婚約破棄で訴えられた【解決事例】|慰謝料の争点3つと初動対応を弁護士が解説

婚約破棄で訴えられた場合、焦って相手に連絡したり、言い分をその場で認めたりすると、後から不利になることがあります。

一方で、婚約破棄の裁判(または交渉)には「成立要件」と「争点の型」があり、そこを外さずに準備をすれば、請求額の大幅減額や、場合によっては0円解決も十分に狙えます。

この記事ではこんな悩みにお答えします。

  • 婚約破棄で**訴えられた(訴状が届いた/内容証明が来た)**とき、まず何をすべきか知りたい
  • 「そもそも婚約が成立していたのか」「口約束でも負けるのか」を整理したい
  • 慰謝料や結婚準備費用をどこまで払う必要があるのか/減額・0円の余地があるのか知りたい
  • 相手と直接やり取りしてよいか、裁判になったらどう進むか不安

 

結論:婚約破棄で訴えられても、減額・0円で解決できる余地はある(最初にやるべきことも)

「婚約破棄 訴えられた」と検索している方の多くは、次のどれかの段階にいます。

  • 相手(または相手の弁護士)から、内容証明郵便や通知書で請求が来た
  • いよいよ訴状が届いた(裁判が始まった)
  • まだ訴訟前だが、「訴える」と強く言われている/連絡が止まらない

この段階で大切なのは、「言い返す」ことよりも、まず争点を3つに分解して落ち着いて整理することです。

  • 争点①:そもそも婚約(婚姻予約)が成立していたのか
  • 争点②:婚約が成立していたとして、破棄に正当な理由があるか
  • 争点③:仮に責任があるとして、請求されている金額(慰謝料・費用など)は相当な範囲か

そして、今すぐできる「初動」は次のとおりです。

  • 届いた書面(通知書・内容証明・訴状)を保管し、日付・請求金額・根拠の書き方を確認する
  • LINE・メール・写真・領収書など、婚約の有無や経緯が分かる資料を消さずに保全する(スクショだけでなく、可能ならデータも残す)
  • 相手に長文で説明・謝罪・反論を送る前に、こちらの主張の軸を固める(不用意な発言が「婚約を認めた」と扱われることがある)
注意:訴状は放置しないでください

訴状が届いているのに何もしないと、相手の言い分どおりに判決が出るリスクがあります。期限(答弁書など)に間に合うように、早めに対応方針を決めることが重要です。

「婚約破棄で訴えられた=もう終わり」ではありません。ポイントは、婚約の成否・正当理由・金額の相当性を、証拠ベースで組み立て直すことです。
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

不倫慰謝料に詳しい坂尾陽弁護士

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(解決事例)婚約破棄を理由に200万円を請求されたが、0円で解決した事案

ここでは、当事務所で実際に解決した事例の一部を、個人が特定されない形でご紹介します。

「婚約破棄で訴えられた」「口約束を理由に慰謝料請求された」という方にとって、状況を照らし合わせやすい類型です。

交際の経緯とトラブル化の背景(匂わせ発言/DV・強要など)

ご依頼者様(30代・男性)は既婚者でしたが、職場の同僚である独身女性と、肉体関係を伴う交際関係になりました。

ただ、ご依頼者様には家庭があり、関係を続けることに葛藤が生じ、次第に交際を終わらせたい気持ちが強くなっていきました。

ところが、別れを切り出した後、相手女性が強く反発し、交際中の言い争いが激しくなりました。さらに、継続的に暴力を振るわれるなど、いわゆるデートDVの状態が続きました。

ご依頼者様は、身の安全の確保や、その場を収めるために、相手を落ち着かせる目的で「もし相手が見つからないなら…」といった形で、将来一緒になる可能性をにおわせる発言をしてしまったことがありました。

