配偶者の不倫が発覚したときも、反対に不倫相手の配偶者から請求されたときも、まず気になるのが「慰謝料 相場」ではないでしょうか。
この記事では、法律上の「不貞行為(肉体関係を伴う不倫)」を前提に、慰謝料の金額がどう決まるのか、そして相場の目安をどう使えばよいのかを整理します。
結論としては不倫慰謝料の相場は50万円から300万円程度と言われており、具体的な状況により金額に幅があります。そこで、この記事ではあなたの事例で慰謝料相場をどのように判断するのかについて詳しく解説します。
この記事では、次の疑問に答えます。
- 不倫慰謝料はだいたいいくらが目安なのか(離婚する/しないで違う?)
- 金額が大きく変わるのは、どんな事情があるからか
- 裁判の金額・示談の金額・請求額がズレるのはなぜか
- 高い請求をされたとき、相場をどう使って対応すればよいか
- 請求する側が、相場を踏まえて損をしないための準備は何か
裁判例の考え方と、実務で争点になりやすいポイントを踏まえて解説します(最終的な結論は個別事情で変わります)。
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

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不倫慰謝料の相場を知る前に:この記事で扱う範囲と前提
「慰謝料」と一口にいっても、交通事故、名誉毀損、離婚原因など、場面によって考え方も金額感もまったく違います。
この記事で扱うのは、その中でも相談が多い 「不倫(不貞行為)」による慰謝料です。つまり、夫婦の一方が配偶者以外の相手と肉体関係を持ち、もう一方(不倫された側)が精神的苦痛を受けたとして請求する慰謝料を想定しています。
不倫慰謝料の相場を調べると、ネット上にはいろいろな数字が出てきます。しかし大事なのは、数字だけを見て焦らないことです。
不倫慰謝料の金額は、ざっくり言えば次の2つで決まります。
- 不貞行為によって、婚姻生活がどれだけ侵害されたか(精神的苦痛がどれだけ大きいか)
- それを裏付ける事情(証拠・期間・離婚の有無など)が、どこまで客観的に説明できるか
「相場」とは、こうした事情を裁判所が評価したとき、どのあたりに落ち着きやすいか、という“目安”です。したがって、あなたの状況に近い条件(離婚の有無、不倫期間、婚姻状況など)に当てはめて初めて意味が出ます。
不倫は法律上「不貞行為」:ポイントは“肉体関係”の有無
日常会話でいう「不倫」「浮気」は、法律用語ではありません。裁判実務では、主に **「不貞行為」**として扱われます。
一般に、不貞行為といえるためには、次の点が重要になります。
- 配偶者以外の相手との「肉体関係(性行為)」があること
- 本人の意思に基づく関係であること(強制など特殊事情がないこと)
たとえば、食事に行った・連絡を取り合った・手をつないだといった事情は、関係性を推測する材料にはなりますが、それだけで直ちに不貞行為と認定されるとは限りません。
ここが相場の話とどうつながるかというと、「肉体関係の立証がどの程度できるか」で、そもそも請求が認められるか(ゼロか)だけでなく、金額面でも大きく差が出るためです。
誰に請求できる?配偶者・不倫相手、どちらも対象になり得る
不倫による慰謝料は、基本的に 不倫をした配偶者と**不倫相手(第三者)**の双方が、支払義務を負う可能性があります。
ただし、ここで誤解が多いのが「両方から二重に取れるのか」という点です。
結論から言うと、同じ精神的損害について “二重取り”はできません。どちらか一方から全額を回収した場合、もう一方に同じ分を改めて請求することはできない、という整理になります。
一方で、実務上は「まず回収できそうな相手に請求する」という判断になることもありますし、当事者間で負担割合をどうするか(いわゆる求償の問題)が後で揉めることもあります。
このあたりは、相場を見ながら「誰にどう請求(または対応)するか」を決める場面で重要になります。
相場は“結論”ではなく、“判断の出発点”として使う
相場を調べる方の多くは、次のどちらか(または両方)に当てはまります。
- 請求する側:いくら請求できるのか、相手にどう切り出せばよいのか不安
- 請求された側:提示された金額が高すぎないか、減額できないか不安
どちらの立場でも、相場は「結論」をくれるものではありません。
相場が役に立つのは、むしろここからです。
- まず支払義務があるのか(争える筋があるのか)
- 支払義務があるとして、どのレンジが妥当か
- 交渉でどこを主張し、どこは譲るのか
このあとでは、状況別に目安の金額レンジを整理し、次に「裁判」「示談」「請求額」がズレる理由と、相場の正しい使い方を説明します。
不倫慰謝料の相場の目安:まずは「どの型に近いか」で考える
不倫慰謝料はケースによって増減しますが、目安としては 50万円〜300万円程度の範囲で語られることが多い分野です。なお、不倫慰謝料の請求金額の相場は300万円であり、実務感覚としては300万円の請求が一番多いです。(参考:不倫慰謝料300万円は高い?相場レンジと「高すぎる」判断ポイント)。
そのため最初に請求される300万円からスタートし、最終的に交渉・裁判を経てどの程度の金額に落ち着くかが慰謝料の相場ということになります。そして、同じ「不倫」でも、金額が大きく変わる分岐点があります。まずは次の3つで、あなたのケースがどこに近いかを確認してください。
