不倫の略奪婚を狙う場合に知っておくべき法律知識

不倫の略奪婚とは、あなたが既婚者と不倫関係にあるときに、相手方夫婦が離婚してあなたと再婚をするケースです。

不倫の略奪婚を狙いたいのであれば、事前に必要な法律知識を身につけておきましょう。

 

1.     略奪婚の前提:不倫相手は離婚できるか?

 

1.-(1)  原則として不倫相手からは離婚できない

もし不倫相手も現在の配偶者と離婚したいと思っても、法律上は有責配偶者から離婚はできないことになっています。

有責配偶者とは離婚原因を作った配偶者のことを指します。

 

不倫相手は不倫を理由として現在の配偶者と離婚し、あなたと再婚をしようと考えています。

つまり、不倫相手は離婚原因となる不倫を自ら行っている有責配偶者となります。そのため、有責配偶者から離婚を求める裁判を起こしても、裁判所は原則として離婚請求を認めていません。

 

そこで、不倫で略奪婚を狙う場合には、まず不倫相手が離婚できるかが問題となります。

 

1.-(2)  離婚できるケース①:現在の配偶者も離婚に応じる場合

 

有責配偶者から離婚を求められないとしても絶対に離婚ができないわけではありません。

 

まず、不倫相手が離婚できるケースとしては、不倫相手の現在の配偶者が離婚に応じている場合があります。

不倫相手が本気で離婚するつもりであることが伝われば、現在の配偶者も諦めて離婚に応じることも少なくありません。

 

相手方夫婦間の話し合いでは離婚を拒否されたときでも、不倫相手が弁護士を立てて交渉をすれば現在の配偶者が離婚に応じることもあります。

相手方夫婦の離婚条件は、後述するあなたへの不倫慰謝料にも影響するため、不倫相手には可能であれば弁護士を立てて離婚交渉をするよう勧めることをおすすめします。

(参考)不倫相手が慰謝料を免除された場合の効力:判例と実務の違いに注意【弁護士解説】

 

1.-(3)  離婚できるケース②:判例が示す3つの要件

 

現在の配偶者が離婚に応じないときでも、判例が示す3つの要件を満たせば例外に有責配偶者からの離婚請求が認められることもあります。

 

最高裁昭和62年9月2日判決は、以下の3つの要件を満たせば有責配偶者からの離婚請求も認められると判断しています。

  • ①別居状態が長期間に及んでいる場合
  • ②夫婦間に未成年の子どもがいない場合
  • ③離婚によって配偶者が経済的に苛酷な状況におかれない場合

 

別居期間については具体的な決まりはありませんが、10年超であれば長期間と判断されることが多いです。5年以上から10年未満であれば、当事者の年齢や同居期間等の具体的事情によります。

実務的には7〜8年が目安だと言われています。ただし、家庭内別居は別居とみなされないので注意しましょう。

 

実務的には、慰謝料・財産分与によって現在の配偶者が離婚後も経済的に困らない場合は、要件を満たしたと判断されやすくなり、離婚へ向けて一歩前進できます。

略奪婚を考えているのであれば、不倫相手に未成年の子どもがいるかどうか、夫婦関係は良好かどうかなどを事前にチェックしておきましょう。

 

2.     不倫略奪婚を理由に高額な不倫慰謝料を請求されるリスク

不倫で略奪婚を狙うときには、あなたと不倫相手に対して高額な慰謝料を請求されるリスクについても考えておく必要があります。

 

2.-(1)  不貞行為の有無とプラトニック不倫

 

既婚者と不貞行為に及んだ場合は相手の配偶者から慰謝料を請求される場合があります。不貞行為とは自由な意思にもとづいて配偶者以外の人と性的関係を結ぶことを指します。

 

意思に反して性交渉した場合や強姦された場合は不貞行為とはみなされません。また、食事やデート、ハグやキスなどの行為も不貞行為には当たらず、慰謝料請求はできないとされています。

従って、まずは不貞行為=肉体関係があるか否かがポイントになります。

 

もっとも、相手方夫婦が離婚するまで肉体関係を我慢したプラトニックな不倫な場合でも略奪婚がばれた場合には慰謝料を請求されることがあります。

このような場合の慰謝料支払義務については以下の記事をご覧ください。

(参考)【裁判例で解説】プラトニックな不倫で請求された慰謝料の支払義務はあるか?

 

2.-(2)  肉体関係があるときの不倫慰謝料の相場

 

肉体関係を結んだことが相手の配偶者にバレてしまった場合は多額の慰謝料を請求される覚悟をしなければなりません。

不倫が原因で離婚にいたる場合の慰謝料の相場は200万円~300万円程度と一般的には言われているため、高額な慰謝料を請求されることが略奪婚のリスクと言えるでしょう。

 

慰謝料の金額は以下のような事情があるときは配偶者の心痛がより大きいとみなされ、慰謝料の金額が高くなるので注意が必要です。

  • 不倫相手に子どもがいる場合
  • 不貞期間が長い場合
  • あなたと不倫相手の間に子どもができた場合

 

もし、何らかの事情で略奪婚に失敗して、相手方夫婦が離婚しなかったときでも慰謝料は請求されます。

離婚する場合に比べて慰謝料の相場は低くなりますが、それでも100万円〜200万円程度の慰謝料が発生するリスクがあるので注意が必要です。

 

2.-(3)  不倫慰謝料はあなたと不倫相手で支払えば良い

 

もっとも、不倫慰謝料はあなたと不倫相手が共同して負担するべきことです。

 

仮に適正な慰謝料金額が200万円だとすると、あなたと不倫相手がそれぞれ200万円を支払って合計400万円を現在の配偶者が得られるわけではありません。

あなたと不倫相手で協力して現在の配偶者に対して200万円を支払えば足りるのです。

(参考)慰謝料の二重取りはできない

 

 

略奪婚をするケースだと、あなたと不倫相手で相談しながら慰謝料を支払っていくことになるでしょう。

また、不倫相手が離婚する時に慰謝料を支払っていれば、あなたの慰謝料支払義務が免除される場合があります。

このような点を考えると、略奪婚を狙うのであれば不倫相手が離婚する前に一度弁護士に相談する方が良いでしょう。

 

2.-(4)  略奪婚を狙うことは慰謝料増額理由になるか?