この「発言」が、後に「婚約(婚姻予約)の証拠だ」と主張される火種になりました。

相手方の請求(婚姻予約破棄/慰謝料200万円)とリスク

最終的に、ご依頼者様は交際関係を終了させました。すると相手女性は、「婚約を約束していたのに破棄された」として弁護士を立て、慰謝料200万円を請求してきました。

婚約破棄の請求では、相手が主張しがちな論点が概ね決まっています。

  • 「結婚の約束があった(口約束でも婚約は成立する)」という主張
  • 「結婚に向けた準備をした(時間・お金・心身の負担がある)」という主張
  • 「一方的に破棄された(人格的損害が大きい)」という主張

このタイプの請求は、交渉で終わることもありますが、相手の意向や証拠関係によっては訴訟に移行することもあります。だからこそ、早い段階で「争うべきポイント」を外さずに整理する必要があります。

相談時点の悩み(訴えられた不安/家族・職場への影響/支払うべきか)

ご依頼者様が特に不安に感じていたのは、次の点でした。

  • 既婚である自分が、相手からの「婚約破棄」を理由に本当に責任を負うのか
  • その場しのぎの発言が「婚約の合意」とされ、裁判で不利にならないか
  • 家族や職場に知られてしまわないか(連絡がエスカレートしていた)

当事務所では、交際の経緯・発言の文脈・証拠の残り方を具体的に確認したうえで、**婚約が成立していない(または有効な合意がない)**という方向で主張を組み立て、交渉方針を固めました。

MEMO

婚約破棄の請求は、法律用語で「婚姻予約の破棄」と整理されることがあります。書面で急に難しい言葉が出てきても、焦って認める必要はありません。まずは「婚約が成立しているか」が核心です。

また、この類型は「手切れ金の請求」に近い性質として争点が整理されることもあります。

(参考)手切れ金とは?意味や相場を弁護士が徹底解説!

婚約破棄で慰謝料請求・訴訟が成立する条件(婚約=婚姻予約)

婚約破棄で訴えられたとき、まず理解しておくべきなのは、婚約破棄の請求が「何でも通るわけではない」ということです。

大まかには、次の順番で判断されます。

  • ステップ1:婚約(婚姻予約)が成立していたか
  • ステップ2:成立していたとして、破棄に正当な理由がないといえるか
  • ステップ3:責任があるとして、請求額(慰謝料・費用等)は相当な範囲か

つまり、「結婚の話はしていた」だけで直ちに慰謝料が決まるわけではなく、合意の中身・準備状況・別れに至った経緯・証拠の強さがセットで見られます。

そもそも「婚約(婚姻予約)」とは何か

婚約(婚姻予約)とは、ざっくり言えば「将来結婚することについて、当事者同士が合意している状態」を指します。

重要なのは、指輪・結納・両親への挨拶といった“儀式”そのものに加えて、当事者の合意がどれだけ具体的で明確だったかです。

そのため、形式的なイベントがなくても婚約が成立すると判断されることはありますし、逆に、イベントがあっても合意が曖昧であれば争いになることもあります。

婚約が「成立した」と判断されやすい事情(口約束でも成立しうる)

「婚約 口約束 有効?」という疑問は非常に多いのですが、結論としては、口約束でも婚約が成立すると判断される可能性はあります

ただし、裁判では口約束“だけ”を機械的に採用するのではなく、周辺事情を含めて総合的に判断されます。

たとえば、次のような事情が積み上がると、婚約の成立が認められやすくなります。

  • 具体的な結婚時期や生活設計について、継続的に話し合っていた
  • 親族・友人・職場など第三者に「婚約した」と紹介していた(周知がある)
  • 同棲を始め、新居を契約した/生活費を一体化させていた
  • 結婚式場・フォト・旅行など、結婚準備としての申込みや予約がある
  • 婚約指輪の購入や、結納に近い金銭の授受がある

一方で、婚約が成立しているかどうかは、言葉の強さだけでなく、「本気度」「具体性」「一貫性」「その言葉が出た文脈(追い詰められていた等)」も見られます。

そのため、同じように「結婚しよう」と言っていても、結論が分かれることがあります。

証拠になりやすいもの(LINE・メール・指輪・式場・同居実態など)