- 不倫が原因で、別居・離婚に至ったか(または婚姻関係が決定的に悪化したか)
- 不倫の期間・回数はどの程度か(短期/長期、単発/継続)
- 不倫以前の夫婦関係はどうだったか(円満/破綻・破綻に近い)
この3つは、裁判でも示談でも、金額の上下に直結しやすい「大きなポイント」です。
ネットの数字に当てはめて「この金額が取れる/払えば終わる」と決め打ちするのは危険です。相場は必ず「離婚の有無」「期間・回数」「婚姻の実体」をセットで見てください。
離婚した(別居が固定化した)場合の目安:200〜300万円が中心になりやすい
不倫が発覚した結果、別居が固定化したり、離婚に至ったりした場合は、慰謝料が高めになりやすい傾向があります。
理由はシンプルで、不貞行為が **婚姻関係の破綻(またはそれに近い重大な悪化)**につながったと評価されやすいからです。
目安としては、次のレンジが意識されることが多いです。
- 不倫が主な原因となって離婚に至った:200万円〜300万円程度が中心
- さらに悪質性・長期性などが強い:300万円を超える可能性もある
ただし、離婚に至っていても無条件に高額になるわけではありません。
たとえば、離婚の原因が不倫だけではなく、もともとの夫婦不和が大きかった場合や、不倫の期間・回数が限定的な場合は、同じ「離婚あり」でも金額が抑えられることがあります。
離婚しない場合の目安:家庭破壊の程度が小さいと評価されやすい
夫婦が同居を続け、離婚にも至っていない場合、不倫慰謝料は離婚ケースより低めに落ち着くことが多いです。
裁判所の発想としては、簡単に言うと次のようになります。
「精神的苦痛は当然ある。しかし、婚姻関係が継続しており、家庭が“外形上”は維持されているなら、破綻に至ったケースよりは損害の評価が小さい」
この型では、目安として 50万円〜200万円程度の範囲で語られることが多く、特に次のような事情があると低めになりやすい傾向があります。
- 別居や離婚に至っていない(婚姻継続)
- 不倫期間が短い/回数が少ない
- 不倫以前から夫婦関係が冷え切っていた(破綻・破綻に近い)
逆に、離婚していなくても「関係が継続している」「同居を続けながら実質的には婚姻が壊れている」など、侵害が現在進行形と評価される事情があると、金額が上がることもあります。
期間・回数での目安:短期は低め、長期・濃密は上がりやすい
不倫慰謝料の相場を考えるとき、期間・回数はとても分かりやすい指標です。
目安としては、次のように整理すると理解しやすいです。
- 短期間(数か月以内)で関係が終わっている:50万円〜100万円程度が目安になりやすい
- 1年以上など長期化している:100万円〜200万円程度が目安になりやすい
- 長期に加えて離婚に至った:200万円〜300万円程度が中心になりやすい
- 妊娠・出産・認知、同居継続など重大な事情が重なる:300万円を超える可能性がある
ここでのポイントは、「期間が長い=必ず高い」「短い=必ず安い」ではないことです。
たとえば短期間でも、発覚後の対応が極めて不誠実だったり、婚姻関係への打撃が大きかったりすると、金額が上がることがあります。逆に長期間でも、もともと夫婦関係が破綻に近かったと評価されると、上限が強く抑えられることがあります。
(参考)不倫期間・回数で慰謝料相場はどう変わる?短期/長期・一度だけの目安
以上が慰謝料相場の概要となりますが、自分のケースにおいて詳しい慰謝料の計算方法を知りたい方は下記ページを参考にしてください。
(参考)不倫慰謝料はいくら?計算方法と影響する要素を詳しく解説
「裁判の金額」「示談の金額」「請求額」がズレる理由:相場の正しい使い方
不倫慰謝料について調べていると、次のような“ズレ”に戸惑う方が少なくありません。
「相場は100万円〜200万円と書いてあるのに、300万円を請求された」
「周りは200万円で示談したと言うが、裁判例はもっと低い」
「弁護士に相談したら“落としどころ”が違った」
このズレは、相場の見方を次の3つに分けると整理できます。
- 裁判(判決)になった場合に、裁判所が認めやすい金額
- 示談(交渉・和解)で、当事者が合意しやすい金額
- 相手が最初に提示してくる「請求額」
相場を本当に役立てるには、「どの相場の話をしているのか」を意識することが重要です。
裁判(判決)で認められやすい金額:証拠と事情で“評価”される
裁判になると、慰謝料は「話し合いで何となく決める」のではなく、証拠と事実関係に基づいて評価されます。
そのため、裁判で金額が動くポイントは、大きく次の2つです。
- 不貞行為がどこまで立証できるか(肉体関係の存在、期間、回数など)
- 婚姻への影響がどこまで認定できるか(円満性、破綻への寄与、別居・離婚の有無など)
最近は、不貞行為の「有無」だけではなく、慰謝料の「金額」についても争点が整理され、当事者双方が細かく主張立証するケースが増えています。
結果として、裁判所も事情を丁寧に拾い、増額・減額の理由付けをしながら金額を決めるため、「ネットの相場より低く見える」「思ったより伸びない/下がる」と感じることがあるのは不思議ではありません。
示談(交渉・和解)でまとまる金額:早期解決とリスクが織り込まれる
示談は、裁判所が金額を決めるのではなく、当事者が合意して終わらせる手続です。
示談金額には、裁判の見通しだけでなく、次のような事情も反映されます。
- 裁判にした場合の時間・費用・精神的負担を避けたい
- 職場や家族に知られたくない(秘密保持の必要性)