 

世の中には不倫関係がバレたときに開き直ってしまう人もいます。略奪婚を狙うとしても、まったく謝罪をしないことは慰謝料の増額理由となる場合があります。

(参考)不倫がバレたときすぐに謝罪して良いか?

 

他方で、不倫がばれたとしても、略奪婚を狙ってあなたと不倫相手が交際関係を続ける場合に法律上交際を止めるように強制されることはありません。

(参考)不倫コラム:不倫をやめることを強制されるか?

 

一般的には不倫関係を止めるように求められたのに、あえて不倫を続けた場合には慰謝料の増額事由となると言われています。

もっとも、弁護士が交渉をすれば、不倫で略奪婚をしたケースでも慰謝料を大幅に減額できることも少なくありません。

もし慰謝料を請求された場合には、そのまま放っておかずに、弁護士に依頼して今後の対策を考えましょう。

 

3.     略奪婚を狙う場合の慰謝料減額交渉のポイント:接触禁止条項

 

3.-(1)  接触禁止条項に応じる義務はあるか?

不倫相手の配偶者に肉体関係を持ったことがバレてしまったときは、配偶者から慰謝料を請求されるだけでなく、接触禁止の合意を求められる可能性があるので要注意です。

 

不倫関係を清算するときは示談書において接触禁止条項が盛り込まれるのが一般的です。しかし、略奪婚を狙うときは接触禁止条項があると今後の交際関係を続けられません。

もっとも、接触禁止条項を入れるにはお互いの合意が必要です。接触禁止条項は拒否することができるので、略奪婚をしたい場合は合意する必要はありません。

 

3.-(2)  判決になった場合も接触禁止義務はない

 

接触禁止条項を拒否したため不倫相手の配偶者が和解に応じなかったときはどうなるでhそうか?

 

和解がまとまらずに判決になった場合は、慰謝料の金額についてのみ裁判官によって判断されるため接触禁止義務を負うことはありません。

 

3.-(3)  接触禁止条項を拒否した場合の慰謝料金額

 

もっとも、慰謝料額を下げることを条件に接触禁止条項への合意を促されることもあるので注意が必要です。

一般的には接触禁止条項を拒否することは慰謝料の増額理由となります。

 

他方で、略奪婚を狙っているのに慰謝料減額を目当てに接触禁止条項を負うと接触禁止を破った場合に多額のペナルティを払う義務が生じることもあるので要注意です。

 

必ずしも接触禁止条項を負わないと慰謝料減額ができないわけではありません。私たちの解決事例でも接触禁止条項を拒否して慰謝料減額に成功したケースは少なくありません。

あくまで接触禁止条項は承諾せずに、その他の事情を主張して慰謝料減額を目指す方が良いでしょう。

(参考)解決事例:交渉を重ねて接触禁止条項なしで慰謝料減額に成功

 

4.     略奪婚に成功しても養育費を負担するリスク

 

不倫相手に子どもがいる場合は、略奪婚に成功しても、養育費を支払い続けるリスクが生じてきます。養育費の支払いが終わるのは、子供が成人したときです。

もし、不倫相手の子どもがまだ小さい場合は、今後10年以上にわたって養育費を支払い続けなければなりません。

略奪婚に成功した後の結婚生活を考えるときに、不倫相手が養育費を負担することは家計に大きな影響を与えます。

従って、相手方夫婦が離婚するように急がせるだけでなく、不倫相手ができるだけ有利な条件で離婚できるかも略奪婚を狙う場合のポイントになります。

 

子どもに対する扶養義務は民法に定められているため、不倫相手に子どもがいる場合は離婚しても養育費を支払う必要があります。

養育費の金額は一般的に離婚する時に決められます。略奪婚を狙って離婚を急ぐあまりに高額な養育費の支払いを約束すると略奪婚後の生活に悪影響を与えかねません。

従って、相手方夫婦が離婚することを急がせるだけでなく、不倫相手ができるだけ有利な離婚条件で離婚できるかも注意した方が良いでしょう。

 

養育費は支払わない場合に罰則等はありません。そのため、養育費の不払いは社会的問題になっています。

もっとも、養育費の回収は今後強化される可能性がありますし、定められた期限までに支払わないと遅延損害金が発生してしまいます。支払いを滞った場合は、養育費に遅延損害金が上乗せされて請求される場合があるので注意が必要です。

養育費を支払わなくて良いと甘く考えず、略奪が成功して夫婦になれた後のお金の問題については、事前にあなたと不倫相手ででよく話し合っておきましょう。

 

5.     不倫で略奪婚を狙う場合は冷静な行動が大事

不倫関係を続けて略奪婚をするとなると様々な法律上の問題が生じてきます。

安易な気持ちで行動すると、大きなリスクや負担を背負うことになるので注意が必要です。感情だけで物事を判断するのではなく、冷静になって行動するようにしましょう。

 

略奪婚はあなたと不倫相手の双方に問題が生じます。相手方夫婦が離婚をする前の段階から一緒に弁護士に相談して、しっかり準備をすることをおすすめします。

 

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