婚約破棄で訴えられたとき、相手は「婚約の証拠」として様々な資料を出してきます。こちらとしても、反論のために“何が証拠として扱われやすいか”を知っておくことが重要です。

  • LINE・メール:結婚の合意(時期・場所・準備)をうかがわせるやり取り
  • 写真・投稿:両家顔合わせ、指輪、式場下見、同棲開始などの記録
  • 契約書・申込書:新居契約、式場・フォト・旅行の申込み、キャンセル料の資料
  • 領収書・明細:指輪、家具家電、引っ越し、式準備の支出が分かるもの
  • 第三者の証言:周囲に婚約を公表していたか、生活実態がどうか

ポイントは、相手の証拠を「見た瞬間に諦める」のではなく、

その証拠が示しているのは本当に「婚約の合意」なのか、それとも「交際の延長の会話」なのかを丁寧に切り分けることです。

「婚約破棄」が違法(責任発生)になるのはどんなときか

仮に婚約が成立していたとしても、直ちに慰謝料が発生するわけではありません。

一般に、問題になるのは「正当な理由なく」婚約を破棄したと評価される場合です。

たとえば、相手に重大な問題があるのにそれを無視して請求してきているケースや、暴力・脅迫・強い支配が絡むケースでは、「別れたこと自体」に相当の理由があると主張できる余地が出てきます。

また、結婚準備がどこまで進んでいたか、別れを伝えるまでの経緯(突然か、話し合いがあったか)も、責任の有無・金額に影響します。

請求され得る損害の内訳(慰謝料だけではない)

婚約破棄の請求は、「慰謝料〇〇万円」とだけ書かれていることもありますが、実務上は、次のような項目が混ざって主張されることがあります。

  • 精神的苦痛に対する慰謝料
  • 結婚準備費用(式場、写真、旅行、新居、引っ越し等)の負担
  • 仕事・学業の調整による不利益(退職・転居準備などが主張されることもある)
  • 贈与物(指輪等)の扱い(返還・清算が問題になることがある)

ここで重要なのは、「言われた金額をそのまま前提にしない」ことです。

たとえば結婚準備費用は、何でも認められるわけではなく、因果関係や金額の相当性が争点になります。慰謝料についても、婚約の成立の強さ、破棄の態様、当事者の事情などで変動します。

婚約破棄の請求は、“婚約があった”ことを前提に話が進みがちです。ですが、実際には「婚約が成立していない」「正当理由がある」「金額が過大」のどこかで争点が立つことが多いです。まずは土台から崩せるかを確認しましょう。

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争点①:婚約(口約束)が有効といえるか(成立しない・無効/取消の余地)

「婚約破棄で訴えられた」とき、真っ先に確認したいのは、そもそも婚約(婚姻予約)が成立していたのかです。

なぜなら、婚約破棄の慰謝料請求は、基本的に「婚約が成立していたこと」を前提に成り立つからです。

ポイントは、「結婚の話をしたことがある」=「婚約」ではない、という点です。

裁判では、言葉だけでなく、交際の経緯・生活実態・周囲への説明・結婚準備の進み具合などから、**“結婚の合意がどれだけ具体的で明確だったか”**が総合的に見られます。

また、相手が「婚約があった」と主張する場合、通常は相手側が、LINEや契約書などの証拠を出しながら、その成立を立証しようとします。あなたとしては、相手の証拠を見て焦るのではなく、その証拠が本当に“婚約の合意”まで示しているのかを落ち着いて分解していくことが重要です。

口約束でも婚約は成立し得るが、ポイントは「結婚の合意の明確性」

「口約束でも婚約になるの?」という不安は非常に多いです。結論として、口約束でも婚約が成立すると判断される可能性はあります。ただし、何でも婚約になるわけではありません。

裁判で問題になるのは、次のような点です。

  • 互いに「将来結婚する」ことを、どの程度はっきり合意していたか(曖昧な期待ではなく、合意といえるか)
  • 結婚時期・同居・家計・仕事の調整など、結婚に向けた具体性がどれだけあったか
  • 周囲への紹介や両親への説明、式場・新居などの準備が進んでいたか(第三者に説明できるレベルか)
  • LINE等のやり取りが、恋人同士の会話の範囲なのか、それとも婚約の合意として読めるのか