- 証拠の強弱により、勝ち負けの見通しが揺れる
- 分割払い・接触禁止など「金額以外の条件」で折り合う
つまり、示談の金額は「裁判での認定額そのもの」ではなく、双方が“リスクを踏まえて”現実的に納得できるラインに寄る、という性質があります。
このため、同じように見える事案でも「早く終わらせたい」「絶対に争いたい」など当事者の事情によって、落としどころが変わることがあります。
請求額が相場より高くなりやすい理由:交渉の出発点だから
請求された側が最も驚くのは、ここかもしれません。
不倫慰謝料の請求では、最初から相場どおりの金額が提示されるとは限らず、むしろ 相場より高めの金額がスタートになることがあります(詳しくは慰謝料の請求金額が高すぎるをご覧ください。)。
これは、交渉の場面では次のような事情が働きやすいからです。
- 請求する側は、まず高めに提示して交渉の余地を作りたい
- 相手の支払能力や反応を見て、落としどころを探りたい
- 相手が焦って合意してしまう可能性もある(情報格差が出やすい)
ただし、ここで最も大切なのは、高額請求=そのまま払うべき金額ではない、という点です。
請求された場合は、少なくとも次の順番で冷静に整理すると、相場を「減額交渉の材料」として使いやすくなります。
- そもそも支払義務があるのか(不貞行為の立証、既婚認識、時効など)
- 支払義務があるとして、離婚の有無・期間回数・婚姻の実体はどう評価されそうか
- 示談で終えるのか、争うのか(優先順位:早期解決/金額/秘密保持など)
支払義務そのものが不安な方や、「払わない」という選択肢まで含めて整理したい方は、次の記事も参考にしてください。
(参考)不倫慰謝料を払わない方法7選
慰謝料が増える・減る要因:裁判・示談で見られる「評価ポイント」を整理
不倫慰謝料の金額は「相場の表」だけでは決まりません。裁判でも示談でも、最終的には **「どれだけ婚姻生活が侵害されたか」**が中心になり、その侵害の大きさを裏付ける事情が積み上がって金額が動きます。
ここでは、相場がブレる理由を理解できるように、増額・減額の要因を整理します。どちらの立場(請求する側/請求された側)でも、まずこの“評価ポイント”を押さえることが重要です。
慰謝料は、増額要素を足し算して機械的に決まるわけではありません。裁判所は、個別事情を総合して「この事案ならこの金額が相当」と判断します。だからこそ、どの事情が“決定打”になりやすいかを知ることが大切です。
慰謝料が増額されやすい典型:高くなりやすいのは「婚姻への打撃」が大きいとき
不倫慰謝料が高くなりやすいのは、ひとことで言えば **「平穏な婚姻生活が大きく壊された(または壊れかけた)」**と評価されるケースです。特に、次のような事情が重なるほど、上振れしやすくなります。
- 不倫が原因で別居・離婚に至った(または決定的に夫婦関係が悪化した)
- 不倫期間が長い、回数が多い、関係が濃密(同棲・半同棲、頻繁な宿泊など)
- 不倫相手が既婚と知りながら関係を開始・継続した(故意性が強い)
- 妊娠・出産・認知、隠し子など「重大な派生事情」がある
- 子どもがいる家庭で、子への影響も含めて侵害が大きいといえる
- 発覚後も関係が続いている/解消を拒むなど、侵害が現在進行形
- 口止め・脅し・虚偽の説明など、対応が悪質で苦痛を増幅させた
増額要素のなかでも、とくに強いのは **「婚姻関係への決定的な打撃(破綻・別居・離婚)」と、「関係の継続性(長期・高頻度・同居・現在進行形)」**です。
また、妊娠・出産・認知などが絡むと、単なる不貞行為にとどまらず、精神的侵害が深刻化しやすい(「家庭を壊された」という評価が強くなる)ため、相場の上限側に寄ることがあります。
「謝罪した」「反省している」は大切ですが、それだけで大きく下がるとは限りません。増額要素(離婚・長期・妊娠出産など)が強い場合、誠実対応は“上振れを抑える要素”にはなっても、相場の中心から大きく外れるほどの減額にはつながりにくいことがあります。
慰謝料が減額されやすい典型:低くなりやすいのは「婚姻の実体」が弱いとき
一方、慰謝料が低くなりやすいのは、**「不貞行為はあったとしても、婚姻生活の侵害が限定的」**と評価されるケースです。実務上、減額で効きやすいのは次のような事情です(参考:不倫慰謝料減額の完全マニュアル)。
- 不倫が始まる前から夫婦関係が破綻していた、または破綻に限りなく近い
- 別居や離婚に至っていない(同居継続・婚姻継続)
- 不貞行為が単発に近い/回数が少ない/期間が短い
- 既婚と知らなかった(故意が否定され、過失止まりになる)
- 原告側(不倫された側)が婚姻の円満性・実体を十分に立証できていない
- 発覚後に関係が解消しており、侵害が固定化・縮小している
減額で最も強いのは、やはり **「夫婦関係がすでに破綻(または破綻に近い)」**という評価です。ここが認定されると、「不倫が家庭を壊した」という構図が弱まり、慰謝料は大きく抑えられやすくなります。
次に効きやすいのは、離婚・別居に至っていないことです。もちろん婚姻継続でも苦痛はありますが、裁判所は「家庭破壊の程度」を比較するため、離婚ケースより低めに収れんしやすい、という構造があります。
さらに、「既婚と知らなかった」主張が通り、故意が否定されて 過失にとどまると、同じ不貞でも金額が沈むことがあります(ただし、過失があるかは具体的事情によります)。
増減要素の使い方:相場を“交渉の材料”に変えるコツ
