不倫慰謝料をめぐっては、「いくら払う/もらうか」だけでなく、税金(所得税・贈与税)や確定申告の疑問がよく出てきます。特に、示談交渉の場面で「示談金」「解決金」など名目を変えて支払うこともあるため、結局どれが課税対象なのかが分かりにくくなりがちです。
この記事では、次の疑問に答えます。
- 慰謝料を受け取ったが、確定申告が必要なのか知りたい
- 「示談金」「解決金」という名目だと課税されるのか不安
- 慰謝料を支払った側は、税金が安くなる(控除・経費)ことがあるのか
- 第三者が肩代わりした/求償しない合意をしたが、贈与税が心配
- 後から税務で揉めないために、示談書や記録をどう残すべきか知りたい
以下では、税務の一般的な考え方(何の対価として受け取ったお金か、誰が負担しているか等)に基づき、**不倫慰謝料で起きやすい税務上の“つまずきどころ”**を整理します。個別事情で結論が変わることもあるため、迷う場合は早めに専門家へ相談してください。
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2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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まず結論:不倫慰謝料と税金の基本(非課税が多いが“例外”がある)
不倫慰謝料は、法律上は「不法行為に基づく損害賠償(精神的苦痛に対する慰謝料)」として整理されるのが典型です。税務でも、こうした性質の金員は所得税がかからない(非課税扱い)となることが多く、結果として確定申告が不要になるケースが少なくありません。
ただし、次のように「実質が慰謝料だけではない」形になると、確認が必要です。
- 支払いの中に、利息・遅延損害金など“利息相当”の要素が混ざっている
- 何の支払いか(慰謝料なのか、別の対価なのか)が示談書・経緯から読み取れない
- 慰謝料とは別に、事業・収入に関する補填(利益補償等)に近い性質が混ざっている
- 第三者が肩代わりし、当事者間で“経済的利益(贈与に近い状態)”が生じている
ポイントは、税務上の判断が「慰謝料というラベル」ではなく、**お金の性質(実質)**で決まることです。次から、受け取った側・支払った側に分けて具体的に見ていきます。
なお、税金以外も含めた“不倫慰謝料の周辺トラブル”全体像を先に押さえたい場合は、次のページも参考になります。
不倫慰謝料のトラブル・二次被害(求償権・税金・恐喝/名誉毀損・暴露)
受け取った側:所得税・確定申告が必要になるのはどんなとき?
受け取った側が一番気になるのは、結局のところ次の2点です。
「課税されるのか」
「確定申告が必要なのか」
結論から言うと、不倫慰謝料が精神的苦痛に対する損害賠償として支払われる限り、所得税の課税対象にならず、確定申告も不要となることが多いようです。
一方で、次のようなときは注意してください。
(1)利息・遅延損害金が含まれるとき
示談が長引いて「遅れた分も上乗せする」「分割払いで利息相当を乗せる」など、金員の一部が利息に近い性質を持つと、慰謝料部分とは別の扱いになる可能性があります。
示談書に「慰謝料◯円」「遅延損害金◯円」などと分かれて書かれている場合は、特に要チェックです。
(2)支払いの“趣旨”が不明確なとき(名目が曖昧/経緯が荒い)
「解決金」「迷惑料」などの言葉自体が直ちに課税を意味するわけではありません。
ただ、示談書が短すぎたり、やりとりが口頭中心だったりして、後から「これは何のお金?」と説明できない状態だと、トラブルの火種になりやすいです。
(3)慰謝料以外の性質が混在しているとき
不倫慰謝料では多くないものの、支払いの中に実費補填・利益補償のような性質が混ざると、税務上の評価が難しくなります。
「何をどう解決するためのお金か」を、示談書と記録で明確にしておくのが安全です。
慰謝料は非課税になりやすい一方、利息相当や性質不明な金員が混ざると判断が分かれ得ます。受領後に慌てないよう、疑問がある場合は税理士等に確認しましょう。
支払った側:控除・経費計上できる?(基本はできない)