たとえば、「いつか結婚できたらいいね」「落ち着いたら一緒になろう」といった表現は、状況によっては単なる希望・気持ちの表明にとどまることもあります。

一方で、結婚時期や段取りが具体化していたり、両家への挨拶や式場予約が進んでいたりすると、「口約束でも婚約が成立していた」と見られるリスクが高まります。

ここでの実務的な見方は、「言った/言わない」だけで勝負しないことです。

婚約といえる合意の重み”が本当にあったのかを、証拠と事実関係で整理します。

婚約が成立しにくい典型(その場しのぎ/曖昧な表現/追い詰められた発言)

婚約が成立しにくい(または争いやすい)典型パターンもあります。婚約破棄で訴えられた場合でも、次のような事情があれば、そもそも婚約不成立を主張できる余地が出てきます。

  • 「別れ話の場面」「喧嘩の最中」などで出た、その場しのぎの発言に近い(継続的・具体的な話し合いがない)
  • 「結婚しよう」は言っていても、時期・段取り・生活設計が曖昧で、準備も進んでいない
  • 相手の強い圧力(脅し、暴言、暴力、過度な監視など)があり、追い詰められて発言した疑いがある
  • 前後の行動が矛盾している(例:発言後すぐに関係解消を試みている/結婚準備が一切ない)

「結婚するって言っただろ!」と責められると、つい“言った/言ってない”に引っ張られがちです。

しかし、裁判や交渉では、むしろ次のように整理した方が戦いやすいことが多いです。

  • その発言が出た前後の状況(何が起きていたか)
  • 発言後の行動(本当に結婚準備を進めたのか、関係解消を試みたのか)
  • 発言以外の具体的合意の有無(時期、両親、同居、式場など)
MEMO:LINEは「一部の切り抜き」ではなく前後関係が重要です

婚約破棄の請求では、相手がLINEの一文だけを切り抜いて「婚約の証拠」として出してくることがあります。こちらとしては、前後の文脈を含めて「その場を収めるため」「曖昧なやり取りにすぎない」など、意味合いを立体的に示すことが重要です。データ削除やトーク履歴の消去は避け、原本に近い形で保全しましょう。

「婚約破棄 女性から」訴えられやすい状況と、先に整理すべき論点

「婚約破棄 女性から訴えられた」という相談では、別れ話の局面でトラブルが激化し、相手が強硬になっているケースが少なくありません。

特に、次のようなタイミングで請求が来やすい傾向があります。

  • 別れを告げた直後(ブロック・距離を置いた直後を含む)
  • 新しい交際相手や結婚の話が相手に知られたとき
  • 相手が「裏切られた」と感じ、感情がピークになっているとき
  • 相手が弁護士に相談し、法的な“型”に乗せて請求し始めたとき

この局面で大事なのは、「相手を説得すること」より先に、裁判で争点になる事実を先に固めることです。

具体的には、次の3点を時系列で整理しておくと、反論の軸がブレにくくなります。

  • 結婚の合意があったといえる具体的事情は何か(または無いのか)
  • 結婚準備(式場・新居・両家挨拶など)は、どこまで進んでいたか(領収書・契約書の有無)
  • 別れに至った経緯(話し合いの有無、相手側の落ち度や危険行為の有無、別れ方の相当性)

「婚約破棄で訴えられた」状況でも、ここを丁寧に整理すると、そもそも婚約不成立または責任の大幅減額の見通しが立つことがあります。

争点②:正当な理由があれば、慰謝料が減額・否定されることがある

仮に婚約が成立していたとしても、婚約破棄で常に慰謝料責任が生じるわけではありません。

基本的には、「正当な理由なく」一方的に破棄したと評価されるときに、慰謝料などの責任が問題になります。

逆に言えば、別れに至った事情に正当性があれば、慰謝料が減額されたり、場合によっては責任自体が否定されたりする余地があります。

ここでは、婚約破棄で訴えられた方が特に確認したい「正当な理由」の代表例を整理します。

相手の浮気・不誠実行為がある場合(浮気 婚約破棄 慰謝料)