増減要素を理解したら、次は「どう使うか」です。請求する側も、請求された側も、ポイントは共通しています。
- まず「婚姻の実体(円満だったか/破綻していたか)」を固める
- 次に「不倫の態様(期間・回数・同居・妊娠出産など)」を具体化する
- 最後に「発覚後の経緯(関係解消の有無、態度、二次被害)」を整理する
たとえば請求された側であれば、単に「相場は低いはず」と言うより、破綻・婚姻継続・期間短い・故意弱いなどを組み合わせて、相場の下限側に寄せる理由を積み上げる方が交渉は現実的です。
反対に請求する側は、「離婚に至った」「長期・高頻度」「妊娠出産」「関係継続」など、上振れ要素があるなら、そこを裏付ける事情(時系列、証拠、別居の経緯など)を整理することで、相場の中でも上のレンジを狙いやすくなります。
なお、慰謝料は「払う/払わない」以前に、そもそも請求が成立する条件や、支払義務がない典型を確認する必要があります。支払義務そのものが気になる場合は、次の記事で整理してください。
(参考)不倫慰謝料が認められる条件
(参考)不倫慰謝料を払わない方法7選
慰謝料の金額は、婚姻状況や不貞の期間・回数、離婚の有無などで大きく変わります。「慰謝料相場と減額の相談」で、相場の見方と増減要素、請求額が適正かを判断するポイントを確認できます。相手の提示額を鵜呑みにせず、根拠を確認しましょう。
坂尾陽弁護士
裁判例からみる慰謝料相場:40〜50万円で止まる例/300〜500万円級の例
相場の話は抽象的になりがちです。そこで、裁判例(判決)で実際にどのような事情が評価され、どの程度の金額に着地しているのかを見ていきます。
ここで大切なのは、「この判決=あなたの金額」ではないということです。裁判例は、次の目的で読むのが正解です。
- どんな事情が“決定打”になって金額が上がる/下がるのかを知る
- 交渉・裁判で、争点になりやすいポイント(破綻、期間、故意など)を理解する
- 自分のケースが「相場のどのゾーン」に近いか、当たりをつける
慰謝料相場と裁判例については下記について詳しくまとめているので参考にしてください。ここでは最新判例や特徴的な判例に絞って解説を行います。
(参考)不倫慰謝料の判例一覧|裁判例でみる金額相場&増減事由【弁護士解説】
40〜50万円に抑えられた裁判例:決定打は「1回」または「破綻に近い」
「不倫慰謝料は100万〜200万円くらい」とイメージしていると、40〜50万円で止まった裁判例は意外に感じるかもしれません。
ただ、低額例には共通する“型”があります。以下の3件は、その典型です。
東京地裁令和4年12月15日判決:慰謝料40万円(肉体関係1回+破綻寸前)
この事案では、原告(夫)が元配偶者と不貞関係にあった被告に慰謝料を請求しました。
裁判所が認定できた肉体関係は、ホテルでの1回のみでした。また、当時の夫婦関係は、DVを契機に別居が始まってから約1.5か月というタイミングで、裁判所は婚姻を「完全破綻とまではいえないが、破綻に限りなく近い状態」と評価しています。
この結果、責任自体は肯定しつつも、慰謝料は40万円にとどまりました。
ポイントは次のとおりです。
- 不貞の回数が「1回」に限定され、継続関係の立証ができなかった
- 別居が先行しており、婚姻が「破綻に近い」状態と評価された
- 「不貞が主因で家庭が壊れた」とは言いにくく、金額が抑制された
東京地裁令和5年3月15日判決:慰謝料50万円+弁護士費用5万円(故意なし・過失+離婚なし)
この事案では、妻(原告)が夫と交際・肉体関係を持った被告に慰謝料を請求しました。交際期間は約2年で、月2〜3回程度会っていた事情がうかがわれます。
被告は「既婚だと知らなかった」と主張し、裁判所は 故意は認めない一方で、注意義務違反として過失は認定しました。そして、夫婦は離婚手続に至らず同居継続(婚姻継続)という事情が重く見られ、慰謝料は50万円、さらに弁護士費用相当額5万円が認められ、合計55万円となりました。
この判決の読みどころは、次の構造です。
- 期間が2年あっても「離婚・別居なし」だと家庭破壊の評価が小さい
- 故意が否定され「過失」にとどまると、金額が沈みやすい
- 発覚後の対応が、増額するほど悪質とは評価されないと上振れしにくい
東京地裁令和4年7月14日判決:慰謝料50万円+弁護士費用5万円(妊娠出産があっても“破綻に近い”)
この事案では、夫(原告)が妻の不貞相手(被告)に請求しました。性交渉は約1年で頻繁、妻は妊娠・出産に至っています。
一見すると増額要素が強い事案ですが、裁判所は、当時の婚姻について「破綻に近い」事情が強いと推認し、慰謝料は50万円に抑えました(弁護士費用相当額5万円を加え合計55万円)。
特に目を引くのは、婚姻の実体(円満性)に関する立証が弱いと、裁判所が「破綻に近い可能性」を排斥しきれず、結果として減額方向に働くことがある点です(この事案でも、原告が当時の婚姻実態について十分に供述していない事情が指摘されています)。
この判決から読み取れることは、次のとおりです。
- 妊娠・出産があっても、婚姻の実体が「破綻に近い」と評価されると上限が強く抑えられる
- 増額事情(妊娠出産・頻繁な性交渉)よりも、「破綻に近い」が決定打になることがある
3件をまとめると、低額(40〜50万円)に落ちた決定打は、結局この2つに集約されます。
- 婚姻の実体が弱い/破綻に近い/不貞が破綻に寄与した程度が小さい
