SNSや掲示板で「不倫に関する投稿」をされ、実名・顔写真・居住地・交友関係などの情報が広がりそうなとき、「誰が書いたのかを特定したい」と考える方は少なくありません。そこで問題になるのが、不倫の発信者情報開示(投稿者特定の手続)です。
この記事では、違法性の一般論や“止め方”を網羅するのではなく、発信者情報開示に特化して、手続・期限(ログ)・証拠の質・判断基準を整理します。
この記事では、次の疑問に答えます。
- 匿名投稿でも投稿者の特定は目指せるのか(発信者情報開示の位置づけ)
- 開示の前提として、最低限どんな証拠が必要か
- ログが消える前にやるべき「証拠の固定」とは何か
- 手続はどんな段階があり、どこで時間がかかりやすいか
- 削除だけで足りるか/特定まで進めるべきかの判断基準
なお、「バラす・晒す行為が違法になり得るか」「削除や差止めで拡散を止めるには?」といった一般論は、次の記事で整理しています(本記事は“開示”に寄せて棲み分けます)。
(参考)不倫をバラすのは違法?名誉毀損・脅迫・業務妨害になるケースと止め方
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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結論:投稿者特定は「発信者情報開示」で狙えるが、ログ期限が最大の注意点
結論から言うと、投稿が匿名でも、状況によっては発信者情報開示により投稿者の特定を目指すことがあります。特定できれば、次のステップとして損害賠償請求や示談交渉(再発防止の約束)につなげる選択肢が出ます。
一方で、発信者情報開示で最も注意したいのは、ログ(記録)が永遠に残るわけではないという点です。迷っている間に時間が経つほど、開示のハードルが上がることがあります。
また、発信者情報開示と混同されやすいのが「削除」です。削除と開示は別の話で、
- まず拡散を止めたい(削除・警告)
- 投稿者を特定して責任追及したい(開示)
という目的の違いがあります。削除・差止めの全体像は下記記事で整理し、本記事では開示に必要なポイントだけに絞ります。
不倫をバラすのは違法?名誉毀損・脅迫・業務妨害になるケースと止め方
開示の前提:最低限おさえる権利侵害の枠組みと、開示に必要な証拠
発信者情報開示は「気に入らない投稿だから」では足りず、原則として、権利侵害があることを軸に検討されます。ここでのポイントは、違法性の網羅ではなく、開示に必要な“最低限”を押さえることです。
一般に、開示の前提として問題になりやすいのは、次のような類型です。
- 社会的評価を下げる内容が書かれている(名誉に関わる類型)
- 私生活上の事実や個人情報が具体的に書かれている(プライバシーに関わる類型)
- 顔写真・動画などが無断で掲載されている(画像・肖像に関わる類型)
違法性の判断に不安がある場合は、まず下記記事で整理してから「開示に進むか」を決めるのが安全です。
不倫をバラすのは違法?名誉毀損・脅迫・業務妨害になるケースと止め方
また、勤務先への通報・連絡が絡む場合は、会社文脈の論点(懲戒・解雇など)に入りやすいので、そちらは下記記事にて確認してください。
不貞行為を会社に報告されたら違法?名誉毀損・懲戒処分・止め方
最初にやること:ログが消える前に“証拠の質”を固める(URL・日時・魚拓等)
発信者情報開示でつまずきやすいのは、「投稿を見た」という記憶はあるのに、手続に耐える証拠の形になっていないことです。ここは“丁寧すぎるくらい”がちょうど良いです。
最低限、次の情報をセットで固定します。
- 投稿URL(できればアドレスバーが見える形)
- 投稿日時、投稿番号、アカウント名(ID)
- 投稿が表示されている画面全体(スクショは分割でも可)
- 引用・リポスト・まとめ等、拡散状況が分かる画面
加えて、状況に応じて次も有効です。
- スクリーン録画(スクロールして全体を記録)
- HTML保存、PDF保存(可能な範囲で)
- ウェブ魚拓等で、第三者的に時点を固定する
- 検索結果の表示(投稿が見つかる経路)も合わせて保存
削除依頼を急ぐほど、投稿が見えなくなり「何が書かれていたか」を示しにくくなることがあります。削除・通報に動くとしても、先に証拠を固めてからが安全です。