婚約中(または婚約に準ずる段階)であっても、相手の浮気や重大な裏切りがあれば、信頼関係は大きく損なわれます。

そのため、「浮気が原因で婚約破棄した」というケースでは、あなた側に正当な理由があるとして、慰謝料が争いやすくなります。

ただし、重要なのは「浮気っぽい」では足りず、どの程度の裏付けがあるかです。裁判や交渉で評価されやすい資料の例は次のとおりです。

  • 相手が浮気を認めたLINE・メール(日時が分かる形で保存)
  • 宿泊・旅行・ホテルの領収書や明細(誰と、いつ、どこで、が推測できるもの)
  • SNS投稿や写真(第三者が見ても関係性が分かるもの)
  • 相手方の言動の一貫性(説明の変遷、嘘の重なり)

「婚約破棄で訴えられた」とき、相手の浮気があっても、こちらが感情的に責め続けると逆効果になることがあります。

事実の裏付け”を中心に、冷静に主張を組み立てることが大切です。

DV・モラハラ・脅迫・ストーカー化など安全配慮が必要なケース

相手からのDV(身体的暴力)やモラハラ(精神的支配)、脅迫、ストーカー行為がある場合、別れること自体にも正当性が出る余地があります。

この類型は、婚約破棄の問題というよりも、まず身の安全確保が優先です。

また、交渉・裁判の場面でも、次のような事情は重要な争点になります。

  • 暴力・脅迫・過度な監視が実際にあったか(頻度、内容、時期)
  • こちらが恐怖を感じ、別れざるを得なかった事情があるか
  • 別れを告げた後も、接触や嫌がらせが継続しているか

証拠としては、録音、診断書、写真、警察・相談機関への相談記録、第三者の目撃などが問題になります。

「婚約破棄 訴えられた」という局面でも、危険性が高い場合は、**連絡を断つ設計(窓口を代理人に一本化する等)**が現実的な解決につながることがあります。

重大な虚偽(年齢・借金・既婚の隠匿等)があった場合

結婚生活の前提に関わる重要事項について、相手が重大な嘘をついていた場合も、婚約破棄の正当な理由になり得ます。

典型例は次のとおりです。

  • 多額の借金、ギャンブル依存などを隠していた(返済状況も含む)
  • 既婚であること、あるいは婚姻関係に近い交際を隠していた
  • 職業・収入・学歴などを大きく偽っていた(結婚生活の設計が崩れるレベル)
  • 前科・重大なトラブル歴などを隠していた(事案により評価は分かれる)

もちろん、どの嘘でも直ちに正当な理由になるわけではありません。

しかし、結婚の意思決定に直結するレベルの虚偽であれば、婚約破棄で訴えられた場合でも、こちらの責任が軽くなる(または否定される)方向で争える余地があります。

争点③:慰謝料・損害額の相場感と、増減の判断要素

婚約破棄の請求は、慰謝料だけでなく「結婚準備費用」「キャンセル料」「引っ越し費用」など、さまざまな名目が混ざることがあります。

そして実務上、請求金額は強気に設定されることも多く、請求された金額=そのまま支払う金額ではありません。

婚約破棄で訴えられたときは、まず「何が、どれだけ、根拠があるのか」を分解し、増減要素を当てはめていくことが重要です。

慰謝料が増えやすい事情/減りやすい事情

慰謝料の多寡は、「結婚がどれだけ現実化していたか」「破棄の態様がどれだけ不相当か」「当事者の落ち度がどちらにあるか」といった事情で動きます。

増えやすい事情・減りやすい事情を整理すると、次のように考えられます。

  • 慰謝料が増えやすい事情
  • → 結婚時期が具体化していた/式場・新居などの契約が進んでいた/両家に婚約を公表していた/一方的・突然の破棄で、相手が調整不能な損害を被った など
  • 慰謝料が減りやすい事情
  • → 婚約自体が曖昧で準備も進んでいない/相手にも浮気・DV・重大な虚偽など落ち度がある/破棄に至るまで話し合いを重ねている/別れ方が相当(安全確保のため等) など