- 不貞の態様が軽い(1回)または 離婚・別居なし/故意が弱い(過失)
300〜500万円級が認められた裁判例:子・継続・濃密さ・破綻への影響が揃うと上振れする
次は上振れゾーンです。300万円を超えるのは「よほど特殊」と思われがちですが、判決をみると、増額要素が明確に積み上がっています。
(参考)不倫慰謝料の上限はいくら?高額(500万円超など)が認められやすい典型パターン
東京地裁令和3年1月20日判決:慰謝料300万円+弁護士費用30万円(妊娠出産・認知・同居継続)
この事案では、妻(原告)が夫と不貞関係にあった女性に請求しました。不貞期間自体は「何年も同棲」というタイプではなく、比較的短期間で複数回という範囲です。
しかし、決定的だったのは、不貞相手が妊娠・出産し、夫が子を認知し、さらに夫が不貞相手・子と同居を継続しているという点です。裁判所は、婚姻生活の侵害が極めて大きいこと、そして侵害が現在も続いていることを重く評価し、慰謝料300万円に加えて弁護士費用相当額30万円を認め、合計330万円としました。
この判決が示す「上振れの芯」は次のとおりです。
- 妊娠・出産・認知という重大な派生事情がある(精神的侵害が深い)
- 同居継続で侵害が現在進行形(苦痛が固定化・拡大しやすい)
- 婚姻の安定性(発覚まで平穏)が認められると、侵害の落差が評価されやすい
東京地裁平成19年7月27日判決:慰謝料500万円(約20年・ほぼ毎日・子2人・近隣の風評)
この事案は、交際期間の異常な長さと濃密さが際立ちます。夫と女性が 約20年にわたり関係を継続し、夫は日中ほぼ毎日女性宅に通い、子2人をもうけて認知していた、という事案です。
裁判所は、婚姻破綻や権利濫用などの主張を退け、慰謝料500万円を認定しました。
この判決は「長期・高頻度・子(認知)・生活圏の近さ(噂など)」といった増額材料が揃うと、相場の上限側まで到達し得ることを示しています。
一方で、長期事案は“常に無制限に上がる”わけではなく、外形上の家庭維持(夜は自宅に帰る等)や、宥恕(黙認・許していたように見える事情)、時効・期間制限の影響などが「天井」を作る方向に働くこともあります。長期事案ほど、この「評価される範囲の切り分け」が重要になります。
浦和地裁昭和59年3月5日判決:慰謝料500万円(具体的立証+破綻への影響が強い)
この事案では、複数回にわたる密会・性的関係が推認され、不貞行為が夫婦関係を悪化させ、破綻させたとして慰謝料500万円が認容されました。
特徴的なのは、不貞の存在が「推認できるほど具体的に立証」されている点です。尾行調査や複数日の行動、目撃状況など、事実の積み上げが強く、裁判所が不貞と婚姻侵害を明確に評価しやすい構造になっています。
この判決からは、次の実務的な教訓が読み取れます。
- 不貞の態様が具体的に立証されるほど、評価がぶれにくい(上振れしやすい)
- 夫婦関係に不和要素があっても、「不貞が破綻を決定づけた」と評価されると高額になり得る
高額例を横並びでみると、結局、核になるのは次のまとまりです。
- 期間(長い)/濃密さ(同居・毎日など)/子(妊娠・出産・認知)
- 関係の継続(現在進行形)/婚姻への決定的打撃(破綻・別居・離婚)
- 立証の強さ(証拠・時系列が具体的)
裁判例を相場に当てはめるときの注意:数字より「理由」を見る
裁判例を読むときに、いちばん避けたいのは「◯◯万円の判決があるから自分もその金額だ」と短絡することです。相場を読み違えないために、次の3点を意識してください。
- まず「離婚・別居の有無」と「破綻評価」を確認する(ここが最大の分岐)
- 次に「期間・回数・継続性」と「故意(既婚認識)」を確認する
- 最後に「妊娠出産・認知・同居」「子」「二次被害」などの上振れ要素を見る
同じ300万円でも、「離婚したから300万円」なのか、「離婚は未了でも妊娠出産・認知・同居継続で300万円」なのかで、意味が違います。裁判例の価値は“金額”よりも“理由(評価の仕方)”にあります。
詳しくは、「慰謝料相場と裁判例まとめ」をご覧ください。
近年の実務の印象:認定額が抑えられやすいのはなぜか(分析)
近年、不倫慰謝料の争い方は整理が進み、被請求側が「不貞行為の有無」だけでなく、「慰謝料の金額」についても細かく争うケースが増えています。その結果として、裁判所が認定する慰謝料が以前より抑えられているように感じる場面がある、という見方には一定の理由があります。
整理すると、次の2つが大きいです。
- 金額論の争いが精緻化し、破綻・婚姻継続・故意弱い等の減額事情が拾われやすくなった
- 高額要素が強い事件ほど、判決前に和解で落ちやすく、判決に残る事件が「争える事件」に偏る
前者は、まさに低額例で見たとおりです。たとえ不貞行為が認められても、「1回」「破綻に近い」「離婚なし」「故意なし(過失)」といった事情が具体的に主張立証されると、裁判所は“ゼロにはしないが上限は抑える”という判断を取りやすくなります。
後者は、データの見え方の問題です。妊娠出産・認知・長期同居など、上振れ材料が揃う事件は当事者のリスクが高く、条件調整(分割・口外禁止・接触禁止など)も含めて和解で決着することがあります。その結果、判決として公表・参照される母集団が、相対的に「金額を争える事件」に寄ってしまい、平均的に低めに見えることがあります。
もちろん、「必ず下がっている」と断言できるものではありません。ただ、少なくとも実務上は、相場を一律に当てはめるより、どの減額事情がどこまで刺さるか、または どの増額事情がどこまで立証できるかが、より重要になっているといえます。