また、「払わないと投稿を消さない」など金銭要求とセットになっている場合は、恐喝・脅迫の論点が別途生じ得ます。そこは開示とは切り分けて、次の記事で初動を確認してください。
不倫慰謝料の請求が恐喝・脅迫になる境界|要求がエスカレートしたときの初動
発信者情報開示の流れ:段階構造と、どこで時間がかかるか
発信者情報開示は、ざっくり「投稿の場所(プラットフォーム等)」と「通信の契約者側」の情報をつないでいく発想で進むことが多く、一定の段階を踏むことがあります。
ここで重要なのは、手続が一発で終わるとは限らないこと、そして段階が増えるほど時間がかかり、ログの問題が効いてくることです。
実務上のイメージは、次のように整理すると理解しやすいです。
- どの投稿が問題かを特定する(URL・投稿番号等)
- プラットフォーム側に対して、必要な範囲で情報の確認・保全を検討する
- 法的手続で、投稿者特定に必要な情報の開示を目指す
- 開示された情報をもとに、損害賠償請求や再発防止(示談)を検討する
相手が複数アカウントで投稿している/転載が多い/プラットフォームの種類が多いほど、対象の切り分けと証拠整理に時間がかかりやすいです。最初に「どの投稿を主戦場にするか」を絞ると進めやすくなります。
「嫌がらせ・つきまとい」など、投稿以外の行為にも広がっている場合は、開示とは別に止める導線が必要です。状況に応じて次の記事も確認してください。
不倫後の嫌がらせ・ストーカー化への対処|連絡禁止・警告書・弁護士対応
「開示するか」の判断基準:被害規模/相手態様/目的(削除だけで足りる?)
発信者情報開示は強い手段になり得ますが、時間・労力・コストもかかり得ます。したがって、「できるか」だけでなく「やるべきか」を整理することが大切です。
判断の軸は、次の3つに集約できます。
- 目的:削除だけで足りるのか、特定して責任追及したいのか
- 被害規模:拡散の範囲、実害(家庭・仕事・安全面への影響)がどの程度か
- 相手態様:繰り返し投稿する、個人特定情報を出す、脅しと結びつける等があるか
例えば、次のような場合は「特定まで進める」実益が大きくなりやすいです。
- 個人特定情報が含まれ、拡散が止まりにくい
- 投稿が繰り返され、削除しても再投稿される
- 脅し・金銭要求と結びつき、沈静化が見込めない
一方で、削除や警告で収束しそうなら、まず「止める」ことを優先し、開示は二段目に回す発想も現実的です。削除・差止めを含む止め方は下記を参照してください。
不倫をバラすのは違法?名誉毀損・脅迫・業務妨害になるケースと止め方
よくある失敗:直談判で拡散、削除前に証拠不足、待ちすぎて期限徒過
最後に、発信者情報開示を検討する場面で多い失敗例を整理します。
失敗例1:投稿者に直談判してしまい、拡散が加速する
「消せ」と言ったことで相手が挑発的になり、投稿が増えたり、別の場所へ転載されたりすることがあります。まずは証拠固定と窓口一本化が基本です。
失敗例2:削除を急いで“手続に耐える証拠”が残らない
見える投稿が消えると、後から説明が難しくなることがあります。削除は重要でも、順番は「証拠→削除」が安全です。
失敗例3:様子見を続けて、ログの問題で進めにくくなる
発信者情報開示は、時間が経つほど情報がつながりにくくなることがあります。「落ち着いてから」ではなく「証拠だけ先に固める」が重要です。
失敗例4:会社・家族など別論点に踏み込み、記事や対策が混線する
勤務先への連絡や処分論はP12-4、暴露・止め方の一般論はP12-5、金銭要求と脅しはP13-17、と論点を分けるほど解決が早くなりやすいです。
まとめ:発信者情報開示で損しないチェックリスト
不倫に関する投稿の問題で発信者情報開示を検討するときは、次の要点を押さえることが大切です。
- 発信者情報開示は「匿名でも特定を目指す」ための手続だが、ログ期限が大きな制約になり得る
- 最初にやるのは、URL・日時・拡散状況を含めた証拠固定(証拠の質が結果を左右しやすい)
- 削除と開示は目的が違うため、先に「何をゴールにするか」を決める
- 直談判や感情的応酬は拡散を招きやすいので、窓口一本化を検討する
- 会社通報・暴露一般・脅し等は別記事で論点整理し、混線を避ける
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