あなたが「婚約破棄で訴えられた」側でも、相手側の事情や交際の実態によっては、金額が大きく動くことがあります。

そのため、金額だけで恐怖を感じるのではなく、増減要素のどこに当てはまるかを先に整理するのが得策です。

結婚準備費用・贈与物(指輪等)の扱いと注意点

結婚準備費用については、相手が「準備にかかった費用」を幅広く主張してくることがあります。

ただし、実際に争点になるのは次の2つです。

  • その支出が、婚約(結婚)を前提にしたものといえるか(交際の延長の趣味・旅行などは争いになりやすい)
  • 金額が相当か(高額すぎるもの、必要性が薄いものは争点化しやすい)

また、婚約指輪や高額なプレゼントなどは、「贈与として渡したもの」なのか、「婚約を前提とする条件付きのもの」なのかで扱いが問題になることがあります。

ここも一律ではなく、交付時のやり取り(LINEや手紙など)や金額、交際経緯などで評価が変わります。

請求書に「費用」として混ぜ込まれている場合もあるため、婚約破棄で訴えられたときは、内訳と根拠資料(領収書・契約書)があるかをまず確認しましょう。

本件で0円解決できた交渉のポイント(反論の組み立て方)

婚約破棄で訴えられた場合でも、争点の立て方次第で、請求額を大きく減らしたり、条件次第では**金銭の支払いなし(0円)**で終えたりできる余地があります。

ここでは、実務上の「反論の組み立て方」を、再現しやすい形で整理します。

婚約不成立(合意の不存在)を中心に主張する

本件では、まず「そもそも婚約が成立していない」という主張が柱になりました。

この主張を組み立てるときは、次の順番で整理するとブレにくいです。

  • ① いつ・どこで・どんな言葉が出たのか(発言が“合意”なのか“感情の表明”なのか)
  • ② 発言の前後で、結婚に向けた具体的行動があったのか(式場、新居、両親、同居など)
  • ③ 発言後の行動が矛盾していないか(すぐ別れ話、準備ゼロ、関係解消の試み等)
  • ④ 相手の証拠の読み方(切り抜き・誤解・文脈)をこちらの時系列で上書きできるか

「言ったかもしれない」こと自体が問題なのではなく、裁判で評価されるのは**“婚約の合意といえる重み”があったか**です。

この軸で整理すると、婚約破棄で訴えられた局面でも、反論の道筋が作れます。

(事情がある場合)別請求権との関係を交渉材料にして「一括解決」を狙う

事案によっては、相手が請求している一方で、こちら側にも別の主張・請求の余地があることがあります。

本件のように当事者関係が複雑なケースでは、相互に請求を放棄して終えるという形が、現実的な落としどころになることがあります。

ここで重要なのは、法的な“相殺”ができるかどうかではなく、交渉(示談)として双方が納得できる形で清算する発想です。

  • 相手の請求にも弱点がある(婚約不成立、正当理由、金額の過大など)
  • こちら側にも争点がある(DV・脅迫、返還問題、名誉毀損的な拡散など)※事案により
  • これ以上争いを長引かせることは双方に不利益(時間・費用・精神的負担)

こうした事情が噛み合うと、「支払いをする/しない」だけでなく、**“ゼロで終わらせる”**という結論に到達できることがあります。

(参考)手切れ金とは?意味や相場を弁護士が徹底解説!vv

合意書(示談書)で必ず押さえる条項(清算条項・接触禁止等)