坂尾陽弁護士
請求する側のポイント:相場を踏まえて「損をしない請求」の進め方
不倫慰謝料を請求する場面では、感情が先に立ちやすい一方で、実際に回収できるか・金額を伸ばせるかは、**準備(条件確認と証拠整理)**で大きく変わります。
ここでは「いくら請求できるか」だけでなく、相場を踏まえて現実的に回収につなげるための考え方を整理します。
まず確認:慰謝料請求ができる条件を満たすか
不倫慰謝料は、単に「怪しい」「仲が良さそう」だけでは足りず、原則として**不貞行為(肉体関係)**が前提になります。まずは、次のポイントを順に確認してください。
- 肉体関係があったといえる事情がある(証拠・状況)
- あなたの婚姻関係が法的に保護される状態にある(破綻の有無)
- 不倫相手が既婚だと知っていた/知り得た(故意・過失)
- 時効などで権利が消えていない
ここが曖昧だと、相場の上限を狙うどころか、交渉自体が難しくなります。逆に言えば、条件が固まっているほど、相手も「争っても勝てない」と判断しやすく、示談がまとまりやすくなります。
請求できる条件や、支払義務が否定・減額されやすい典型は別記事で整理しています。
(参考)不倫慰謝料が認められる条件とは?請求・減額交渉のポイントを解説
証拠の強さで「相場」が現実の金額に変わる
不倫慰謝料は、計算式で決まるものではありません。実務では、相場レンジ(たとえば数十万〜300万円程度)を前提にしつつ、証拠が強いほど上のレンジに寄りやすく、弱いほど下のレンジに寄りやすいというイメージを持つと判断しやすいです。
証拠の集め方はケースによりますが、一般に「肉体関係を推認できる資料」が強いです。たとえば次のようなものです。
- ホテル出入りの写真・動画(日時が分かるもの)
- 探偵の報告書(行動と宿泊の連続性が分かるもの)
- ホテルの領収書・カード明細・ポイント履歴
- 旅行の予約記録(同室・同日程が分かるもの)
- LINE等のやりとり(肉体関係をうかがわせる内容)
一方で、「スマホの不正ログイン」「無断での盗聴・盗撮」など、やり方によっては別のトラブル(違法性)を招くことがあります。証拠集めは、**安全に、そして“裁判になっても使える形”**を意識してください。
「相場より高い請求」をすること自体は珍しくありませんが、回収できるかは別問題です。証拠や条件が弱いのに強気な金額を固定すると、長期化・決裂しやすくなります。まずは条件と証拠を固めたうえで「狙えるレンジ」を見立てるのが近道です。
誰に請求するか:配偶者・不倫相手・両方の考え方
不倫慰謝料は、配偶者だけでなく不倫相手にも請求できる場合があります。ただし、同じ精神的損害について二重に回収することはできません。
実務上は、次の観点で「請求先」を決めることが多いです。
- 不倫相手に資力がある(回収の現実性が高い)
- 配偶者と離婚する予定がある(同時に整理したい)
- 夫婦関係を継続したい(配偶者への請求は慎重に)
- 相手が交渉に応じる見込みがある(早期解決優先)
また、相手方の主張として「夫婦関係は破綻していた」「既婚だと知らなかった」などが出ることもあるため、請求先の選択は「感情」だけでなく、争点を整理したうえで戦略的に決めたほうが、相場に近い(または相場より良い)着地を取りやすくなります。
なお、慰謝料の請求相手が低収入の場合や独身の場合に慰謝料相場がどうなるかについては下記を参考にしてください。
(参考)不倫慰謝料は相手の収入で変わる?低収入の場合の影響と対策を弁護士が解説
(参考)不倫相手が独身の場合、慰謝料相場は下がる?(独身側の責任も含めて解説)
請求の流れ:交渉→内容証明→(必要なら)裁判
請求手続は大きく次の順で進むことが多いです。あなたが選ぶべきルートは、「相手が応じる余地があるか」「早く終えたいか」「証拠が固いか」で変わります。
- STEP1:証拠・時系列・婚姻状況を整理する
- STEP2:請求金額の“落としどころ”を見立てる(相場×事情)
- STEP3:交渉(電話・面談・書面)で合意を目指す
- STEP4:まとまらなければ内容証明郵便で正式請求する
- STEP5:それでも合意できない場合、裁判を検討する
請求金額は「相場表をそのまま当てはめる」のではなく、あなたの事案が
(離婚あり/なし)×(短期/長期)×(破綻の有無)×(証拠の強弱)
のどこに位置するかで決めます。
そして、示談で決着する場合は、金額だけでなく「支払方法(分割の可否)」「清算条項」「接触禁止」など、後から揉めない条件まで含めて整えるのが重要です。
請求された側のポイント:相場を根拠に「冷静に下げる/争う」手順
不倫慰謝料を請求されたときは、請求額が相場より高めに提示されることもあるため、強い不安や焦りを感じやすいと思います。
ただ、ここで大事なのは「すぐ払う/すぐ否認する」と決め打ちしないことです。実務では、被請求側が不貞行為の有無だけでなく、慰謝料金額そのものも細かく争うことが増えており、相場を根拠に落としどころを作れるケースも少なくありません。
まずやること:請求内容を確認し、初動のNGを避ける
請求が来た直後は、まず「何を請求されているのか」を淡々と確認します。感情的な対応は、金額面でも不利になりやすいので避けてください。
確認したいポイントは次のとおりです。
- 請求者は誰か(配偶者本人か、代理人か)
- 誰に対する請求か(あなた個人か、配偶者も含むか)
