟手続きに移行して、裁判所の判断を仰ぐことになります。基本的に訴訟手続は弁護士に依頼して行うことをおすすめします。

弁護士に相談するメリット

  • 法的手続きの専門知識を得られる
  • 相手との直接交渉を避けられる
  • 証拠収集や法的文書の作成がスムーズになる

といった利点が挙げられます。請求する側も請求された側も、弁護士に早めに相談して状況を整理し、リスクを最小化することが大切です。

 

まとめ

不倫慰謝料の問題は、夫婦関係という極めて個人的かつデリケートな領域に深く関わるため、トラブルが長期化・複雑化しやすいです。不倫慰謝料が認められる条件としては、「肉体関係の有無」「相手の故意・過失」「夫婦関係の破綻状況」「時効」がカギとなります。請求する側は証拠集めと時効管理が重要であり、請求された側も事実確認と減額交渉の可否を慎重に検討する必要があります。

 

さらに、弁護士に相談することで、感情的な対立を最小限に抑えつつ法的に正確な手続きを踏めるため、トラブル解決の大きな助けとなります。不倫慰謝料の問題に直面したときは、早めの相談・準備を心がけてください。

 

この記事のポイント

  • 不倫慰謝料が認められる主な条件は、肉体関係の有無、不倫相手の故意・過失、夫婦関係の破綻状況、時効の成立
  • 重要な裁判例を通じて、故意・過失の判断や夫婦関係の破綻、時効の起算点などが明確化されている。
  • 慰謝料請求が難しいケースは、不倫相手が既婚と知らなかった場合や夫婦関係がすでに破綻していた場合など。
  • 請求手順として、証拠収集→請求書送付→示談交渉→裁判の流れが一般的。示談成立後は公正証書にしておくと強制執行が容易になる。
  • 慰謝料の相場は50〜300万円程度が目安だが、事情によって増減がある。
  • 弁護士に相談するメリットとして、法的手続きの専門知識の提供、交渉の代理、適切な証拠収集などが挙げられる。
  • 感情的対立を避けるためにも、専門家を通じて冷静に対応することが推奨される。

不倫慰謝料の問題は、個々の事情や法的要件によって結果が大きく変わります。今後、オンライン化や法改正の動きによって手続きの形態は変わり得ますが、最終的には個別のケースに応じた正確な対処が求められます。疑問や不安がある場合は、早期に弁護士へ相談することでスムーズな解決を目指しましょう。

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