仮に話がまとまりそうでも、最後の示談書(合意書)が弱いと、後から再燃するリスクがあります。

婚約破棄で訴えられた案件ほど、**“終わらせ方”**が重要です。

合意書では、少なくとも次の点を押さえるのが基本です。

  • 清算条項(本件に関して、今後互いに一切の請求をしないこと)
  • 守秘義務(SNS投稿・第三者への拡散を含め、一定の範囲で口外しないこと)
  • 接触禁止(直接連絡・勤務先への連絡・自宅への来訪等をしないこと)
  • 違反時の取り決め(違約金条項を置くか、差止めの合意をどうするか)※事案により慎重に検討

「婚約破棄で訴えられた」問題は、勝ち負けだけでなく“蒸し返されない形で終える”ことが非常に重要です。合意書の中身まで含めて、解決の設計をしていきましょう。

婚約破棄で訴えられた場合の初動(内容証明〜訴状対応まで)

「婚約破棄で訴えられた」とき、最もやってはいけないのは 放置感情的なやり取り です。

初動でミスすると、後からどれだけ正しい主張があっても、回復が難しくなることがあります。

ここでは、状況別に「今すぐやること/やってはいけないこと」を整理します。

内容証明・弁護士通知が来た段階でやること/やってはいけないこと

まず、内容証明や弁護士通知は「裁判が確定した」という意味ではありません。

ただし、相手が本気で法的手続に乗せようとしている合図なので、対応の優先順位を上げるべきです。

  • まずやること①:届いた書面を整理する(差出人/請求名目/期限/証拠の記載を確認)
  • まずやること②:事実関係を時系列でメモ化する(交際開始→結婚の話→準備の有無→別れの経緯)
  • まずやること③:証拠を保全する(LINEは削除しない/スクショ+可能ならトーク履歴の保全等)
  • まずやること④:こちらが不用意に認めてしまった発言がないか確認する(「婚約だった」「結婚を約束した」等)
やってはいけないこと(重要)

・相手に長文で謝罪や説明を送る(文面が「婚約を認めた証拠」になることがあります)

・金額交渉を自己流で始める(合意したつもりがなくても、後で不利に扱われることがあります)

・SNSで反論、共通の知人に根回し(名誉やプライバシーの二次トラブルになり得ます)

内容証明の段階では「何を言うか」より「何を言わないか」が大事です。まずは争点(婚約の成否・正当理由・金額)を固めてから動きましょう。

訴状が届いたら:答弁書・証拠・和解の現実的ライン

訴状が届いた場合、すでに裁判手続が始まっています。

この段階での最優先は 期限管理 です。

MEMO:訴状でまず見るポイント

・事件番号/裁判所名

・「第1回口頭弁論期日」の日時

・「請求の趣旨」「請求の原因」(相手が何を根拠に、何を求めているか)

・証拠方法(相手が何を証拠としているか)

多くのケースでは、訴状と一緒に「答弁書」の提出案内が入っています。

細かい期限は事件ごとに異なりますが、一般に あまり余裕はありません。放置すると相手の主張がそのまま通ってしまう(いわゆる欠席・不出頭のリスク)ため、早急に方針を決める必要があります。

  • ステップ1:訴状の主張を「争点①婚約」「争点②正当理由」「争点③金額」に分解する
  • ステップ2:こちらの反論方針を決める(例:婚約不成立/正当理由あり/金額が過大)
  • ステップ3:反論を支える証拠を揃える(LINE前後関係、同棲や式場の有無、DVや虚偽の記録など)
  • ステップ4:答弁書で“最低限の否認・反論”を出し、和解を含めた着地点を検討する
注意:訴状が来たら、相手との直接交渉は慎重に

裁判が始まっている状況での直接連絡は、感情の衝突・録音・切り抜き等で不利になりやすい傾向があります。窓口を代理人に一本化した方が、結果的に早く安全に終わることが多いです。

裁判になったケースではほとんどの方が弁護士に依頼されるようです。

 

弁護士に相談するタイミング(費用倒れを避ける考え方も含む)