「慰謝料を払ったのだから、税金(所得税)が安くなるのでは?」と考える方もいますが、個人の不倫慰謝料については、原則として所得控除になったり、経費として扱えたりするものではありません。
つまり、支払った側は税務の観点では次の整理が基本になります。
- 支払ったからといって、確定申告で“取り戻す”発想はしにくい
- ただし、後日の紛争(追加請求、求償、蒸し返し)に備えて、支払の記録はきちんと残す
実務上は、次の3点を押さえておくと安心です。
1)振込で支払う(現金手渡しを避ける)
2)振込名義・日付・金額を残す
3)示談書とセットで保管する(少なくともPDF化)
税金面だけでなく、不倫慰謝料の「支払い方・示談書の作り方」を含めて整えたい場合は、次のページも参考になります。
不倫示談書マニュアル【テンプレート付】|書き方・記載事項・無効リスク・公正証書化まで弁護士が丸ごと解説
贈与税が問題になりやすい場面:肩代わり・求償しない合意に注意
不倫慰謝料そのものは「損害賠償」ですから、通常は贈与税の問題とは別物です。
ただし、誰が最終的に負担するのかによっては、当事者間に“経済的利益”が発生し、贈与税的な発想が問題になることがあります。
典型例は次の2つです。
(1)第三者が“肩代わり”して支払う場合
たとえば、親が子の不倫慰謝料を立て替える、配偶者が不倫相手の分までまとめて支払う、などです。
被害者側(受け取る側)から見れば、債務の弁済として受け取る形なので、直ちに「贈与を受けた」とは言いにくい場面が多いです。
一方で、立て替えた側と本来の負担者の間では、精算の仕方(返す/返さない)によっては「利益を与えた」と評価され得る余地が出ます。
(2)求償できるのに“求償しない(放棄する)”合意をする場合
共同で責任を負う関係(共同不法行為)では、どちらかが多めに支払ったときに、もう一方へ求償(負担分の請求)が問題になり得ます。
もし「本来は求償できるのに、求償しない」とすると、求償されない側は経済的に得をします。この“得”が、税務上どう評価されるかが問題になり得ます。
ここは税務・民事が絡む論点なので、求償関係を先に整理しておくのが安全です。
不倫慰謝料の求償権とは|求償権の仕組み・責任割合・トラブル回避策【弁護士解説】
「示談金/解決金」名目の注意:課税は“名前”ではなく“実質”で決まる
示談交渉では、相手が「慰謝料という言葉は使いたくない」「責任を認めたくない」などの理由で、名目を「解決金」「示談金」とすることがあります。
ここで大事なのは、税務上の評価が基本的に次の発想で行われる点です。
- 何に対する支払いか(不倫により婚姻共同生活の平穏を侵害したことへの損害賠償なのか)
- 金額の内訳(利息相当・実費等)があるのか
- 当事者間の関係(肩代わり・求償放棄など)があるのか
つまり、「解決金と書けば課税される/慰謝料と書けば非課税」という単純な話ではありません。
名目をどうするにせよ、「本件金員が何の解決として支払われるか」を短く明確にしておくと、後から説明がしやすくなります。例:不貞行為により生じた精神的苦痛等の損害の解決として支払う旨、利息相当を含むか否か、清算条項(これ以上請求しない)など。
示談書の条項設計は、税金だけでなく、追加請求・蒸し返し・接触トラブルの予防にも直結します。書面化で迷う場合は、弁護士に具体的な文案まで確認するのが安全です。
まとめ:税金で損しないためのチェックリスト(迷ったら相談先)
不倫慰謝料の税金は、「慰謝料=絶対非課税」と決めつけたり、「示談金=課税」と思い込んだりすると、判断を誤りやすい分野です。最後に要点を整理します。
- 課税かどうかは“名目”より“実質”(何の対価か/利息相当があるか)で判断されやすい
- 受け取った側は、利息相当・内訳不明・混在があるときに要注意(記録と書面で説明可能に)
- 支払った側は、原則として控除・経費にはならない前提で考える(支払記録は必ず保管)
- 肩代わりや求償しない合意は、当事者間で“経済的利益”が生じ、贈与税的な論点が出ることがある
- 迷ったら、示談書にサインする前に弁護士・税理士へ相談して早期に整理する
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