不倫慰謝料の請求・交渉では、途中から相手の要求が強くなり、
「払わないとバラす」「職場に言う」「家族に連絡する」
といった言動が出てくることがあります。
このとき問題になるのが、不倫慰謝料の請求が“恐喝・脅迫”にあたる境界です。権利がある(慰謝料を請求できる可能性がある)としても、やり方次第では刑事事件になり得るため、初動を間違えると被害が拡大します。
- 不倫慰謝料の交渉で、恐喝・脅迫になり得る「境界」を知りたい
- 「バラす」「職場に言う」はどこまでが危険か、目安を知りたい
- 不当要求が続くとき、証拠の残し方と対応手順を知りたい
- 警察に相談できるケース/相談してもよい目安を知りたい
本記事は、刑法上の基本構造(恐喝・脅迫・強要の考え方)と実務上の注意点にもとづいて整理します(個別事情で結論が変わることがあります)。
不倫慰謝料の周辺トラブル(求償権・税金・暴露など)を全体像から確認したい場合は、次のページも参考になります。
不倫慰謝料のトラブル・二次被害(求償権・税金・恐喝/名誉毀損・暴露)
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

Contents
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結論:境界は「請求額」より「言い方・やり方」(権利があってもアウトになる)
先に結論です。**恐喝・脅迫になるかどうかは、請求額の多寡よりも「言い方・やり方」**で決まりやすいです。
不倫慰謝料は、状況によっては法的に請求が認められ得ます。しかし、たとえ請求の“土台”があっても、次のように害悪を告知して金銭を要求すると、恐喝(刑法249条)や、状況によっては強要(刑法223条)、脅迫(刑法222条)などが問題になり得ます。
- 「払わないと、あなたの会社・家族に言う」
- 「払わないなら、SNSに晒す」
- 「今すぐ払え。払わないなら人生終わらせる」
ここで重要なのは、“お金を払わせる目的で脅す”構図になった瞬間に、交渉が「正当な請求」ではなく「不当要求」と評価されやすくなることです。
一方で、次のように、手続としての圧力(法的手続を検討する旨)を、冷静に伝えるだけなら、直ちに恐喝・脅迫とは言い切れません。
- 「支払いがない場合、弁護士に依頼し、法的手続を検討します」
- 「連絡は書面(または弁護士)でお願いします」
つまり、“第三者にバラす”などの不利益をチラつかせるのではなく、“法的な手段”に寄せるのが安全な境界線です。
なお、相手が最初から恐喝目的で仕掛けてくる「美人局(つつもたせ)」が疑われるケースは、事例ベースで別ページにまとめています。
【美人局】で不倫慰謝料は払うべき?|【弁護士の解決事例】脅迫・恐喝まがいの不当要求の対処法
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どこから危険?「バラす/職場に言う」等の言動と違法ライン
「この一言はアウト?セーフ?」という形で悩む方が多いので、実務上の危険度の目安を整理します。
※最終的には、前後の文脈(誰に、何を、どのトーンで、何回、金銭と結びつけたか)で評価が変わり得ます。
- 【危険】「払わないとバラす」「職場に言う」「家族に連絡する」を支払いと結びつける
- 【危険】「今日中に払え」など過度な期限で追い込み、拒否すると報復を示唆する
- 【危険】要求額の根拠を示さず、人格否定・罵倒とセットで金銭を迫る(不当要求化)
- 【アウト寄り】SNS投稿・職場凸など“実行”を示し、金銭で止める構図を作る
- 【比較的安全】根拠と金額を示し、書面で期限を切り、手続に移る旨を淡々と伝える
特に「バラす」「職場に言う」は、不倫慰謝料の請求とセットになりやすい一方で、金銭目的の脅しと見られやすい典型です。
相手が本当に実行に移すと、名誉毀損やプライバシー侵害など別の問題にも発展します。暴露・晒しが現実化した場合の対処は、次の記事で整理しています。
不倫を暴露された・晒された(SNS等)ときの法的対処|名誉毀損・プライバシー侵害・削除・開示