「弁護士費用が気になる」「費用倒れが怖い」という不安は自然です。

ただ、婚約破棄で訴えられたケースでは、早い段階で相談した方が得になる場面が少なくありません。

  • 不用意な発言(=婚約を認めた扱い)を防げる
  • 証拠の集め方・並べ方で、見通しが大きく変わる
  • 相手の請求の弱点(婚約不成立、正当理由、金額過大)を早期に突ける
  • 和解の条件(清算条項・接触禁止など)まで含めて設計できる
費用倒れを避けるコツ

「いくら減額できそうか」だけでなく、

・裁判にかかる時間と精神的負担

・職場や家族への波及リスク

・蒸し返し防止(示談書の設計)

まで含めて、依頼メリットを判断するのが現実的です。

よくある質問(婚約破棄 慰謝料/口約束/裁判の見通し)

【Q1】口約束だけでも、婚約として認められて負けますか?

【A】口約束でも婚約が成立し得るのは事実ですが、言葉だけで機械的に決まるわけではありません

結婚準備の進み具合、周囲への周知、やり取りの具体性、発言の文脈(その場しのぎ・追い詰められた状況)などを総合して判断されます。争点①(婚約の成否)として十分に争えるケースもあります。

【Q2】「結婚しよう」と言ったLINEが残っています。もう終わりですか?

【A】一文だけで諦める必要はありません。

重要なのは 前後の流れ発言後の行動 です。

たとえば、直後に別れ話をしている、結婚準備が一切ない、相手の暴力や強い圧力があった等の事情があれば、「誠実な合意」とはいえない(少なくとも争点になる)可能性があります。

【Q3】婚約破棄の慰謝料はいくらが相場ですか?

【A】一律の相場で決まるというより、事情で大きく動きます。

「結婚がどれだけ現実化していたか(式場・新居・両家挨拶等)」「破棄の態様(突然・一方的か)」「相手にも落ち度があるか(浮気・DV・重大な虚偽等)」で増減します。

また、慰謝料に加え、結婚準備費用が争点になることもあります。

【Q4】相手が弁護士を立てています。こちらも弁護士を立てるべきですか?

【A】必ずしも全件で必須ではありませんが、次に当てはまる場合は、早期に相談するメリットが大きいです。

  • すでに訴状が届いた(期限が迫っている)
  • DV・脅迫・ストーカー化など、安全面の配慮が必要
  • 請求額が高い/内訳が不明/証拠が多いと言われている
  • 自分の発言(LINE等)が不利に扱われそうで不安

【Q5】裁判になる確率はどれくらいですか?

【A】ケースによります。相手の性格・請求目的・証拠の強さ・金額の落としどころ次第です。

ただし、通知の段階で「訴える」と言われていても、交渉で終わることはありますし、逆に軽い請求に見えても訴訟に進むこともあります。

大切なのは「確率」より、裁判になっても対応できるように 争点整理と証拠準備 を先に進めておくことです。

【Q6】支払って早く終わらせたいのですが、先に振り込んでもいいですか?

【A】慎重に判断してください。

先に支払うと、「責任を認めた」と評価されるリスクや、追加請求・蒸し返しのリスクが残ることがあります。

支払う場合でも、清算条項・接触禁止・守秘義務などを入れた合意書で、終わらせ方まで設計するのが重要です。

まとめ:争点整理(婚約の成否/正当理由/損害の内訳)と、早期対応の重要性

「婚約破棄 訴えられた」ときに大切なのは、恐怖や罪悪感で動くのではなく、論点を正しく分解して、証拠ベースで立て直すことです。

  • まず確認すべきは 婚約(婚姻予約)が成立していたか(口約束でも成立し得るが、文脈と具体性が重要)
  • 次に、別れに 正当な理由 があるか(浮気・DV・重大な虚偽などは重要な争点)
  • 最後に、請求額の中身(慰謝料+結婚準備費用等)が 相当か を分解して検討する
最後に(初動の結論)

内容証明の段階でも、訴状が届いた段階でも、放置や感情的な返信は避け、

「争点整理→証拠保全→対応方針の決定」を優先してください。

状況(証拠の有無、交際経緯、相手の請求内容)に応じて、交渉・裁判のどちらでも最適な着地点を設計していくことが可能です。

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