- 請求の理由(いつ、誰と、どの行為が不貞とされているか)
- 証拠の提示があるか(概要だけでも書かれているか)
- 金額の内訳(慰謝料のみか、調査費用等も含むか)
- 期限や回答要求(いつまでに返事・支払か)
そして、初動でやりがちなNGは次のとおりです。
・勢いで「全部認める」メッセージを送る(記録が残る)
・証拠がないのに「絶対に不貞はない」と断言する(後で崩れる)
・請求者に暴言・脅しをする(紛争が拡大しやすい)
・無視を続けて相手の手続きを進めさせる(裁判移行の引き金)
「返事をしないとまずいのでは」と不安でも、いったんは事実関係を整理してから、相場と争点を踏まえた回答を準備するほうが、結果的に減額につながりやすいです。
慰謝料金額を下げる考え方:相場を“主張の型”に落とす
請求された側の交渉は、大きく分けると次の2段階です。
- ① そもそも支払義務があるか(成立条件の問題)
- ② 支払義務があるとして、いくらが相当か(金額の問題)
このうち②の「金額の問題」は、相場の知識がそのまま武器になります。ポイントは、「相場は◯◯円」と言い切るのではなく、相場の下限側に寄せる事情を具体的に示すことです。
実務で減額主張として組み立てやすいのは、次の論点です。
- 不倫期間が短い/回数が少ない(継続性が弱い)
- 離婚や別居に至っていない(家庭破壊が顕在化していない)
- 不倫以前から夫婦関係が破綻・破綻に近い(侵害の評価が小さい)
- 既婚だと知らなかった/知り得なかった(故意が弱い)
- すでに一定の支払い・解決がされている(重複評価を避ける)
- 資力が乏しい(示談では支払可能性が重視されることがある)
大切なのは、相手を刺激する言い方ではなく、**裁判になっても説明できる“事実の形”**で出すことです。たとえば「夫婦関係が破綻していた」なら、単にそう主張するのではなく、
- 別居が先に始まっていた
- 長期間の家庭内別居があった
- 離婚協議が具体的に進んでいた
など、客観的な事情に落とし込んで示すほうが説得力が上がります。
また、請求額が相場より高い場合でも、焦って「半額で」と言うより、まずは上記の減額事情を整理し、自分の事案が相場のどのゾーンに近いかを見立ててから提案するほうが交渉は安定します。
(参考)慰謝料減額の完全マニュアル
払わなくていい」可能性がある典型は、結論だけ押さえる
ケースによっては、そもそも支払義務が否定されたり、強く争えたりすることがあります。典型は次のとおりです。
- 肉体関係(不貞行為)を裏付ける証拠が乏しい
- 既婚だと知らず、注意しても分からなかった
- 夫婦関係がすでに破綻していた(不貞が原因で壊れたと言い難い)
- 時効などで請求権が消えている可能性がある
ただし、この論点は事実関係の詰め方で結論が大きく変わります。「払わない」を選ぶ場合のリスクや進め方まで含めて確認したいときは、次の記事も参考にしてください。
(参考)不倫慰謝料が認められる条件とは?請求・減額交渉のポイントを解説
示談で失敗しない:金額より「条項」で揉めることが多い
示談で解決する場合、金額にばかり注目しがちですが、実務では示談書の条項が甘くて再燃することが少なくありません。合意するなら、最低限次を押さえると安心です。
- 清算条項(この件はこれで終わり、の合意)
- 支払方法(期限・分割・遅延時の扱い)
- 接触禁止(連絡・面会・SNS等の範囲を明確に)
- 口外禁止(職場・家族への拡散を防ぐ)
- 求償の扱い(後で配偶者に請求できるか等)
特に「分割払い」は、合意できれば現実的な解決になりやすい一方、曖昧だとトラブルになりやすいので、回数・金額・支払日を明確にします。
また、状況によっては「求償権(あとで配偶者に負担分を求める権利)」の放棄や調整が、金額の落としどころに影響することがあります。ただし、これは当事者関係(離婚するか、婚姻を継続するか)にも左右されるため、条項設計は慎重に行うのが安全です。
裁判になりそうなときの見通し:争点は「有無」より「評価」も重要
相手が強硬で、交渉ではまとまらない場合、裁判に移行する可能性があります。裁判になると、次の点が主な争点になりやすいです(参考:不倫慰謝料の金額に関する裁判例まとめ)。
- 不貞行為があったか(肉体関係の立証)
- 相手が既婚だと知っていたか(故意・過失)
- 夫婦関係が破綻していたか(破綻・破綻に近い)
- 慰謝料の相当額はいくらか(期間・回数・離婚の有無など)
最近は、「不貞の有無」だけでなく「金額の評価」も細かく争点化することが多いため、請求額が高いからといって、そのまま高額が認められるとは限りません。逆に言えば、減額事情があるなら、裁判を見据えて整理することで、示談交渉でも現実的な落としどころを作りやすくなります。
ただし、裁判は時間も負担も大きく、提出資料や主張の組み立て方で結果が変わります。相場から大きく外れた請求を受けている、あるいは「支払義務そのもの」を争う可能性がある場合は、早めに弁護士へ相談して、見通しと方針(争う/まとめる)を固めることをおすすめします。
坂尾陽弁護士
慰謝料相場についてよくある質問
ここまでで、不倫慰謝料の相場感(レンジ)と、金額が増減する考え方、そして請求する側/請求された側の動き方を整理しました。
最後に、相談現場でも質問が多いポイントをQ&A形式でまとめます。結論は個別事情で変わるため、あくまで「判断の目安」として読んでください。
離婚しない場合でも、不倫慰謝料は請求できますか?