証拠の残し方:メッセージ・通話・面会を“改ざんせず”残す
恐喝・脅迫が疑われる場面で一番もったいないのが、**証拠が残っていない(または残し方が弱い)**ことです。
警察相談・弁護士相談のどちらでも、最初に見られるのは「脅しと金銭要求が結びついているか」「反復継続しているか」「具体性があるか」です。
証拠は、次の方針で集めます。
- メッセージは“そのまま”保存(削除・編集・加工をしない)
LINE・SMS・メール・DMは、スクショだけでなく、できればログとして残し、日時が分かる状態で保存します。 - 電話・面会は「メモ+可能なら記録」
いつ、どこで、誰が、何を言ったか。金銭要求と脅しの言葉を、直後にメモ化します。 - 振込・送金の証拠は別フォルダで整理
振込明細、送金履歴、要求額の変遷が分かる資料は、後から説明しやすい形でまとめます。
感情的に言い返すと、相手から「脅された」と言い返されることがあります。返信は最小限にし、窓口を一本化する方が安全です。
「会って話そう」「今から来い」など、面会に誘導される場合は要注意です。単独で会うほど、脅しが強くなったり、証拠が曖昧になったりしがちです。
(参考)不倫慰謝料を請求されたら|初動対応・支払義務・高すぎる/払えないとき
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初動の対応手順:窓口一本化→警告→警察相談の目安(不当要求への対処)
相手の要求がエスカレートしたときは、「我慢して払う/無視する」だけだと、どちらも危険になりやすいです。基本の流れは次のとおりです。
1)安全確保と距離の確保(会わない・刺激しない)
暴力・待ち伏せ・職場への押しかけ等が心配なら、まず安全確保が先です。
2)窓口を一本化する(弁護士に切り替える)
恐喝・脅迫が絡むと、本人同士の交渉は一気に荒れます。弁護士が窓口に立つだけで、相手の言動が落ち着くこともあります。
また、示談(解決)をするにしても、合意書の条項(連絡禁止、違反時、清算など)を整えて再燃を防ぐことが重要です。示談書の作り方の全体像は、次の記事が参考になります。
不倫示談書マニュアル【テンプレート付】|書き方・記載事項・無効リスク・公正証書化まで弁護士が丸ごと解説
3)相手への警告は“短く・事務的に”
やむを得ず本人が送る場合でも、
- 「脅しに当たる言動はやめてください」
- 「今後の連絡は書面(または代理人)で」
- 「証拠は保存しています」
- 程度に留め、挑発や交渉条件(増額・減額)を混ぜない方が安全です。
4)警察に相談する目安(#9110/110)
いわゆる「民事不介入」と言われることもありますが、脅迫・恐喝が疑われるなら刑事の領域です。次のような事情がある場合は、警察相談を検討します。
「バラす」「職場に言う」等を金銭要求と結びつけ、繰り返している/具体的に実行を示している/身の危険や職場への接触が現実化しそう——この場合は早めに相談した方が安全です。
5)暴露・嫌がらせに枝分かれしたら、論点ごとに切り分ける
恐喝・脅迫と並行して、嫌がらせやストーカー化、連絡攻勢に移ることもあります。止め方(連絡禁止・警告書・弁護士対応)を論点別に確認したい場合は、次の記事も参考になります。
不倫後の嫌がらせ・ストーカー化への対処|連絡禁止・警告書・弁護士対応
まとめ:不倫慰謝料 恐喝で迷ったときのチェックポイント
不倫慰謝料 恐喝の境界でいちばん大切なのは、「請求の中身」以前に、やりとりの安全設計を作ることです。
- 境界は請求額より「脅し+金銭要求」の結びつきで決まりやすい
- 「バラす」「職場に言う」は危険サイン。証拠保全を最優先にする
- 返信で言質を増やさず、窓口を弁護士に一本化して沈静化を狙う
- 具体的・反復的な脅しや接触があれば、警察相談(#9110等)も検討する
- 暴露・嫌がらせへ枝分かれしたら、論点別に対処を切り分ける
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