請求できます。
不倫慰謝料は「不貞行為による精神的苦痛」に対する損害賠償です。したがって、離婚していない場合でも、精神的苦痛が認められる限り請求は可能です。
もっとも、離婚に至ったケースと比べると、裁判や交渉では次のように評価されやすく、金額は抑えられがちです。
- 同居継続・婚姻継続なら、家庭破壊の程度が相対的に小さいと見られやすい
- 不倫発覚後に関係が解消していれば、侵害が固定化・縮小したと評価されやすい
逆に、離婚していなくても「関係が継続している」「家庭内の混乱が長期化している」など、侵害が強い事情があると上振れすることもあります。
婚約中の浮気(不倫)でも慰謝料は請求できますか?
可能な場合があります。
婚約中は法律上の「夫婦」ではありませんが、婚約には一定の法的保護が及ぶと考えられています。もっとも、婚姻関係よりも保護の強さが弱くなりやすいので、金額は婚姻中の不貞より低めになるのが一般的です。
判断の分かれ目は、次のような「婚約の実体」があるかどうかです。
- 両家の挨拶が済んでいる
- 同居している/結婚式場の予約など具体的準備が進んでいる
- 周囲にも婚約として認識されている
式の直前や妊娠・中絶など事情が重い場合は、相場感が上がることもあります。
不倫慰謝料300万円は「高すぎる」のでしょうか?
「高すぎる」と断言できるかは、事情次第です。
300万円が相場の上限側に近い金額であることは多い一方で、次のような事情が揃うと、300万円でも「あり得ない金額」とは言いにくくなります。
- 不倫が原因で別居・離婚に至った(または決定的に婚姻が壊れた)
- 長期・高頻度、同棲・半同棲など関係が濃密
- 妊娠・出産・認知など重大な派生事情がある
反対に、離婚に至っていない、期間が短い、夫婦関係が破綻に近いなど減額事情が強いなら、300万円は「上振れしている(高い)」可能性が上がります。
請求された側は、いきなり「高いから払わない」と決めるのではなく、まずは 相場の下限側に寄せる事情(破綻・短期・離婚なし等)を整理してから交渉するのが安全です。
(参考)不倫慰謝料300万円は高い?相場レンジと「高すぎる」判断ポイント
慰謝料は分割払いにできますか?
できます(ただし相手の合意が必要です)。
分割払いで合意する場合は、口約束ではなく、示談書などの書面で次を明確にしておくことが重要です。
- いつからいつまで、何回払いか
- 各回の金額と支払日
- 支払いが遅れた場合の取り扱い(期限の利益喪失など)
分割にする代わりに、口外禁止・接触禁止などの条件が求められることもあります。金額だけでなく「条項」で揉めないように設計するのがコツです。
公務員・有名企業勤務だと慰謝料が上がりますか?
「公務員だから」「大企業だから」という理由だけで、裁判所が機械的に増額するとは限りません。
もっとも、示談交渉の場面では、次のような事情が金額に影響することがあります。
- 立場上、表沙汰を避けたい(早期解決・秘密保持の必要性が高い)
- 懲戒リスクや職場問題が絡み、交渉がシビアになりやすい
つまり、裁判の相場より、示談での「解決コスト(リスク)」が上乗せされる形で影響が出ることがあります。
うつ病など精神疾患になった場合、慰謝料は増えますか?
増額要素として考慮されることがあります。
不倫発覚後の通院や診断がある場合、それ自体が「精神的苦痛の大きさ」を裏付ける事情として、慰謝料の増額方向に働く可能性があります。
ただし、治療費などが常に別枠の損害として認められるわけではなく、裁判では「慰謝料の中で評価する」という整理になることもあります。重要なのは、症状と不倫の因果関係をどこまで説明できるか、という点です。
相場をさらに深掘りしたい方へ(状況別の関連記事)
不倫慰謝料の相場は、結局のところ「あなたの事案がどの型か」で大きく変わります。ここから先は、状況別に深掘りできる記事をまとめました。必要なところだけ拾ってください。
まとめ
不倫慰謝料の「相場」は、数字だけを見るよりも、あなたの事案の事情と証拠を当てはめて初めて意味が出ます。最後に、要点を絞って整理します。
- 不倫慰謝料は計算式で決まらず、事情(離婚・期間・破綻など)で相場レンジが動きます
- 金額は「裁判の認定額」「示談の合意額」「相手の請求額」でズレることが多いです
- 高額になりやすいのは、長期・濃密・離婚・妊娠出産など婚姻への打撃が大きいケースです
- 低額になりやすいのは、破綻(または破綻に近い)・短期・離婚なし・故意が弱いケースです
- 請求する側も請求された側も、まずは事実整理と証拠整理が「相場どおりの解決」に直結します
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坂尾陽弁護士
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